新型コロナへウイルスへの正しい対処法――高齢者の責任ある行動が望まれる

2020年8月5日 (火)

1.2020年1月、中国武漢で、野生動物(コウモリorセンザンコウ)由来の未知のウイルスが、海鮮動物市場あるいは武漢のウイルス研究所から漏れ出し、死亡者が続出、住民がパニック状態に陥り、都市封鎖が行われ、隔離病棟が急造されるという衝撃的ニュースから、この新型コロナウイルスをめぐる混乱が始まった。

2.このウイルスに対する日本政府の最初の行動は、武漢に住む日本人をチャーター機で日本に避難させること(1月30日)。次に、コロナウイルスに感染した乗客を乗せたイギリス船籍の豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号(乗客約3,700人)の横浜入港を受け入れ(2月4日)、船内で拡大する感染者の隔離や治療にあたることだった。

3.この経験から、船内で検疫作業などにあたった国際医療福祉大学の和田耕治医師は、次のようなことを教訓とすべきと指摘している。

「感染が拡大すれば、クルーズ船で起きたことと同じことが高齢者施設で起こる。今回わかったのは、クルーズ船に乗れる元気な70代、80代の高齢者でも、感染すると5割は症状が出ないが、3割は発熱し、2割が重症化し入院が必要になる。そして感染者のうち5%は人工呼吸器につながれるということだ」(NHK政治マガジン2020.3.4)

4.このクルーズ船における日本の新型コロナウイルス対処法は、欧米各国や日本の感染症専門医師からも非難を浴びたが、この教訓から見れば、完璧とは言えないまでもほぼ妥当な処置が行われたと見ることができる。何しろ乗船客は、日本人だけでなく世界各国(チャーター機で自国民を搬送した国だけでも12ヵ国)の国民が含まれていたから。というのも、その後、このウイルスは欧米各国に感染拡散し、日本とは比較にならない感染爆発を起こすことになったから。

2020年1月23日から7月30日までの各国の感染者数の統計グラフ

5.このため、新型コロナウイルスに対する恐怖が一気に高まることになった。日本では感染者数、死者数とも、これらの国に比べて圧倒的に少ないにもかかわらず、”明日は我が身”ということで感染爆発が起こることが懸念された。3月29日に志村けんさんが急死したことや、厚生労働省のクラスター対策班の西浦教授が8割外出制限をしなければ42万人の死者が出ると警告したこと。4月23日に岡江久美子さんが急死したことも、国民の新型コロナウイルスに対する恐怖心を倍加した。

6.しかし、同じ新型コロナウイルスと言っても、その感染者数及び死亡者数は、日本(中国、韓国、台湾などアジア諸国)は圧倒的に少ないという事実に変わりはないのである。このことについて、京都大学の山中伸弥教授が「ファクターX」の存在を指摘したが、これより先に、京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と、吉備国際大学(岡山県)の高橋淳教授らの研究グループが「日本ではすでに新型コロナウイルスに対する集団免疫が確立されている」という仮説を発表した。それに続いて、国際医療福祉大学の高橋泰教授は、日本人は「リスクの高い高齢者をウイルスから隔離する仕組みを高齢者施設で徹底 していること」「自然免疫力が高いこと」「欧米人に比べて「サイトカイン・ストーム」の起きる率が低く、起きても血栓ができにくく重症化しにくいこと 」などが、日本の「重症化率・死亡率を低くしている要因ではないかとしている。

7.また、髙橋教授は、新型コロナの臨床に関わる論文から仮説を立て、公表データを使って「感染7段階モデル」を作成し、ファクト(事実)に基づくわかりやすいモデルで新型コロナの特性を説明し、適切な対策をとるための議論を活発化したいという。

つまり、こうした新型コロナウイルスの特性を踏まえた、感染ステージ毎の対処法を確立すべきと言っているのである。初期段階でウイルスに暴露しても98%は自然免疫で治るということ。感染しても、ダイヤモンド・プリンセスの場合でも70~80代の高齢者でも、約5割の人が無症状であったこと、また、症状が出てPCR検査陽性であっても風邪程度の軽い症状で済む人が約80%であること。症状が悪化して入院治療が必要になる割合は約1.9%で、重症化し死亡する人は0.001%であることなど。

8.こうした新型コロナウイルスの特性を踏まえ何に重点を置いて処置すべきかを考えると、結局、いかに重症化を防ぎ死亡者を減らすかということに目標を定めることになる。その重症化の原因としては、病原体そのものの毒性によるものではなく、免疫暴走によるものであることが分かっていて対処法も確立されつつある。また、昨日、大阪市がポビドンヨード(いわゆる「イソジン」が有名)による「うがい」で新型コロナ陽性率低下させることができたと発表したが、これは、この図式の第2段階の対処法であり、本人の重症化を防ぐと同時に、他の人に感染させるリスクを減らす効果も期待できる。

9.このように見てくると、この新型コロナウイルスは、少なくとも日本人にとっては、それほど危険で恐ろしい感染症ではないことがわかる。もちろん、米国をはじめとして感染爆発が起きている国では今なお深刻な問題であり、そうした国々の日本への影響を軽視することはできない。また、現在、日本でも、感染拡大の第二波が来ているといわれ、これは第一波と違って自粛要請をしていないから、欧米のような感染爆発が起こるかもしれないとの恐怖がある。しかし、この感染増加は、PCR検査数の増加に比例しており感染爆発と言える程のものではない。これに対して、PCR検査数を欧米並みに増やせという意見が従来よりあるが、重傷者数や死亡者数は第一波よりかなり低く抑えられているので、発症者及び濃厚接触者を対象に検査していけばいいのではないかと思う。また、感染症対策の常識としては、一度感染することで抗体が出来てはじめて終熄できるわけだから、この間、医療崩壊を起こさないよう、隔離・治療体制を整備していくことが必要になってくるわけである。

髙橋教授の新型肝炎ウイルスの感染ステージモデル

10.髙橋教授は、先に示した「感染ステージモデル」を踏まえて、次のような対処法を提言している。

「0歳未満では重症化リスクは限りなくゼロに近いのに、対面授業を行わないとかスポーツをさせないというのは誤った政策だと思う。対面での教育が行われず、オンライン教育のみにすることの弊害のほうがずっと大きい。平常に戻すべきだ。そして、そこで学生からPCR陽性者が出てもマスコミが騒がないことが重要だ。明らかな症状が複数の学生に現われる集団発生が起きてはじめて、報道を行い学級閉鎖を行えばいいのではないだろうか。

 30~59歳も通常の経済活動を行ってよいはずだ。罹患した場合は症状に応じて自宅待機などを行い、集団発生すれば職場の閉鎖をすればよい。70歳以上の高齢者は流行している間は隔離的な生活を維持せざるをえないだろう。何度も言うが、感染リスクはある。しかし、2%未満の重症化リスクを減らせばいい。感染パターンを注視しつつ、社会活動は続けるべき」(msnニュース 大崎 明子2020/07/17 07:00)

11.このように考えれば、日本国民の新型コロナウイルスに対する過剰な恐怖心を取り除くことができ、冷静に社会経済活動を維持していくことが可能になってくると思う。問題は、70歳以上の高齢者だが、先のクルーズ船の経験でも「クルーズ船に乗れる元気な70代、80代の高齢者でも、感染すると5割は症状が出ない」と報告されているから、その人の健康状態如何と言うことだろうが、いずれにしても、高齢者が感染リスクが高いことは明かなので、社会経済活動を平常通り動かしていくためには、高齢者こそが「感染しない努力」を自ら責任を持って遂行すべきではないかと思う。