橋下政治の今後の帰趨を制する第一のポイントは何か。――権力行使における私情抑制がカギ

2012年3月25日 (日)

橋下大阪市長への期待と不安 http://agora-web.jp/archives/1441811.html

*辻元氏のアゴラ上記記事に対する私のコメントです。なお、この記事のコメントでは「権力行使が自己抑制的になされる間」としていましたが、「自己抑制的」を「私情抑制的」に訂正致します。

 本論は、橋下氏の推し進めている政治改革について、「行政システムの改革による効率化によって、国民負担増を伴うことなく、財政再建することは不可能」。唯一の方法は「消費税30%程度の増税と社会保障の削減」など「国民の負担増」である。よって、それを正面から国民に訴えるべきであって、公務員バッシングなどのポピュリズムに走るべきではない、というものです。

 この意見は現行の公務員制度が抱えている問題点を看過していると思います。私見では、日本の公務員制度の問題点は、それが必然的に共同体化(=ムラ化)するということです。これは日本の労働組合(公務員の場合職員団体)が全職種を抱え込んだ企業別組合になっているためで、民間企業の場合は、変化する経済状況に対応して経営的観点からの組織の合理的再編を常に迫られますが、、公務員組織の場合はそうした契機が全く働かない。また、一般職は公務員の職務上、政治的行為に一定の制限が課されていますが、現業部門にはそれがないので、どうしても組合運営が現業主導となってしまう。そのため、組織の共同体化(=ムラ化)の維持が、組合運営の中心課題となってしまうのです。おそらく大阪市の組合も、こうした弊に陥っているのではないでしょうか。

 ではこれをどう改革するか。方法としては現業部門の民営化と公務員の業績評価システムの導入しかないと思いますが、これは一種の共同体解体ですから大変なことです。しかし、これを避けては自治体組織における「ムラの論理」の排除はできません。従って、自治体の財政再建も困難になります。これができなければ、当然、国民全体に対して、増税や社会保障削減による財政再建を正面から訴えることもできなくなります。つまり、問題は、グローバル化という経済状況の変化に対応するために必要とされる、国民の意識改革をどう進めるかということなのです。

 これを成功させるためには、まず、「ムラ意識」の温床となっている自治体職員の意識改革から始めるしかないでしょう。しかし、そうした意識改革が理性の説得だけで可能なら何も問題はないわけですが、それは無理で、政治的に決着するしかない。また、民主主義のもとでその意志決定を左右するのは世論であり、その世論形成に多数を占める民間は、こうした時代の変化により自覚的ですから、その自覚に乏しい公務員に対する不満は強くなります。それが、現在、世論が橋下氏を支持している理由だと思います。

 ただ、こうした改革も、氏の権力行使が私情抑制的になされている間はうまくいくと思いますが、それが恣意的なものに感じられるようになると、世論の支持離れは早いと思います。この点が、橋下政治の今後を占う第一のポイントだと、私は見ています。