Exit

recordor


1998年、当時国立音楽大学にありました“音楽デザイン学科”と私、伊勢友一のコラボレーションCDを作りました。
現在、大学機関もカリキュラムが変わり、この学科はほかの科と統合されなくなってしまい、またこのCDも現在は廃盤となってしまいましたが、 このCDにつきましてのコラムを特別に掲載します。

(以下の文面は、1998年当時書いたコラムをそのまま掲載しております)

●打楽器インプロヴィゼーションCD『recordor』(レコルドール)

一昨年末、私は、国立音楽大学音楽デザイン学科のカリキュラム(授業)『CD制作の実際』から依頼を受けまして、打楽器インプロヴィゼーションCDを制作する際の演奏者を担当致しました。

録音の内容は、音楽デザイン学科のそのクラス(5人の女性学生達)の制作によるグラフィック・スコアからの即興演奏を収録することです。

とは、言いましても“即興演奏を収録する!!”
即興(インプロヴィゼーション)と“適当”は紙一重。
CDを作るにあたって、音としての価値がなければ商品にはなれないと言う思いもありましたし、なにも知らずに聴いた人が楽しめる、あたかもしっかりと記譜された誰それの作品の様なしっかりとした骨組みを取りたいと思いました。

(ブックレット「心」“Cor”のページ)

ですから、まずそのグラフィック(デザイン画)に込める音のイメージを学生と何回にも及ぶディスカッションから始まり、5人の5種類の作品(スコア)が完成いたしました。
そして、それらから意図を読みとり、打楽器奏者が即興で音楽へと進化させ、小品、フレーズ、音源と、マテリアルを録音へと進むのです。

録音は1997年12月8日〜11日にかけて、私は国立音楽大学の講堂大ホールを4日間貸り切って行いました。
録音・編集は、ナ、ナント!『東芝EMI』のスタッフの方々のバックアップです。
超有名レーベルです!!。
私個人がそんな大きいレコーディングをやれるとは、まさに夢のような出来事です。

4日間に及ぶ制作過程は、まさに“産みの苦しみ”です。
事前のスタジオでの連日の音の収録から、サンプル演奏を繰り返したのち、ホールに入り、自ら決めたマルチセットをホール舞台の真ん中にセットし、誰もいない大ホールで初めて“音”を再生していくのです。
そして、ナンノカンノ言っても作品が“即興”ですから、その時にならないと、僕以外の人は「伊勢の出す音」「伊勢の考えているイメージ」など、口で言い合っているだけであって実際の所は、解らず、全ての皆さんが不安だったのではないでしょうか?

打ち合わせ時のセッティング企画図(スケッチは、「高揚」(右)、「憂鬱」(左)のもの)


更には、テイクは数回あっても、その間は一発取りです。止まったら、最初から・・
でも、即興だから少しずつの違いが現れ、良くなるか?煮詰まるか?も瀬戸際で・・
最初のうちは、良いのです。しかし、2日目、3日目になると、・・・
いくら無数の打楽器群とは言え、使えるモノだって限りがあるし一人の演奏者での出来ることも、ある意味では限定されます。並べるだけ並べての「音の博物館」のようにはなりたくありませんでしたし・・。

そして、今回のデザインを通しての共通するテーマは、
難しい“人の『心』”。

その、「心」の感情の「高揚」「憂鬱」「悲嘆」「安心」「回想」。
この6つの音楽を作っていくには、難しいものがあります。

長調や、短調などの調性によって喜怒哀楽を表現するものとは、訳が違います。

音のイメージのスケッチ(スケッチは、「安心」のもの)


その際、
ある意味では、現代音楽の打楽器ソロ作品のように聞こえ、
ある意味では、イメージ音楽と聞こえ、
そして、ある意味では、マルチレコーディングの打楽器アンサンブル、と感じられる音を考えておりました。
そんな面からのアプローチから打楽器の出来る範囲最大限に魅力のある音を並べていこうと思いました。
ですから、朝から夜までそのホールに入りっぱなし…・
そして、小品、フレーズ、音源と、マテリアルを録音。4日間の日程を終了して録音は終わりました。

音楽の進行スケッチ(スケッチは、「安心」(右)「悲嘆」(左)のもの)


そして、次の段階は、スタジオでのそれらの音をマルチトラックでの編集作業。
メインは、学生達のアイディアでの編集、再構成。各自がそれぞれの音を引用したり、繰り返し編集したりして原曲の完成。
なおも、最終立ち会いにおいてのやはり、「あたかも、マルチトラックが“編集の力”というイメージでなく、あたかもアンサンブルをしているような、複数の打楽器奏者が演奏しているかのような感じで・・。」と言う最後のディスカッションを経て8〜13分の作品ができあがりました。

東芝EMIさんのバックアップによるミックスダウンが終了し全てを編集してこの作品集CDが完成いたしました。

その後、学生さん達はジャケットやブックレットの制作に入り、何回ものミーティングを経て、この5月20日に『recordor(レコルドール)』と、言うタイトルのCDが完成致しました。


なお、このCDは、大学カリキュラムの上での制作と言う事により、残念ながら現在は廃盤です。
ご了承くださいませ。


『recordor(レコルドール)』

制作:国立音楽大学
音楽デザイン学科1997年CD制作クラス
(安藤良子・大西千鶴・後藤夕花・橋田光代
毛利千明)

伊勢友一(打楽器)

監修:佐藤浩士(企画・録音)池田 彰(録音・編集)
西野 洋(デザイン)庄野 進(アドバイス)
莱 孝之(制作)

協力:国立音楽大学器楽学科打楽器専攻

写真:岡田邦明

制作:SonicCultureDesin
(国立音楽大学音楽デザイン学科)

製造元:東芝EMI株式会社

この企画に、私が参加できましたことを心より御礼と感謝を申し上げます。

ご指導、ご協力、ご考慮していただきました全ての方々に、この場を借りて御礼を申し上げます。


《ご注意》このページに関しましては、私個人の演奏記録データとして、それをコラムに致しました。
したがって国立音楽大学機関、そして掲示させて頂きました関係者個人の方への直接のお問い合わせは固く禁じます。


discography

Exit