海洋調査船等の母船に搭載され、無索(無線通信を使用)もしくは有索(有線通信を使用)で遠隔操作され、海洋探査に使用されるロボットを海洋探査ロボットと称することとします。
今、日本には「ハイパードルフィン」という3000m級(3,000mまで潜航可能)の無人探査機、「かいこう7000U」という7000m級(7,000mまで潜航可能)の無人探査機があります*43。そして、ロボットはこれらが自律的に動くように発展したもので、日本には「うらしま」があります。コンピュータに予め設定されたシナリオに従って、自分の位置を計算しながら航走する自律型の無人探査機で、2005年には世界記録となる連続航走距離317kmを達成しました*45。
ロボットを移動するには、例えば、ロボットに3次元方向(上下前後左右)に推進できるプロペラを備え、モータで駆動して行ないます。モータの駆動は、母船から光ファイバケーブルを通して信号を送り、遠隔操作します。海中ではGPS(全地球測位システム)を使用できないので、ロボットの位置は、ロボットから超音波を発信し、海上の母船や超音波探知機に到達するまでの時間や角度から求めます。
障害物にぶつからないように周囲にソナーを発しながら動き廻ります。
深海は暗いので、照明で周囲を照射してカメラで画像を撮影し、母船上の操縦者がモニタ画面で撮影画像を観察しながらロボットの動きを操作します。将来はロボットの知能がさらに発展して、自分でいろんなことを判断しながら動くようになるでしょう。
ステレオカメラ(左カメラと右カメラが一定の長さに保たれて設けられている)を使用すれば、撮影した物の3次元座標を求めることができます。2つのカメラと被写点を結ぶ三角形を用い、2つの撮影画像(左画像と右画像)の被写位置の差から3次元座標を求められます(三角法という)。デジタルステレオカメラで高解像度3次元画像を得ます。色については基準色を配したシールを撮影して補正します。
水中の音速は、空中の4.5倍なので、人の耳では音がどちらからきたのかよく解りません*46。ロボットでは2つのマイクの時間的分解能を上げて、方向を測定します。
海水の温度・水圧と、水流の方向・速度を測定し、海水をサンプリングして成分を調査します。塩分濃度の他、マグネシウム等の金属成分を測定します。海水には貴金属やレアメタルも微量含まれます*47。これらの成分測定は母船又は陸上の分析機関に持ち帰って行ないます。
海水や海底の微生物・鉱物もサンプリングして調査します。
マニピュレータでは、物をつかんで運ぶ他、はさむ道具や、スコップ・ドリル等の道具を操作することもできます。これらの道具はさびないように、プラスチック、ステンレス、チタン等を用いて作成されます。マニピュレータの操作は、母船から画像を見ながら光ファイバで信号をロボットに送って遠隔操作します。
このように、海洋探査ロボットに関する技術は多岐にわたるので、海洋探査ロボットを創作することにより、広い分野の科学・技術の発展を期待できます。将来は人間とロボットが話す等、さらなる発展がいろいろありそうです。皆さんも想像してみて下さい。
科学・技術の発展は第6の宝です。
参考資料
*45 「深海巡航探査機「うらしま」」、JAMSTEC(独立行政法人海洋研究開発機構)ウェブページ、[2012年1月26日検索]、
URL:http://www.jamstec.go.jp/j/about/equipment/ships/urashima.html
(Top Page)http://www.jamstec.go.jp/
*46 「水中聴覚」、ライアル・ワトソン著書リミックスウェブページ、[2011年12月8日検索]、
URL:http://kamakura.ryoma.co.jp/~aoki/vital/Heraring.htm
*47 岸本文男、「鉱物資源としての海水」、地質ニュース、(産業技術総合研究所地質調査総合センター地質ニュース編集委員会編集)、第255号,p50-54,1975年、産総研承認番号(第60635500-A-20120110-001号)
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