日本にも海洋牧場の構想があります。社団法人マリノフォーラム21のウェブページによれば、魚群を音響で誘導し、餌付けする音響馴致、海底での流速を早める構造物、葉上生物や動物プランクトンを増殖させる藻場等の構造物、回遊性魚類を集める浮魚礁等が海に設置・検討されてきました*18。
また、突堤、消波提等で潮流を制御し、汚れのない湾・砂浜を作ること、藻場や漁礁ブロックを作り、魚の産卵や稚魚が育ち易い環境を作ること、ブイロボット、海洋調査船、人工衛星を使用して漁船に気象情報・魚群情報を提供することも挙げられます。
ブイロボットとは、海洋気象観測用のブイで、海面を漂流しながら(漂流型(気象庁より*20))、又は海底に係留されて(係留型)自動的に気象(水温、波の高さ、塩分濃度、海流の流向・流速を含む)観測を行うものです*19。
このように、海洋牧場は、海の生物(動植物)を管理・育成し、豊かな漁場とするものです。
ところで、大魚は小魚を、小魚は動物プランクトンを、動物プランクトンは植物プランクトンを餌とします*6,7,21。したがって、食物連鎖の始めは植物プランクトンであり、植物プランクトンを適度に増殖させることが、魚類を繁殖させるための基礎であることが解ります。
植物プランクトンの養殖は未だ成功例を聞いていませんが、プランクトンが増殖する場所は、太陽光があり、かつ栄養塩(窒素、リン、珪素、その他のミネラルを含む)を含んだ場所であることから*21,22、栄養分の高いスポットを作ることがキーポイントと思われます。栄養塩類は、森の栄養分が雨で川に流されて海に流れ込むことにより*7、又は深層水に含まれて海面に上昇することにより供給されます*22。
ヘドロや瓦礫のようなものは、除去する又は海底に埋め立て、汚物を撒き散らさないようにします。津波で被災した東北沿岸も、除去する又は海底に埋め立てることが肝要と思われます。
埋め立てた上に藻場や漁礁をもうけ、魚貝類、甲冑類、珊瑚など海の生物が産卵・繁殖し易い環境を整えるのです。そして、栄養分の高いスポットを築いていくのです。
このようにして築かれた海洋牧場では養殖も行ないます。海中の3次元空間を網などで区分けし、海の生物を種類に応じてそれぞれの区域に配置します。カメラ、モニタ、コンピュータを用いて遠隔操作で観察し、餌を与えます。また、必要に応じて光、電気を用い、水温、水流をコントロールします。さらにデータを収集し、生育に良い条件を求めていきます。
海洋牧場で計画的に養殖できるようになったら海産物市場や加工産業と連携し、計画的に生産・出荷を行なうようにします。
養殖技術が発展すれば、深海での牧場も可能になるかもしれません。海洋牧場は大いなる夢を育んでくれます。
漁場、特に東北沿岸の再生は第3の宝です。
参考資料
*18 「研究会・委員会等開発種目一覧」、一般社団法人マリノフォーラム21ウェブページ、[2012年1月7日検索]、
URL:http://www.mf21.or.jp/jigyoujisseki_1986_1999.shtml
*19 「海洋気象ブイ」、「フリー百科事典 ウィキペディア(Wikipedia)日本語版」ウェブページ、[2011年2月26日(土)07:32更新]、
URL:http://ja.wikipedia.org/
*20 「漂流型海洋気象ブイロボット」、気象庁
*21 菊池有美(企画開発室)、「海の健康診断」、愛媛県庁ウェブページ、[2011年8月検索]、
URL :http://www.pref.ehime.jp/060nourinsuisan/210cyuyo-suisi/00007513051226/tayori/V08/08umi.pdf
(Top Page)http://www.pref.ehime.jp/
*22 坂本和佳、「植物プランクトンが欲しがる微量なモノ」、株式会社エコニクスウェブページ、Econews/エコニュース Vol.182、[2008年8月1日号]、[2011年8月10日検索]、
URL:http://www.econixe.co.jp/?p=77
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