4.海底資源

 日本では海洋基本開発計画に基づいて、海洋エネルギー・鉱物資源開発計画が策定され、2009年度から10年間、国が資源量調査、関連技術調査、環境影響調査、法整備などを行っています*23
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日本の領海と排他的経済水域(EEZ)に存在する海底資源の賦存量は、日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)によれば、次にように推定されています。*23
 (a) 海底熱水鉱床:賦存量7.5億トン(回収想定量4.5億トン、地金価値80兆円相当)、銅、亜鉛、鉛、金、銀他
 (b) コバルト・リッチ・クラスト:賦存量24億トン(回収想定量11億トン、地金価値100兆円相当)、マンガン、ニッケル、チタン、コバルト他
 (c) メタンハイドレート:賦存量12.6兆m3(回収想定量4.1兆m3、メタンガス120兆円相当)、メタンガス 
JOGMEC(2007)による日本近海の海底鉱物資源賦存状況調査(配布用)から海底の3大鉱物資源[マンガン団塊(ノジュール)・マンガン・クラスト(およそコバルトを0.5%以上含めばコバルトリッチ・クラストと呼ばれる)・海底熱水鉱床]
図6 「深海底鉱物資源の分布」
出典:「日本近海の海底鉱物資源賦存状況調査(配布用)」、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)より*28


 海底資源量は、ボーリングなどにより3次元地質探査を行なって調査します。
 そして、日本が世界に先駆けて海底資源開発を成功させ、採掘技術を確立すれば、世界をリードする可能性が高いと進言されています*23
 上記推定値は、2007年に推定された資源の賦存量であり、探査の領域、水深、海底からの掘削深さ等を拡張することで、さらなる発見に繋がるのではないかと思われます。例えば、沖縄トラフ(海溝は深さ6,000m以上、トラフはそれより浅いもの*24)の熱水鉱床は海洋研究開発機構により2010年に*25、太平洋の中央部及び南東部でのレアメタルは東京大学の加藤泰浩准教授(現教授)らにより2011年に*26発見されたばかりです。
 海底熱水鉱床では、銅・鉛など複数の金属を含む黒い鉱石(黒鉱)が生成されます*25。海底から噴出する高温の熱水から金属成分が沈殿したもので*23、マグマから供給された成分が主体になっています*27。海底鉱物資源の分布(図6:出典「日本近海の海底鉱物資源賦存状況調査(配布用)」*29、JOGMEC 参照)*28及び海嶺又は海溝の分布(図7参照*30によれば、海底熱水鉱床は海嶺又は海溝に沿って存在しています。

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 海底ではリソスフェア(地殻+上部マントル)の下にアセノスフェア(高温溶融層)があり、アセノスフェアから上昇してくる高温溶融物質によりリソスフェアが押し上げられた所に海嶺が形成されます。高温溶融物質は固化してプレートとなり、海嶺の両側にゆっくり移動し、やがて、リソスフェアの下、高温部分まで沈み込み、沈み込んだ所に海溝が形成されます*30。そして、海嶺と海溝に沿って火山が形成され*24,30、熱水活動を生じさせるのです。
プレート、海嶺、海溝、沈み込み帯、および地熱地域の地球上の分布。矢印は沈み込み帯へ向かうプレートの移動方向を示す。(1)地熱発電を行っている地熱地域:(2)トランスフォーム断層によって区切られた中央海嶺(長い横ずれ断層):(3)沈み込み帯。そこでは沈み込むプレートは下方に湾曲し、アセノスフェアで溶融している。
図7 「プレート、海嶺、海溝、沈み込み帯、および地熱地域の地球上の分布」
出典:地熱エネルギー入門より*30


 ところで、上述の海底資源は約300兆円です。日本では国の主体・主導で調査・開発していますので、国の財産になるように思われます。私は、この天の恵みを国の借金返済にあててもらいたいと思います。探査によりどこまで資源を発見できるか解りませんが、前向きの結果が期待されます。もし1,000兆円に達すれば、全借金を返済できます。そうすれば、歴代政府が蓄積してきた不合理な借金の返済を国民や未来の子供達に押し付けなくてすみます。
 海底資源の調査・開発は日本の可能性を大きく広げてくれます。少しでも多く発見が進むように、国には海底資源の調査・開発にもっと力を入れてほしいものです。また、海底資源の調査・開発で世界をリードすると、新たな産業を次々に生み出すことができ、雇用も創生されます。
 海底資源の恵みが第4の宝、国の借金返済可能性が第5の宝です。

 参考資料
*23 織田洋一、「注目される日本の海底資源」、株式会社三井物産戦略研究所ウェブページ、(Mar.2010)、[2011年8月検索]、
URL:http://mitsui.mgssi.com/issues/report/r1003j_oda.pdf
*24 「海溝」、「フリー百科事典 ウィキペディア(Wikipedia)日本語版」ウェブページ、[2011年7月8日(金)17:35更新]、
URL:http://ja.wikipedia.org/
*25 「沖縄近海に「熱水湖」 鉱物資源に期待」、琉球新報社提供琉球新報ウェブページ、[2010年10月6日配信]、[2011年8月3日検索]、
URL:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-168454-storytopic-1.html
*26 「太平洋にレアアース巨大鉱床 東大など発見、陸の1000倍」、日本経済新聞 Web刊ウェブページ、[2011年7月4日2:02配信]、[2011年11月15日検索]、
URL:http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819595E2E3E2E38B8D...
(Top Page)http://www.nikkei.com/
*27 浦辺徹郎、「海底熱水鉱床の特徴とその開発」、東京大学海洋アライアンス「知の羅針盤」ウェブページ、[2011年11月20日検索]、 URL:http://www.oa.u-tokyo.ac.jp/rashimban/nessui/001/post-1.php
(Top Page)http://www.oa.u-tokyo.ac.jp/rashimban/
*28 福岡正人、「海底資源について(Submarine Resources)」、広島大学地球資源論研究室ウェブページ、[2011年8月14日検索]、
  URL:http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Rmin_K.html
*29 「日本近海の海底鉱物資源賦存状況調査(配布用)」、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、2007年
*30 「地熱資源の性質 熱機関としての地球」(「地熱エネルギー入門」 Mary H.Dickson, Mario Fanelli著 日本地熱学会訳 より)、日本地熱学会ウェブページ、地熱エネルギー入門、[2011年11月18日検索]、
URL:http://grsj.gr.jp/whatbook/chapter2.html

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