●あらすじ 日本海ぞいの小さな町にある古風な洋服注文店…… この店の主人は四十半ばの男で、ずっと独身を通してきました。職人気質でいささか偏届そうなこの男の血縁といえば、時々食事などつくりに通ってくるいとこのナナ子ぐらい、この彼女も三十すぎのオールドミス…… さてある冬の夕方、この男の店へ一人の青年が訪れます。 どうも洋服の注文じゃないらしいんですが、店の主人のペースにはまって採寸される始末……しかし青年にはなにか〈たくらみ〉がある様子です。 そこへまた一人の都合風の若い女性が現われ、裏どなりの家に住む妹娘だと名乗り、実は先の青年を、東京で結婚した夫だと説明します。 「いったい何の用があって、この店へ?」当然のことながら洋服店の男は疑問に思います。すると、裏どなりの二人は次のようにいいます。 「実は公民館に通っている独身の姉がこのところ悪質な痴漢に悩まされている、その痴漢は最初はのぞくだけだったが近頃では姉の部屋へ侵入してくるらしい。」 しかもこともあろうに、その痴漢の人物とは、あなたである確信をもっているといい切ります。 洋服店の男は、仰天しいいがかりだと弁解します。と、その時、裏どなりから女の悲鳴がきこえてきます。姉を心配して妹夫婦が去ると、入れかわるように話題の主、姉が登場します。 となり同志で住みながら四十数年間で三回しかことばを交したことのない洋服店の男と裏どなりの家の姉娘…… 「あなたなぜ毎晩あたしを苦しめるんですか」 「わたしがあなたを苦しめる?どうして?」 二人は、まるぞ少年少女のように息をはずませていい争います。その姿はまるぞ初恋同志が再会したような趣きさえある…… こうして隣人同志のふしぎな争いと奇妙な愛と黒ずんだ嫉妬があやなし、ドラマは意外な方向へとすすんでいきます…… |
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▲一九八二 嫉妬 1982年12月18日〜27日 新宿・紀伊国屋ホール (C)木冬社 |
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