どれが自分のものか解からなくなるのなら。
名前を書いておきましょう。
Name
「はーい皆さん、ドリンクですよー」
立海大附属中テニス部のマネージャー、。
今日も元気にお仕事中(若干やる気なし)
粉末ドリンクを水で溶かしたものを部員人数分のボトルに入れ、ワゴンに乗せて配り歩く。
「はい柳君」
「ああ、ありがとう」
「はい桑原君」
「お、サンキュー」
『柳』『ジャッカル』と書かれたボトルをそれぞれ手渡す。
は彼氏である丸井ブン太に強引にマネージャーに勧誘され、それこそ最初は乗り気ではなかったのだが、こうやって感謝され、誰かの役に立っていると感じられるこの仕事に今では満足していた。
「ー! 俺のはっ?」
練習で汗だくのブン太がに駆け寄り、ワゴンを覗いてくる。
「…アンタの名前が書いてあるの、なかったけど?」
ワゴンの中には自分で用意して名前が書かれているボトルと、そうでないものがある。
がドリンクを作っている時点で、ブン太の字を見かける事はなかった。
「えー? 俺のがこん中にあるはずなんだよ!」
「名前書いてなかったって」
「めんどくせーし自分で見りゃわかるだろうと思ってたんだけどさー…何かどれも似てんなー…」
「……」
呑気にガム風船を膨らますブン太。
はふぅ…と溜め息をつく。
「今まで私が、「名前書いといて」って何回言ったと思うの?」
「う…」
「解かんなくなるくらいなら、下手でもいいから解かるように名前書いといてよ」
「ヘタ、って…お前なぁ…」
ブン太ちょっぴりショック。
ブン太はのこういうストレートなところは嫌いではない(むしろそこが好きな)のだが、こうズバズバ言われるとさすがにヘコむ。
「先輩、俺のはどれっスか?」
そこへ切原が横からに話しかけてきた。
はすぐさま切原のボトルを選び、小さく微笑んで手渡す。
「はいどーぞ」
「どうもっス!」
満面の笑みを見せる切原。
その表情の内にある感情を、ブン太は見逃さなかった。
(こいつ…も)
――狙ってやがるな…?
は部員達から密かに人気がある。
その淡白な性格と、それなりに整った容姿が良いのだろう。
クールビューティーといったやつだ。
ブン太はジトッと切原を睨みつける。
それに気づいた切原は、一瞬だけ「フッ」と不敵に笑った。
(かぁ〜クソ生意気っ!)
苛立ちMAX。
ブン太は俯き、の肩にポン、と手を置いた。
「何?」
はきょとんとブン太を見遣る。
ブン太はまだ顔を伏せたままだ。
「…お前、自分のものには名前書いとけっつったよな?」
「言ったよ。だから早く自分のボトル探して名前書いてってば」
その言葉を聴くや否や。
ブン太は顔を上げてニヤリと笑うと、突然。
吸血鬼の如くの首筋に顔を埋めてきた。
はギョッとする。
周りにいた部員達も目を見張る。
「はっ!? 何っ、何なのブン太!?」
が混乱していると、首の辺りに一瞬ちくりとした痛みが走った。
ビクッと身を竦ませる。
「っ…!」
それからすぐに顔を離したブン太は、悪戯っぽく舌を出して笑っていた。
「何すんのっ!?」
「キスマークつけた」
「は!?」
は真っ赤になり、バッと首に手を遣る。
本人には見えないが、周りからはっきりと見える位置に、確かに鬱血の痕があった。
「…俺のモン、だろ?」
刻ませてもらいました。
と、ガム風船を膨らましながら悪びれもせず言うブン太を、は。
…睨みつけていた。
「…死ね!」
バッチーン!というやけに派手な音が、立海テニスコートに響く。
次の瞬間、ブン太の口に入っていたグリーンアップル味のガムが、綺麗な弧を描き宙を舞っていた。
その日から。
ブン太の頬には大きな湿布が、の首には絆創膏が貼られ、しばらく剥がされる事はなかったとか。
END
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あとがき
あのホントすいません…どこから謝っていいのやら…
とりあえずオチ弱いっスね。
話にオチつけんの苦手なんです…(致命傷)
そんなら書くのやめちまえと言いたくなりますよね、本当にすいませんです…!
私も時々思うんですけど(オイ)、書くのはやめられないのです…
これはかなり突発モノです。
アイディアの神様が降りてきたのです(またか)
話のテーマ『自分のものに名前を書く→キスマーク』ってのは前々から考えてたんですけど、本当は相手がジローでもっと甘くなるはずでした。
でもちょっとヒネってブンちゃんにしてみたら、話が進む進む。
だけどギャグになっちまった…おかしいな…(お前の頭がな)
最後にブン太が湿布をつけている、というのは一応、原作(真田にぶたれた赤也が三日経っても湿布貼ってるってやつ)のパロディっぽくした名残です。
あとブンちゃんは字が下手だと思う…や、中学生男子で字の上手い人ってあんまいないと思うよ?
ていうか、何でこの二人付き合ってんでしょうね?(あ痛)
ああ長ェなあとがき!
これただの蛇足だな!
2004年1月6日
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