貴方の誕生日。
貴方が欲しいものは一体何――?
Present・Kiss
「…、、おい!」
「ぅん―…。あ〜雅治…」
部活が終わった後、部室で待ち人の仁王雅治を待っていた私は、いつの間にか眠っていたらしい。
今し方、雅治の手により覚醒した。
「すまん、待たせた」
「いーえ、別に…」
ちら、と横目で袋に入った大量のプレゼントを見た。
まぁ、毎年の事だけど今年も大量だこと。
「毎年凄い数。モテる人は違うねぇ」
12月4日は雅治の誕生日。
性格によらずモテる雅治は、誕生日には毎年、女子から貰うプレゼント量がハンパじゃない。
まぁ、そりゃ顔は綺麗だと思うけどさ。
何となくジッと雅治を見つめてみたり。
「…何だ?」
「人は見掛けによらないって言うのになぁ」
「はぁ?」
「何でもない」
独り言に近かった私のそれは、雅治にはよく聞き取れなかったらしい。
まぁ、黙々と帰る支度を始めているところ、さして気にはしていないんだろうけど。
「…で?お前からはないんか?」
「何が?」
いつものふくみ笑いをしてる雅治に、きょとんとしながらそう聞き返すと、「プレゼント」と催促の言葉が返ってきた。
「だって雅治、いらないって前言ったじゃない。だから用意なんてしてないよ。大体それだけ貰えば充分なんじゃない?」
そうなんだ。
「誕生日プレゼント何がいい?」って聞いたら、「そんなもんいらん」なんて言うんだもん。
そりゃ、プレゼント渡すだけが誕生日の全てじゃないけどさ…。それでも、プレゼント渡すっていう形でも雅治を祝いたいって思ってたのにさ…。
「俺な、本当にプレゼントなんかいらんかった。お前と誕生日一緒に過ごせるならってな。…でも欲しくなったんじゃ」
雅治は珍しくにっこりと笑って、私に「来い来い」と手招きをした。
私は呼ばれるままに雅治に近づいた。
いきなり腕を掴まれたと思ったら、そのまま引き寄せられて素早くキスをされた。
いつもとは違う、深く甘いキス。
部室でこんなキスをするのは初めてだ。
角度を変えて、何度も口付け合う。
「…んん…」
自然と甘い声が漏れて、雅治の首にするっと手を回す。
部室はけして暖かい場所ではないのに。
ああ、だけど、身体はすごく熱い…。
「はぁ、ふぁっ…、んんっ…」
舌を入れられた時には、甘い吐息が漏れ、さらにキスが深くなり、舌を絡める。
静かな部室に舌の絡み合う、くちゅ、という音が響く。
でも、そんな事なんて気にならない。
まるで聴覚どころか、身体全てが麻痺してるみたいに、すごく気持ちがいい。
唾液を流し込まれて、こくりと音をならしてそれを飲み込む。
「…ふ、はぁっ、は…」
唇を離して、飲みきれなかったそれを雅治が舐め取る。
最後に、ちゅっと軽くキスをして。
雅治にぐったりとした身体を預けて、はぁはぁと息を整える。
「部室でこんな事して…誰かきたら何て言い訳するつもり?」
「鍵は掛けとる。別に言い訳する必要もないだろ?だってよ…」
「だって?」
「プレゼント貰っとっただけやしな」
…プレゼント?
プレゼントって…何が?一体何が!?
雅治はにやにやと楽しそうに私を見てる。
……ハッ!
えぇ?ま、まさか…もしかしなくても今のキスが!?
しかも、鍵は掛けてるって…まさか始めからこうするつもりだった…?
「ま、雅治〜!?」
「ごちそーさん」
くっ…!
こいつは反省っていう言葉を知らんのかっ!そりゃあ付き合ってるんだし、悪い事されたわけじゃないんだけどさぁ…。
でも、ハメられたようで、何もかも雅治の思い通りみたいな感じで何だか悔しい!!
キッ、と雅治を睨んで、私なりの抵抗。
そんな私の抵抗にも動じない。
「そんな潤んだ目で睨んでも、誘っとるようにしか見えんぞ」
「うぅ〜…」
悔しがってる私を見て、雅治はクックッと可笑しそうに笑ってる。
「そろそろ帰っか。ああ、そうだ、」
「何よぅ…」
まだムクれてる私を見て、さらっと言った。
「今日は俺ん家に来るじゃろ?」
「は?何でよ!?」
「プレゼントはお持ち帰りが常識だからな。それに、据え膳は何とかってな」
は、恥ずかし気もなくそんな事言うなー!!
「ああ、安心しろ。家族はいない」
「そんな事誰も聞いてないよ」
「でも…来るだろう?」
「……」
最後にそんなに優しく言われたら、私は素直に頷くしかなかった。でもその笑顔は私だけに見せる顔。
あ〜あ、結局今日も雅治の一人勝ちかな。
まだちょっとだけ悔しい気もするけど。
でも今日くらいは。
誕生日くらいは素直に騙されてあげるわ。
ねぇ、雅治?
最高のプレゼントでしょう――?
END
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