胸が痛む。
心が安らぐと同時に、胸が痛むんだ。
―君の、笑顔を見ると。
とてもまぶしくて、君を包む輝きが明るくて…。
俺は、君の傍にいる資格があるのだろうか…。





  君の輝き、僕の輝き





君に初めて逢った時、君の輝きに目を細めながら君の可愛さに見とれたのを、よく覚えているよ。
そして逢った瞬間に思ったんだ。
君は俺とは世界が違うんだと。

決して手が届く事のない、君のすべて。

そんな風に思っていたが、君は俺を好きなんだと言ってくれた。
笑って、俺が好きなんだと。

なんて事はない。
君はいつも、手を伸ばせば届く距離に居たんだ。
俺がいる、同じ空の下に君は居たんだ。

けれど、解からない。
君みたいな人が、一体俺なんかのどこを好きになったのだろうか?
平凡で普通で特別何の取り柄もない。
ただ少しテニスが出来るだけで。

君はいつも笑って傍にいてくれる。

けれど君はきっと知らない。

俺が、君に対してコンプレックスを持っていることを。


千石が俺たちダブルスに付けたアダ名は『地味’S』。
その呼び名に多少不満はあったものの、俺は別に気にはしていなかった。
本当の事だと思ったし、地味だろうが何だろうが俺が俺でありさえすればそれで良いのだと思ったからだ。

けれど今はその呼び名が胸に重く圧し掛かる。
思い知らされるような気がするんだ。
こんな俺は君にとってふさわしくないのではないかと。
君の傍にいるのは本当に俺でいいのか…?
俺は君のように輝いてはいないだろうから。

「…輝いて、まぶしいお前が羨ましいよ。
お前の横に立つのに恥ずかしくない輝きが俺にもあったならよかったのにな。
ふさわしいかどうか…不安になる」

そんなことを君に言ったら君は静かに、こう言ったんだ。

「私にとって誰が私にふさわしいかは、私が決めることだよ。
…私が南君を選んだの。私は南君がいいの。南君じゃなきゃ嫌なの」

そして笑って君は言った。

「私には見えるよ。南君の輝き。ちゃんと見えてるんだよ」

そう言ってくれた。
俺自身も気がついていなかった「輝き」を君が見つけてくれたんだ。

「人にはそれぞれ違う輝きがあるんだよ。
南君はね、誰にでも優しくて、真面目で、純粋で…。そんなところすごく輝いて見える。
南君らしいところ…たまらなく好きよ」

…その言葉を聴いた時、不覚にも泣きそうになってしまった。
と、同時に顔が赤くなるのを感じた。
面と向かってそんな事を言われたのは、初めてだったから。

…そうか、何だ俺にもあったんだ。
そんな「輝き」が俺に中にもあったんだ。
そして、それを君が見つけて教えてくれたんだ。

それからその君の言葉が、俺の支え。


君が俺を選んでくれたことに、どれだけ感謝をすればいいんだろう。
「俺が俺らしくいることが大事だ」と「それが俺の輝きだ」と君は教えてくれた。

正直、まだ不安になることはたまにある。
だけど、君が選んだのは俺なんだといつかは自信を持ちたいと思う。
…ふさわしくないと思っても、無理して自分を変えようとするのはやめようと思うようになった。…そんな必要もないんだ。

君が、今までの俺を見て好きだと言ってくれたから。
君が…俺を認めてくれたから。
好きな人に、自分の存在を認めてもらうのはこんなにも嬉しいことなんだ。

君がここにいる事実を、いるかも解からない神に礼を言いたいと思う。

今は君が好きだと言ってくれた「俺らしさ」を、君が見つけてくれた「輝き」を…大事に、そして誇りにしていけたなら…。





END 04.6.2





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