案の定、はとても驚いて、それから俺に散々文句を言った。










     Happy Birthday U  ☆・。゜・










〜、まだぁ?ねぇ何してんの?」

ソファでクッションを抱えて寝転がったまま、
俺は顔だけちょっと台所に向けて少し大きな声でそう言った。

「ケーキ!ケーキ作ってるの!!」

がっしゃがっしゃという音と力の入った声が返ってくる。
俺は、はぁー、とため息をついて、またクッションに顔を突っ伏した。





『ええ〜!何で教えてくれなかったの〜!?』

の疑問を肯定すると、すぐにそんな声がとんできては俺に掴みかかった。


そう、それは去年のことだけど、は俺の誕生日を知らなかったのだ。


休み明け、向日が『おい、昨日はどうだったんだよ?』
とかにやにやしながら聞いてきたから、俺は

『んー?一緒に公園で日向ぼっこして寝た。』

と言ったら、『ええ!?それだけかよ!?』という反応が返って来た。
は不思議そうな顔で『え?昨日?何かあったっけ?』 ときょとんとしている。
のその言葉に向日は更に驚いた。

『お前、言ってなかったのかよ!?』
『うん、だって自分から言うもんでもないなーと思って。』

その俺達の会話には混乱しているようだった。
『ええ、何よ、教えてよ!昨日は何の日だったの!』

『本当に知らなかったのかよ?昨日ジローの誕生日だったじゃねぇか!』


『えええ!!』

教室中に響き渡る声で、はひっくり返りそうなくらい驚いてた。





というわけで、は去年俺の誕生日を祝わなかったのだ。
いや、べつに祝ってほしかったわけじゃない。
そんな押し付けがましいこと、俺しないよ。
俺はと一緒にいれたからそれで全然大満足だったんだけど、
はそうじゃなかったらしい。

『今年は去年のぶんまで盛大にお祝いするからね!!』

もう一ヶ月も前から張り切っていて、どこに行きたいーだの
何食べたいのーだの何が欲しいのだの、そればっかり聞かれた。


しかし、は俺の答えに満足しなかったみたいだ。


『おれ、のうちでごろごろしたい。』






「ねぇー、それいつまでかかんの。」

俺はとうとう待ちきれなくなって、台所までぺたぺたと歩いていく。
「んーまだまだ・・・まだかかるの・・・。」

今度ははなんか粉をはかりで計ってた。
俺のほうは向きもしないで、粉に夢中。



は、どうして教えてくれなかったの、ってすっごく怒って、
だから俺はと一緒にいられたからそれでよかったんだよって、
そう言ったんだけど、そうしたら
『だって私、おめでとうも言わせてもらえなかった。』
と悲しそうな顔をした。



は悲しかったのかなぁ。
だから、今年はこんなに頑張ってるの?
でも、これじゃあ意味ねぇよ。俺のこと、見てよ。



「・・・っあ、ちょっとジロー?」

泡だて器を握り締め、かき混ぜようとした手からそれを
そっと奪い取る。は俺のほうを見た。

。こんなんじゃやだ。」

「え?」

俺はボウルの中に泡だて器をつっこんで、それからぎゅっとを抱きしめた。

「ジロー・・・?ケーキ、できないよ・・・?」

まだそんなこと言ってる。
と思いながら、俺はの肩に顔をうずめて、

「ケーキなんか、いらないよ。」

と言った。

「だって、ケーキ作ってたら俺にかまってくんねーじゃん。
 そんなんなら、俺、ケーキいらない・・・。」


そう言ったらはぎゅっと俺のことを抱き返して、

小さな声で、「ごめんね・・・。」と言った。



「ジローは、私に何してほしい?」



に、してほしいこと?



そんなこと、

俺の名前呼んでくれること

俺に膝枕してくれること

俺の頭なでてくれること

俺に笑いかけてくれること




つまりは。


「・・・にそばにいてほしい。」

「うん、わかった。」


台所の床にふたりで座り込んで、それからずーっと抱き合ってた。
の髪のいい匂い、温かい身体。胸の鼓動。


俺、すげぇしあわせだ。


「ジロー。」

「ん?」

「お誕生日おめでと。」


耳元に聞こえる、甘い声。
嬉しくて、勝手に笑顔になって、たまらなくなって
もっと強い力でを抱きしめた。



「俺、今年はもう何もいらねーや。」

「何も?って?」

「おめでとって言ってもらえた。」

「それだけ・・・?」


それだけ、じゃないよ。
そんなに、だよ。




「これからもさ、ずーっと毎年さ、誕生日くるじゃん。

 いっぺんにたくさんもらったら、あとで何あげたらいいかわかんなくて

 、困っちゃうだろ。」





顔を見合わせて笑った。


「そだね。」

「そうでしょ。」



それは、これから先もずーっと一緒にいてくれるっていう約束。

、ありがとう。










2005.5.5









微妙に去年と続いてる!
ジロ誕生日当日にアップできて良かった!
タイトルはもう分かりやすく単純にUで(笑
未来予想図Uみたいなイメージですよ!
来年はこの続きアップしたいな!!
ジロお誕生日おめでとうvv


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管理人感想

 去年のと続いてるので、ぜひ前作と併せてお読み頂くとよろしいかと思います!
 来年のが今から楽しみだったり…vv

 璃桜様のサイト『* accarezzando *』へ


 2005年5月20日


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