「ジローおめでとー!!ほらほら、開けてみそー!!」
  
  朝、重たい瞼で部室のドアを開くと、岳人が飛びついてきた。
  「うおっ!?な、何々!?」
  「何々!?じゃねーよ!今日お前の誕生日じゃんかよ!」
  あ、・・・そうだった。すっかり忘れてた。
  「ゴールデンウィークの最終日なんだから、監督も部活休みに
   してくれりゃいいのにな。そしたら朝から騒げたのに。丸一日部活なんてありえねぇ・・・。」
  宍戸も向こうのほうで着替えながらぶつぶつ言っている。
  「いいじゃないですか、夕飯は食べにいくんでしょ?
   ってか向日先輩だめじゃないですか!夜みんなでまとめて渡そうって言ってたのに!」
  「あっ!やっべ忘れてた!・・まぁいいや!ほらジローはやく開けてみろよ!」
  ぴょんぴょん跳ねて急かす岳人を見てたら、なんだかすっげーわくわくしてきた!
  「おう!岳人サンキュー!」
  がさがさ開けてると、中からはムースポッキーとかクッキーとか、
  お菓子がほんとびっくりするほどたくさん出てきた。
  「うわぁすっげぇ!何コレ全部食っていーの!?」
  「ったりめーだろ!大事に食えよ!」
  「お前、誕生日プレゼントに菓子かよ・・・。もっとこう、
   形に残るもんとかにしろよな。」
  宍戸がはぁとため息をついた。
  「何ー!?いーじゃねぇかよ!ジローも喜んでるし!」
  「ジロー、俺のプレゼントは期待していいぜ。楽しみにしてろよ。」
  岳人のことばも無視して、宍戸は得意そうに笑った。
  「先輩、俺のもすごいですよ!絶対先輩喜んでくれると思います!」
  長太郎も、ロッカーの影から顔をひょこっと出して言った。
  「まじで!?うんっ超楽しみにしてるな!」
  
  誕生日って、すぐ忘れちゃうけど俺はすっげぇすき。
  みんな、すっげぇプレゼントを用意して、おめでとうって言ってくれて。


  でも。一番ほしいものは誰もくれない。

  
  今年、最高のプレゼントを俺はもうもらってしまった。
  もう、俺にはこれ以上のものは望めない。











  「んじゃジロー、早く着替えてこいよ!」
  「あーわかったぁ、すぐ行くー。」
  部活が終わったのは、もう5時を回った頃だった。
  今からみんなで俺の誕生日パーティを開いてくれるんだって!
  俺は主役だから、ちょっと遅れて行かなきゃいけないそうだ。
  跡部とが案内係で、あとのみんなが先に行ってる。
  
  「ジロちゃん、もう行ける?」
  部室の開いたドアから、が顔を出した。
  俺は、もうあとロッカーを少し片付ければ行けるよと言って、
  に部室のソファに座って待っててもらうことにした。
  
  と二人っきりになるのは、やっぱり緊張する。
  俺は、と少しでも二人でいたくて、片付けの手が少し遅くなる。

  「ねぇジロちゃん、みんなすっごいプレゼント用意してるみたいよ!」
  俺の後ろでが言った。俺は振り返らずに答えた。
  「うんうん言ってた!すっげぇ楽しみ!みんな何もってきてくれたんだろー!」
  プレゼント。贈り物。
  みんな、俺が欲しがるようなものを、選んでくれたんだろうなぁ。
  「ジロちゃんさ、膝枕でいいよって言ったけど、
   ・・・でもやっぱりそれだけじゃ寂しいから、私もちょっと用意してきたんだよね。」
  
  ・・・が?
  「も、俺になんかくれるの?」
  手を止めて、振り返った。
  は俺と一瞬目が合うと、少しはにかんだ顔で下を向いて言った。
  「うん、・・・えっと、あんまりいいものじゃないんだけど・・・。」
  



  
  俺は、何もいらないよ。

  俺が欲しいのは




  「っきゃあ、ジロちゃん!?」
  
  身体が勝手に動いた。
  うつむいて恥ずかしそうに笑うを見たら、もうどうしようもなくなって、
  気がついたらを押し倒していた。


  「、・・・俺は、何もいらないの。」

  「・・・ジロちゃん・・・?」



  みんな、『何が一番欲しい?』って聞く。
  誕生日は、欲しいものをもらえる日なんでしょ?
  だったら神様、お願い。
  俺に、の心をください。

  
  
  「俺は、がほしいの。しかいらないの。
   ・・・誕生日プレゼントなんか、いらないから。

   お願い。をちょうだい・・・?」


  
  どうしようもなくて涙が出た。

  こんなに、こんなに欲しくて仕方のない人が、すぐ目の前にいるのに。
  精一杯の俺のお願いも、単なるワガママだ。











  「・・・はい。」

  ・・・・・・?

  「・・・え、、・・・?」
  は、真っ赤な顔して、俺の顔をじっと見ている。
  「え、じゃないでしょ。・・・今、ジロちゃん『をちょうだい』って言ったじゃない。」
  何?それはどういうこと?
  「でも、は跡部の彼女なんじゃないの・・・?」
  そうだよ、は跡部の彼女じゃん。
  ちがうんだよ、が思ってるような意味で言ったんじゃないよ。
  
  「・・・えぇ?何言ってんの?」
  え?
  「てめぇら遅いと思ったら何やってんだ、あーん?」
  「跡部!?」
  急に声がして俺は思わず起き上がった。
  振り向くと跡部がにやにやしてこっちを見ている。
  「ったく、ジローの奴が先に押し倒すとはな。俺はてっきりのほうが
   ジローを押し倒すかと思ってたぜ。」
  「ちょっ!景吾!何言ってんのよ!!」
  え?ちょっと待ってよ。なんで跡部は俺が押し倒してても怒らないの?何?どういうこと?

  「ねぇ、二人は付き合ってるんじゃないの・・・?」

  返ってきた返事は、なんとも以外なものだった。





  「何言ってんだジロー、俺とは従兄妹だぜ?」



  ・・・・・・は?




  「・・・・・・・・・・・・まじでぇ?」
  「え、ジロちゃん知らなかった?」
  俺もあいた口がふさがらないってかんじだったけど、もそんなかんじだった。
  「なんだよ、もしかしてお前、誤解してたのかよ?」
  跡部がくっくっと笑った。
  跡部は立ってて俺とは床に座り込んでるもんだから、
  本当にばかにされてるってかんじだ。

  「はジローのことがすきだったんだぜ?」
  



  うそ!




  「ちょっと景吾!やだもう何であんたが先に言うの〜!」
  「うっせぇ、てめぇら傍から見て明らかにデキてんのにトロいんだよ。」

  
  あぁ、うそ。
  まじで?ほんとに?


  「!ほんとに!?俺のことすきってほんと!?」
  の両肩をぐっと掴んだ。
  は少し驚いた顔をしてから、
  さっきからの真っ赤な顔で
  
  こくりと頷いた。



  




  


  なんだか俺の勘違いのせいだったみたいだけど、
  俺は今年の誕生日、最高のプレゼントを貰った。
  欲しくて欲しくて、仕方のなかったあの人。

  今日からは、俺の彼女になりました。

  神様、どうもありがとう。
  神様からの最高のプレゼント、
  どんなことがあっても、俺は一生手放しません。












  ちなみにからの誕生日プレゼントっていうのは、なんと手作りの大きな丸いケーキだった。
  俺のために一生懸命作ってくれたんだって!
  ・・・俺、しあわせすぎて死ぬかもしれねぇ。







++++++++++++++++++++++++++++++

  ジローおめでとうーvv!
  わぁあなんか最後とかめちゃくちゃやな・・・!ごめんなさい;;
  ってか私はそんなにジローをいじめるのがすきなのか・・・!?
  (泣かせるの好きだよね)
  ヒロイン跡部の従兄妹設定ってどうだろう、大丈夫かな?汗


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管理人感想
 あまりに素敵すぎて、生誕祭が始まったばかりで即頂いてきてしまいました。
 慈郎ちゃんがいじらしくてたまりません…vv
 慈郎に「ちょうだい」って言われたら、のしつけて差し上げちゃうよ…(いらん)

 璃桜様のサイト『* accarezzando *』へ


 2004年4月18日


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