平成17年度予算に対する反対討論

                                                                                           

       2005(H17).3.28  三宅 英子

平成17年度の予算に対して、一般会計、4特別会計及び1企業会計に反対の立場から討論させていただきます。

予算特別委員会をほぼ全期間傍聴しましたが、毎日終了が夜まで掛かり、改めて5日間で予算案の中身を審議するというのは、大変な作業であると感じました。理事者の方々はもちろん、職員の皆さまと特別委員会の正副委員長や委員の方々に対して、敬意を表したいと思います。

では最初に、平成17年度の予算について、評価できる点について数点、述べたいと思います。1点目は桜堤調理場以外、2階建て以下の建築物に対して耐震診断が実施されることになった点です。これについては昨年6月の一般質問で取り上げ、市長からはその時はあまり前向きな答弁はなかったと記憶していますが、その後の検討で、取り入れられたのだと考えます。このような柔軟な姿勢は評価できます。2番目は、耐震アドバイザー派遣事業の枠を50件から100件の2倍に増やしたことです。これまでの経緯からも、この2倍という増加は大きな前進だと考えます。さらに、これに関連して今回の質疑の中で、耐震補強についても今後市として研究していく旨の説明が加わり、これまでよりずっと前向きな姿勢になったと感じます。耐震アドバイザー派遣事業も追跡調査を行っているとのことですので、今後も継続的に調査して、さらに安全な住宅を増やすために他の自治体の取り組みなどを研究し、リーバースモーゲージなどの具体的な施策を実現できるよう努力を続けて欲しいと考えます。3点目は、防災安全センターの中に新たに市民と協働のスペースができた点です。昨年3月の一般質問で、市民にも利用できる施設にして欲しいという提案をしましたが、それを盛り込んで頂けたとしたら大変歓迎します。市民との協働スペースをどのように利用するかの具体的なイメージがまだ出来上がっていないようですが、なるべく多くの市民が気軽に使える場所にして欲しいと考えます。4点目は施政方針の中で予算の最重点課題の中に「減災」という表現が初めて入ったことです。これも、たしか昨年他の議員の一般質問で、このような表現が出て、市長からはその時はそれほど賛同はなかったように記憶していますが、どちらにしてもその後の検討で施政方針に取り入れられ、大変前向きな対応だと評価します。今後は私も一般質問等の中で、ドンドン具体的な提案を行っていきたいと考えますので、市長も、どうぞ耳を傾け、取り入れられることは積極的に取り入れて下さるようお願いします。


さて、これからは少し辛口の討論になります。ご容赦下さい。
  まず、本市の予算に関わる資料についての問題点を指摘したいと思います。これは、これまでも主張していることですが、予算書などの作成は、単に国や都に提出する資料という以上に、税金を負担しているタックスペイヤーである市民に対するわかりやすい説明書でなければならない、と考えています。こういった視点から指摘いたします。

5日間の予算審議を聞き、まず本市のH17年度の施策がなかなか全体として見えづらいというのが正直な感想です。提供されている各種資料を見ながら審議を聞きましたが、各款の具体的な事業が全体の中でどのような位置づけになっているかや、今後も充実させていくものかどうか個別の判断もしづらいと感じました。例えば、市長の「施政方針・基本施策」の中で、データの比較表がついている部分はたった2ヶ所だけ、主要な施策予算一覧では、新規事業か拡大充実事業かが記号でわかるようになっているものの、それ以外はH17年度の予算額の実数のみです。単年度の数字だけでは、今回の予算の具体的な変化をつかみづらく、市の事業内容のバランスや、今後の事業の方向性などを長いレンジで俯瞰することができません。昨年の決算の討論でも指摘しましたが、この点について三鷹市では、「三鷹を考える論点データ集」など数冊の独自の資料によって市全体の主要な施策が総合的に把握できるようになっていて、さらに問題点や課題の把握までが、データと共に整理されて頭に入るようになっています。武蔵野市でも、毎回各会派の資料要求がありますが、まずこれらのデータを整理して毎年定番化したデータ集としてまとめるというのも1つのアイディアではないかと思います。予算書や決算書というのは、民間企業で言えば株主に対する説明責任を果たす資料と言える物だと思います。内々の職員の方々だけが理解できる形ではなく、一般市民の方々が、住んでいるまちの具体的な施策を知るためにビジュアル面でも工夫し、もっと進化させる工夫が必要だと思います。こういった観点から、本市の予算関係の資料が、市民にわかりやすいものとなっていない点を指摘します。これが1番目の反対理由です。是非、今後検討し、実現させていただきたいと要望します。


次に、公共施設の補修や維持管理の問題です。今回の予算特別委員会で、質問があり、市長の言葉では「なかなか金が掛かるようになる。今後は農水省跡地の新公共施設の建設の後は、新設は1件から2件くらいと考える。」との答弁がありましたが、素朴な疑問が湧きました。まず、多くの大型施設を建設してきた責任者である市長が「これからは金が掛かるようになる」という大ざっぱな説明で済まされるのかという点です。民間の分譲マンションでは最近は購入時点で長期修繕計画の策定が義務づけられています。公共施設なら、建設した段階で、個々の施設について、また公共施設全体について、長期的に維持管理計画、資金計画等を立てておくこと、また、施設が増えれば計画を更新することは当然の仕事だと思います。さて、市の2004年のバランスシートを見ると、固定財産については1年間で約25億円が減価償却されているという計算になっています。つまり、本市の公共施設では毎年約25億円の価値が下がり、年初の価値に戻すためには補修等に単年度で25億円が必要という計算になります。これまでの減価償却累計額は約363億円ということですから、今もし、本市の公共施設すべてを建て替えるとなれば363億円プラス物価上昇率分となり、363億円を大幅に超えて、H17年度の基金残高の合計額の約202億円を大きくオーバーすることになります。すぐにすべてを改築することはないにしても、こういったデータを見れば現状の公共施設の補修計画は、市長が言うように「なかなか金が掛かる」どころか、本市にとって非常に重大な課題であると考えます。市長のこの点についての認識と説明の仕方に対し、重大な疑問があり、問題提起します。これが2点目の反対理由です。


3番目として、総務費の質疑の中で、市役所の7階の廊下が水浸しになった件が取り上げられ、今回の漏水は市役所の排水管の老朽化が原因で、今後給排水設備について本格的な調査を行い、今後改修計画を立てる旨の答弁がありました。これらのやり取りを聞き、これまで市役所の給排水管の本格的な調査がなかったこと、市の施設の改修計画が後手に廻っていることがわかり少し驚きました。昨年11月「保全整備の方針」の中では、多数の建築部位などの更新が必要と判定されたこと、その要因としては更新が未実施のものがある、と書かれています。つまり、補修工事をやっていない施設や部位がいくつもあるということです。2003年度時点で更新が必要な設備等の不具合費は34億円に達するとのことですから、各施設の補修を必要とする部位を洗い出し、長期的な計画策定を早急に実施すべきです。これまで未実施になっていた施設や部位などについてもなぜ放置されていたかをチェックするべきではないでしょうか。新しい建物を作ることだけが注目され、維持管理やメンテナンスという行政の仕事のもっと基本的な事柄のある部分が放置されていたことを、問題点として指摘します。また、新たに建設される防災安全センターの建設費が当初の予算約20億円が28億円に増額され、しかも、無線通信機器のデジタル化は予算には含まれていないこともわかりました。このようなどんぶり勘定的な建設費の決め方も含め、3番目の反対理由とします。

4番目に専門委員についてです。教育費の中でシックハウス専門委員の勤務状況について、月一回の委員会の参加が主な仕事だという説明がありました。もし、業務実体がその通りであれば、何も専門委員としなくとも、シックハウス検討委員会の委員で十分ではないのでしょうか?また、IT専門委員の場合は、専門が暗号化という説明がありましたが、このように極めてジャンルが特定化された分野の専門家の場合、必要性が起きた時に具体的に作業を依頼する方が、コストが安くつくのではないのでしょうか。IT専門委員とするなら、図書館のIT化や学校関係のネットワーク化も手がけるのが普通のやり方だと感じますが、こちらは現状では大きく遅れていて、IT専門委員の活用が不十分だと考えます。コミュニティスタジオの場合もこれまで委員会の中で委員だった方が新たに専門委員になるとのことですが、委員のままではなぜ駄目なのかがわかりませんし、委員会の中でのこれまでの実績も不明です。行財政改革検討委員会報告書の中では、職員について、今後スペシャリストの養成がテーマになっています。職員の方々の専門性を高め、やる気を増進させることが大きな課題になっているのに、一方で安易に専門委員を委嘱するというのは矛盾しています。また、専門委員は市長が自由に選考できることになっていますが、調べた限り他の自治体では、このようなシステムを採用しているところはありませんでした。人件費の削減を謳いながら、このように専門委員を増やし、1年間の活動報告もほんの一部の委員だけというのも納得がいきません。これが4番目の反対理由です。

5番目は職員の定数適正化計画についてです。施政方針の中でも、今後もこの計画は進めるとのことですが、今回の質疑の中で武蔵野市は多摩地区で、住民に対する職員の人数割合が最も多い自治体で、26市の中で1位であることがはっきりしました。これまでの市報などの説明では、定数適正化計画が、うまくいっている点だけが強調されていて、住民数に対する職員の人数割合については情報が示されていません。このような偏ったデータの出し方には、市民に誤解を招き問題があります。ポジティブな点もネガティブな点も公表すべきです。これが5番目の反対理由です。この他、ムーバスの10周年サミットや議員のラボック市への訪問、市勢調査研究費の引き上げについては必要性に疑問があります。また、マナーアップキャンペーンのデザイン料等イベントの経費をもっとスリムにし、効果的なやり方に再検討すべきです。また、昨年さまざまに論議された「中学校給食」が第4期長期計画の中で、栄養バランスを考慮した弁当のあっせん販売を制度かするという方向性が出たにも拘わらず、現状は業者任せのデリバリー弁当だということがわかりました。これでは、昨年議論してきたプロセスが一体何だったのか、ということになります。今後具体的な改善を求めます。

最後に図書館の新システム導入についてです。今回の審議の中で、今年7月に新しいシステムが導入され、インターネット予約はその半年後の来年の1月にスタートすることがわかりました。市民からの要望も高く、他の自治体のサービスに比べて遅れを取っているこういった分野こそ、IT専門委員によるバックアップ体制を取るなどしてもっとスピーディに実現すべきです。以上ポイントを絞って討論いたしましたが、これらの点を考慮し、武蔵野市のH17年度の一般会計予算、4特別会計及び1企業会計に反対とさせていただきます。


(2004.3.28  武蔵野市議会本会議  )