東京高裁、都議の海外視察費、2審も公開命じる――「都民、納得できぬ」。
1998/06/30, 日本経済新聞 朝刊

 東京都議による海外視察費の支出状況を示す文書を非公開にしたのは違法として、文京区議の若林ひとみさん(44)が、青島幸男都知事の非公開決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が二十九日、東京高裁であった。河野信夫裁判長は文書の公開を命じた一審・東京地裁判決を支持、都知事側の控訴を棄却した。
 都側は「情報公開条例の対象ではない都議会が作成した文書なので、公開の請求対象となる都知事が取得した後も、公開、非公開は都議会の意思が尊重されるべき」とし、「公開は知事と議会の信頼関係を損なう」と主張していた。
 しかし、河野裁判長は「公開の是非は直ちに都議会の自主的判断にゆだねられているとはいえない」と都側の主張を退けたうえ、「信頼関係の判断は、都民から見て客観的に合理性がなければならず、当事者の主観的な関係のみを尊重した都側の主張は到底都民を納得させ得ない」と単に「信頼関係が損なわれることはない」とした一審判決より踏み込んだ判断をした。
 また、「公開によって、都議会が知事と対立する姿勢を取れば、都民の厳しい非難を受けることになる」と付け加えた。
 判決を受け、若林さんと弁護人は「公開の是非を都民の判断としたのは初めて。情報公開を巡る重要な論点を指摘しており、同様の裁判に与える影響は大きい」と評価した。


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議員団96年訪欧、都、出張費水増し認める――架空領収書で精算。
1999/07/14, 日本経済新聞 朝刊

 東京都議団が九六年に欧州を訪問した際、架空の領収書で出張費を水増し精算した疑いがあるとして、若林ひとみ文京区議が住民監査請求していた問題で、都議会局は十三日、不正な会計処理があったことを認める調査結果をまとめた。十四日の都議会閉会後に公表する。
 出張に参加した都議と随行職員の計十一人は出張費の一部を都に返還することを検討している。
 都議らは九六年七月に八日間の日程でローマ、ミュンヘン、ベルリンを訪問。若林区議は飲食代とバス代、通訳代の領収書が偽造された疑いが強いとして今年六月、都議らに千七十五万円を返還するよう求める住民監査請求をした。
 都が不正な会計処理を認めたことについて、若林区議は「動かぬ証拠を突きつけられてやっと非を認める都の体質は変わっていない」と話している。