MSN-Mainichi INTERACTIVE   2004年12月01日

特集WORLD:
国連安保理常任理事国入りに「言いたい」 田中秀征氏/李鍾元氏

 小泉純一郎首相は22日(日本時間)、米ニューヨークで開かれる国連総会で演説し、安全保障理事会常任理事国入りを目指す意向を表明する。かつては慎重派だったが、今回は憲法を変えることなく、国連改革を前提としているという。適切な選択なのか。13日に旅立つ小泉首相に、2人の識者が注文をつける。【山田道子】

 ◆元経済企画庁長官・田中秀征氏

 ◇表明に異議ないが、核廃絶に踏み込み、先制攻撃をけん制するなどしてほしい

 私は94年、日本の常任理事国入りに慎重な自民、社会、さきがけ3党の国会議員有志で「国連常任理事国入りを考える会」を結成した。当時、私より“ハト”だと思っていた小泉首相を会長に据え、私は代表幹事を務めた。問題意識は、まず冷戦構造崩壊後の日本の進路決定において常任理事国入りは極めて重大な案件であるにもかかわらず、国民的な合意を経ずして外務省が主導する「官権外交」に危険なものを感じたからだ。

 私は「なりたがるのはよくない」と主張していた。それはまず、国の品性をおとしめる。福田赳夫元首相も同じ考えだった。次に、なりたがることによって、敵を作らないよう発言や行動が抑制されることを恐れた。政府開発援助や国連平和維持活動をしても、常任理事国入りの運動としか思われない。国際社会や国連のあり方について志がなく、国際的出世主義にしか思えなかった。選挙や任期なしの常任理事国のあり方を変え、安全保障より社会経済問題の解決に軸足を移す国連改革の先頭に立つべきだと考えていた。

 それから10年。安保理改革は進展していないし、「なりたがる」外交によってマイナスの成果が生じた。まず、今も常任理事国にはなれず、金や努力を無駄にした。また、常任理事国になるには米国のコネが不可欠であるため、米国に一層追随し、日本が常任理事国になっても米国票が2票としか受け取られないようになった。最大のマイナスは、地雷問題やインド・パキスタンの核実験問題など、本来ならば日本が最も積極的になるべき局面で発言と行動を控えるようになり、尊重すべき価値観を見失ったことだ。

 しかし、国際環境は激変した。日本、ドイツ、インド、ブラジルといった国が力をつけ、今の常任理事国は実態に合わず、可変性を考えなければならない時期になった。その中で、日本も常任理事国になるべきだという機運が高まれば引き受ける覚悟がある、ということを小泉首相が国連総会で表明することには異議はない。

 ただ、その際でも必ず言及してほしいことがある。まず、これからの世界や国連はどうあるべきで、日本はどのような役割を果たすのかということだ。そして、核軍縮ではなく核廃絶に踏み込む。先制攻撃や単独行動主義をけん制する。国連決議を経た集団安全保障行動には日本も応分の役割を果たす−−ということを表明してほしいと、小泉首相に言いたい。

 今の小泉首相は官僚にひきずられているように見える。しかし、10年前の「なりたがるのはよくない」という気持ちは持ち続けていると信じている。

 

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 ■人物略歴

 ◇たなか・しゅうせい

 1940年、長野市生まれ。旧長野1区から衆院議員3期。93年に自民党を離党、新党さきがけを結成。橋本龍太郎内閣で経済企画庁長官。「小泉首相と談論する会」座長を務めた。