ものの名前

テレビCM

教科

技術、社会、総合 

 

子ども達は今、情報に対してあまりにも受動的な生活を送っているといえるでしょう。そこから、情報を鵜呑みにし、情報の送り手の思うが侭に行動を起こしてしまう恐れを痛切に感じます。情報を取り扱うときには、受け手として、批判的に情報を判断する力が今後必要になってくるのではないでしょうか。そこで、技術科の授業の中の“マルチメデイアを利用して表現や発信をする学習”において、敢えてCMを制作するという活動を取り入れることで、情報の受け手として必要なリテラシーを高める学習を実践しようと思いました。背後にある意図を読み取ることができるので、判断力が育つという考え方を持ちたいのです。シャワーのように降り注ぐ情報を受けても、漫然と情報に流されないような子どもを育てるには、このような判断力を育成する授業が効果的ではないでしょうか。

しかし、自作であるこの教材を実践する上で悩みは絶えませんでした。CMは、調べれば調べるほど奥が深く、ややもすると知識注入型の授業になりやすいのです。だから、どの程度の知識を生徒におろすべきか悩みました。また、CMの商業的な面は避けてはとおれない面でもあり、商業的な面(スポンサーと広告料、視聴率)と情報の特性の面とのバランスが難しく、この授業では、できるかぎり情報の意図を見抜く活動を主体としましたが、この2つの面を時間ごとに区切って授業を進めることよりも、生徒が様々にCMの特性を発見する中で進めた方がよかったのではないかとの思いもあります。  

情報の送り手の意図を認識する学習として、テレビCMという“もの”を取り入れました。昼のCMと夜のCMを当てる活動を通して、時間によるCMの違いは、情報の送り手から見たターゲットの違いから起きていることに気づかせます。また、授業では、小グループ活動を通して、CM分析を行わせ、個と他との考えの違いに気づく時間を作りたい。

 

 『なぜ、テレビCMを、情報教育の教材にしようと考えたのか』

 

これまでIT教育の中心と言うと、PC機器の操作法習得がメインでした。小中学校のPC整備が完了した現在、IT教育は、操作法からメデイアの受け手・送り手としての在り方に主眼が映ってきているように思います。

運悪く、イラクで、捕虜となってしまった日本人3人の方がニュースで流れた時、インターネット上では、3人の方の中傷が一つの掲示板サイトから発信されました。それ以来、世論は、この3人の方々への批判に傾いていった点は、現在の日本の状況を端的に物語っていると言えるでしょう。ネット上での一つの考え方や視点が、大衆一般の考えと受け取られる怖さがあるのです。この点は、拉致被害者全員の家族を帰国させることができなかった首相に対し、拉致被害者家族会が抗議をしたときのニュースでも同じ現象が見られました。ネット上の掲示板に「首相に感謝の念をひとつも言わない家族会への批判」が書き込まれると、それに対し世論が一斉になびいてしまったのです。文字通りマス(大衆)メデイアの怖さがここにあります。ITの普及により、この現象はますます起こり易い状況を作っているといえるでしょう。だから今、世界各国で、メデイアの光と陰についての教育カリキュラムが作られ、子ども達に教育されているのです。

 

 『実際に授業をした際の、授業の流れ図』

1. この授業では、昼のドラマに流れたCMと夜のドラマに流れたCMをビデオに撮り、それを見せながら、その違いに気づかせました。

2. 次に、ダイハツ タントという自動車のCMを見せながら、その映像が語りかける自動車のイメージについて考えさせました。

3. 授業ではできませんでしたが、消費者金融会社アイフルのCMを見せて、そのCMからかもし出されるイメージと商品との関係に気づかせたいともおもいました。

 

 

1時間目

『メデイアの種類に気づく』

 

様々な広告。新聞チラシ、まんが雑誌、テイッシュの中、看板・ポスター、野球場のフェンスや看板、ユニフォーム、ドラマや映画で使われる小道具、試食コーナー

・・・宣伝効果           (商品を宣伝するメデイアを確認する。)

 

「これも大切な情報伝達の例です。そこで情報を伝えるこの中の特にテレビCMを通して、今日の授業である情報の特性を進めましょう。」

 

2時間目

『昼のドラマと夜のドラマCMはどっち?』

視聴A(4分)B(4分)=(10分)

まずは、AとBはどっちが昼CMで夜CMか話してみてください。意見がまとまったら、同じ机に座っている人で分担して、昼CMだと思う理由を黄色の紙に、夜CMだと思う理由を青色の紙に書いて、AとBに貼ってください。どんな小さなことでもどんどん書いてください。

班ごとに記入と話し合い(10分)

 

考えられる生徒の答え

CM

    明るい

    主婦向けのナレーション

    洗剤のCMが多い

    なじみのないCM

    会社で働くシーン

女性だけのキャスト

CM

    提供多い

    夜っぽい

    アルコールCM

    男性好みの車

    有名タレント

    企業のCM

    男性の登場

 

 

CMは、視聴する人のターゲットを絞って放映されている点に気づいたか

 

 

どうして○○だと昼だと思う。(この繰り返しから次に導く)

『昼と夜のCMの違いを一口で言うと?』

 

CMとは、ターゲットを設定し、そのターゲットが関心を抱くように作られているということですね。

(逆にそのターゲットがみたいと思われる番組を作らせているんだ。次時)

 

この中で、気がつかないうちにとか、無意識のうちに相手に伝えているものはないかな?

商品を使わないで、その商品を説明しているものはないか?どうして違うの?

 

 

商品そのものではなく、ストーリーからその商品についてのイメージを伝えようとしているCMもある。

 

3時間目

『テレビCMを分析しよう』

 

ダイハツ タントCM分析(5分)

プリントの2番のCM分析をしてみましょう。

(5分間スクリーンに出しっぱなし)

 

分析できましたか?分からなかった点はみせあって?

         

それじゃあ、このCMは、タントという車の何を伝えようとしているのでしょう。

芸能人・・・どんな年齢の人

自転車・・・何かを表していないかな(環境)

サイクリング・・何を表している?どうしてサイクリングなの?

                    (家族の時間)

 

ターゲットはズバリ?

商品の売りはズバリ?


商品のコンセプト発表(アンダーラインでも引かせる)(5分)

 

時間があればアイフルに

 

この授業で分かったこと、感じたことは何か。

 

メデイアは広告によって成り立っている。でも放映料金が高いからその値段に見合った効果があるか考える必要がある。CMを出す側から考えれば、広告を出す立場は、そのメデイアにどういう種類の人がよく接するのかを考えている。時には、自分の都合のいい情報を出したい。

 

お金を出している方は誰?

 

テレビ:広告をできる場所・時間を売っていて、その場所を提供する代わりにお金をもらっている。

 

『気づかない』『無意識のうちに欲しいなあと思わせる』

・・気づかないうちに刷り込まれている

 

キャッチコピーを考え直す

 

☆最終的に、生徒につけたい力

CM分析・・・そこには明確な意図があることに気づけたか。

その意図に対して自分の意見を述べることができたか。

 

※教材化するために参考にした文献

・碓井広義 著『テレビの教科書 ビジネス構造から制作現場まで』 (PHP新書)

・山本 稔 著『テレビCMをつくろう 情報社会ウオッチング術』 (明治図書)

・『CMNOW VOL.108』 (玄光社)


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