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償い(さだまさし 作詞・作曲)

教科

道徳、学級活動、人間関係づくりの集会

 

今から、20数年前に作られた歌です。交通事故によって、加害者となった若者が、その責任をとるために毎月郵便局から、賠償金を支払っていく、そして7年後に被害者の妻の女性から手紙をもらい、感動の涙を流すという実話を元にした歌です。人間の弱さや強さについて、そしてやさしさについて、現在の少年犯罪などとからめて考えさせたいものです。わたしは、三軒茶屋駅で起きた、少年2人による、会社員殺害事件の裁判で、裁判長があまりにも反省の色が見えない、この少年2人に対し、この『償い』という曲を引用した話を、授業の中心に据えて展開していきました。授業の最後に、この歌を聞かせるところがクライマックスとなります。今の子ども達でも、きっと感動する歌です。

 

さだまさしアルバム『ゆめの轍』(TECN-23507)1982年

 

参考資料

昨年4月29日の、午前零時ごろ、東急田園都市線の車両の中で、当時19歳の少年2人と当時43歳の会社員の男性とが、体が当たったとか当たらなかったとかということで、トラブルになりました。少年2人は、自分達の感情を抑えることができなかったのでしょうか、三軒茶屋駅のホームに降りたところで、2人がかりで、その会社員の男性を殴り倒しました。通報により、少年2人は逮捕されましたが、男性は、瀕死の重体となり、5月4日にくも膜下出血のため命を落としてしまいます。

逮捕された2人の少年は、傷害致死罪という罪の疑いで、東京地方裁判所にて裁判が始まりました。

残念ながら、裁判の際に見せる少年2人の態度は、周囲の人をも驚かすような、傲慢な態度で、人ひとりの命を奪ったという反省の態度が感じられません。言葉では「すみません」と言っても、その表面的で心の伴っていない言葉であることは、誰が聞いてもすぐに感じ取れるのです。

裁判の判決で、この裁判を担当した山室 恵裁判長は、少年2人に対し求刑通り、傷害致死罪で懲役3年以上5年以下の不定期刑とする実刑判決を言い渡します。

判決後、裁判を閉廷しようとした山室裁判長の心に、まったく反省の色を見せない、少年2人に対し、何か引っかかることがあったのでしょう。こんな言葉を発したのです。「君達は、さだまさしの『償い』という歌を聴いたことがあるだろうか。」そして、うつむいたままの2人に、「この歌の、せめて歌詞だけでも読めば、なぜ君らの反省の弁が、人の心を打たないかわかるだろう。」と少年達に投げかけたのです。

 

作曲者より

 『この歌のテーマは重たいが、もとは実話だ。知人が交通事故でご主人を亡くした。加害者は遠い町に住む男性だったが、すごく真面目な人だったらしく、彼女のもとへ賠償金を毎月少しずつだが律儀に郵送してくる。その手書きの文字をみる度に、亡きご主人を思い出して辛い思いをしていた。彼女はもう年老いており、茶道や華道の教授をしながら、ひとり生きることが出来るから、と、ある日その加害者に手紙を書いた。もう、お金は送ってくれなくて良いです、と。だが翌月もその翌月も、相手は送金を欠かさなかった。これは実話だ。』  

               サンマーク出版『償い』より

『償い』 作・さだまさし 絵・おぐらひろかず(サンマーク出版)

 


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