コンビニ店員バッツと、常連客クラウドの話(2)
代返を頼んだだけの簡素なメールが送信完了になった瞬間に、バッツは携帯のフリップを閉じて無造作に頭上へと放り投げた。寝転がっているからか投擲にはそれほど勢いがなかったようで、ぞんざいな扱いに抗議するかのような鈍い音がした。
別に体調が悪いわけじゃない。昨日のバイトから帰ってきてからというもの、何もする気が起きず、ついでに言えばろくに着替えずに寝ころんだ布団から起きる気力すら湧かずに、ずっとだらだらとしているだけだ。こんな状態で代返を頼んだと知れたら、セシルはどす黒いオーラを纏わせた笑顔を見せるだろう。それでもいいか、と思ってしまうのだから、今の思考はたちが悪い。
ため息をついて目を閉じる。すると、薄い色の唇が小さく動く様が、ありありと瞼の裏に浮かび上がった。
『興味ないね』
低く、はっきりとした声が耳元に蘇る。
ずっと木霊している一言に、なんでこれほど衝撃を受けているのか。ショックを受けているはずなのに、何度も彼の声を、その動きを思い出してしまうのか。
自分でも理由がよくわからないまま、バッツはごろりと寝返りをうった。
2014-06-24