目次のページへ  次のページへ
  [序]

  生命体は生化学反応が組織されています。その生命体はどのようなしくみで誕生したのでしょうか。遺伝子が持つ情報は細胞のしくみが無ければ役に立ちません。 最初の生命は情報がないのに誕生したのです。海が形成された頃の原始の地球では二酸化炭素(CO2)が多量にあって、海水には炭酸ガスが多量にとけこんでいました。 その炭酸水に地殻の鉄(Fe)が接触しました。
 実際に炭酸水に鉄粉を入れてみると、底と水面に序の写真に示すような気泡ができます[1]。
炭酸水(CO2+H2O)と鉄より酸化鉄ができ、酸素(O)を奪われた炭素と鉄が鉄カーバイド(Fe3C)などの鉄炭化物を作ります。 鉄炭化物と水が反応して、酸化鉄と水素と炭素をつくり、水中の水素と炭素によって気泡ができます。その生態系において泡が進化して生命活動のしくみを組み上げたという説を述べます。
 鉄炭化物の泡の膜には様々な原子が結合します。炭素原子は水素原子及び塩素原子及び金属原子など様々な原子と化学結合できます。 同じ炭素原子同士で単結合、ニ重結合、三重結合を作り、鎖状や環状や分岐を持つ分子の骨格を作ります。 そこで、その気泡が次々と生成されることが自然淘汰の機能を実現します。
 泡の膜は気体と液体の水にはさまれていて、2次元的に分子をそろえて並べます。次々と生みだされる気泡は合体を繰り返して大きくなります。 その泡の生成と消滅が繰り返されることによって化学反応の組織が自然淘汰され、化学進化した分子の組織により生命が誕生したと考えました。 これより、生命誕生に至る最初の化学進化の舞台として炭酸水と鉄を材料にした泡の生態系について調べた事柄を述べます。


    
 炭酸水に鉄粉を加えると水底と水面にできる気泡(無機物から有機物の生成)

 [参考文献]
[1] 唐澤信司, "豊富に二酸化炭素を含む水の鉄の酸化による鉄カーバイドと膜の非有機的な生成(和訳)", 2010宇宙生物学科学会議, 進化と生命; 4月26日-29日, リーグシティ,テキサス, セッション[生物以前の進化:化学から生命へ], 4月27日発表, 2010.