Introduction
都市の真ん中にいた。
変わらない景色の中を歩いていた。
俺は一人で歩いていた。
ずっと周りの人間と同じように生きてきた。
どこにでもいるようなサラリーマンだった。
少女も一人で歩いていた。
変わらない景色の中を歩いていて、
どこにでもいるような子どもだった。
だからもしかすれば、気にも留まらない存在だったに違いない。
あの時、あの場所で、あの瞬間だけが、変らない景色の中で、俺を引きとめた。
だから、
俺たちはこの世界ですれ違っただけの、本当はまったくの他人同士なのだった。