エアフローベンチの検討メモ

特殊工作員さんがエアフローベンチを作成しているのを見て、面白そうなので私も少し調べてみました。
(余計なお節介ですね)


●記事

Update
DIY フローベンチ関係のリンク 2004.1.4
流体リンク 2004.1.4
タンブル/スワール 2004.1.4
 
−ピトー管式のフローベンチの検討−
ピトー管式の理論式と構成 2004.1.4
センサ部分の作成(と実験) 2004.1.18,2004.2.4
   2管式ピトー管追加作成 2004.2.15
   実験その2 2004.1.4
   実験その3 2004.2.22
   バキューム源その2 2004.2.27
ブロワの流量測定 2004.3.4
木工工作 2004.3.14
ヘッドの流量測定 2004.2.28,2004.3.27
    吸気ポートの測定(ノーマル) 2004.2.28
    吸気ポートの測定(改造その1) 2004.3.6,2004.3.27
    吸気ポートの測定(改造その2) 2004.3.27
    排気ポートの測定 実験中 2004.3.28 , 2004.5.4
測定系の校正 2004.4.17 , 2004.4.24
 
ピトー管式の流速、流量計算(Java) 2004.1.4
ピトー管式の流速、流量計算
(圧力入力は[Pa])
2004.3.24
 
−オリフィス式のフローベンチの検討−
オリフィス式の構成 2004.2.1頃
センサ部分の作成(と実験)  未作成
オリフィス式の流量計算(Java) 2004.4.24
〜おまけ〜  
ヘッド流量-エンジン出力計算 2011.6.14
レイノルズ数計算 2017.3.22  -NEW-


●フローベンチって何? 2004.4.4

フローベンチとは?
フローベンチとは、空気の流量測定装置のことで、シリンダヘッドやキャブ,エクゾーストパイプなどの 測定対象物にある圧力差を与えたときに流れる空気の量(流量)を測定する道具です。
この流量を測定することによってシリンダヘッドやキャブ,エクゾーストパイプのもつ、 エンジン出力に対する可能性を定量的に表すことが出来ます。

何を使って流量を測定するの?
流量を測定する方法はいくつかあります。
 ・オリフィスによる流量測定
   流路に一部に小穴の開いた壁をつくり、壁の前後の圧力を測定することにより
   流量を求める。
 ・ピトー管による流量測定
   流路中にピトー管を挿入し、ピトー管の圧力差を測定して流速を求め
   流路の断面積との積から流量を求める。
 ・熱線式流量計による流量測定
   流路中に熱線式流量計を挿入し、流速を測定し、
   流路の断面積との積から流量を求める。

アマチュア的に非常に安く完成させたいのであれば採用順は
ピトー管式>オリフィス式>熱線式、と考えます。 なぜなら、ピトー管に対してオリフィス式は吸引ブロワの吸い込み能力が2倍必要でありブロワが高価になること、 熱線式は高精度な代わりに非常に高価な測定器が必要である、といった問題があるためです。
ただし、小流量の測定ではピトー管の圧力差が小さくなるため微小圧力の差圧計を準備するか管径を小さくする、 小流量は測定しない等の割り切りが必要となります。

ピトー管、オリフィスによる流速、流量測定原理は流体リンクのいくつかのサイトに詳しく書いてありますので 興味のある方は読んで下さい。(実は書くのが面倒なだけ)



●DIY フローベンチ関係のリンク 2004.1.4

web上にあるフローベンチ関連のサイトを集めてみました。
だいたいの構造が分ると思います。

SuperFlow.comのサイト

DIY68 flowbench
自作フローベンチ
PerformanceTrends inc. DIY Easy Flow Sysytem
http://victorylibrary.com/mopar/bench.htmここはフローベンチ以外にも多くの コンテンツが有るようだ
http://tractorsport.com/index.htmlセンサ部分のパーツの 写真もある
http://www.ag.auburn.edu/users/gparmer/articles/flowbench2/かなり大きな写真です。ブロードバンド環境必須(英語)

http://www.highperformancepontiac.com/tech/0210hpp_cylinder_head_flow_testing/index.html Performance PONTIACのページ(英語)



●流体リンク 2004.1.4

流体の理論を書いてあるサイトを集めてみました。
これで流速と圧力の関係がわかります。内容のレベルは大学生向けですが、よく整理されていると思います。

簡単な流速の求め方
新潟大学の研究室

測定上の注意ほか(成蹊大学の流体研究室のサイト)
http://fluid.me.seikei.ac.jp/lecture/fol/flow_force_exp/manual.html
その中でマノメータに関する記述

マノメータの原理と注意(国士舘大学工学部のサイト)
http://altair.comb.kokushikan.ac.jp/lecture/envmeasure/node47.html

ピトー管関連
http://ibis.mach.me.ynu.ac.jp/matsui/Lecture/FD1/sec2/2-4.html
http://www.toa-tec.co.jp/Pito/cal.html
http://www.kanomax.co.jp/e0002.html
工業用流量計(日機装)
マイクロフローセンサを用いた流量計測(pdf:148KB)(株式会社 山武)
水蒸気圧補正式のあるサイト
東京計装株式会社の技術情報 流量の単位表記

個人サイト
mokkinさんのサイト 木工用集塵機の性能向上のためにかなり調べられています。



●タンブル/スワール 2004.1.4

燃焼室に生じるタンブル流、スワール流が吸気に及ぼす影響をまとめた文献を探してみました。

流れ解析に基づく吸気ポートの研究開発 (pdf:496KB)これは4バルブエンジン
スズキ、ヤマハの関連論文概要
GoodSpeed Roadstar エンジンの研究がそれ



●ポート加工関連 2004.1.4

http://k-free.com/guzzino/firstborn/index.htm GUZZIでフローベンチをもとにポート加工した例
スズキSV1000Sスペシャルサイト

日本ではあまり面白いサイトがないので米国のサイトを紹介します。
http://www.mototuneusa.com/ いろいろなTips満載
↑のサイトの記事インデックス  16-22あたりがポート径の縮小で好結果を得た例。加工方法が参考になる。
エアフロー値よりもポート速度上昇による充填効率向上が大切と力説している。

http://plaza.ufl.edu/mugen23/FAQ/seatangle.htm 何だろう?。


●ピトー管式の理論式と構成 2004.1.4 ,2004.4.4修正

ピトー管式の大まかな構成と理論式を作成しました。
pitot1

構成図中の記号の説明
 Pa:全圧(流れに向いているピトー管の入り口圧力)
 Ps:静圧(流れと垂直な管の入り口圧力)
 Pam:大気圧

 Pd:動圧(流れの速度成分による圧力変化=Pa−Ps )
 ΔPs:大気圧と管内の圧力差(差圧=Pam−Ps )

 Δhd:動圧により変化したマノメータの指示高さ
 Δhs:ΔPsにより変化したマノメータの指示高さ

pitot1

下のグラフは流速と流量についてΔhdとの関係をグラフ化したもの。
温度や静圧をある値にしたときの一例です。
速度や流量はΔhdの平方根に比例するため、Δhdが小さなときは測定誤差が大きくなるので注意が必要です。
velocity_example
velocity_example


測定方法の例
・気温ΔT[℃]、気圧Pam[Pa]を測定する。
・測定対象をセットし、ヘッドなら所定のバルブリフトにセットする。
・Δhsが25インチ(63.5cm)〜30インチ(76.2cm)を維持するようにブロア能力を調節する。
 このときのΔhd[mm]を読む。

詳しいことは SuperFlow.comのFAQ に記載されているので読んでみてください。

必要なブロワー能力
この中でもっとも高価になりそうな部品がブロワーです。必要な性能をまとめてみました。
項目 測定流量
150 CFM 200 CFM 300 CFM
風量[m^3/min] 4.2 6.0 7.4
圧力[Pa] 780 780 780

しかし、大流量・大吸引圧力のブロワは非常に高価であるため、測定圧力を200から300mmAq(1980〜2940Pa)まで下げることで 比較的安価なブロワを選択できるようになる。
測定圧力を下げると測定圧力に比例してピトー管指示の動圧が低下して測定誤差が大きくなる。低流量時に顕著となるため 測定管の内径を小さくする等の工夫が必要となる。


●センサ部分の作成(と実験) 2004.1.18  見直し2004.2.4

flowsensor
土曜は雪降りで、当初予定していた行動はキャンセルとなって閑になったため、フローベンチのセンサ部分を 作るべく近くのDIYセンタへ部品を調達しに行きました。

−製作−
構造は簡単で、太いパイプにL字型に曲げた細い管とパイプの内壁に突き出ないようにした管をつけただけ。
材料は雨どい用55mmパイプ、3mm管、ポリエチレンのねじ〔中空になったもの2種類)と内径3mmのホース。
3mm管はホースのジョイントとしていろいろな場所に使えるのです。
動圧用は3mm管をL字型に曲げ、雨どいパイプの中心に平行部分が来るように位置決めをする。パイプと平行が基本。 2個作って互いに反対向きに取り付ける。
静圧用は壁の内側に突き出ないようにする。
3mm管の固定は中空ポリエチレンねじ(メス)M3用とM5用を使い、雨どいパイプの内側と外側から挟むようにする。 空気が漏れないようにホットメルトで固定する。
さらにもう1本静圧用のパイプを作成した。これは流量校正用。

flowsensor_b
マジックで何の圧力かを書いて完成です。
流量校正のためのオリフィスは17.4mm径の穴をあけた板(紙コップの底)を作成しました。計算によるとこれで
17.6×√(マノメータ高さ[m]) [リットル/秒](細かい式は省略)
計算式の根拠は 新潟大学工学部の教材資料 の(5)式
分の流量が出るようになるはずです。でも標準オリフィスでないのが痛い。

−試運転−
最初は静圧管を中心近くに持っていったためうまく測定できなかった。 その後壁面まで引っ込めて安定するようになりました。
・長いパイプの先端に静圧測定用パイプとオリフィスを取り付け、マノメータのチューブをつける。
・長いパイプのもう片方の端には動圧測定用のパイプを付け、その先に掃除機のホースをつける。
・最初に使うのは静圧(Ps)のみであるから、動圧用の管(Ps,-Ps))の出口は塞いでおく。
・掃除機を動かしてマノメータの高さが65cmになるように調整する。(たまたま目印がそこにあったから)
・そのままの状態で、動圧を測定する。
オリフィス前の静圧測定用パイプについていたマノメータのホースを動圧測定用パイプの全圧(Pa)管に接続して マノメータの高さを読む。(5mmだった)

静圧測定時の流量は
17.6×√(0.65[m]) =14.2[リットル/秒]

動圧測定時の流量は、パイプの速度分布補正を含めてk=1,パイプ内径=5.3cmのときに
 15.5 14.4[リットル/秒]になっているから、
補正係数kは
14.2/15.5 14.4 = 0.91〜0.92 0.99 
です。

なんだかかなりいい加減な感じがするぞ。どこかに校正されたピトー管ないかな?
もう一度見直したらまぁまぁじゃないですか。

ちなみにオリフィスなし、掃除機全開時の動圧マノメータ高さは20 16mm、静圧高さも20 16mmだから
流量は29 25.7リットル/秒かな。(=1.54m^3/min 掃除機の定格1.4m^3/minに非常に近い)
(下のJava計算による)
頭を傾げながら続く・・・

−2管式ピトー管追加作成− 2004.2.1
2管式のピトー管を作ってみました。

材料は、2mm真鍮管、3mm銅管、4mm銅管の3種類。2mm管は内側の管に、4mm管は外側の管に、 3mm管は他の2本の間のスペーサーと圧力取出し口として使います。
先ず切って、穴あけをします。(パイプカッターでくるくる切ると楽)
クリアランスはほとんど無しなのでプラハンでコンコン叩きながら組み立てます。
曲げはロウ付け前にエイヤッ!とテーブルの脚などに押し当ててやってしまいます。
外側の管の圧力取出し口の3mmの管は強度を確保するためロウ付けします。
ヤスリで整形して出来上がり

−動作の確認−
前回作成し、動作確認したものと同じ構成、圧力で比較を行いました。
全圧は差分なし。
静圧は管の中心にあるピトー管のほうが管壁にある管よりも1mmくらい圧力が高い。
掃除機全開、管の入り口全開では静圧で4mmの差が出た。
動圧換算で20%の違いで、これは大きな差なので流速を測定するときは2管式のピトー管で測定することにしよう。
pitot3 pitot_arc
ピトー管 構造

−実験その2− 2004.2.15
実験機材を揃え、試運転してみた。
jikken1
実に怪しい絵だ。これは悪の秘密兵器の実験なのだ・・・
機材はピトー管とバキュームブロア(消費電力1.3kw)、吸引力調整用スライダックトランス(2KVA)、 ピトー管とバキュームブロア間を接続する接続管(工作用紙製)です。
ブロアは真空度は低く水柱高さで200mm程度までしか引けないがその代わりに驚異的な風量があります。 スライダックの電圧は80Vくらいのときでもパイプの入り口全開で動圧が水柱で150mmは楽に出ています。 CFM換算すると170CFMです。 定格ではどうなるか実験が必要ですが、騒音が大きいのでアパートで実験するのは気が引けてしまう。
あと、掃除機の吸引ブロワを使った場合どうなるのだろう。到達真空度は高いが風量が少ないような気がする。 リサイクルショップ巡りをして機材を調達しなくては・・・・・・・

−実験その3− 2004.2.22

2004.4.25 追記  本実験は測定系が不十分であるため、データとして有効ではありません。 最終的な測定結果は フロー値測定結果 にあります。

実験機材の能力を調べることは非常に大切なことですが、そればかりやっていても面白くない。
そこで、わかりやすいキャブレターの流量測定をしてみることにしました。
デロルトの流量値は ducatimeccanica.comにデータがあります。 この値は負圧を水柱12inch(30cm)で測定しているので、比較するためには今回の測定機材で得られた数値 (圧力20cmで測定)を12inchの値に変換する必要があります。
なぜ30cmにしないかというと、騒音が大きいためです。出来ない訳ではありませんので念のため。
それでは測定値を見てみましょう。
測定対象 測定結果(CFM) 既存データ
(CFM)
@304.8mmH2O
備考
@200mmH2O @304.8mmH2O
換算
測定物なし 187 231 - -
デロルト36mm 128 158 159 ロングファンネル付き
FCR41 159 196 - 赤ファンネル付き

まず、測定物なしの状態の流量(全流量)とFCR41の流量の比較ををすると、FCR41の流量は全流量の85%程度になっている。
流量の差がないと正確な値に近づかないが、90%程度までなら大丈夫だろう(SuperFlow.comのフローベンチFAQから類推)
FCRの値はこんなものでしょうか。
デロルトの36mmは既存データに非常に近い値となっています。まずまずの結果です。

本当は既存データと同じ圧力で実験したほうがよりリアルな数値として比較できるのですが、妥協した条件で行ったにも 関わらず既存データに非常に近い値が得られたのは少々驚きでした。 また別の既存データを発掘して確認作業を行いたいと思います。
pipes1 pipes3

−バキューム源その2− 2004.2.27
高バキューム圧の出るクリーナーを入手しました。掃除に使える?
風量はないけれど3立方メートル/分、水柱で3mまで引けるそうです。 ヘッドのフローはこちらで測定し、キャブやエアクリーナーはガーデンバキュームブロアで 測定することにしよう。
vacum



●ブロワの流量測定 2004.3.4

バキュームクリーナーの性能を測定してみました。 これも細かい数字は抜きにしてグラフ化しました。
vacumflow

一定の流量になる理由は、排気口が小さくくオリフィスになっていること、 羽根の入り口面積が思いのほか小さく一定以上の流量にならないため。

ガーデンバキュームクリーナーは測定方法にミスがあったようでおかしなグラフになっていた。あとで差し替え予定
差し替え完 2004.4.24
gardenflow


●木工工作 2004.3.14

仮設状態では安定した測定ができないのでパイプ類を固定する天板と足板を作成しました。
benchseat

材料を集めた日が違ったことと勘違いなどで長さが足りず変な構造になってしまった。
このくらいの木材の加工は金属に比べて力と根気が要らないので楽チンです。 分解・撤収が可能な構造にして作りました。


●ヘッドの流量測定 2004.2.28

新たにジャンクな350ccヘッドが手に入ったので、洗浄後吸気側を測定してみることにしました。
このヘッドは完全なノーマルではなく、前のオーナーが排気側のみ若干の加工を施してありました。
なぜ排気側だけなのか、受け取った際に前のオーナーに聞くのを忘れてしまったのでその理由は不明です。

−吸気ポートの測定(ノーマル)− 2004.2.28
条件:バキューム圧力は300mm、周囲温度19℃、気圧1018hPa
細かい数字は抜きにしてグラフ化しました。
flow_350head_normal
バルブリフトが6mmを越えると流量の増加は見られないことが判明。バルブなしでも78CFMだった。

内径の若干の拡大とポート形状の見直しでどこまで行けるか見ものです。
排気側は加工する必要性を感じないのでそのままとします。排気ポートは出口径27mmと充分な大きさを 持っており、流量を改善したところで影響が出るのはほとんど使わない7000-8000rpm以上のため。

3mm以下のリフトで測定値がばらつくのはエア漏れとリフト設定ミスであると思われます。
また、管内の流れの偏りについては補正できていないため、直径方向の圧力を平均化できる ピトー管を作成することが当面の課題です。

(2004.3.27 追記)
→ピトー管測定部のパイプ内径を絞ることにより直径方向の圧力変化を平均化できることが
マイクロフローセンサを用いた流量計測(pdf:148KB)(株式会社 山武)
によりわかりました。実際にピトー管の位置を動かしてみたが管の中心と円周付近での流速の差は殆どありません。 このため、平均流速はピトー管指示の流速(に近い値)となり、下のjava計算の係数Cは0.8から1.0(に近い値) に修正する必要があります。
しかし、この一連の実験では同じ条件を作るためにC=0.8で計算を行うことにしました。

−吸気ポートの測定(改造その1)− 2004.3.6,2004.3.27追記

悪戯にポート加工してみることにしました。
加工メニューは以下のとおり。
 @バルブガイド削除
 Aポート径拡大(φ24mm→φ25mm)
 B流速ポート(Bポート)化 (チョーク部ポート高さ18.5mm、粘土でポート整形)

測定したグラフを以下に示します。
flow_velocity
リフト13mmは全開流量の確認のためのもので現実的ではない。

ガイドなしはノーマル(前回測定値)よりも少しだけ流量が落ちるのは不思議です。
ポート径拡大により高リフト時の流量が増加が見られる。
流速ポート化により、ポート径拡大時よりも更に流量が増大しているのは非常に興味深い。

日本流体力学会のweb論文の RANSモデルによる工学問題への対応(pdf:0.9M) によると、90度曲げのあるポートの流量係数Cfは吸入ポートの曲率Rとポート径Dに影響を受け、R/D<1.5 で ほぼ一定値となるようです。この論文はシミュレーションに関するものだが実機データとの比較が載っているため 非常に有用です。残念ながら90度の曲がりポートの場合流量係数は0.52程度にしかならないようです
流速ポートは流速を上げることと曲げ半径を大きくとることで流量の低下を防いでいると推測しています。

流速ポート加工は mototuneusa.comのポート加工のページを参考にしました。 興味のある人は一読されたほうがいいでしょう。
port_velocity1 port_velocity2

ノーマルの(に近い)350ccヘッドのポートの様子は えるまぁさんのサイト に写真があるので見比べてみよう。 (2004.3.27追記)

今回のポート加工と測定では以下のようなことがわかってきました。
 ・闇雲にポート径を拡大しても流量は大きく変化しない。
 ・ポートの曲げ半径の拡大と適正な径選択をすることにより流量の低下を防ぐことができそうである。

−吸気ポートの測定(改造その2)− 2004.3.27追記

ポート内の隔壁付近の流速分布を測定してみました。
現在のポート内の様子は度重なる実験により上の写真とは若干異なる形状になっています。均しが入った感じ。
図はかなり大まかな流速の分布で、相対的な速度比を示します。白い部分と赤い部分の速度比は概算で1:1.4です。
port_velocity1

ポートのフラットな部分の表面付近に流速の高い領域が集中しています。空気が滝のように(特殊工作員さん曰く) 流れ込んでいるよです。



−排気ポートの測定− 2004.3.28

どれから書こうかな?
擬似1ポートの実験にしよう。
排気方向ではなく、吸気方向での流量測定を行いました。 最初に片方ずつの全開流量を測定し、それから片方だけ粘土でDポートに改造して測定しました。
項目 変更前 変更後 備考
ポート高さ 流量[CFM] ポート高さ 流量[CFM]
左ポート 27 38.7 22 41.5 ΔPs=300mmAq
右ポート 27 38.7 - -

Dポートにした左ポートの方が7%ほどフロー量が大きい。
これは何を意味しているかを考えてみると、
(内径が)デカけりゃ良いってものではない。
大事なのは形状だ。
バルブのリフト毎の流量は測定してませんが、吸気側と同じように最大リフト手前で 流量が一定値にならずに伸びていくものと思われます。実質的な流量増加は数%程度でしょうか。
Dポートを別のヘッドでも確認してみたいものです。

mototuneUSAの記事 によると、2バルブヘッドでDポート加工(ポート高さは吸気バルブの80%に)するとピークパワーは増加せず に中間回転域のパワーが増加するであろう(私はやったこと無いけど)、と書いてあります。
2バルブヘッドでは能力に限界があって高回転は狙いにくいということかな?。

2004.5.4 追記
排気ポートを使って1バルブの吸気方向のポート流量を増加する実験を行いました。

結果から言うと、「四角いポート」かつ、「おへそ付き」で流量の増加が見られました。
しかし、「おへそ」は乱流を発生させて気流の向きを変えるものであるため、 流速や気体の温度によっては効果が出ない可能性もあります。
加えて、1ポートでは2ポートとは異なり形状に対して非常にシビアで、ちょっとした(0.5mm以下の)変化で とたんに流れなくなったりします。

singleport1

1ポートの吸気ポートで頑張ろうという方はフローベンチで流量を確認しながらの作業が必須だと思いました。

2004.5.5 追記
リフト量とポート流量、吸排気方向の影響について測定しました。
Dポートは中間リフト時の流量増加が著しく、1mmのリフト増加(=作用角増加)と等価、ピーク流量はやや落ちる結果となりました。
全開流量(13mmリフト)ではDポートの方が流量が多かったのですが、不思議です。
何れにせよ同じカムを使った場合には作用角増加として見えることから数%のパワーアップが可能になることでしょう。

ピーク流量が多いが中間がやせているポートと中間流量が多くピークは少し落ちるポートのどちらがパワーが出るか、 というのは難しい問題です。程度や回転数によっても異なるでしょう。傾向としては前者は中間回転数のときのトルクがやや増え、 後者は高回転時のトルクの落ち込みがやや少ない程度のことだろうと思います。

排気方向
flow350exex_rl_0505
Rポート(ノーマル+削り)
Lポート(Dポート)
吸気方向
flow350exin_rl_0505
Rポート(ノーマル+削り)
Lポート(Dポート)

グラフの測定環境条件:周囲温度21[℃]、気圧1013[hPa]
流量はノルマル流量表記としました。環境条件下での流量はグラフの値に(273+21)/273=1.08を掛ければよい。

2004.5.6 追記
再度「D+おへそポート」で流量が出るようにチューニングしました。(吸気側黄色線)
特定のリフトのところで流量が落ちているようです。それ以降は驚異的な流量の上昇が見えます。この傾向は圧力を5000[Pa]としても同一であるため、渦の有無ではなく形状に起因するものではないかと現時点では推測しています。
同じ渦を作るのであればディンプル加工でもいいのかなと思います。
 →
ゴルフボールの皮をむきポート下面に貼り付けましたが目立った効果は見られませんでした。
影響の度合いは、ポート下面形状>表面の状態 の関係にあるようです。 実用化するには温度や気圧によって影響を受けにくい形状にする必要があり簡単には行きそうも無い感じがします。
セオリー通りポート入射角を緩く、ポート入射高さを確保して少しD形状にするが無難な気がします(2004.5.8)



●測定系の校正 2004.4.17

測定系を68フローベンチの校正シートに従って校正してみました。

校正にはオリフィスを用います。オリフィス流量は、オリフィス径から算出される理論流量と オリフィスの流出係数の積で求めます。
68フローベンチの校正シートにおけるオリフィスの流出係数は0.62でした。この値はオリフィスの経験的な流出係数であり 、68フローベンチのようなオリフィス開口面積とオリフィス後の流路断面積の比が0.2以下の構造の場合には問題ないのですが、 断面積の差が小さいオリフィス径の場合(断面積比>0.3)には補正が必要になるようです。断面積の比と流出係数の関係は 新潟大学工学部の教材資料 のグラフに描かれています。
流出係数を0.62に固定するために断面積比が0.3以下の範囲で実験し、測定系の補正係数kを求めてみました。

測定系では静圧取出し口をヘッド取り付け部直下に新設し、オリフィスにかかる圧力を直接測定できるようにしました。

項目 オリフィス径[mm] 備考
φ20.3 φ22.4 φ25.3 φ30.6 φ41.3
オリフィス流量
Qo[CFM]
28.0 34.0 43.4 63.5 115.7 ΔPs=3000[Pa]
ピトー管指示
流量
Qp[CFM]
33 40.4 52.1 76.1 137.9 ΔPs=3000[Pa]
補正係数
k=Qo/Qp
0.85 0.84 0.83 0.83 0.84 -

測定した範囲内(φ20.3mm〜φ30.6mm)では補正係数kは0.86〜0.880.83〜0.85あたりのようです。
大径オリフィスでどうなるのだろうか・・・・(続く)

2004.4.24 追記
φ41.3mmのオリフィスで測定してみました。(表に追記)
流量が多くオリフィス上部の静圧低下も無視できないため、VU75の塩ビパイプをオリフィス上流に取り付け、 オリフィス手前10cm程のあたりに静圧取り出し用のパイプを取り付けました。 ΔPsはオリフィス上流と下流の静圧の差です。

結果:補正係数kは0.87 0.84だった。
この系の補正係数は全域で0.84を使うことにしよう。(Java計算のデフォルト値も変更)



●フローベンチのまとめ 2007.1.26

フローベンチ作成手順
・測定したいヘッドの流量に応じたブロワを準備する。(シリンダが100cc程度なら1kWくらいの掃除機でOKです)
・測定用圧力計を準備する(ディジタル式が割り切りが良い)
・環境温度、気圧計を準備する(補正用に必需品)
・ブロワの吸い込み負圧と流量に応じた流量計を選定し、作成する
  高流量、低負圧・・・・ピトー管
  小流量、高負圧・・・・オリフィス

・ヘッド置き台を作成する

・測定系が完成したら基準オリフィスを作成して流量計の校正を行う
 基準オリフィスにある圧力差を与えた時に流れる流量は決まってるため、計算結果がこの流量になるような 測定系の補正係数を求め、計算に使用する。
・流量計の校正は測定日毎に行うのが望ましい。


●ピトー管式の流速、流量計算(Java)


傾斜マノメータ高さΔhd [mmAq]
U字マノメータ高さ Δhs [mmAq]
温度 ΔT [℃]
大気圧 Pam [Pa]
管の直径 D [cm]
ピトー管係数 C  
補正係数 k
流速 U [m/s]
当該環境下の流量 Q [ft3/min](CFM)
ノルマル流量 Qn [ft3/min](CFM)


●ピトー管式の流速、流量計算・(圧力入力は[Pa])


動圧 Pd [Pa]
静圧差 ΔPs [Pa]
温度 ΔT [℃]
大気圧 Pam [Pa]
管の直径 D [cm]
ピトー管係数 C  
補正係数 k
流速 U [m/s]
pitot_u"
当該環境下の流量 Q [ft3/min](CFM)
ノルマル流量 Qn [ft3/min](CFM)
pitot_qn"


●オリフィス式の構成

oriffice"

こんな感じでしょうか?
流量によってオリフィス径を切り替えて使う。



●オリフィス流量計算・(圧力入力は[Pa])


オリフィス静圧差 ΔPs [Pa]
オリフィス上流
負圧 Pu
[Pa]
温度 ΔT [℃]
大気圧 Pam [pa]
オリフィスの径 d [mm]
オリフィスの流出係数 C
当該環境下の流量 Q [ft3/min](CFM)
ノルマル流量 Qn [ft3/min](CFM)
oriffice_q"


ヘッド流量-エンジン出力計算


平均的な燃焼効率の場合の計算値です。以下のページのグラフをHP→PSに変換して計算しています。
http://www.highperformancepontiac.com/tech/0210hpp_cylinder_head_flow_testing/photo_07.html
1気筒あたりヘッド流量  Qh [CFM]
流量測定圧力 Pm [Pa]
気筒あたりの排気量 Vcyl [cc]
気筒数 Ncyl [気筒]
ヘッドの最大出力 [PS]
(ロス計算なし)
最大出力を得る回転数 N [RPM]


レイノルズ数計算


レイノルズ数の計算値です。
気温  Tc [℃]
圧力 Pm [hPa]
速度 V [m/s]
代表長さ L [m]
レイノルズ数



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