しみんの皆さんへ(設立趣意書)


 現在、私たちの暮らす社会には、深刻な問題が次から次へと発生しています。海外からの輸入食糧によって私たちの「食の安全」が脅かされています。「ワーキング・プア」といった新たな貧困層が拡大しています。都市部への人口集中によって地方の農村が衰退しています。その他、企業不祥事の頻発や格差社会の進行、さらには地球環境破壊の問題等々、私たちの生活を取り巻く環境は、日に日に深刻さを増しています。    

 私たちは、このような状況をただただ見守るしかないのでしょうか?このような状況を少しでも改善する方法はないのでしょうか?私たちは、このような状況を生み出している根本的な原因を解明し、その解消に向けた取り組みが必要なのではないでしようか?

 近代の社会は、大量生産一大皇消費一大量廃棄といったサイクルを繰り返す中で、人々に「物的な豊かさ」をもたらしてくれました。しかし、その過程を通じて私たちの生活は、企業の作り出す「商品」で溢れ、今や企業の作り出す「商品」なしではごく普通の生活を営むことすら困難になっています。また、私たちは企業で働き、生活の粗を得ています。企業の−方的な都合で解雇され、生活の粗を失い、路頭に迷う人々もたくさんいます。今や私たちの生活の大部分は企業活動に依存しています。しかし、その企業活動のコントロールや監視は私たちの手から離れ、ごく−部の人々によって行われるようになりました。

 本来、国民の安心や安全を守るはずの政府も、グローバリゼーションの下での政官財の癒着に束縛され、国民のニーズとはかけ離れた論理で動いています。政治家・官僚の利権を守るために行われる不必要な公共事業によって膨大な借金を続け、私たちの子孫にツケを「先送り」しています。社会の矛盾を見いだすはずの科学(科学者)も、「専門化」と「分断化」を背景にますますタコツボ化し、「何のための科学か?」という根本的な問題が忘れ去られているような気がします。むしろ、科学研究(科学者)までもが企業や政府によってコントロールされつつあるように思われます。

 今、私たちは、現代社会のあらゆる課題や社会システムそのものを「生活者」の視点から捉え直し、その問題点を指摘するとともに、その解決に向けた方策を考えていく必要があるのではないでしようか?

 市民科学研究所では、今日の政治や経済のあり方、企業経営のあり方、文化のあり方、さらには社会システム全体をも問題化し、よりよい社会(市民社会)の構築に向けた解決の糸口を探る取り組みを行います。そのような活動を通じ、「市民のための科学(市民科学)」の確立をめざしたいと思います

                            
      


                                 (2009年1月25日)

     
     
 

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