韓国・統一ニュースコム−世界ニュース 201246日付 )

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西海油田を探査する“光明星3号”

 

(米国・韓国が、北韓の衛星発射に戦々恐々とする、もう一つの理由)

 

 

(本文から)

「○北韓西海油田の埋蔵規模について、200510月、中国海洋石油総公司は、660憶バーレルの原油が埋もれている巨大な原油貯蔵地であると発表した。サウジアラビアの原油埋蔵量が830億バーレルであるが、660億バーレルが事実であれば、世界的ニュースに違いない。

 

○北韓が光明星3号の発射に成功すれば、北韓は独自の技術能力で西海海域の全ての地域に対する油田探査事業を、全面的に進めることが出来る事となる。

この場合、外国企業と共同探査を進めた西海油田事業が、今後、北韓主導の探査として変更される可能性も排除することは出来ない。

 

光明星3号を通して北韓は産油国に、一歩さらに近づこうとする。この様になれば、韓米当局が北韓の人工衛星発射に対し、その様に居ても立ってもいられない理由に、もうひとつの理由が追加される。」

 

 

(本文)

 

クァク・ドンギ(私達の社会研究所常任研究員)

 

‘光明星3号’は、地球観測衛星だ。韓国の地球観測衛星としては、‘アリラン2号’がある。アリラン2号には、解像度1mのカメラが装着され、地球観測写真を転送している。韓国政府は、早晩またひとつの地球観測衛星であるアリラン5号を打ち上げる予定だ。

 

北韓の朝鮮宇宙空間技術委員会は、316日の発表で“今回打ち上げる光明星3号は、極軌道に沿って回る地球観測衛星”だと強調し、328日には同委員会の副局長が“我が国の山林資源分布の状況と自然災害の程度、穀物予定収穫高などを判定し、気象予報と資源探査などに必要な資料などを収集することとなる。

 

(韓国)国防部は、北韓が光明星3号の衛星開発におよそ1,700億ウォン投入したと主張した。国防部の主張は全く科学的ではないが、北韓の人工衛星がこれ以上試験用ではなく、現実的な多目的商用衛星とだと言う点を自ら是認したと見ることが出来る。

 

北韓副局長が明らかにした、山林資源分布状況と自然災害の程度、穀物予定収穫高に対する判定は、光明星3号を通して衛星写真を撮れば、正確に把握する事が出来るのだ。

 

この文章では、北韓からハッキリさせた光明星3号のまたひとつの

任務である“資源探査”部分に対し探ってみる。

 

 

 

○人工衛星を利用した海底地形探査

 

地球観測衛星の主たる用途の中で、一つは地形探査、その中でも海底地形を探査することだ。

 

成均館大学土木工学科チェ・グァンホは、“海上重力データから、海底地形の推定に関する研究”と言う2003年の修士学位論文で、人工衛星を利用した海底地形探査方法を紹介している。チェ・グァンホの論文によれば、人工衛星高度計データは高分解能力、広域同時観測、高密度観測だけではなく、気候に左右されないなど、優れた多くの長点を持っており、また大量のデータを迅速に利用できると指摘している。

 

人工衛星を利用し、海底地形をどの様に把握するのか、調べてみよう。実際海水面(Sea Surface)の高さは、海底地形によって影響を受ける。海底地形が異なれば、該当地域で地球重力の大きさが変わり、重力差によって海水面の高さも微細に変わるからだ。調査された所に依れば、海底から山脈の様に突出した海嶺では、海水面が平均値より約5m程度高く、海底で深い渓谷の様に裂けた海溝では、海水面が平均値より60m程度抵いと言う。大体水深が1,000m深くなれば、海水面が4m程度抵くなるのだ。

 

      



    △写真[1]極超短波を利用した海上重力データ

 

[図1]を参照しよう。人工衛星が極超短波を打って、戻ってくる時までの時間を通して、(S´)を決定し、(r)は人工衛星が自体に記録する高度計で決定する。これを通して地球観測衛星は、広範囲の海底地形を詳しく分折する事が出来る。無論この場合、大気圏と宇宙から太陽風の効果で、(S´)の誤差が発生することが出来るし、月の引力変化によって満潮と引潮の様に(N)の変化が発生する事があるので、これを補正してやらねばならない。

 

チェ・グァンホの論文によれば、レーダー高度計の観測正確度(S´の正確度)は、衛星の高度が840kmであるGEOS31970年度発射)の場合60cm、そして衛星の高度が800kmであるSEASAT(1978年発射)GEOSAT(1985年発射)では10cm3.5cm、衛星の高度が780km1340kmであるERS1(1991年発射)TOPEX/POSEIDON(1992年発射 )では、10cm2cm程度だと言う。北韓が明かにした光明星3号の高度は500kmであるので、観測正確度は、上の890年代の人工衛星より多少落ちる事があるが、過去20余年間の電子工学の発展を考慮すれば、光明星3号の観測正確度も5cm未満だと推定しても無理がない。この場合、海底地形を10m内外の正確度で測定することが出来るものと推定される。

 

 

 

○重力探査で西海油田把握

 

海底地形を判読する、もう一つの方法は音波、音を利用する方法だ。音波を利用する水中地形探査方法は、過去、チョナン(天安)艦沈没過程で大衆的に知られている広域海底面走査、“サイドスキャンソナー(side-scan sonar)”がある。水中では空気中より音波の速度が遙かに速い点を活用し、水中音波探知機を利用して海底地形を診断する。

 

今は、水中音波方式で探知した海底地形と、人工衛星で診断した海底地形の二つの資料を互いに比較分折しなければならない。

 

音波を通して分折した海底地形と、人工衛星で把握した海底地形を比較すれば、大よそは二つの地域の測定資料は同様に現れる。しかし油田地帯では、二つの地形資料が異なって現れる。石油は、比重が水より低い為、大規模油田が存在する地域は、重力と磁力が微細に弱くなる為だ。油田地帯では周辺より重力が更に低い為に、海水面の高度が周辺より更に上昇する。即ち、音波探知を通して測定した海底地形と、の差異が発生する事となる。人工衛星の海底地形資料と、音波探知の海底地形資料の差が出る地域を、石油埋蔵可能地帯として分類することが出来る。

 

今必要なことは、指摘された石油埋蔵可能地帯などの、深部地層構造を分折する作業だ。石油は液体である為に、石油が商業的に生産性があろうとすれば、必ず、地層内の或る地域に、石油が溜まっていなければならないと言う前提条件がある。これを一般的にラクダの様な、或いはパガジ(注・おわん形の容器)を伏せた形と同じような、背斜構造と呼ぶ。世界の油田の90%が、これと同じ背斜構造で発見される。実際石油探査は、石油を探すのではなく、まっすぐ、石油を含んでいるだけのタラップ構造を探すことであり、大部分は背斜構造を持った地形を探査することだと言う。

 

 

        

석유가 매장될 가능성이 높은

[図2] 石油が埋蔵される可能性が高い背斜構造

 

今、北韓当局が西海油田を探査する過程は、次の様に整理することが出来る。最初に、光明星3号を通して西海の海底地形を得る。次に、船舶音波探知で得た海底地形と比較する。第三に、二つの資料間の地形の差異が発生する領域を、石油埋蔵可能地帯として想定する。第四に、石油埋蔵可能地帯などに対し、深部地層調査を進め、内部の地層構造を把握する。五つめに、各埋蔵可能地帯の中に背斜構造の地層を

持つ地域に対し、実際に、試錐孔(ボーリング)で試錐作業を試みることとなる。

 

この様な各種の科学的計測装備を動員する場合、現在、海底油田に対する試錐作業の成功率は、約20%の水準だと言う。北韓が、今後五つ以上の試錐孔を堀り、試錐を試みる場合、商業的活用度がある西海油田を開発することが出来るものと展望される。

 

 

 

○西海油田の経済的効果

 

北韓西海油田の埋蔵規模は、まだ具体的ではない。2004年、韓国石油公社関係者は、“南北経済協力次元で、西海、また渤海湾の北韓油田の開発と関連された資料を、広範囲に収集中であり、過去1997年、北韓が50億〜400億バーレルの原油があると発表した、ナンポ(南浦)西側のソハンマン(西韓湾)一帯(下図参)は、その間の資料を総合して見る時、埋蔵可能性が高いものと見える”と明らかにした。

 

200510月、中国海洋石油総公司は、660憶バーレルの原油が埋もれている巨大な原油貯蔵地を発見したと発表した。サウジアラビアの原油埋蔵量が830億バーレルであるが、660億バーレルが事実であれば、世界的ニュースに違いない。

 

今まで、北韓の西海油田開発事業は、西方陣営が参加した。英国の石油企業アミネクスは、2005年、北韓投資が政治的危険(リスク)を内包しているが、数重億バーレルの埋蔵可能性を勘案すれば、やって見るに値する投資だと明らかにした。

アミネクスのブライアン・ホール最高経営者(CEO)は、ロイター通信

         

△上図―巨大な原油貯蔵地である、朝鮮民主主義人民共和国 ピョンアン北道にある<ソハンマン(西韓湾)>または、<ソチョソンワン(西朝鮮湾)>。(この地図は、訳者が南韓の「백과사전」から引用したものである)

 

 

とのインタビューで、北韓での成功がアミネクスを変化させるものとし、“(事業を)極めて楽観的”と語った。彼は、無窮無儘(無限大)その上、ノルウェーがまた、西海油田開発を推進したが、ノルウェーのGGS社はソハンマン(西韓湾)一帯の採掘権を2004年春まで保有していた。中国も20051224日に、北―中間の海上原油共同協定を締結することで、北韓石油開発に本格的に参加している。

 

西海油田の経済的価値は、埋蔵量を50億バーレルと捉えても、潜在価値は250兆ウォンとなる。埋蔵量が400億バーレルとする場合、潜在価値は2000兆ウォンに達する事となる。

 

北韓が光明星3号の発射に成功すれば、北韓は独自の技術能力で西海海域の全ての地域に対する油田探査事業を、全面的に進めることが出来る事となる。

この場合、外国企業と共同探査を進めた西海油田事業が、今後、北韓主導の探査として変更される可能性も排除することは出来ない。

 

光明星3号の発射は、北韓当局を最小250兆ウォン、最大2000兆ウォンと言う無窮無儘(無限大)の西海油田へ一歩、さらに近づくこととなる。これは今後、分折した3000億ウォン程の産業関連効果を排除した光明星3号の海底資源探査効果だ。

 

光明星3号を通して北韓は産油国に、一歩さらに近づこうとする。この様になれば、韓米当局が北韓の人工衛星発射に対し、その様に居ても立ってもいられない理由に、もうひとつの理由が追加される。

 

“住民の生活向上”を主要政策に立て始めた北韓当局が、周辺国の反対にも拘わらず、人工衛星発射を強行するのは、この様に光明星3号の経済的波及効果がそれこそ無窮無儘(無限大)である為だと、分折する事が出来るであろう。
                     
(訳 柴野貞夫 2012年4月7日)