(韓国民衆言論 プレシアン 2015年7月31日付)
http://www.pressian.com/news/article.html?no=128545
‘軍事大国化’の安倍vs.‘戦争反対’の日本民衆
―広がる、日本の反戦平和運動−
パク・インギュ プレシアン編集委員
今回の日本民衆の反戦平和運動は、東アジアの民主主義と平和の将来にも重大な影響を及ぼすだろう
安倍政府の軍事大国化の動きに反対する日本民衆の声が、次第に大きくなっている。伝統的反対勢力であった知識人、芸術家達に加えて、20〜30代の若いお母さん達と10〜20代の青少年達も、続々反戦平和運動に飛び込んでいる。以前になかった新しい様相だ。
侵略と戦争の過去歴史を否定し、軍事大国化を通して東アジアの平和と安定を脅かす安倍政府と、‘戦争反対’を叫び、生命と平和を追求する日本民衆が全面対決を広げる模様である。今回の日本民衆の反戦平和運動は、日本は無論、東アジアの民主主義と平和の将来にも重大な影響を及ぼすだろうと見える。
若いお母さん達と青少年達まで、反戦平和運動に飛び込む
日本民衆の反戦平和運動に火を炊き付けたのは、安倍政府の集団的自衛権行使関連の立法である。執権・自民党は、去る16日,日本の下院に相当する衆議院で、集団的自衛権行使のための11件の安保関連法案を、民主党、共産党など野党の不参加の中で強硬採決した。昨年7月1日の閣議決定によって、現行憲法でも集団的自衛権行使が可能だという、所謂、‘解釈改憲’と言うみみっちい遣り方を完結するための後措置だった。この諸法案は、27日から参議院の審議に入って行き、向こう60日以内に処理される展望である。このように成れば、日本を、戦争が出来る国にする為のあらゆる法的、制度的装置が完備される理屈である。
これに対し、この月の初め、約2万名が国会前で示威を繰り広げるなど、日本民衆の反対運動が本格化し始めた。特に、11件の安保法案の衆議院採決(7月16日)と、参議院審議の始まり(27日)を前後した、15〜17日と26〜28日を、それぞれ‘国会前緊急抗議行動’の日として定め、反対運動に乗り出した。そしてこの過程で、反戦平和運動は新しい動力を得る事となった。今まで、政治的事案に無関心だった若い母さん達と、青少年達が運動に加勢したのである。
まず、去る7月17日の夕刻、‘国会前緊急抗議行動’には、10代後半から20代初中半に至る青少年達が、示威隊の主流を果たしながら、“国民(ママ)を無視するな”“戦争ではなく平和を”“間違いなく止めるぞ”と叫んだ。彼等はまた、“自民党、感じ悪いよ”など、ぽんぽんと弾けるスローガンを叫び、市民たちに参加を呼びかけた。
安倍政府が、民衆の反対の声に耳を傾ける様にする為には、少なくとも、10万名は集まらなければ成らないので、この月の初旬、反対示威に参加した市民らが、それぞれ5名を参加させようと言うことだった。
10代〜20代による、新しい形態の反戦平和運動―‘自由と民主主義の為の学生緊急行動(SEALDs)’
これに対し、日本の或る政治評論家は、“1970年代の日本の学生運動が衰退した以降、初めて現れた現象、”“今までに無かった新しい形態の運動”だとし、驚きを表した。2011年福島原発事態以後、生活政治目覚めた30〜40代に続いて、10〜20代の若い彼らも、政治社会的問題に関心を持つこととなったと言うのである。特に、若い彼等は、無力感に陥った既成世代とは違って、日本の民主主義と平和を守るために闘わなければ成らないと、闘志を燃やしているという。2013年12月、軍事大国化のための安倍政府の最初の措置である‘特定秘密保護法’と‘国家安保会議設置法’が強硬処理された事に対し、既成世代達が“日本の民主主義は死んだ”と慨嘆したのに対し、若い彼等は“民主主義が死んだなら、新しく始めれば良いではないのか”と活動に立ち上がったと言うのだ。彼等は去る5月3日、‘自由と民主主義の為の学生緊急行動(SEALDs)’と言う団体を結成し、反戦平和運動に飛び込んだ。
“誰の子供も殺さない”“戦争では何も解決出来ない”と叫んだ‘安保法案に反対する母親の会’
一方、日曜日である26日、東京都心・渋谷の公園では、若いお母さん達2千名の反対示威があった。乳母車と一緒に、桃色の風船を持ったお母さん達は、“誰の子供も殺さない”“戦争では、何も解決出来ない”と叫んだ。
この反対示威は、‘安保法案に反対する母親の会’という団体が主導したもので、京都に住む3人の子供の母親、西郷みなこ氏(27)が提案したという。この日、お母さん達の反対示威は、東京だけでなく京都、福岡、などでも繰り広げられた。‘安保法案に反対する母親の会’では、26日現在、27個の広域地方自治団体で、1万7千余名のお母さん達が加入し、今後も継続して増えるものと見える。
反戦平和運動に加わったアイドルグループ、‘制服向上委員会’
青少年、若いお母さん達だけではない。アイドルグループも反戦平和運動に加担した。‘制服向上委員会’と言う名前のアイドルグループは、去る28日、東京日比谷野外音楽堂で、1万5千名が参加したなかで開かれた公演で反戦の態度を明らかにした。
このグループの斉藤ゆりあ(18)さんは、この日“他人の戦争に関与する事を美しい事と考える人が政治を動かしている”と安倍総理を批判した。彼女はまた、“嫌なことを、嫌と言うのは、大人でも、子供でも、この人達でも同じのはずだ”と気丈に言った。
公演の中で、評論家・佐高信は、“安部総理は中国が脅威だと言うが、(軍隊ではなく)外交で関係を維持することが、政治家の役割”だと指摘した。
日本の全社会的な反戦運動は、安倍支持率を暴落させている
医療関係者達も参加した。‘安保法案に反対する医療・看護・福祉関係者の会’と言う団体は、去る7月10日、安保法案反対廃棄を要求する声明を発表し、現在まで4千余名が賛同した。この団体の或る関係者は、“人命の重要性を医者が最も良く知っている。医者こそ、平和の最前線で活動しなければならない”と語った。
さらに、‘安保法案に反対する学者の会’には、ノーベル物理学賞受賞者である益川敏英・京都大名誉教授など、1万2千余名の知識人達が参加した。(7月27日現在)日本弁護士協会、日本原水爆被害者団体協議会、‘映画人(平和憲法)9条の会’などは、安保法案に反対する抗議声明を発表した。
この様に、全社会的な反戦平和運動の結果は、安倍総理の支持率下落に現れた。保守性向の<産経新聞>の世論調査(18〜19日)の結果、安倍支持は39.3%に、前月対比6.8ポイントも落ちた。反対は52.6%だった。一方、<日経>の世論調査(24〜25日)によれば、安保法案に対する反対は57%に、賛成意見(26%)の2倍を越えた。特に応答者の81%は、安保法案推進に対する安倍政府の説明が不足していると応答した。賛成する国民の69%も、説明が不十分だと答えた。安倍総理は先週、放送に1時間半も出演し、集団的自衛権行使の目的を説明したが、反対世論をひっくり返すには、力不足だった。
▲ 上写真 去る15日、日本衆議院安保法制特別委員会で、野党委員らが法案表決に反対するペーパーを掲げ、抗議している。執権党である自民党と、連立与党である公明党は、法案を強行採決した。 (
AP=ヨンハップニュース)
安倍の軍事大国化は、日本の助けになるのか?柳沢脇二の<亡国の安保政策>
民衆の8割以上がその理由を知らず、反対が賛成の2倍を越える程に、民衆が願わない集団的自衛権行使を、安倍がそれ程に力を込める理由は何なのか。
さらには、日本の集団的自衛権行使は、安倍の主張のように日本の安保、ひいては東アジアの安定と平和に役立つのか、安倍はそうだと強弁する一方、韓国と中国は余りにも当然に、‘NO’と言っている。米国のアジア回帰とかみ合わせ様と、中国対、米・日間の軍事葛藤を激化させる事が明らかだからだ。
そうであれば、日本国内の反対勢力は、この問題をどの様にみているのか。日本の最高安保専門家の中の一人である柳沢脇二の見解を紹介する。
日本の‘独自的’軍事大国化を、警戒しながら利用する、米国の対日政策
柳沢は、1970年東京大学法学部を卒業し、防衛庁に入った後、2009年麻生総理の内閣官房副長官補として公職を終えるまで、40年近く安保問題にだけかかり切って来た方である。内閣官房は、我々に見立てると国務総理室に該当する組織で、彼は2004年から5年間、安保,危機管理担当部長官補(次官級)として仕事をしてきた。その前には、防衛庁防衛情報本部長、防衛研究所長などを歴任した。
在野(民間)でなく、(国家)制度圏内の安保専門家である。そんな彼は、昨年発行した<亡国の安保政策>と言う書籍を通して、安倍の安保政策を強力に批判した。(韓国では去る5月、<亡国の日本の安保政策>という題目で、翻訳出刊された)軍事大国化は日本の安保に害となるだけの亡国の政策だと言うのだ。さらには、米国も日本の‘独自的’軍事大国化を、決して喜んではいないと指摘する。
日本であれ、(米国の統制を抜け出た)強大な覇権国の出現を決して許さない米国
まず彼は、安倍の集団的自衛権行使推進が、‘平和憲法と米・日同盟の調和’を追及して来た歴代自民党政権の安保政策の路線から、離脱した突然変異だと言う。日本の防衛の為だけ武力を行使するという、過去70年間維持されて来た平和憲法の枠を完全に抜け出た為だ。これに対する韓国と中国の反撥は余りにも当然だ。東アジアの平和と安定に妨害となる。それは特に、米国は日本の軍事能力の強化に対し、“本能的に‘歓迎と警戒’を一緒に持っている”と言う。米国の最大国益である自由な経済秩序の維持のために、日本が軍事的にともに参加するのは歓迎するが、日本の軍事大国化が、米国からの自立と言う契機を持つ限り、警戒する他はないと言うのだ。
即ち、日本が米国の下位パートナーとして、東アジアの安保秩序維持に寄与するのは歓迎するが、米国の統制を抜け出た軍事大国化は許さないと言う話だ。米国は、“(アジアで)ロシアであれ、中国であれ、日本であれ、(米国の統制を抜け出た)強大な覇権国が出現する事、ひいては自身の意図しない戦争が始まり、これに巻き込まれる形態で介入する事となるの”を、決して許さないと言う話だ。
“日本は、中国と軍事、経済的に対等になろうとする不可能な夢を追求するな。民主主義、高い生活(人生)の質など、日本の強みを生かした国家を追求せよ”(柳沢脇二)
安倍の集団的自衛権推進は、二重のコンプレックスを抜け出る為の‘あがき’だと、彼(柳沢脇二)は指摘する。
一つは第二次世界大戦の敗戦と、その後の対米従属と言う‘対米コンプレックス’、他の一つは、1990年代以後、日本経済の沈没に続いた2010年、中国の日本経済追い越しと、今は日本をモデルと看做さない韓国によって、日本の価値が貶(おとし)められていると言う被害意識が合わさった‘対中、また対韓コンプレックス’がそれだ。
しかし、米国の戦艦を守ると言う名目で推進される集団的自衛権は、一方では米国と(軍事的に)対等となる為の手段であるが、他方では米国の軍事行動に(下位パートナーとして)協力すると言う根本的矛盾があり、決して‘対米従属’の枠から抜け出る事が出来ないと、彼は指摘する。ひいては、敗戦のトラウマを克服するためには、中国、或いは国際テロ組織との戦争で、勝利しなければならないのに、新しい戦争はどんな遣り方なのか、日本に、傷と一緒に新しいトラウマを作り出すので、これもまた、不可能だというのが、かれの考えだ。結論的に、彼は以下の様に言っているのである。
“結局、日本が敗戦のトラウマを取り除くことは不可能だ。重要な事は、それを鋭意注視しながら、国家が進むべき道を探索することではないか。そのキーワードは、米国と軍事的に対等となることではない。米国から‘精神的自立’を達成することでなければならない。これが、米国に対する従属を招来した‘敗戦からの自立’、そして歴史を客観視する事でのみ達成する事が出来る‘過去からの自立’である”と。
歴史を客観視すると言う事は、過去をあるがままに見る事である。韓国、中国などに対する侵略を正式に認め謝罪することである。そうすることで、これらの国々と真情な和解をすることである。こんな‘過去からの自立’から‘敗戦からの自立’米国からの‘精神的自立’も、可能となるのだ。
柳沢は、或る中国専門家との対談で、日本の崩れ落ちた自尊心を回復する為の方便として、中国と軍事、経済的に対等になろうとする不可能な夢を追求する事よりは、民主主義、高い生活(人生)の質など、日本の強みを生かし、魅力ある国家を追求する事が望ましいと語った。
(訳 柴野貞夫 2015年8月7日)
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