(韓国ネット民衆言論 PRESSIAN 世界ニュース 2014年5月7日付)http://www.pressian.com/news/article.html?no=116941
<韓・米・日(軍事)三角同盟>の設計者が、駐韓米国大使となった
-オバマが、マーク・リッパートを駐韓米国大使に指名した理由-
チョン・ウンシク 平和ネットワーク代表
ソン・キム駐韓米国大使の後任者に、マーク・リッパート(Mark Lippert)が新任大使に内定された。これについて、国内の相当数の言論は、‘米国の駐日大使や駐中大使に比べ、クラスが低い’とか、‘オバマの最側近だから、韓半島関連の懸案に良く対処するだろう’と言う式の報道が、主になされる。しかし、この様な報道は、物事の一端を知るだけのことだ。彼が駐韓米国大使に内定した脈絡と意図を、正確に示して見なければならないと言う事だ。
リッパートは、オバマ行政府が強力に推進している韓米日・三角同盟の設計者の中の一人だ。今年、満41歳であるリッパートは、米上院軍事委員会専門委員とポラク・オバマ大統領が上院議員が在職時期、外交補佐官を経て、オバマ行政府出帆以後には、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)秘書室長、国防部・東アジア太平洋担当次官補、チャック・ヘイグル国防長官秘書室長を務めた人物だ。この様な履歴からも知る事が出来るように、彼はオバマ行政府の核心的な‘軍事戦略通’、として通っている。
リッパートは、4月中旬、ワシントンで開かれた《韓・米・日三者安保討議(DTT)》の米国側首席代表を担当した。次官補級会議であるこの会議の、米国側首席代表は、国防部・東アジア太平洋担当次官補がずっと担当した。ところでリッパートは、国防長官秘書室長の資格で、この会議を直接取りまとめた。そうしては、「この会議が、極めて生産的で実質的だった」と自己評価しながら、韓米日軍事協力を強化すると言う意思を強力に表明している。
▲写真 マーク・リッパート(Mark Lippert) 出処 ヨンハップ
●《韓・米・日三者安保討議(DTT)》は、<コントロールタワー>
ここで、パク・クネ政府と言論が、‘3者安保討議’と名前を付けた会議スタイルの性格を、より明らかにする必要がある。この会議の公式名称は、’韓−米−日3者国防討議(US-Japan-ROK Defense Trilateral
Talks、DTT)‘だ。政府が、国防を安保に、会談を討議に置き換えて呼んでいるのは、この会談の軍事的性格を脱色するためのものと言うのが筆者の考えだ。
“骨の中まで、親米・親日”と言うイ・ミョンパク(李明博)政府の登場を、韓・米・日三角同盟推進の機会として考えた米国は、MB(イ大統領)の任期初年度である2008年に、DTT(韓−米−日3者国防討議)創設を提案した。ウイキリクスが、暴露した外交電文(公電)によれば、2008年4月8日、ソウルで開かれた安保政策構想(SPI)で、米国防部東アジア太平洋担当副次官補―デイビッド・セトゥニーは、“米国は、日本と韓国がともにする、三者安保協議を、熱意を持って歓迎する”と語った。
これに対し、(韓国)チョン・ジェグク国防部政策室長は、“安保脅威が更に複雑になり、超国的(他国的)に変化しており、より強力な三者協力の必要性が増大していると言う点に同意した”。ただ彼は、“あまり目に付けば、中国とロシアが(韓―米―日三者安保協力の強化による)認知された脅威に対処しようと、中―露協力をするだろうと言う懸念を表明した。
米国は、2008年9月8日、ソウルで開かれたSPI(安保政策構想)で、韓・米共同ミサイル防衛体制(MD)機構とともに、韓―米―日三者DTT(3者国防討議)創設を、重ねて提案した。2008年11月4日付、駐韓米国大使館の外交電文によれば、韓国側は独島問題を挙げ、はじめ難色を現したが、“9月22日、チョン・ジェグク政策室長がジェームス・シン国防部次官補に書簡を送り、2008年11月に(ワシントンで)開かれる三者対話に参席する意思明らかにした”と言う。
ここで注目することは、MB政府(李明博政権)が、DTT(3者国防討議)(に対し)どうして難色をしめしたのに参加に旋回したのか?と言う問題だ。
チョン・ジェグク政策室長の発言でも分かるように、MB政府の一部でも、韓−米―日の結束が、中―露の結束を惹起し、東北アジアの新冷戦を招来する懸念があると言う点を知っていた。また、独島問題など韓日関係を考慮する時、韓―日軍事協力に対する国民の拒否感も意識せざるを得なかった。
そうであるにも拘らず、韓・米・日三角同盟に行くためのDTT(3者国防討議)参加を決定したのは、MB政府の<吸収統一>(北韓を南に吸収すると言う)の野望が、‘とぐろ’を巻いていた公算が大きい。
キム・ジョンイル(金正日)委員長が、2008年8月、脳関連疾患で倒れ、MB政府の内外では、吸収統一を推進しなければならないと言う主張が公然と出始めたし、この為には米国は無論のこと、日本とも手を握らなければならないと言う認識が強くなった為だ。
兎に角、2008年11月に始まったDTT(3者国防討議)は、徹底して‘ローキー(low key)’で進められた。MB政府が国民世論を意識した為だ。
しかし韓―米―日 3国は、DTT(3者国防討議)が三者間の安保問題を達成する事にあって、“コントロールタワー”となる事が出来ると言う点で、認識を等しくしていた。ウイキリクスが公開した外交電文によれば、韓―米―日安保対話は、DTT(3者国防討議)、3者合同参謀戦略企画 戦略対話(Trilateral J-5 Strategy Talks)、半民半官形式のトラック1.5協議など、三軸でつくられていた。この中で、DTTは、“指針を定め、政策級の監督を提供するコントロールタワーの役割”をして来た。
MB政府時、毎年1回程度開かれたDTT(3者国防討議)は、パク・クネ政府に入って,しばらく中断された。安倍晋三政権の挑発が継続され、パク・クネ政府が対日強硬基調を維持した為だ。しかし3月下旬、オバマが主宰(しゅさい)した韓・米・日首脳会談が開かれ、閂(かんぬき)は再びはずされてしまった。この会議で、オバマはDTT(3者国防討議)再開を提案し、パク大統領と安倍総理が同意して4月中旬ワシントンで、また開かれる事になった。
●マーク・リッパート次期駐韓米大使、“安倍が、もう少ししなければならない事は何か?”
この会議(4月中旬の上記DTT)の首席代表を務めたマーク・リッパートは、4月30日、或る討論会でこの様に語った。“3国は、今年始め、韓・日関係の緊張にも拘らず、高位級会談と首脳会談を開催した事を土台に、協力関係をさらに強化して行かなければならない。(5月30〜6月1日シンガポールで開かれた)シャングリラ対話を契機に、3国の国防長官が再び一緒に集まり、協力関係を正常化しなければならない。”
<ヨンハップニュース>の報道によれば、リッパート内定者は、 ▲韓・米・日3者MD協力強化 ▲MD機能を搭載した米国のイージス艦2隻、日本に追加配置、▲日本の軍事力拡大と、柔軟性確保の次元で、集団的自衛権推進の歓迎などの立場を明らかにした。
彼のアジア戦略に対する構想は、2013年5月29日付<朝日新聞>英文版に掲載された長文のインタビューを通しても察する事が出来る。彼は、アジアの再均衡戦略は米国の戦略的利益を考慮した“長期戦略”だと語った。アジア太平洋地域で、中国の浮上が“深刻な挑戦”となっているとし、これは2020年まで、米国海軍力の60%をこの地域に集中する事にした背景だと強調した。特に、これは単純な量的配分でなく、“我々の最も能力ある軍事的資産を配置”するものだと強調しながら、“中国の拒否戦略に対抗する為のもの”だと言う点も明らかにした。
彼はまた、“日本が、米国のアジア再均衡戦略(リバランス戦略)に寄与する事が出来るものはなにか”と言う質問に対し、“リバランス戦略は、安保に多くの主眼点を置いているが、究極的には政治的・経済的な戦略”だとし、日本の役割を具体的に列挙した。
環太平洋経済同伴者協定(TPP)に、積極的に参加し、豪州と東南アジア諸国との協力を強化し、“率直に言って、日本がインドと強力な両者の関係を持つ事が大変重要だ”とも言った。
マーク・リッパートは、また、“米国国防部は、安倍晋三総理の安保政策に大変満足している”とし、“(安倍が)もう少し、しなければならない事があるとすれば、韓・米・日3者協力を強化する事”だと強調した。それとともに、“DTT(3者国防討議)のような3者協力を、強化する事が出来る事をするのを願う”と言った。
この様な内容を総合してみる時、マーク・リッパート・駐韓米国大使内定者の核心任務は、韓?米―日三角同盟の構築にあると言う事が出来る。
北韓との実質的な対話と協議は忌避しながら、“北韓の脅威”を根拠に、韓・米・日三角同盟強化を推進すると言うオバマの立場が、マーク・リッパート駐韓米国大使内定者を通して重ねて確認されるようで、まことに憂慮し、苦々しいかぎりだ。
(訳 柴野貞夫 2014年5月12日)
●<MDミサイル防衛体制>と<韓・米・日(軍事)三角同盟>の一翼を狙う安倍政権が、集団的自衛権行使を強行しようとする背景が ここにある(訳者解題)
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