(朝鮮民主主義人民共和国 朝鮮中央通信 2012年8月24日付)
朝鮮反核平和委員会代弁人談話
最近、米国が過去の朝鮮戦争当時、朝鮮半島に核物質を散布する犯罪的な悪巧みを巡らした事実が暴露されて内外の憤怒をかき立てている。
先日、新たに発掘された米連邦捜査局(FBI)の1951年4月20日の報告書「放射能戦」によると、米国は自分らが引き起こした朝鮮侵略戦争が膠着状態に陥ると、朝鮮半島を横切る地域にプルトニウムと核廃棄物をはじめ、大量の放射能物質を散布して、誰も近付けない「非人間地帯」を形成してわが祖国の三千里の領土を永久に荒廃化した不毛の土地につくろうと画策した。
米国は、この計画を立てたのに続き、原子力委員会を動員してその可能性を検討、確認し、米国ユタ州の核実験場で1952年までおおよそ65回にわたってそれに関連する野戦実験を行った。
どれほど身震いする、犯罪的策動であることか。
過去の朝鮮戦争時、米国の重なる惨敗を挽回するために原爆を使おうとした事実は、今日も世人の記憶に生々しく残っている。
今回、米国の歯ぎしりする核物質散布の悪巧みが公開されて、米帝こそ、自分らの侵略的野望を実現するためなら一民族を全滅させ、その生の地盤さえも永久の不毛の地につくることもためらわない希世の野蛮人であり、核犯罪の元凶であるということが再度赤裸々に露わになった。
朝鮮反核平和委員会は、米国の天人共に激怒する核犯罪悪巧みにこみ上げる憤激を禁じえず、正義と平和を愛する全民族と人類の名においてしゅん烈に断罪、糾弾する。
朝鮮半島で戦争の砲声の止んだ時から今日までほぼ60年間、米国は自分らの侵略的な悪巧みを実現するために南朝鮮の傀儡と共に,我々に反対する軍事的挑発と北侵戦争演習を絶え間なく繰り広げて核狂気を振るってきた。
今回、公開された米連邦捜査局の報告書に、核物質の利用を完全に放棄せず、今後も論議し続ける可能性を開いておくべきだと指摘されているのは、米国がいつかは自分らの悪巧みを必ず実現しようとしているということを示している。
今、米国と傀儡好戦狂らが行っているヒステリックな「ウルチ・フリーダム・ガーディアン」合同軍事演習騒動は、まさに、そのような腹黒い下心の発露であり、延長である。
米国が自分らの極悪な核犯罪悪巧みは隠ぺいし、誰それの「核脅威」について喧伝しているのは、彼らこそ、どんなに破廉恥な偽善者であるのかということを全世界に告発している。
特に、わが民族を全滅させようとする米国の凶悪な核犯罪に背を向け、同族を守るための我々の核抑止力に言い掛かりをつけて、反共和国核騒動に執着している南朝鮮傀儡一味のような間抜けな天下の反逆徒党はこの世にいない。
核は核でもって治めなければならない。今回暴かれた前代未聞の極悪非道な犯罪的事実は、核問題を全面的に見直すことにした我々の決心をいっそう固めさせている。
北・南・海外の全同胞は民族分裂の悲劇を強要し、朝鮮半島に核惨禍の危険をもたらす米国とその醜悪な手先である傀儡一味の犯罪的策動を糾弾する声を更に高めるべきであろう。
あわせて、われわれは世界の公正な世論が米国の犯罪的悪巧みに当然な注目を払い、積極的に反対、排撃することを期待する。
2012年8月24日
平 壌
<訳者解題>
韓国の保守系新聞・中央日報は、2012年8月13日付報道で、在米の韓国人ブロガー、アン・チヨン氏が最近発掘した「放射能戦(radiological warfare)」と言うタイトルのFBI報告書(1951年4月20日作成)の内容を伝えた。それによると、「プルトニゥームや核廃棄物など大量の放射能物質を、韓半島を横切る地域に撒布し、誰もが近づく事の出来ない‘非人間地帯(dehumanized aria)’で、南北を‘分ける’と言う、およそ人間の所業とは考えられない、非人倫的方案で、北住民とその国土を攻撃する事が提案されたと言う。(当時、米国は同時に、原爆による北への攻撃を、大量報復戦略としての選択肢として捨てたわけではなかった。)
提案者は、アール・ゴア元副大統領の父親で、当時民主党下院議員だったアール・ゴア・シニアだ。与党議員だった彼は、1951年4月1日(トルーマン大統領時代)、ニューヨークタイムズとのインタビューでこの構想を初めて明らかにした。
報告書には、米国原子力委員会のポール・マクダニエル博士も、ゴアの提案と同じ方式の研究を行い、核物質で‘非人間地帯(dehumanized
aria)’を作るのは可能だとする結論の最終報告書を、4月11日に原子力委員会に提出したと言う。実際米国エネルギー部の「人間放射能被害実態」と言う報告書には、「韓国戦(朝鮮戦争―訳注)と同時に、(原子力委員会による)“野戦実験(field test)”が行われた」と記述されている。
ユタ砂漠のダグウェイ実験場では、1952年までに65回の核実験が行われ、実験にはゴア議員も招かれた。しかし、原子力委員会が必要な核物質生産の為のプルトニゥームと施設が十分整っていない事などが指摘され、最終的には頓挫したが、報告書には、‘非人間地帯’を作る核物質の利用可能性を完全には廃棄せず、今後の論議の可能性をオープンにしておくべきだと主張した」と伝えた。
1945年のモスクワ合意を無視、朝鮮全土の統一独立国家樹立を否定して、南朝鮮分断国家樹立のための、南朝鮮での単独選挙案を国連で強行した米国は、その軍政の下で、傀儡李承晩を中心とする過渡的政権を登場させ、それを後押ししながら、南朝鮮の労働者・農民の数多くの統一に向けての人民抗争を弾圧した。1948年4月以降、朝鮮分断を企む単独選挙に反対する済州島蜂起や、麗水、順天の兵士反乱と南朝鮮全体に拡大した抵抗運動に対し、米国と傀儡政権は徹底的な殺戮で弾圧した。
1947年からの中国共産党解放軍の全土掌握に向けての攻勢から1949年10月の中華人民共和国の成立にいたる、アジア極東地域の資本主義体制の崩壊に危機感を持った米帝国主義は、南朝鮮を極東アジアの資本主義防衛の軍事的橋頭堡にすることを企んだ。
1950年6月の朝鮮戦争とは、米国の傀儡政権に対決した南朝鮮人民が、全朝鮮の統一と独立に向かって北の人民とともに戦った解放戦争であったと言う事実を否定する事は出来ない。
中央日報が報じた、米国による、北部朝鮮に核物質で‘非人間地帯(dehumanized
aria)’を作ると言う卑劣な計画は、この様な歴史の背景の下に展開された。
朝鮮半島(朝鮮戦争)において、地上戦で手痛い打撃を受けた米国が、核攻撃での大量殺りくが最も効率のよい戦争手段だと考え、アイゼンハワー以降の米国歴代政権は、朝鮮民主主義人民共和国に対して、「大量報復戦略としての核攻撃」による威嚇と抑圧の手を緩めた事は1度としてない。
2001年にブッシュ政権は、米国のこれまでの「核による報復戦略」を見直し、報復に限定せず「有事時」には、「慢性的な懸念の対象である悪の枢軸」に対して先制的に核攻撃を行使すると言う「ブッシュドクトリン」を決定した。
停戦協定に違反して、その直後から持ち込まれた核兵器は、1970年代には1000発に達し、現在は韓国から核の撤収が行われたと言うが、その検証手段はない。韓国に出入りする米国の戦艦・軍用機・核潜水艦は、核兵器で武装され、日本の領土におけると同様、核兵器の出し入れは自由だ。
特に、1976年から始まった韓米合同軍事演習−「チームスピリット」は、(今年2012年3月にも展開されたが、)徹頭徹尾、朝鮮民主主義共和国に対する模擬核攻撃訓練と言う性格を持つ物であることを、米ノーチラス研究所が入手した機密文書からも明らかである。(クリントン政権は、ジューネーブ合意で、チームスピリット訓練の中止を約束しながら、実際には北を欺き、北への核攻撃オプションを維持し、米国内の基地に於いて対北核兵器使用模擬訓練を行って来た事も明らかにしている。)
今年2012年8月20日から2週間にわたり現在行われている、韓米連合軍司令部が主管する軍事演習「乙支フリーダムガーヂアン」もまた、米国側から海外駐屯兵力3000人を含む3万人余りが、韓国からは軍団や艦隊司、飛行団級以上の5万6000人余りが参加する挑発的な大規模北核侵略演習である。
米国が、北を核攻撃の目標として残してきた事は、アイゼンハワーからオバマまで、綿々として変わらないのである。オバマが、ブッシュの北への先制核攻撃のオプションを引き継いでいる事は、「チームスピリット」、「乙支フリーダムガーヂアン」演習を継続していることから明らかである。オバマが前倒し受賞した「ノーベル平和賞」に、良心の呵責を少しでも感じるなら、朝鮮民主主義人民共和国への敵対的核侵略戦争策動を、直ちに放棄すべきである。
朝鮮民主主義人民共和国の「朝鮮反核平和委員会代弁人談話」が告発する、米国による、この「非人間地帯」の計画こそ、現在も継続されるアメリカ帝国主義の朝鮮民主主義共和国の人々に対する、非人間的非人倫的抑圧の歴史を実証するものである。 [訳者]
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