[論考]帝国主義列強に対する力関係を劇的に変化させた、朝鮮民主主義人民共和国の人工衛星打ち上げ成功
(その1)
柴野貞夫時事問題研究会
「‘光明星3号’2号機」の打ち上げ成功で明らかになった、朝鮮民主主義人民共和国の、あらゆる分野に応用可能な高度な水準の精密科学技術の力は、日米欧帝国主義列強による抑圧政策(軍事的威嚇・経済制裁)を根底的に破綻させた。
△12月12日平安北道・東倉里で打ち上げられた「‘光明星3号’2号機」(写真出処―労働新聞)
「‘光明星3号’2号機」の打ち上げ成功は、我々に次の事を示唆する。
今、<安倍自民―石原・橋下維新連合>が,アジアと朝鮮に対する侵略と植民地支配を正当化し、憲法改悪と「日米同盟」の下での集団的自衛権行使にとどまらず「核武装も視野に置く」と言う、剥き出しのアジア民衆への非人倫的<戦争挑発行為>を繰り広げている。
あらゆる分野に応用可能な、高い水準の精密科学技術の力で自衛した中国と朝鮮は、かっての、天皇制軍国主義日本に、思うがまま蹂躙されて来た国家ではない。この軍国主義の鼠どもは、朝鮮の衛星打ち上げ成功の事実から、間接的に、多くの教訓をくみ取るべきである。
<安倍―石原・橋下>等、ファシストの鼠どもは、隣国への挑発行為が、(アジアと日本の民衆を一瞬にして火の海に巻き込む)破滅的な現代戦争に結びつく事の恐ろしさを、無自覚に弄んでいる。
日本には、米軍基地が134か所(うち、75%が沖縄に集中)もある、米国の軍事要塞列島だ。全世界で「戦争を生業」とする国家・米国との軍事同盟の下で、日本が(憲法を蹂躙して)「集団的自衛権」を行使すると言う事は、米国が引き起こす戦争に、丸ごと日本が飲み込まれる事を意味する。まず、米軍基地の75%が集中する沖縄は、一瞬のうちに県民140万とともに地上から消えてしまうであろう。
中・朝鮮を相手にした核武装や軍事力強化などと言う<安倍−石原・維新連合>の妄想は、現代戦争が、双方同時の共倒れ戦争であり、世界の破滅であることに盲目なのだ。これが、鼠どもが朝鮮の人工衛星の打ち上げ成功から悟るべき教訓である。
朝鮮戦争の休戦から既に60年、「休戦協定」を「平和協定」に置き換え、極東の冷戦構造を平和構造に変えようと、一貫して呼びかけてきたのが朝鮮民主主義人民共和国だ。
それに対し、朝鮮の体制そのものの崩壊を狙って、軍事的威嚇と経済制裁によって、抑圧を繰り返して来たのが米国と日本だ。
我々は、米国のブッシュ大統領が、イラクへ侵略戦争を仕掛けた時、朝鮮に対して核による先制攻撃を公言した事を決して忘れない。
しかし、朝鮮民主主義人民共和国の人工衛星打ち上げ成功は、その高い水準の精密科学技術の力を見せつける事によって、米国の侵略先制攻撃の代償が、高いものにつくだろう事を思い知らしめたのだ。それは、今までの力関係を劇的に変化させ様としている。即ち、戦争を引き起こすものは、自らも同時に破滅する事を一段と悟らせることとなったのだ。
日本の軍国主義的妄想に取りつかれた 鼠どもも、この事を肝に銘じなければならない。
「‘光明星3号’2号機」の打ち上げ成功は、朝鮮への抑圧政策の軍事的手段を無意味なものとし、経済制裁が、何ら効果がないどころか、朝鮮の科学技術製品と技術力の信頼性を飛躍的に高め、世界に活発な経済活動を誘発していくであろう。
米国には、朝鮮民主主義人民共和国が一貫して主張する「休戦協定の平和条約への転換」を、受け入れる道しか残されていない!!
同様に日本は、朝鮮民族に対する自身の歴史責任を「ピョンヤン宣言」を直ちに実行する事で全うし、抑圧と制裁から、経済と文化活動の交流を通した、平和的協力関係を築くべきである!!
「‘光明星3号’2号機の打ち上げ成功」は、朝鮮民主主義共和国の「精密工作機械CNC」の世界信用度を更に高め、同様に他の製品輸出を拡大し、経済活動に大きく寄与するに違いない。
また、「‘光明星3号’2号機」は、前回4月に失敗した「‘光明星3号’1号機」に搭載されたものから予想すれば、地球観測の為の高性能カメラ、通信アンテナ、データを送る装置をもった実用衛星であり、南北の極軌道を回ることで、主として朝鮮半島を観測し、自国の海洋資源、鉱物資源,気象観測を行い民生に大きく寄与するものとなるであろう。
(1)「‘光明星3号’2号機」に対する「迎撃準備」は、憲法を蹂躙する戦争行為だ
既報の様に、朝鮮民主主義人民共和国は、12月12日午前9時51分、運搬手段としての長距離ロケット銀河3号による「‘光明星3号’2号機」の打ち上げに成功した。朝鮮は、国際法にのっとり、予め国際海事機関(IMO)への事前通報を行い、他国の島嶼や領土の頭上を避けた海上コースを取り、安全対策に万全を期した。
日本の言論は、これらの事実を捻じ曲げ、朝鮮の人工衛星の運搬手段である長距離ロケット銀河3号が、無差別的無警告に日本の領土の上を飛行する<弾道ミサイル>かの如く騒ぎ立て、国民の対北敵対意識を煽り立てた。日本政府と米国は、“迎撃態勢を整える”と称して、迎撃ミサイルを搭載したイージス艦2隻を飛行予定ルートの周辺海域に派遣。防衛省は同日夜、沖縄県や首都圏など計7カ所で地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を、国民が、現に生活する市街地や農地に無差別に配置した。
△人工地球衛星<光明星―3>号 2号機を軌道に正確に進入させた終りなき激情と歓喜ではしゃぐ科学者たち。12月12日 衛星管制総合指揮所で(出処―労働新聞)
これ等の行為は、他国の飛行物体に対する‘迎撃’と言う戦闘行為の準備が、憲法前文と9条及び第2項の重大な逸脱であり、市街地や農地周辺に攻撃武器を配備することは、国民の人権と権利を制限する重大な憲法蹂躙行為である事は明らかである。日本の凡そあらゆる言論報道は、日本全土を、さながら戦時体制下に置くこの様な状況を無批判に垂れ流した。彼等の中で、言論人の倫理的規範としての、憲法の遵守義務、国民の人権と権利の危機に対し、警鐘を筆に託した者を探すのは難しい。
(2)世界の10指に入る、朝鮮民主主義共和国の精密科学技術の水準
「どこに落下するか分からない」と、国家権力が世論に恐怖感をばら撒いた銀河3号のロケットブースターは、本体を切り離した後、正確に予測した地点に落下し、その宇宙技術の高さを世界に示した。
長距離弾道ロケットは、多段ロケットを活用する技術の為、推進システム、段の分離技術、誘導技術等、高度な科学技術の集積からなり、この技術を持つ国は10カ国にも及ばない。朝鮮民主主義人民共和国は、その一角を占める事となった。
韓国は、電子機器、液晶技術など日本の技術の模倣が多いだけで、長距離弾道ロケットによる人工衛星の打ち上げと言う精密科学の集積において、北と比較にならない位、立ち遅れている。日本の言論は、北の「弾道ミサイル」を「挑発行為」と言いくるめる為に、11月29日に韓国が打ち上げる計画だった、「羅老(ナロウ)」号が技術的欠陥から打ち上げられず、過去にも2度失敗した事、また10回も打ち上げ延期となったことも、一切報道しなかった。
韓国の長距離ロケット「羅老」の部品総数15万のうち、ロシア製が12万個、国産が3万個に過ぎないと言う。この2段式ロケットの1段目もロシア製だ。
韓国は国内総生産(GDP)が、朝鮮に対し39倍(2010年)だと自慢し、「北と比べロケットの技術だけが10年立ち遅れている」(朝鮮日報15日付)と言うが、「宇宙発射体の製造能力は、機械工業全体の水準を高めながら発展するものである。」(韓国・梨花女子大 統一学研究院のカン・ホジェ氏)と指摘する言葉に基づけば、人工衛星はその国の科学技術の総合力である。
すべての部品を自ら調達する朝鮮と比べ、15万個の部品のうち、80パーセントを外国に依存する韓国が、「ロケットの技術だけが遅れている」と強弁することには無理がある。米国と一緒になって「戦略的忍耐」なる珍語で、経済制裁と軍事的抑圧を加えれば、「自己崩壊」するだろうと淡い夢想にふけっていた彼等に、今厳しい付けが回ってきたのだ。
(3)どの国も、宇宙開発を通した科学技術の発展を、妨害する事は出来ない
国際法によって各国にあまねく認められた宇宙開発の権利を、朝鮮にだけは認めない、或いは認めたくないと言う列強の卑劣な魂胆は、如何なる言い訳も通用しない。国連安保理が朝鮮に対し、米帝国主義の主導で「非難決議」や「制裁」を乱発するが、それは、その時々の列強間の利害関係と取引で、朝鮮の固有の権利を踏みにじっているだけである。
彼等は、朝鮮の人工衛星運搬手段を、ミサイルと非難するが、韓国や日本の人工衛星の運搬手段をミサイルだと非難した事は1度もない。
朝鮮が今回打ち上げた運搬手段「銀河3号」は、躯体の長さ30m、直径2.4m、重量91tの3段式多段ロケットだ。
それに対し、日本が実用運用する長距離弾道ロケットHUBは、躯体の長さ56.6m、直径5.1m、重量530tだ。「銀河3号」と比較すれば、その2倍近い巨大なロケットである事が一目了然である。
(4)隠された巨大な<大陸弾道ミサイル>を持つ日本
「銀河3号」さえ、1万kmの飛行距離があり、米大陸に到達するが、日本の長距離弾道ロケットは、名実ともに地球をカバーする‘隠された’弾道ミサイルなのである。
韓国も、日本も、人工衛星を打ち上げる手段は、長距離弾道ロケットしかない事を自ら語っているのだ。しかし、それを軍事ミサイルに転用する事を公然と意図し、法的に整備したのは日本政府であって朝鮮ではない。
日本政府は、今年6月「宇宙機構法」の「平和目的に限定」する文言を「宇宙基本法の平和的利用に関する基本理念に準ずる」に置き換え、所管省庁である文科省・総務省に、内閣府・経産省が加わり、防衛省の介入にも道を開いた。これは、日本の宇宙産業の全面的な軍事化への転換によって、人工衛星の運搬ロケットを、何時でも核運搬ミサイルに転換する道を作ったのである。
その日本政府が、「銀河3号」を打ち上げた朝鮮民主主義人民共和国に対して、「挑発行為」と非難し「迎撃する」とする、如何なる道理があると言うのだろう。
(5)最先端の機械製作能力を持つ、朝鮮民主主義人民共和国は、<世界のスペースクラブ>に名を連ねた
朝鮮民主主義人民共和国の科学技術研究の専門家である、韓国・梨花女子大 統一学研究院のカン・ホジェ氏は、2012年12月12日付、韓国ネット言論・PRESSIANでの論文での次のような指摘は、日欧米列強が、朝鮮の人工衛星打ち上げを、単純に「軍事目的と挑発」と非難する事が、根拠薄弱である事を証明している。
http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=10121211173551&Section=05
朝鮮の人工衛星発射は、国家の経済活動の強化と人民生活の向上に欠かせない科学技術の研究発展の道筋に組込まれたものである事を指摘している。
このことは、日欧米列強が、それを阻止したり、妨害したりする筋合いのものではない。自主独立民族国家の道理ある、正当な国家政策である。
カン・ホジェは述べる。“宇宙発射体を自ら(の力で)製作し、人工衛星を打ち上げた国家を称する<スペース・クラブ>に属した国家が、今回の朝鮮を加えて10カ国(米国、ロシア、フランス、日本、英国、インド、イスラエル、イラン、朝鮮)にしかならない理由が、それだけ難しい技術が要求される為だ。
精密工作機械を作る事が出来る国が、<スペースクラブ>に属する国と殆んど同じと言う事実を見ても、機械製作能力が最先端に到達してこそ、宇宙発射体を製作する事が出来ると言う事を知る事が出来る。”と指摘する、
また“宇宙ロケットの製作は、素晴らしい精密度が要求される過程だ。これを人の手で測定しながら進める事はほとんど不可能と言う事が出来る。従って、精密な移送能力と計測能力、そして自動制御機能が備えられた高級なCNC工作機械が必須的に要求される。2009年4月の光明星2号の発射では、既に5軸の
CNC工作機械が開発されていたと推測される。
△CNC全自動工作機械は、朝鮮が開発した先端技術製品である。輸出にも力を入れている。ピョンヤン3大革命博物館にて―(写真出処――柴野貞夫時事問題研究会)
朝鮮の宇宙発射体の製造能力は、機械工業全体の水準を高めながら発展したものと推測される。したがって、人工衛星の打ち上げ試験が正常に行なわれば、北韓が作る機械製品の信頼度が向上される効果がついてくると言う事が出来る。こんな流れで見たら、北韓が強引に人工衛星発射試験を強行する理由が、今後製作し売りたい“北韓製機械製品”の信頼度と、関係あるようだ。”とも指摘した。
次に、朝鮮は、人工衛星にどんな役割を与え様としているのかを具体的な資料から明らかにしていこう。(次回に続く)
<参考サイト>
○朝鮮半島の戦争危機を煽る張本人は誰か (1)
[2011年12月31日更新]
○論評[国連安保理の役割と、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁](1)
[2012年3月31日更新]
○世界を見る−世界の新聞から/「米国のダブルスタンダード−北韓とインドのミサイル発射−」(韓国・チャムセサン 2012年4月23日)[2012年4月27日更新]
○世界を見る−世界の新聞から/「北外務省,安保理議長声明全面排撃(韓国・統一ニュースコム 2012年4月18日付)[2012年4月22日更新]
○世界を見る−世界の新聞から/「西海油田を探査する光明星3号」(韓国・統一ニュースコム 2012年4月6日付)[2012年4月15日更新]
○世界を見る-最新の世界情勢を分析する/「論評 国連安保理の役割と、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁(1)」 [2012年3月31日更新]
○世界を見る-世界の新聞から/「朝鮮外務省代弁人談話」(朝鮮民主主義人民共和国・朝鮮中央通信 2012年3月23日付)[2012年3月27日更新]
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