論考 「安倍政権の、朝鮮学校無償化の根拠法令削除(方針)に抗議する!」(2013年1月23日)
[論考] 安倍政権の、朝鮮学校無償化の根拠法令削除(方針)に抗議する!
朝鮮学校を無償化から排除することは、
朝鮮民族から言語を奪った、植民地支配思想の再現である
<緊急案内>
朝鮮学校への「高校無償化」除外を絶対ゆるさない!緊急抗議集会に参集を!
(時) 2013年2月8日(金) 午後6時受付/6時30分開会
(場所) 橿原文化会館
(呼びかけ) ハッキョ支援ネットワーク・なら
|
柴野貞夫時事問題研究会
<写真上> 1月14日、奈良県橿原市で行われた朝・日友好親善 新春の集い・同胞成人式。
大阪朝鮮高級学校などを卒業し、各方面に活躍する成人たち。この日、「ハッキョ支援ネットワーク・なら」は、無償化から排除された学生らに、各種支援活動で得た支援金を贈呈した。(出処 柴野貞夫時事問題研究会)
●朝鮮民族への敵対感情の醸成を、民衆支配の政治カードとして使う安倍
安倍自公政権は、朝鮮学校無償化の根拠法令そのものを、省令で削除し、朝鮮民族の子弟が民族教育を受ける権利を踏みにじるだけではない。それを通して、日本国民に、朝鮮と朝鮮人に対する「脅威と敵対」感情を広く植え付け、国民意識の国家主義的統合に利用しようと画策している。
安倍は、北への敵対感情を醸成させて、40年にわたる、朝鮮植民地支配を正当化しようと目論んでいる。
朝鮮戦争から今日まで、朝鮮民主主義人民共和国に対する、米国の核による威嚇と抑圧政策に、60有余年間も加担してきた日本は、「反共十字軍」の一員としての働きから、植民地支配の犯罪行為までも「免罪」された気持になっているのだろう。やたらに戦争責任を否定する安倍に、アジアの冷たい目が注がれている。
近代日本帝国主義の危機を一時的に切り抜けられたのは、朝鮮(台湾・満州)の植民地支配であった。日本の支配階級と、その先兵である右翼国粋主義者らは、その「成功例」が、今も忘れられない。いっとき、日本の社会的危機を、階級対立を飛びこえた国民国家の団結に吸収させることに成功したのだから。
安倍を始めとする極右たちが、植民地支配の美化と正当化に固執するのは、再び簡単には他国を侵略出来る時世ではないにしても、資本主義の危機で分裂した日本階級社会を押さえつける事が出来た、あの軍国主義日本の姿の再現を画策しているからである。安倍が「日本軍従軍慰安婦」問題で、朝鮮民族への謝罪を拒み、朝鮮民主主義人民共和国への戦争責任を先延ばしするのも同じ根拠だ。
改憲と軍事力の強化、集団的自衛権の行使で、他国を威嚇出来る国作りに、国民を総動員する事が、資本家階級とその先兵・安倍自公政権の目的である。
安倍は、2004年11月27日、靖国神社崇敬奉賀会主催シンポジュームで愛国心を取り上げ、「国が危機に瀕したとき命を捧げるという人が居なければ、この国は成り立たない」と叫んだ。(靖国神社崇敬奉賀会主催シンポジューム、記録集。「受け継がれた心」安倍晋三。) 資本家階級どもの、私的利害以外の何者でもない戦争に、「愛国心」教育によって子供に死ぬことを要求する軍国主義教育をすることの必要性を演説した。2007年7月、参院選の敗北でノイローゼになってしまった、ひ弱な男が言う言葉か。
我々は、朝鮮学校無償化問題は、単に「人権問題」としてだけでなく、日本資本主義体制の危機を、民衆への一方的犠牲の転嫁で切り抜けようとする資本家階級とその政治的先兵との戦いにならざるを得ないとみる。その意味で、安倍政権下での朝鮮学校無償化の戦いは、全ての民衆による反安倍軍国主義政権との戦いへと向かわざるを得ない。
●朝鮮学校無償化の根拠法令の削除と関連して、朝鮮学校の「一条校」化を語る下村文科相
野田政権は、国会解散の直前の02年末、田中文科相の下で中断されていた、<公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号のハ項>に基づく審査を再開した。
朝鮮学校は、この法律によって、ハ項が規定する「各種学校としての教育施設の体制を整えているのか」を唯一の審査基準として、無償化対象の有無を決定されることとなっていた。授業年数、授業時間数、教員数と専門性、敷地・校舎面積など審査を受ければ「無償化の指定」は、ほぼ確実と言われていた。
しかし周知の通り、「朝鮮学校の無償化」問題に対し、安倍内閣は、その「適用除外」の方針を、下村文科相が02年12月の記者会見で明言した。
この問題を巡って、野田民主党政権と安倍自公政権との対応に、一つの大きな違いがある。民主党政権は、無償化の根拠法令である、<公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号のハ項>に基づく審査を、政治的予断で先延ばししてきたのだが、自公政権は、この根拠条項自体の削除を企んでいるのである。そこにはどんな問題点が隠されているのか。明らかにしなければならない。
下村文科相は02年12月28日の記者会見で、「朝鮮学校については拉致問題の進展がないこと、朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいること等から、現時点での指定には国民の理解が得られず、不指定の方向で手続を進めたい旨を提案したところ、総理からも、その方向でしっかり進めていただきたい旨の御指示がございました。野党時代に自民党の議員立法として国会に提出した朝鮮学校の指定の根拠を削除する改正法案と同趣旨の改正を、省令改正により行うこととし、今後、朝鮮学校が都道府県知事の認可を受け、学校教育法第1条に定める日本の高校となるか、又は北朝鮮との国交が回復すれば現行制度で対象と成り得ると考えているところでございます。」(原文記録のまま)と明らかにした。
朝鮮学校無償化の適用除外の根拠として、「拉致、朝鮮総連との関係」など自公政権の政治的予断と介入で、法に基づく教育権を侵害しようとする点は民主党政権と同じである。
しかし無償化に関する文部省令から、朝鮮学校を適用する根拠となる条項を丸ごと削除する安倍の主張には、「朝鮮学校無償化」適用を、排除する狙い以上のものが見え隠れする。「無償化」を望むなら“学校教育法第1条に定める日本の高校となれ”という下村の発言は、所謂「一条校」として、行政の監督下で学校運営をせよと言う事であるが、それは、問題のすり替えであると同時に、在日朝鮮人の民族教育に制限を加え否定する主張でもある。
朝鮮民族に対する「民族同化」を図り、皇民化政策を推し進めた日帝の植民地政策を正当化する狙いも感じられる。「朝鮮学校無償化」問題に止まらない、安倍の身に染み付いた、アジア蔑視と植民地支配者気取りの醜い姿が目に浮かぶ。
下村はまた、自分達の政治的見解を、国民の名を騙って、「国民の理解が得られない」と言うが、すでに制定された法に基づく執行について、「国民の理解」を必要とするどんな根拠もない。国民を騙す常套文句だ。
● ‘すべての子どもの平等な学習権の保障’は、鳩山政権と日本国家の国際公約
鳩山政権は、その政権公約の大きな柱として、「‘すべての子供の平等な学習権の保障’と言う教育理念を実行」する為、国籍に関わりなく、国公立・私立学校に通う高校生を持つ家庭に、授業料を全額或いは一部支援する「高校授業料の無償化」を約束した。しかしその直後から、朝鮮学校については、政権内部から、朝鮮学校が「北朝鮮の学校」であり、「拉致問題が未解決」だと言う理由で、その適用を除外する動きが継続した。鳩山の後を引き継いだ菅内閣、野田内閣も、朝鮮学校を「北の学校」であり、「拉致の解決」が先と、政治的主張を持ち込んで来たが、政権末期になって、世論の批判の中、政権公約でいう、「国籍に関わりなく、すべての子供の平等な学習権」を認めざるを得ず、審査再開をはかろうとしたのだ。無論、民主党は、省令の削除で、朝鮮学校無償化の根拠条項そのものの削除を図ることは出来なかった。
下村が言う、朝鮮学校が「北朝鮮の学校」とする根拠は、事実を歪曲した政治的偏見である事は言をまたない。多くの韓国の言論が指摘するように、「ウリマルを使う事が出来る在日同胞は、すべて朝鮮人学校で学んだ」のである。その子供達に、民族の言語と文化を継承させたいと願う南・北の父兄によって維持されている事実を、民主党政権は無視してきた。そして、自公政権もまた、同じことを主張する。
在日朝鮮人にとって、幼小学から大学までの課程を持つ系統だった民族教育機関は、朝鮮学校しかない。だからこそ、今も50%以上が韓国籍の子供達だ。
しかし、朝鮮学校が例え、「北朝鮮」の学校であったとして、それが何だと言うのだ。
国際的に、民族教育の権利を蹂躙することは、国連の市民的・政治的権利に関する国際規約27条が保障する、マイノリティーの学習権および、人種差別撤廃協約5条が規定する学習権の平等な保障に違反すると言う指摘から、鳩山政権の公約が実行されたのではないか。これは、民主党の国際公約でもあったのだ。ここに、政府・国家の政治的予断が入る余地はない。如何なる国家にも、マイノリティーの民族教育を支援する義務があるのだ。
●朝鮮人民を植民支配し、民族の言語を奪ってきた日本国家は、どこよりも朝鮮学校を経済的に支える歴史的責任がある
しかも日本国家には、その義務も責任もある。植民地支配下の朝鮮において、1911年8月に公布された朝鮮教育令は、・朝鮮人民を天皇に忠良なる日本臣民に育て、不遜にも日本帝国の下僕としようとした。1938年3月には、改正教育令によって朝鮮語授業を必須科目からはずした。1941年には、朝鮮語の授業自体を禁止し、一民族の言語を奪ったのだ。
更に、日帝が敗北した、終戦間もない1946年当時、在日朝鮮民族はその子弟に、日本帝国主義国家によって奪われた母国の言葉を取り戻そうと、自力で、朝鮮民族の学校を全国600箇所で設立した。しかし、日本政府と、(占領下時期の米国軍政)は、自らの植民地支配に対する反省どころか、朝鮮民族の学校設立に、一貫して反対し敵対してきた。
(戦中から今日まで、朝鮮人民に加えられて来たこれらの事実は、日本国家の支配層だけの責任だろうか。そうではない。日本中に今もはびこる反北敵対風土、朝鮮民族に対する差別意識、日本国家による民衆への策動と組織化があったにせよ、朝鮮民族に対する差別と敵対感情を無批判にうけいれて、国家を下から支えて来た多くの民衆がいなければ、ファシズムにせよ、軍国主義天皇制にしろ、安倍極右政権にしろ、三日も持つものではない。我々日本人は心しなければならない。
いま、安倍を中心とする極右政権は、ことある毎に、朝鮮問題を政治的カードとして使いながら、日本の民衆を国粋主義者に育てる事を目論んでいるのだ。)
この様に、朝鮮人民の民族の言語を奪ってきた日本国家は、ある意味では、他のマイノリティー以上に、その子弟の学習権を支援し、保護する歴史的責任がある筈である。それは、日本国家の戦争責任でもある。
しかしいま、安倍は全く逆のことをしている。朝鮮学校を無償化から除外するために、根拠法令そのものを葬ろうとするこの行為は、民族の言語を奪い、日本への同化を強要してきた日本の植民地政策と何処が違うのか。
我々は、安倍政権に対し、朝鮮学校無償化の実現は、日本軍従軍慰安婦ヘの謝罪と賠償、朝鮮民主主義人民共和国への賠償責任と全く同じ、日本国家が速やかに実行すべき課題だと主張する。
●国家主義・軍国主義によって、資本の為の労働者の「意識改革」、国家に従順な国民の「意識改革」を狙う安倍
2006年9月、小泉純一郎の後任として首相に就いた安倍は、わずか1年の在職期間中ではあったが、小泉と、そのブレーンである竹中平蔵が主導した「聖域なき構造改革」と言う、新自由主義路線を引き継ぎ、資本家階級の執行部、御手洗日経連を支えながら、労働者階級が持つ‘なけなしの権利’に対する無制限な攻撃と隷属的支配を推し進めた。その結果、無権利状態で労働を強制される「非正規職労働者」や、不十分なセーフティーネットの中に放り出された半失業者、そして生活苦に喘ぐ彼等の家族達を、大量に生み出した。
労働者階級に対する過酷な収奪によって、250兆円をため込んだ資本家階級どもの非人間的な仕打ちに対する、労働者の憤怒と抗議が沸き上がった。
当時、彼が主張した‘美しい国、日本’は、過剰生産恐慌によって危機を迎えている日本資本家階級が、労働者階級への一方的な権利剥奪と、搾取と収奪の強化によって乗り切る為には、労働者階級と国民の「国家」への帰属意識を高め、その「国民国家への統合」が、有効な手段と考えているからに他ならない。それは、資本家階級がその「私的利益」に過ぎないものを「国益」と言い換え、国民と国家を一体化し、日本産業の輸出競争力(国際市場競争力)を強化するには、労働者自らが、労働条件と諸権利にたいする剥奪も受け入れ、(国家の為に)犠牲になって善いと思わせる、資本の為の労働者の「意識改革」に他ならない。
安倍が、太平洋戦争の敗北で“失われてしまった日本の矜持を蘇えらせると”して、軍国主義の過去を美化する事に執拗な努力を傾けるのは、彼の家系が、軍国主義と戦争犯罪人の遺伝子を引き継ぐ事にあるだけではない。危機に喘ぐ日本資本家階級の政治的代理人としての現実の役割がそうさせるのだ。
安倍は、その任期僅か1年の間に、「愛国心と国家主義育成」を強調する教育基本法改訂、防衛庁の省昇格、そして何よりも、2007年4月13日、平和憲法を改悪する為の改憲手続き法=国民投票法の衆議院採決を強行した。憲法改正手続きのハードルを限りなく下げる事により、9条改憲と、国民の諸権利や人権の制約を狙う社会に向けて走りはじめた。(安倍は、今回の総選挙において、国政スローガンに、ふたたび‘美しい国、日本’を掲げ、「自民党改憲草案」の実現を公約した)
これ等、舵を大きく右に取った安倍の政策は、日本国家の責任で遂行されたアジアにおける日本軍従軍慰安婦の歴史を一貫して否定する行為に象徴される様に、過去の、日本帝国主義の対外膨張の為の侵略戦争と蛮行を正当化し、侵略の過去史を、≪自虐史観≫だと否定し、これからも国民を動員して戦争をする国家を作り上げていくことを宣言するものに他ならない。
また、安倍がその任期中に強行した「北朝鮮に対する独自制裁」は、朝鮮民主主義共和国の、米国の核侵略と核の脅しに対する自衛的核実験を非難したものであり、いわゆる「国連制裁」を上回る日本「独自」の処置である。しかし、2002年9月17日締結したピョンヤン宣言を、たな晒しして履行せず、日本国家としての戦争責任も取らず、侵略の清算を図るのではなく、逆に、他国に比べ過酷な制裁を加えるという不当な仕打ちだ。
安倍晋二の自由民主党政府は、2007年7月29日の第21回参議院議員通常選挙で敗北、参議院で少数与党となった。安倍は、2007年9月、「病気」を理由に辞職し、自由民主党は2009年8月の総選挙で、「国民の生活第一」と、沖縄普天間基地撤去に象徴される対米関係の見直しを含む「アジア重視政策」を掲げ、国民の支持を集めて地滑り的勝利を収めた小沢・鳩山率いる民主党に、無残な敗北を喫した。
しかし、何ひとつ公約を実行しなかった民主党に助けられ、再び登場した安倍内閣は、彼の言葉を借りれば、「5年前に、やり残したことをする」という。27%の支持で過半数を取った自民党を、脅かす戦いが組まれなければならない。
我々は、安倍に、決して、5年前にやり残した事をさせてはならないのである。この極右国粋主義者の馬脚に、日本の民衆が足払いを食わせる日を準備するのが我々の戦いであり、仕事である。
|