(論考 <ストックホルム合意と日本の独自制裁> 2015年4月10日)
論考<ストックホルム合意と日本の独自制裁>(1)
ストックホルム合意の最大目的は、植民地支配の歴史清算であって、‘拉致問題’ではない
柴野貞夫時事問題研究会
● 安倍政権は、朝鮮総連への強制捜査によって、ストックホルム合意の中心課題が、‘拉致問題’であるかの様に、世論を誤導している
過日の、朝鮮産マッタケの“密輸入に関与した容疑”による、朝鮮総連中央本部議長―許宗萬(ホ・ジョンマン)氏の自宅に対する‘強制捜査’は、2006年以降、歴代日本政府が、 “核とミサイル”を巡る、大国と米国主導の一方的な二重基準に基づく国連安保理決議−“朝鮮制裁”に対し、常に無条件に賛同し、それを対朝鮮圧迫政策として悪用してきた、日本独自の朝鮮圧迫政策―‘独自制裁’にその根拠を置くものである。
しかし、この‘独自制裁’に基づく<強制捜査>は、安倍政権が、2014年5月26日から28日にかけて、ストックホルムに於いて朝鮮民主主義人民共和国との間に交わした、“過去を清算し、懸案事項を解決また、国交正常化を実現する意思を改めて明らかにし、日・朝間の信頼関係を醸成し、関係改善を目指して誠実に履行する事にした”とする日・朝協議の合意を否定する暴挙である。この強制捜査は、主要メデイアの情報と分析によると、安倍政権が朝鮮当局に対し“拉致問題の進展に圧力を加える為に行ったと言うのだ。これは、ストックホルム合意の中身を根本的に歪め、空文化する行為である。
●“横田めぐみ死亡の事実は、日本外務省も共有している”と言う<東亜日報>の報道は、‘救出劇’を演じてきた安倍晋三を袋小路に追い込み、“朝鮮側の調査非協力”を捏造する為に総連・強制捜査を敢行した
“拉致問題の協議の進展”に関していえば、安倍政権は、既に死亡が明確な横井めぐみさんの‘生存’を、何度も繰り返し固執する事によって、青いバッチを胸に付け自ら先頭に立って救出劇を演じてきた。朝鮮側は、合意に基づき、「拉致被害者と行方不明者の調査状況を頻繁に日本側に通報し、調査過程で日本人生存者が発見された場合、その状況を日本側に伝え、帰国させる方向で進退問題に関連して協議して対策を取る様にし、調査が進捗され、合わせて、日本側の提起について、それを確認できるように、日本側関係者の共和国滞在、関係者との面談、関係場所の訪問を実現させる関連資料を、日本側と共有しながら適切な措置をとることにし、調査は迅速に行われ、他の調査の過程で提起される問題は、様々な形式と方法で継続協議し、適切な措置をとることに」努力を傾けている。
しかし、当然ながら‘めぐみ’の生存は確認されなかった。韓国紙・<東亜日報>は昨年11月、この情報を大々的に報道、(めぐみ死亡の確認)は日本外務省も共有していると伝え、驚いた日本政府は緘口令を敷き、被害家族の問い合わせに対してもシラを切って見せた。それは、総選挙を控えた安倍政権としては、総選挙に向けて、ストックホルム合意を政治的プロパガンダに使う胸算用のためにも、極めて不利な情報となったからだ。しかし、‘めぐみ生存’の捏造への固執は、逆に安倍晋三を袋路小路に追い込む結果となった。
● 国民を欺く、安倍の二重の嘘
1945年を前後して共和国領内で死亡した日本人の遺骨と墓地と残留日本人、日本人の配偶者、拉致被害者と行方不明者を含むすべての日本人のための調査を包括に全面的に実施し、調査はいくつかの調査だけを優先せず、すべての分野について同時並行的に進行させ、そのための「特別調査委員会」も誠実に立ち上げた。調査委員会による、全ての日本人に関する包括的調査の同時進行について合意した日本側が、拉致問題を取り上げて、他の調査より優先的に調査すべきと朝鮮側を批判することは出来ないし、出来もしない。
<東亜日報>の報道はその中から出てきたものである。根拠の無い‘めぐみ生存’救出劇を演ずる安倍は、朝鮮当局が調査に十分強力していないからだと言って、総連への“圧力”を加えたのが今回の総連への強制捜査の意味である。
ストックホルム合意が‘拉致問題解決の為の取り決め’かの様に装い、彼等の失態の責任の転嫁を、“北が拉致問題に力を入れていない”と言う根拠の無い情報を流し、‘総連に圧力’を加えた理由である。これは、安倍の二重の欺瞞である。第一に‘めぐみ生存’と‘北の調査不十分’と言う捏造、第二に、ストックホルム合意が‘拉致問題解決の為の取り決め’だと、国民を欺瞞している点において。
ストックホルム合意で、朝鮮側がやるべきことは、誠実に進行中である。一方、日本側が遣るべきことは、一体どうなっているのか?
● ストックホルム合意を行動に移す朝鮮、回避する日本
ストックホルム合意は、日本の責任を、以下の様に取り決めた。
「第一に、共和国側と一緒に、朝・日平壌宣言に基づいて、不幸な過去を清算し懸案事項を解決また、国交正常化を実現する意思を改めて明らかにして、日朝間の信頼関係を醸成し、関係改善を目指して誠実に履行することにした。」しかし、日本は、日・朝関係の信頼関係の醸成どころか、一方的な国連制裁に順ずる独自制裁に固執して、在日朝鮮人の基本的人権を侵害している。
「第二に、共和国側が包括的調査のための「特別調査委員会」を設け、調査を開始する時点で、人的往来の規制措置、送金報告、および、持ちもの輸出申請金額と関連して共和国に対して取っている特別な規制措置、人道目的の共和国国籍船舶の日本入港禁止措置を解除することにした。」しかし、「特別調査委員会」が設置され、調査が開始されているにも拘らず、ほとんどの規制措置がそのままだ。また、人道目的の万景号の入港禁止もそのままだ。
「第三に、日本人の遺骨問題については、共和国側が遺族の墓参り訪問実現に協力してきたことについて高く評価し、共和国領内に放置されている日本人の遺骨と墓地の処理、墓参り訪問と関連して共和国側と引き続き協議して必要な措置をとることにした。」日本政府は2万〜3万と言う日本人遺骨を今日まで放置して来た。日本の民間団体清津会、朝鮮政府の協力を得て、道筋が就きつつある状況だ。
「第四に、国側が提起した過去の行方不明者たちの継続調査を実施し、共和国側と協議しながら、適切な措置をとることにした。」として、十分な継続調査を日朝の間で取り組みを継続する事を取り決め、誠実に進めている状況だ。
「第五に、在日朝鮮人の地位と関連した問題については、日朝平壌宣言に基づいて誠実に協議していくことにした。」としているが、しかし、日本政府は、何一つ、合意事項を守っていない。
我々は、安倍が、ピョンヤン宣言の履行を再確認したストックホルム合意を実際にどの程度真剣に、実行しようとしているのか、本当のところ疑うものである。しかし、外交的取り決めは、厳然として生きているのである。安倍の思惑と関係なく、これを実行させると言うのが朝鮮当局の考えだと推量される。
● ストックホルム合意は、‘全ての日本人に関する包括的調査’を同時並行的に進めるものであり、拉致問題だけを優先するものではない
ストックホルム合意は、朝鮮側がとるべき措置を明確に規定している。そして朝鮮側は、これらに対し、今まで誠実に履行の努力を怠っていない。
「第一に、1945年を前後して共和国領内で死亡した日本人の遺骨と墓地と残留日本人、日本人の配偶者、拉致被害者と行方不明者を含むすべての日本人のための調査を包括に全面的に実施することにした。」
「第二に、調査はいくつかの調査だけを優先せず、すべての分野について同時並行的に進行することにした。」
「第三に、すべての対象者への調査を具体的に真剣に進行するために特別な権限(すべての機関を対象に調査することができる権利)を付与された「特別調査委員会」を設けることにした。」
「第四に、日本人の遺骨と墓地、残留日本人と日本人の配偶者をはじめ、日本人と関連した調査と確認整形を頻繁に日本側に通知し、その過程で発見された遺骨の処理と生存者の帰国を含めた去就問題は、日本側と適切に協議することにした。」
「第五に、拉致問題については、拉致被害者と行方不明者の調査状況を頻繁に日本側に通報し、調査過程で日本人生存者が発見された場合、その状況を日本側に伝え、帰国させる方向で進退問題に関連して協議して対策を取ることにした。」
「第六に、調査が進捗され、合わせて、日本側の提起について、それを確認できるように、日本側関係者の共和国滞在、関係者との面談、関係場所の訪問を実現させる関連資料を、日本側と共有しながら適切な措置をとることにした。」
「第七は、調査は迅速に行われ、他の調査の過程で提起される問題は、様々な形式と方法で継続協議し、適切な措置をとることにした。」
特に第一項目の「1945年を前後して共和国領内で死亡した日本人の遺骨と墓地と残留日本人、日本人の配偶者、拉致被害者と行方不明者を含むすべての日本人のための調査を包括に全面的に実施することにした。」および第二項目の「調査はいくつかの調査だけを優先せず、すべての分野について同時並行的に進行することにした。」事は、日本側も合意した内容である。『日本人の調査』は、“包括的、全面的なものであり”“いくつかの調査だけを優先するものでない”と指摘している。その為に「特別調査委員会」を設け、調査を開始する時点で、人的往来の規制措置、送金報告、および、持ちもの輸出申請金額と関連して共和国に対して取っている特別な規制措置、人道目的の共和国国籍船舶の日本入港禁止措置を解除することにした。約束を履行していないのは日本国家だ。
朝鮮に対する日本の‘独自制裁’は、しばしば恣意的に、その時々の日本政府の政治的目的に利用すると言う手法で行われて来た。その結果、日本を居住地とする朝鮮公民の、人間として平等に生きる権利、在日朝鮮人の人道と生存にかかわる諸権利が、日本政府によって日常的な封鎖を受け、憲法で保障された在日朝鮮人の基本的人権が蹂躙されて来た。‘独自制裁’を理由とした不透明な‘強制捜査’が、在日朝鮮人とその同胞組織や、関連する人々の人権を蹂躙する不当・不法な方法で繰り返されてきた。しかもこの様な日本政府による在日朝鮮人に対する‘独自制裁’や基本的人権の蹂躙は、1910年の‘朝鮮併合’以降現在に至るも、日本の支配者が国家への国民統合の手段として、国民とその社会の中に根強く構造的に蓄積させて来た‘朝鮮蔑視’や、‘民族差別主義’と‘排外主義’を、新たに鼓吹させる上で、大きな影響を与えている。
● 朝鮮にたいする歴史責任とその清算は、日本国家が解決すべき、自分自身の問題である
日本政府は今日まで、朝鮮民主主義人民共和国と在日朝鮮人に対し、その植民地支配の歴史に対する、如何なる責任も果たさず、如何なる清算もして来なかった。米国主導の敵対的朝鮮政策に盲従する前に、日本国家として果たすべき歴史責任に、国民挙げて取り組む姿勢を示すべきにも拘らず、日本の過去責任を否定し回避するばかりか、米国主導の朝鮮敵視政策に狂奔してきた。
日本の商業言論―産経、日経は言わずもなが、朝日、毎日、読売、唯一の独立言論であるアカハタまでが、米国の一貫した‘核による脅し’による朝鮮圧迫政策を容認する国連決議に賛同し、自衛的に対抗する朝鮮国家の政策を“核による瀬戸際政策”と批判し、今日の2400万朝鮮国民が関わる40年の隷属の歴史や、日本に強制連行された数十万朝鮮人の放置された命の重みよりも、たかだか数人の‘拉致被害者’問題を優先化、焦点化する主張を繰り広げて来た。それは、日本の歴史責任を引き伸ばし、回避し、あわよくば免罪に持ち込もうとする安倍政権の魂胆に道を開くものだ。国民をその様に誤導する全ての言論媒体の責任は重く、日本の支配者を支える大きな力になる点で、極めて犯罪的である。我々は明確にしなければならない。
安倍政権は、米国主導の朝鮮圧迫政策に身を置く事で、朝鮮半島とアジアにおける戦争犯罪を糊塗し、責任を回避しようしている。‘独自制裁’は、日本の過去責任を否定し、逃れる為の隠れ蓑となっている。日本の歴史責任は、安保理決議や朝鮮国家の外交政策の当否、ましてや‘拉致問題’に関りなく、実行すべき性格のものだ。これまで日本政府は、朝鮮に対する日本の歴史責任の履行を、核問題とミサイルなど、朝鮮国家の政策に責任が在るかのようにすり替えて来た。そればかりか、その結果、在日朝鮮人の基本的人権を著しく蹂躙して来たのである。日本国家の歴史責任の履行とその清算は、朝鮮当局の政策や国連決議の当否と関係がない。何故なら、それは日本国家が朝鮮に対して、解決義務のある、自分自身の問題であるからだ。さらに、日本国民とその社会の中に構造化された民族差別意識は、国家の責任だけではない。同時に国民一人一人の責任である。
論考<ストックホルム合意と日本の独自制裁>(2)
朝鮮に対する日本の‘独自制裁’は、日本の歴史責任を朝鮮の政策批判にすり替えるもの
柴野貞夫時事問題研究会
● 日本における ‘独自制裁’の適用は、在日朝鮮人の基本的人権を否定する民族差別だ
3月26日、朝鮮総連中央本部議長―許宗萬(ホ・ジョンマン)氏と、同副議長の自宅が、京都、神奈川、島根、山口各県警の、主として公安警察を中心とする「合同捜査本部」によって、不当な家宅捜索を受けた事は先にも述べた。
彼らは、装甲車を引き連れた数十名規模の機動隊を物々しく動員し、まるで武装した不穏分子を鎮圧するかのように、周辺を全面封鎖し、議長の如何なる承諾も無く「証拠物件」なるものを、白昼強盗よろしく強奪して行った。捜査当局によれば、家宅捜査の根拠は、2010年9月に、朝鮮産マッタケを中国産として‘偽り’、1200kgを上海経由で日本に輸入した業者に、総連が‘組織的に関与’し、それが朝鮮に対する日本の‘独自制裁’としての禁輸品目である為に
‘外為法違反’に当たると言うのだ。それが、万に一つ事実としても、既に5年が経過している事は、日本政府によっても微罪として留め置かれていた事案に違いないのだ。今日まで、総連と在日朝鮮人に対する国家権力の捜査手法と‘立件’は、ほとんどの場合、この手を使ってきた。明らかな微罪を、その都度、今更な様に重大な犯罪行為かの様に仕立て上げ、国家権力が恣意的に、その時々の政治的目的に悪用すると言う悪辣極まる手法である。
日本政府は、2008年にも、公安警察と機動隊を動員し、東京新宿の朝鮮会館を中心に全国の総連事務所を襲撃した。その根拠は、‘税理士法違反’である。我々が、なけなしの遺産相続で、弁護士や司法書士の手を借りずに済ます場合、その時、少しでも礼金を受け取れば、厳密に言えば‘税理士法違反’や、‘弁護士法’違反となる。しかし、この手間を職業的な仕事にしない限り、このような行為は、通常社会的に容認されてきたものとして問題にされなかった。総連の“税理士法違反”も、長年問題にもされなかったそんな類のものだった。その様な‘微罪’を、突然ある日に‘朝鮮人の重大犯罪’かのように仕立て上げたのがこの事件である。
日本政府と公安警察による総連関連施設への強制捜査は、2005年から2008年の4年間に23回の事例がある、在日朝鮮人個人に対する強制捜査は、「風邪薬や血圧降下剤」を麻薬とでっち上げたり、核実験や生物化学兵器の材料かのごとく装ったり、常軌を失する捜査が行われて来た。これらの捜査では、必ず在日朝鮮人の基本的人権が乱暴に踏みにじられてきた。「車庫飛ばし」「税理士法違反」『外為法違反』「私文書違反」などなど、これらの微罪捜査で、多くの関係の無い個人情報が、押収物件として強奪された。
● 日本政府によって封鎖された、在日朝鮮人の生存の手段
ここで、‘外為法違反’や、‘税理士法違反’の真偽などが問題なのではない。何が問題か?ここに三つの問題が提起されている。
第一に、朝鮮国家に対する‘独自制裁’なるものを口実として強行されて来た総連と在日朝鮮人に対する恣意的な強制捜査や‘犯罪の立件’により、日本国憲法によって法の下に平等であるべき在日朝鮮人の基本的人権が、重大な侵害を受けているという事実である。安倍政権が、自ら憲法に背き、在日朝鮮人の基本的人権を根底的に踏みにじっている事が問題なのだ。
第二に、<万景号>と言う、国交の無い在日朝鮮人の唯一の祖国への里帰り手段である帰還船の入港禁止から始まり、日常品、医薬品、持ち帰り金の極端な制限まで、在日朝鮮人の人道と生存にかかわる事柄が、日本政府によって日常的な封鎖を受けている事実を直視しなければならない。日本を居住地とする朝鮮公民の、人間として平等に生きる権利を奪っていると言う事実だ。これは、西欧列強の利害関係を通して、彼等の庇護の下で、パレステイナの土地を非合法に奪い、ガザ地区を封鎖して、生活物資と水を遮断し、パレステイナ住民の頭上に、白燐爆弾を浴びせて虐殺を繰り返しているアラブの帝国主義国家−イスラエルの非人道行為と何処が違うと言うのだ。
第三に、安部政権と国家権力による‘独自制裁’とそれを根拠とした‘強制捜査’が、朝鮮民族に対する民族的差別と排外的世論を呼び起こし、またそれを意図的に醸成することに悪用されていると言う問題である。‘独自制裁’なるものは、日本の支配者と、それを支える政治勢力によって、常に意図的、恣意的に拡大解釈され、民族差別と排外主義を醸成する道具に利用されて来たし、今日もそうだ。日本民衆の民族差別意識を掻き立てることで、彼等を軍国主義国家に動員することは、日本帝国主義とその代理人である安倍晋三の理念的旗印である。
● 国家による、上からの民族差別政策と、下からの右翼排外主義的市民運動
安倍政権が執拗にしがみ付く、「朝鮮人学校に対する高校無償化適用除外」は、教育の場を利用しながら、公然と民族差別を煽り立て、朝鮮に対する敵対心を煽り立て、在日朝鮮人の基本的人権を否定し、民族教育権を踏みにじる許し難い蛮行である。これは、民族差別を煽って暴力を振るい、民族教育の現場を襲撃した<在特>を断罪した大阪高裁判決とそれを支持した最高裁判決を否定する犯罪行為だ。憲法9条2項を否定した集団的自衛権の閣議決定は、現行憲法の否定の上に、極右集団の私的取り決めを最高法規と称する、ファシスト集団のクーデターではないか。
安倍と自民極右派による上からの民族差別は、ナチスの突撃隊を髣髴とさせる<在特ファシスト集団>の朝鮮人学校襲撃と、彼等の街頭における排外的暴力示威と言う、下からの民族排外主義と相互に共鳴し合っている。日本政府による‘独自制裁’は、確実に日本民衆の一部を、民族差別主義と排外主義に取り込む役目もしているのだ。
公安警察は、組織としての在日ばかりでなく、在日朝鮮人個人を狙って、微罪を犯罪に仕立てたり、はなから犯罪を捏造する事例もしばしばである。言い換えれば、在日朝鮮人は‘在日である’事を理由に、国家権力の標的になっているのである。これほど不当・不法な国家による犯罪はない。
日本政府の、朝鮮政府に対する‘独自制裁’は、同時に、日本政府の在日朝鮮人に対する謂れの無い‘制裁’となり、その基本的人権を蹂躙する不法行為となっている。米帝国主義の侵略政策に加担する日本政府が、朝鮮に対する政治的圧力として日本の‘独自制裁’を発動する時、それは在日朝鮮人の人権侵害を踏み台に、在日朝鮮人の法の下での平等を否定する事で遂行しているのである。
● 在日朝鮮人は、亡命者でも、政治的避難民でもない。日本帝国主義の植民地支配が生み出し、日本国家が責任を持つべき存在だ
ここで我々日本人が、明確にしておかなければならない事実がある。‘在日朝鮮人’は、日本に在住する他の外国人と比べ、歴史的に大きな違いもつ存在であると言う点だ。日本帝国主義によって、1910年の「朝鮮併合(朝鮮強占)」から、1945年まで、朝鮮半島の暴力的植民支配が生み出した存在である。大部分が、自分の意思で日本を居住地としたと言うのでもなく、国際紛争から逃れてきた避難民や亡命者でもない。日本帝国主義の朝鮮侵略によって、土地を追われたり、日本国家とその傘下企業によって、強制連行で奴隷労働者として連行されて来た人々とその子孫である。その強制労働の現場は、広く日本列島の軍事施設、炭鉱、トンネル、飛行場、ダムなど、過酷な労働現場に広がっている。
しかし、日本の敗亡後も、日本に留まらざるを得なかった人々は、朝鮮公民としての、ふさわしい扱いを受けて来なかった。日本国家は戦後でも、事あるごとに「朝鮮停滞論」に対する「近代化日本」の「優越性」と言う、植民地支配を正当化した思想をぬぐいきれず、(日本人の)アジアと朝鮮人に対する世襲化された民族差別意識を持ち続ける、極右知識人とそれに触発される蒙昧な民衆が存在する。
今も、安倍が声高に叫ぶ‘日本人の自尊心’を拠り所とする、抜き難い‘選民意識’に共鳴する、右翼知識人や言論界が、大手を振り始めている。日本社会に構造化された民族差別は、今日も、日本の支配階級と言論媒体、一部民衆の中に根強く生きている。日本資本家階級は、これを日本の民衆を国家に取り込む階級支配の道具としても利用しつつある。
他の民族や外国人以上に、本来、日本人と同等の法的権利を持たなければ成らないはずの在日朝鮮人が、逆にそれ以外の外国人以下の差別を受けている状況は、全く不当と言わなければならない。
● 立憲主義を装ったファシスト内閣―安倍政権の中枢は、民族差別主義と社会排外主義を主張する、犯罪者の巣窟である在特暴力集団と接点を持っている、山谷えり子・国家公安委員長
安倍政権が、本質的に立憲主義を装ったファシスト内閣であることは、政権の暴力装置の一つである<国家公安委員長>の人事を見れば納得がいく。山谷えり子−前拉致問題担当相・国家公安委員長は、第二次安倍内閣に引き続いて、<国家公安委員長>に留任した。この女は、人種排外主義的ネオナチ集団・「国家社会主義日本労働者党(NSJAP)」との密接な関係を疑われている。ネオナチとのツウショットを外人記者クラブで追及されたこの女は、しどろもどろであった。加えて、2009年の京都朝鮮初級学校への襲撃、2010年徳島県教組襲撃事件、ロート製薬強要行為等で、建造物侵入、器物損壊、侮辱などで、それぞれ計−3年、3年の懲役刑を食らい、服役中の<在特会>構成員―西村斉と荒巻靖彦ならびに、2009年小学校校長を恐喝した元在特構成員・増木などと接点を持っている。山谷えり子が顧問を務める極右団体・NPO法人「教育再生・地方議員百人と市民の会」(http://www1.ocn.ne.jp/~h100prs/)の事務局長は増木だ。
最高裁が、大阪高裁の第二審判決を支持し“在日朝鮮人の民族教育を受ける権利を妨害した”と断罪した犯罪者集団<在特>と親しく接点を持つ山谷は、在特と同じ穴の狢である。犯罪者が、国家公安委員長の席に座っている様なものだ。
今回の朝鮮総連に対する公安警察の襲撃の陣頭指揮を執ったのは、この山谷である。山谷と安倍が、2014年5月26日〜28日ストックホルムで合意した日朝政府間協議を、どのように履行しようとしているのか、筆者は、今も彼等の魂胆を深く疑っている。しかし、安倍が、朝鮮との外交的約束事を守らなければ、世界の笑いものになるだろう事だけは、明らかである。
<参考サイト>
☆
論考/ピョンヤン宣言の履行を10年間も放置する事を正当化する如何なる理由もない (2012年9月17日)
☆ 論考/日本政府は<拉致問題>が決着済みであることを隠蔽している
(2012年5月20日)
☆ 論評/国連安保理の役割と、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁(1)
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