論考 <二邦人の死を利用して<有志連合>の侵略戦争に加担する意思と法整備を明らかにした安倍政権>(2015年2月6日)
立憲的ファシスト集団・安倍自公民政権は、二邦人の死を利用して<有志連合>の侵略戦争に加担する意思と法整備を明らかにした
全国的な党派を超えた、安倍政権打倒の大示威行動を展開しよう!
―米帝国主義に追随し、戦争をする国作りが急ピッチで始まっている―
● 参議院選挙後の、<憲法改悪国民投票の実施>を宣言
● 今国会において、特措法に代わる<自衛隊海外派遣恒久法>の成立を狙う
● <集団的自衛権>を超える、直接的な<戦争参加>のための法整備の検討
● 政府の戦争計画に対して、国民の戦う権利を制約する法整備の検討
● 法と県民の意思を踏みにじり、辺野古基地は、全額国民の血税を投入
柴野貞夫時事問題研究会
日本政府の責任で引き起こされた邦人二人の死を、安保法制の整備に利用する安倍政権
2月2日、国会において、“(イスラム国による人質事件のさなか)ISILと戦う国々へ、2億ドルの支援をする”とした、安倍の中東訪問でのエジプト・カイロ演説が、“非軍事の‘人道支援’に一切触れていないものであり、この様な演説をすれば、二人に危険が及ぶと言う認識はなかったのか”と言う、日本共産党・小池晃議員の追及に対する安倍の返答は、背筋の凍るものであった。
安倍は、“ISILの意思など、忖度(そんたく)する必要は無い”と答えた。これは、今明らかになりつつある人質事件に対する安倍政権の対応の真実の経過と、その中東訪問の、政治的意味を裏付ける言葉である。
安倍は、2月1日、後藤氏が殺害された後の「首相声明」で、“テロリスト達を決して許さない。その罪を償わせる為に、国際社会と連携して戦う”と述べた。
“その罪を償わせる為”と言う文言は、9.11事件や、イラクの<大量殺戮兵器の存在>と言う世紀のデッチ上げで、主権国家イラクに侵略し、ほしいままに、国家テロで大量の民衆殺戮を繰り返して来た、その米国・ブッシュ政権が常用した言葉だ。日経新聞は、安倍が秘書官の原稿に、わざわざこの文言を付け加えさせたと言う。
“償わせる”とは、敵としての報復を意味し、‘戦争を仕掛ける’ことを宣言するものだ。“国際社会と連携して戦う”とは、その’報復戦争’を、米欧・有志連合と共に闘うと言う事を意味する。
イラク戦争での米軍の民衆虐殺を肯定し民間人の犠牲を生む、有志連合のシリア空爆を支持する安倍が、イスラム国家による数人の殺戮を非難するのは大いなる偽善である
安倍は、邦人二人が拘束中も、殺害された後も、ただ空虚に“テロに屈しない。テロとは妥協しない”と、たわごとの様に繰り返していた。米国と有志連合は過去5ヶ月にわたって、1000回を超える空爆を、シリア国家の了承も無く黒返してきた。国際法に照らしても不法な戦争行為であり、<イスラム国家>の戦闘員のみならず、その住民をも巻き込みながらの国家による虐殺行為だ。国家による戦争行為は、テロによる、たかだか一桁の殺戮の何千倍もの戦争犯罪だ。安倍は、テロへの戦いと言いながら、この戦争犯罪の支持を表明してきた。2014年9月23日、岸田外務大臣は、ケリー米国務長官に<イスラム国家>への空爆を明確に支持した。
日本政府と安倍は、邦人が拘束されてから殺害されるまでの全ての期間、その原因が「日本人であることに理由がある」事を、自覚しないか、無視して来た。「有志連合に参加した安倍」と、<イスラム国>から直接名指しされて始めて気が付いたような振りをしていたが、内々自らの行いを振り返れば十分自覚していたのだ。
安倍は、二人が殺害されたあと、輪をかけて、「憲法上、有志連合に対する後方支援は、可能である」「直接参加には法整備が必要」と、自らの責任で引き起こされた二人の死を弄びながら、有志連合と共に戦争に参加する意思を露にした。憲法9条を公然と蹂躙する確信犯としての決意を示したのである。
イラク戦争での、自衛隊による米軍<後方支援>は、憲法9条1項違反と断じた名古屋高裁・青山邦夫裁判長
‘テロとの戦い’とは、絶えず世界の民衆を欺いて、戦争と言う国家主導の大規模テロを正当化する、米欧帝国主義者達の欺瞞に溢れた言葉である。
日本の小泉政権は、 ‘テロとの戦い’を支援するとして、2003年7月、違憲時限立法「イラク特措法」を制定し、<後方支援>と称し、米国を中心とした侵略戦争において多国籍軍の空中給油等の兵站支援と米国兵の輸送を担当した。また‘人道支援’と偽ってイラク・サモアに自衛隊基地まで設置し兵員を送り込み、米国と有志連合のイラク侵略戦争にのめり込んで行った。<後方支援>は、戦争行為における、最も基本的な要件である。
2008年、名古屋高裁・青山邦夫裁判長は判決において、日本自衛隊の<後方支援>としての輸送活動を‘憲法9条1項に違反する’と断罪した。
“バグダッドは・・国際的な武力紛争の一環として殺傷や破壊行為が現におこなわれ、イラク特措法に言う《戦闘地域》に該当する。(また)航空自衛隊の(バグダットへの)輸送活動は、現代戦では、輸送なども戦闘行為の重要な要素であり、多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っていると言える。多国籍軍の武装兵員を戦闘地域のバグダットへ空輸するものについては、他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない。(したがって)空自の空輸活動は、イラク特措法を合憲としても、武力行使を禁止した同法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、憲法9条1項に違反する活動を含んでいる。」(判決要旨)”と断罪した。
安倍晋三は、第1次小泉内閣の、この時、第1次小泉政権の一員(内閣官房副長官)であった事実を想起すべきである。安倍は、イラク侵略戦争が、米国ブッシュ政権が操作した情報の捏造によって世界を偽き、主権国家を侵略した米国の不正な戦争であった事実が明らかになった後も、日本が加担した重大な責任に対し、一言でも謝罪した事実は無い。
イラク侵略戦争では、欧米が桁違いの殺戮蛮行を行った帝国主義者が、武装集団のテロ行為を非難するどんな資格があると言うのか
(第2次小泉政権時)2004年3月、イラク武装抵抗勢力が、イラク・ファルージャにおいて、米侵略軍の軍事下請け会社―「ブラックウオーターUSA」の警備兵4名を殺したが、それに対する米国によるファルージャ住民への‘報復’は、凄まじかった。
2003年4月28日、地元の小学校を米軍基地として接収することに反対する200名の住民に対し、米軍は無差別射撃をし、17名が殺され、二日後更に住民2名が殺された。
ファルージャはスンニ派住民が多数を占めるが、米軍に対する抵抗運動は、シーヤ派住民との共同の戦いとなり、一時包囲した米軍は撤退を余儀なくされたが、11月になって反撃に出た米軍は、市内に留まる住民全てを戦闘員と見做した。家族と一緒に他の町に逃れようとした多数の住民は、ファルージャに追い返され、米軍の虐殺の的にされた。
米軍は、市内を制圧するために、劣化ウラン弾を大量に使用し、住民たちの放射能汚染は、今も継続している。また、国際法が禁止する白燐爆弾(White Phosphorus)を使用した事実も明らかになっている。
人間の皮膚と骨を溶かし、隠れた住民の建物の中の酸素を消費し、窒息させる非人道化学兵器(ジェノバ条約で禁止されている兵器だ)である。2009年1月、パレスチナ・ガザ地区でも、米国から提供されたイスラエルが、これを使用した事実を、英国日刊紙・ザタイムス・オンライン版が報じていた。
欧米有志連合の報道管制にも拘らず、残虐な殺戮の事実が溢れ出た。住民が避難するモスクは、建物毎、爆撃で吹き飛ばされ、数千名の米国海兵隊(主として沖縄から出撃した海兵隊員だ)と有志連合の英国兵が、敵と看做した住民と戦闘員を‘武装集団’として1400人を虐殺し、1500名を‘捕虜’として捕らえられた。これ以外、子供が170人、多くの女子を含む非武装の住民600人が殺された。10日間の米軍攻撃で、スンニ派住民の多いファルージャは「現在も建物の半分が破壊されたままで、下水設備もなく、排泄物が飲料水に紛れ、住民たちは放射能汚染と伝染病に苦しんでいる」と外信は伝えている。
当時NBCニュースが、米軍兵士が、負傷して自由の利かないファルージャ住民を射殺する映像を流し、米軍の残虐行為の一端が明らかになったが、ペンタゴンは正当防衛だと主張した。無垢の住民を虐殺し、塗炭の苦しみに投げ込んだのが、米国を初めとする米欧帝国主義・有志連合の底沼の犯罪的国家テロである。
2004年4月の10日間に亘るファルージャの虐殺を指揮したのは、米国海兵隊中央軍司令官・マティス大将だと言う。第4インターのウェブサイトは、この人物の発言を伝えている。“奴らを撃つのは愉快だ。・・なあ、本当に面白い”と。
これらファルージャの虐殺は、欧米軍の国家による組織テロの、単なる一例に過ぎない。同様の事が、アフガニスタン、リビアでもおこなわれてきた。
日本政府の<米軍後方支援>は、武装勢力による邦人1名の殺害を生んだ
この、米軍によるファルージャの虐殺の前後、武装勢力による日本人誘拐事件が起こった。2004年4月に3名を誘拐し、武装勢力は日本政府に対し、残虐な米軍の後方支援を行う自衛隊の撤退と軍事支援の中止を要求した。彼等は、イラク・イスラム聖職者協会の仲介で解放されたが、他の事件では一人が殺害された。
この時、日本政府は、武装勢力の要求には応じなかった、純粋なNGO活動家として、日本政府の行動に批判的な3名の救出には極めて冷淡であった日本政府は、邦人を保護する如何なる責任も全うしなかった。またそんな力も意思もなかった。
邦人数名の命(いのち)より、主権国家に武力で乗り込み、国家による大規模テロを遂行する米国を、<後方から支援>する事の方が大切だったのだ。被害者3名は、日本政府の対応を批判し、自主的な努力で解放を勝ち取った。
日本政府は、ファルージャの虐殺に見る、欧米侵略軍の蛮行が引き起こした誘拐事件を、被害者の自己責任であるかの様に振舞い、自国民の安全と保護に対する国家としてのいささかの責任も果たさなかった。しかも、日本に帰国した3名に対し、航空運賃まで請求したのだ。
イラクにおける米軍を中心とした侵略軍の残虐きわまる戦争犯罪を抜きにして、起き得なかったこの事件を隠蔽しながら、日本の言論も、日本政府も、全ての責任を被害者に被せる<自己責任キャンペーン>を、大々的に展開したのである。
安倍は、今回のイスラム国(IS)による邦人2名の殺害に至る自らの責任について、米欧有志連合のイラク戦争に於ける残酷な犯罪と、邦人3名の解放に至る日本政府の無責任な対応の記憶に照らして、何を総括したのであろうか。
安倍は恐らく、自分の身に降りかかった災難の火の粉を、他力本願で進めてきた救出劇で、救出に成功しようが失敗しようが、「テロ行為」に対する大キャンペーンをくりひろげ、軍事力の無制限な行使が可能な法整備を、憲法改悪国民投票を視野に入れながら、国民を取り込んで行くことだけを狙った。
邦人の死を、恒常的戦争参加の法整備に利用しようと画策する安倍
安倍は、小泉同様、邦人の安全と保護に何の関心も無いし、そのための努力もしてこなかった。特に安倍が、むしろ関心があるのは、<邦人の安全と保護>が必要となった場合、それがどの様な理由で引き起こされたにせよ、米欧帝国主義諸国の侵略的行為に対して抵抗する人々の抗議の結果であろうと、全てその機会を捉えて、軍事力を行使して解決する道筋を構築しようとしている。
後藤さんの死が確認された後の2月4日、NHK・TVで、特措法に代わる<自衛隊海外派遣恒久法>を今国会で成立させようとして次の様に話した。“今回の法整備は、切れ目の無い安全保障体制を構築するものだ。それによって、国民の命と幸せな暮らしを守り抜いて行くと言うことだ。この様に邦人が海外で危害に会った時その邦人を助け出す。自衛隊が救出する為の法律です。今の法体系では、自衛隊が持つ力を十分活かすことが出来ない”と。
後藤さんの死を、歯止めの無い集団的自衛権の行使に<利用>し、更には、邦人の救出に、他国に乗り込み、軍事力を行使する事、が必要だと公言しているのである。
特措法と言う時限的対応するものでなく、常時世界に戦争を仕掛ける有志連合と連携し侵略戦争に主体的に参加するための恒常的戦争参加の法整備である。
これは、侵略戦争を正当化するものであり、帝国主義諸国によって、軍事的に抑圧された民族や国々からの抵抗によって引き起こされるテロや抵抗運動に対し、邦人保護を名目に武力で鎮圧しようとする侵略戦争そのものである。
過去、天皇制日本帝国主義は、中国東北部の権益を巡って、朝鮮半島は日本の<生命線>であると称し、朝鮮半島を侵略し植民地支配を正当化した。<邦人保護>もまた、東西を問わず、帝国主義列強が侵略戦争を仕掛ける際の、常套的口実である。
安倍が言う、“それによって、国民の命と幸せな暮らしを守り抜いて行くと言うことだ。この様に邦人が海外で危害に会った時、その邦人を助け出す”事など爪の垢ほども考えていない事は明白である。今回の事件に対する日本政府の対応でも、小泉政権時でも、この言葉は、ぞっとする真実から、国民の目をくらます甘言である。日本国民が、こんな見え透いた嘘を見抜けないとすれば、日本は容易く全体主義国家へと転落するであろう。
安倍は、今回の事件で、<2邦人を救出できなかったのは、自衛隊がイスラム国に乗り込んで武力で助け出すことが出来なかった事に原因がある>と言う欺瞞を、国民に植え付け様としている。
こんな安倍の好戦論は、ほとんど気違い染みている。こんな事をすれば、日本は、世界中で戦争の火種を撒き散らす事になるだろう。安倍は、こんな憲法蹂躙発言を何のためらいも無く繰り返している。NHKも、他の大手言論媒体も、憲法尊重義務を課せられている特別公務員たる内閣の長が、憲法を踏みにじる発言をしているにも拘らず、批判も攻撃もせず、おとなしく垂れ流している。
立憲性を形式的には取るものの、安倍の発言が、法律となって進行しているとすれば、もはや日本は国民は、安倍の立憲的ファシズム体制を受け入れていることになる。
安倍自公政権は、邦人3人の命より、<テロとの戦い>を叫ぶ米欧・有志連合の結束を重視した
安倍が、イスラム国家への非難を幾ら繰り返した所で、拘束者を取り返す事は出来なかった。彼の<テロと断固戦う>と言う空言は、自分が引き起こした事件にも拘らず、責任は全て(あの残忍な)<イスラム国>にあると、国民に欺瞞を振りまくパホーマンスなのだ。
<テロ国家>であろうが、敵対する帝国主義国家同士であろうが、示された条件を巡って交渉するのが<外交交渉>と言うものである。
安倍が尊敬するあのA級戦犯だって、国民を<鬼畜米英>と洗脳していたではないか?しかし、最後にはその鬼畜とさえ、外交取引をしたであろう。本当は米欧・有志連合こそ、今日の鬼畜米英と思うが、国家が行使する戦争も、一定の戦闘集団が行使するテロ行為も、彼らが持つ政治的目的を実現する手段としての暴力行為であり、戦争行為なのだ。それをどの様に、(一時的にか、終局的にか、)終息させる道筋を考えるのが、外交交渉=取引と言うものである。
一方の集団が、その政治的目的実現の為、ある取引を提案して来た時、彼らと直接の一切の、如何なる交渉もせず、<テロには屈しない>とか、<米欧、有志連合と結束・連携して戦う>などと、馬鹿の二つ覚えの空疎な叫びを上げていたのが、安倍晋三だ。この叫びは、相手方に<交渉する意思は無い>事を伝えることとなった。実際、彼は、<イスラム国家>と交渉する努力もその気も無かった事は、8月の湯浅さんの拘束から、2月の後藤さんの殺害に至る、全ての経過の中での、安倍政権の動きをみれば一目瞭然だ。
安倍政権は、昨年10月後藤さんの夫人に送られて来た<イスラム国>の手紙とその中身を知りながら、それを一切公表させず隠蔽・無視し、それを何かの交渉に使われるわけでもなく、ただ野晒しにして来た。後藤さんの死の直前になって、我々は、その中身の詳細も知らされず、手紙が何度も送られて来た事だけを知る事と成ったのだ。
これらの経過を考えると、1月16日から、21日に至る、安倍の中東訪問の犯罪性が、浮き彫りになって来る。安倍と自民党は、鬼畜にも劣る連中だ。
2014年8月中旬、シリア北部アレッポで、イスラム国(IS)が、湯川氏を拘束した動画を発表した。日本政府はこの時点で在ヨルダン日本大使館に現地対策本部を設置したと言う。しかしそこで、何かの救出対策が行われた形跡は無い。
2014年9月22日、米国とその有志連合(ヨルダン、カタール、モロッコ、サウジ、クエート、バーレーン、オマーン、アラブ首長国連邦)が、イスラム国が主要拠点とするシリア北部のラッカなど、四つの都市に爆撃を開始した。
これは、シリア領内に対する爆撃であり、シリアの同意も無い明らかな国際法違反行為であった。米国は、当初、イラク侵略の口実として使ったと同じ、常套的な捏造(シリアが国際法に違反する大量破壊兵器と毒ガスを使用したとする)で、シリアへの戦争を画策した。しかし、オバマの目論見は、国連の調査や、同盟的友好国・ロシアの根拠ある調査で、むしろ、米国CIAが育てたシリア反政府派の仕業であることが暴露され、米議会に反対された。英国議会も、米国と同調することを否決した。
シリア政権崩壊を狙う米国は、CIAを動員してアルカイダの諸派の一部を育てながらシリアの内戦を仕掛けてきたが、その中で、明確に反米的な<イスラム国(イラク・シリアイスラム諸国)が、周辺地域のアラブ民衆のなかで、広範な支持を広げてきた。米国にとって、統制の効かないこの<イスラム国>を攻撃する事を口実にして、シリア領内を、主権の国家の了解も無く、シリア・アサド政権の弱体化を図ることを狙って、不正な爆撃を開始したのである。
爆撃とともに、この爆撃を支持する、米国や、英国、フランスのNGO要員、ジャーナリストが、<イスラム国>によって拘束され、爆撃中止のための人質とされた。
2014年9月23日、米軍による爆撃開始の翌日、欧州各国の人質がイスラム国によって続々拘束され、また日本人も同様な事態が予測される中、日本政府は岸田外務大臣が、ケリー米国務長官に<イスラム国>に対する空爆を支持する事を表明したのである。<イスラム国の意思など、忖度する必要など一切ない>と言う訳だ。二人の邦人の死が、この岸田の発言で、確実に前へ一歩進む条件となったに違いない。
2014年10月31日、湯川さんの救出に何の関心も無い日本政府に代わって、救出に向かった後藤さんが行方不明となった。2014年11月になって、後藤さん夫人に対し、<イスラム国>から繰り返しメールが送られて来たことが、今確認されている。夫人は、当然日本政府に連絡をとったが、その中身は明らかになっていないし、政府によって情報遮断が行われた可能性が強い。本来、この8月〜2015年1月16日の間安倍中東出発までの数ヶ月、政府は何をしたのか、国民に明らかにすべきだ。(安倍は今、秘密保護法を盾に国民への責任を回避しようとしている)
2015年1月16日、<相手の意思など、忖度しない>安倍は、<イスラム国>と敵対する有志連合のヨルダン、米国の爆撃を支持するイスラエル、エジプト、そして米国寄りのパレスチナ東岸地区歴訪を開始した。既に、後藤氏夫人に対し、イスラム国からの日本政府に対するメッセージが届けられている中での安倍の行動は、イスラム国への明らかな挑戦状に他ならない。
邦人の安否への気付かい、自らの行動が何を齎すかへの忖度、突きつけられた状況を分析する判断、「テロ」の当否が問題なのではなく、安倍に突きつけられているイスラム国との「外交交渉」が問題である事の認識。これら全てにおいて、安倍の頭は空っぽだった。「テロとの戦い」と言う空虚なスローガンだけが、彼の脳髄を溶かしていたのだ。
今、何故日本人がターゲットになったのかさえ、安倍の脳幹は機能しなかった。もっと明確に言えば、日本人だからこそ、拘束されたのだと言う事は、すでに小泉政権時のイラク武装勢力による邦人誘拐事件で証明済みのはずではないか。
安倍の判断によっては、118万人の在外邦人の生活と生存、安倍に同行した経済ミッションの資本家連中の馬鹿面にも、熱湯が浴びせられるかも知れないではないか。そんな事に<忖度しない>安倍は、1月17日、カイロで次の様に演説した。
“イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止める為である。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します”(要旨)と。
安倍が帰国してから、“総額で2億ドル程度の支援は、人道支援のことを言っている“と主張し、それを受けてNHKを始めとして、あらゆる言論媒体が、2億円の目的を<人道支援>と言い繕って報道していたが、そんな文言は、その演説の何処にもない。それどころか、このメッセージは、” イスラム国と戦う周辺各国“に、日本も同じ立場である事を強調しているに過ぎないのである。
<イスラム国>との一切の<外交交渉>を拒否した日本政府は、まず湯浅さんを見殺しにし、続いて後藤さんを見殺しにするのである。(続く)
(2015年2月6日 柴野貞夫)
(予告) 論考「イスラム国は、どの様に生まれて来たか?」
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