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(韓国ネットニュースPRESSIAN 国際ニュース2011420日)http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=50110420075028&Section=05



     福島原発事故、最悪の場合、東京都は‘無人地帯’となる(その2)


[インタビュー] 小出裕章、京都大学原子炉実験所・助教

<チョン・ウンイ>:再臨界状態となれば、爆発に繋がるのですか。
<小出>:再臨界事態になれば、原子炉が必ず爆発すると考える人々がいるが、そうではない。
広島原爆の原理を例にして説明しよう。一方にウラニウムの固体がある、ウラニウムの固体状態では何も起こらない。他の一方にもウラニウム固体がある。やはり、この状態では何も起こらない。爆弾の形態としてあるだけだ。

爆発を引き起こす為には、両方のウラニウムを火薬の力で一つの場所に集める。ウラニウムは、別々に置いておけば何も起こらないが、一つの場所に集まれば爆発する物質だ。我々はその状態を臨界と言っている。即ち、ウラニウムが核分裂を引き起こす状態だ。臨界が起こすようにする為には、一定の体積の中に一定量以上のウラニウムを集めるようにすればよいのだ。
原子炉は、臨界が生じる様に設計をして、その臨界状態を利用して熱を得るものだ。今は、制御棒を入れて、臨界が起こらないような状況になっている。その制御棒は、中性子を吸収しやすい物質でできている。 核分裂反応が起きるためには、中性子と言う物質(素粒子)が必要だが、制御棒はその中性子を吸収してしまうのだ。この様に中性子がなくなる事で、核分裂反応を止める事ができる。

今、原子炉の炉心では、被覆管であれ、なんであれ、全て消えてしまっていて、どろどろに融けて流れている状態だろう。
さて、それが一か所に集積されれば、核分裂反応がおこる条件を満たす事になる。私はこの可能性は少ないと思っていたが、ひよっとすると、この様な状況が起こり得ると考える。その場合、そこで熱が発生すれば、大概は膨張する事となる。そうなれば、一か所に集まっていたものがまた広がるので、直ぐに臨界状態が収まるだろう。ウラニウムが集まって、核分裂反応を起こし始めても、その場所が膨張されて周囲に広がってしまえば、臨界状態でなくなる。このとき、熱の発生も収まる。こんなやり方で、臨界状態から直ぐ臨界でない状態となり、また臨界となる形態が反復される。私のイメージでは、爆発でなく、びりびりと燃え上がっている状態だ。
この状態で、熱と核分裂生成物である放射性物質が出てくる。熱が発生するという事は、すなわち、原子炉の温度が上がり、同時に燃料がとけるという事だ。

今は、少なくとも臨界状態まではいかず、(燃料の)冷却をする為に外から水を注入している状況だろう。しかし、臨界が始まり、熱が発生する事になれば、温度が上昇し、とけ出す事となるので、そんな場合には水の量を増やしてとけ出さない様にしなければならない。臨界状態になれば、損傷された圧力容器、格納容器を通して、核分裂生成物である放射性毒性物質が漏れることになる。無論、この状態に到達しない様に徹底して対処しなければならない。

<チョン・ウンイ>:その臨界状態が、爆発に繋がったりするのですか。
<小出>:熱が発生すれば、とける現象が起きる。とけて落ちた塊が下に落下することを、炉心溶融(melt down)と言う。もし鋼鉄の圧力容器内の底に水が残っていて、そのメルトダウンした塊が、水の中に落下する事になれば、水蒸気爆発が起きる。それが即ち、破局状態に至ると言う意味だ。
だから、とけない様に水を注入している状況だ。万一臨界状態になれば、冷却がさらに難しくなる。どのようにしてでも、臨界状態に至る事を阻止しなければならないのだ。液体窒素やドライアイスの注入を考慮しているとの報道を聞いたが、結局は水が最善だ。水は、この世で最も比熱が大きい。即ち冷却能力が高いという事だ。


最悪の事態に備えた、退避シナリオを準備しなければならない

<チョン・ウンイ>:今になって、計画避難区域や、緊急時避難準備区域などを新たに設定し、さらに積極的に避難誘導をしていますが、今後もっと大きい事故が起こり得ると意味ですか。
<小出>:そうだ。そんな危険が相変わらず残っているという事だ。私も願わず、枝野官房長官もやはりそんな状況を願わないが、そのような事が起こらないと自信を持って断言する事は出来ない。
可能性が依然として残っている為に講じる措置と見てもよいだろう。どうしてかと言えば、既に問題が発生した状況で手を出そうとすれば、あまりにも遅いからだ。可能性が残っている事に対しては前もって対処をしなければならないと、私は最初から絶えず主張してきた。政府側も今になって、その方向に向けて少しずつ動き始めた、とみる事が出来るだろう。

<チョン・ウンイ>:しかし、日本政府やTVでは、小出氏の様なやり方で話をしていません。「安全だ、構わない」式で今まで話をしてきました。なのに、1カ月が過ぎた今になって、曖昧な用語を使用し、避難区域を拡大し、急に「村を捨てて出なさい」と言っています。、人々はもっと混乱します。
<小出>:日本政府は今まで、こんなやり方で情報を提供してきた。常に楽観的な情報だけを出しながら、「安心せよ、安心せよ」と言ってきた。私は防災というものは、絶対にそんな姿勢で臨んでは駄目だし、悪い方を想定して対策を立てていかなければならないのが、正しい防災の姿勢だと考える。

<チョン・ウンイ>:最悪の状況を想定した時、どの程度の範囲まで影響を及ぼしますか。
<小出>:私が憂慮する最悪の事態が起きれば、1986426日に,、ソ連のチェルノブイリで起きた原子力発電所事故と、同級、或いは、それより上回る規模の事故となるだろう。当時旧ソ連政府は、事故直後、周辺30qの住民135,000名をバスに載せ強制避難させて、そこを無人地帯とした。
その時から、ソ連政府の苦闘が始まったのだが、原子力発電所から200300q離れた地域に猛烈な汚染地帯がある事実をすぐ後に知る事となった。原子炉内に放置されていた放射能は風に乗り移動するが、放射能が風に乗って移動するうちに雨が降ったのだ。
日本では、井伏鱒二氏が『黒い雨』と言う小説を書いている。広島に原子爆弾が爆発しキノコ雲が立ち上った時、その雲の中から降った雨が白い壁に振り撒くや、黒い線を残した。雨の中に‘死の灰’が入っていた。その雨に遭った多くの人々が、被爆を受けたという内容の小説だ。
それと全く同じ現象がチェルノブイリでも起こり、200300q離れた地域でも、濃密な汚染地域が生まれてしまった。その事実を知る事となったソ連政府は、さらに数十万名を強制避難させ、そこを無人地帯とした。
しかし実際には、汚染地帯はそれよりもっと拡大していた。チェルノブイリ原子力発電所から風が吹く方向に位置していた700q遠く離れた場所まで、日本の法律に従えば「放射線管理区域」に指定しなければ駄目な状況だった。
皆さんは「放射線管理区域」には行きたくないが、私はこの原子炉実験所で原子炉や放射能を対象に仕事をしている人間だ。研究室だから汚染された場所ではないが、放射能を取り扱うのは駄目な所だ。
放射能は特別な場所だけで取り扱わなければならないのだ。そこを「放射線管理区域」と言う。そこでは水を飲んでも駄目、たべものを食べるのも駄目だ。寝てもだめ。無論、子供を連れて入るのも駄目だ。そこは、私の様に特別な立場にある者だけが仕事をする為に入る事が出来る。

一般人が「放射線管理区域」に接する可能性があるのは、唯一、病院のX線撮影室や、CT撮影室だけだ。そこに入れば「関係者以外の無断出入り禁止」「妊娠の可能性がある人は必ず医師に知らせること」などの様な案内文が書いてある。即ちこんな場所を「放射線管理区域」と言うのだ。
チェルノブイリ原子力発電所事故の場合、発電所から700km遠く離れた場所まで「放射線管理区域」に指定しなければ駄目な程度に、汚染が拡散した。本来、そこも無人地帯にしなければならない地域だった。その面積は、145,000平方キロメートル。日本全体は、378,000平方キロメートルであり、本州は、240,000平方キロメートルだが、これは本州の約60%と言う広大な地域だ。
ソ連も、そこまで(避難地域に)指定することは出来なかった。このために「放射線管理区域」として指定されなければならなかった区域に、今も600万名の人々が暮らしている。
もしも同じことが福島で起きたら、風の方向によって変わるかも知れないが、日本本州の何%かは、住むのをあきらめなければならない状態となるだろう。私は、この事を憂慮している。

福島(原発)の1基でも爆発が起きれば、発電所周辺に人々が残っておれなくなる。ひとつが爆発すれば、他の原子力発電所のコントロール作業も出来なくなるので、他(の原子炉)も相次いで爆発するだろう。だから、最初のひとつを破局に到達しない様にしなければならないのだ。現在、そんな破局を食い止めるために多角的に努力を傾けている。何よりも優先的に、冷却させる事をしなければならない。(以下続く) 
                                                            (訳 柴野貞夫 2011424

<参考サイト>
281 福島原発事故。最悪の場合、東京都は‘無人地帯’となる (韓国・PRESSIAN 2011年4月20日付)

☆「福島第一原発事故は、原発をめぐる国家と電力会社の御用学者の詭弁を断罪した」