(韓国民衆言論 <週刊ハンギョレ21> 2011年4月1日付)
http://h21.hani.co.kr/arti/world/world_general/29303.html
日本−原発マフィアが招いた大災難
日本政府と原子力業界の‘癒着’が、福島原発の爆発という‘政治災害’を生んでいる
全世界の核実験場、また被爆者取材で有名なドキュメンタリー写真家、モリズミ・タカシ(59)は、福島原発爆発事故発生直後、すぐに現地に直行し、取材をした。電話インタビューで「東京電力が殺人者だとすれば、政府は殺人協力者だ。(放射能濃度が)基準値を越えているのは、既に危険だと言うことだ。基準値が、他にあると言うのか? 放射能で100%安全だと大口を叩く事は誰も出来ない」と、彼は言い切った。
もはや政府も東京電力も信じない
現在の福島原発事故の流れを見ると、日本の原発神話は初めから捏造されてきたものと言っても過言ではない。国民誰もが怒りを隠さない。
独居老人、鈴木ヨコ(仮名)は、福島第一原子力発電所から2kmも離れていない所に住んでいた。去る3月15日、原発半径20km以内の住民疎開令がでるや緊急退避し、17日に埼玉県の‘スポーツアリーナ’待避所に到着した。非現実的なぐらい整然とした、非常対応の見本でもある老人の口から、荒々しい言葉が出てきた。「東京電力が、あまりにも‘安全、安全’と言うので、岩の様に信じてきた。私が、このざまになるとは知らなかった。今の場所で、また働くことが出来るのか。事故の危険は絶対ないと言うし、誰が悪く思うだろう」
去る3月21日、東京電力社長が佐藤雄平福島県知事に面談を要請した。「今、面談などしている時ではない。事態の収拾に全力を傾けてくれ」との、冷たい答えだけ返ってきた。
最も大きい苦痛と憤怒を受けているのは、原発を代価に保障を受けてきた福島地域住民なのだ。
しかし、そこで終わらない。原発事故処理過程から被害者を生み出した。去る3月14日夜、福島原発3号機の水素爆発で、傷ついた30代の自衛隊員1名が、ヘリコプターで移送された。その次の日、新しい被爆者42名が、前日よりもっと酷い負傷の状態で移送された。東京電力社員33名、自衛隊員5名、協力社職員3名、消防士1名だ。給水作業中、水素爆発の余波で負傷し、被爆した可能性が高い。△(写真AP=ヨンハップ)去る3月24日、福島で一人の子供が放射能に被爆されていないか、検査を受けている。
さとう・あきらさんは、屋内退避の半径30km内に居住するが、去る3月18日、幼い子女2名と妻を連れて埼玉退避所に入った。子供のために選択の余地はなかった。サトウさんは、「東京電力が記者会見の時、まるで他人ごとの様に、笑って話をするのに怒りがこみ上げてきた。政府は、放射能流出の可能性は絶対ない、‘大丈夫’とだけ連発するが、頼むから正確な情報をくれ。危険なのは、東京から指揮する彼等より我々ではないか」と、問いただした。
東京足立区‘東京武道館’待避所には、福島原発から半径50km圏に住みながらも、ここに避難して来た人々がいた。アベ・トシユキさんは「もはや、政府も東京電力も信じない」と語った。同じ地域から3代一緒に逃れてきたコウノ・サトルさんも「政府は30kmの屋内退避と言ったが、米国は80kmに避難令をだしたので、心しなければ駄目だと考えた。不安な気持ちで東京へ来た」と吐露した。
飯田哲也環境エネルギー政策研究所長「福島原発は人災」と指摘
一方、原因と責任の所在はもっと狭められる。飯田哲也環境エネルギー政策研究所所長は、<ハンギョレ21>のインタビューで、「福島原発の爆発と火災は、明白な‘人災’だ」と強調した。世界の主要外信は、飯田の影響力ある判断を打電した。(訳注―http://www.isep.or.jp/)言うまでもなく、政府と東京電力による‘人災’だ。
4年前、新潟地震の時も東京電力の原子力発電所‘柏崎刈羽’が地震の直撃をうけた。その時、政府は耐震基準を再検討し、新しい基準を出した。2009年夏、福島原子力発電所を点検した結果、何ら問題ないと発表した。そして今回の事態が起こったのだ。
実際に福島原発に関与した技術者は、「福島第一原発は、日常的に使用する施設と非常用施設すべてを海側に置いていた。‘津波無防備、無対策’の配置だった」と告白した。
監視する側も、監視される側も、みんなぐる(仲間)
政府と原子力業界の露骨な‘癒着’が指摘されている。朝日新聞の時事週刊誌<アエラ>(3月28日付)は、「電力会社は日本列島を10社で分け持つ地域の独占体制なので、互いに競争する必要がない。原子力監督機関である‘原子力安全保安院’とだけ仲良く関係を保てば、経営はまさに盤石という計算だ」と明らかにした。「東京電力が経営する原発で業務実績が悪化しても、東京電力の信用度は落ちなかった」とも言う。政府は、収益を保証する為に費用などを保障する手段を講じてきた為だ。
原子力安全保安院は、原発の安全評価を施行する経済産業省傘下の組織だ。原子力を推進する経済産業省が、‘アクセル’なら、原子力安全保安院は、安全を規制する‘ブレーキ’だ。飯田所長は、「同時にアクセルとブレーキを踏んでいる状態」だと皮肉った。
東京電力は、去る1月、前通商産業省官僚と資源エネルギー庁長官を経験した石田トオルを副社長兼顧問として‘お招き’した。電力業界は、監視する側も監視される側も、すべて‘ぐる’という訳だ。
遡って見れば、2002年、東京電力職員が、福島第一原発の格納容器の試験データーをでっち上げた事実が暴露された。1978年、福島原発3号機の制御棒が空気中に露出した事故も、2007年になってから発覚した。東京電力が事故と事態を欺き隠すのが‘堂に入った’者ら、政府はひと匙すくって‘目をつぶる’達人だ。事故隠蔽が発覚した後でも、政府は東京電力に運転停止命令を下さなかった。「既に安全が確認され、社会的制裁も受けた」と言う理由からだ。
この間、東京電力は、経済産業省と紐帯関係がある財界(日経連)を背景にして、研究費(各大学への寄附講座など)と、広告費(コマーシャルや、ACジャパン→旧公共広告機構は東京電力社長が深く関与している。かれらは、これを世論操作の道具として活用している)などで、学者やメディアを丸めこんできた。また、政界には、電力会社を助けたり手伝う議員が与野両方に多数布陣されている。
国民より、業界の利益が優先する政府
原発の危険性を指摘する市民に対し、政府や東京電力は一様に決まりきったマニュアル的な答弁で一貫している。原子力業界と政府は、「予想する事が出来ない自然災害のせいだ」と言う。原水爆禁止日本協議会の高木ヒロシ代表は、「2007年新潟の柏崎刈羽原発事故の様な重大な事故を教訓にするどころか、今回は米国の勧告も無視し、事故原発に海水を注入するまで時間を無駄に引き延ばした。国民の生命より原子力業界の利益を優先した行為だ」と一喝した。<週刊金曜日>編集者だった評論家・佐高マコトは「福島原発爆発事故は、明確な作業災害であり、政治災害だ」と言う。
そうならば、代案は何なのか。まず、安全管理システムが改善されなければならないだろう。原子力と関係する仕事で‘飯を食って生きる人間’を指して‘原子力村’という言葉を使うが、原子力の分野で経験があって、‘原子力村’と利害が互いに絡んでいない人間であってこそ、厳格に安全をチェックする事ができるのだ。新しい人で新しい組織を構築し、安全基準の作成と点検だけが現実的な対案だ。
飯田哲也所長は、「原子力業界の保険負担も、増やさなければならない」と言う。原発事業が出来ないようにしたり、(採算に)緊張関係がある様にしなければならない、という趣旨だ。現在の1年の納入金は
1,200億円で、これでは今回の様な規模の事故損害賠償に耐える事も難しい。保険額の額を最大100倍まで増やし、原発費用自体を高くすれば、古い原発の寿命延長もやめさせることが出来る。
(訳者注―実際に、原子力損害賠償法はその3条で、異常な天災地変等による免責があり、東電が‘想定外’を強調するのは、その責任保険額が(第一原発で)1,200億であり、それでカバーできない分、国家が入る原子力損害賠償補償契約 1兆6,960億円(2010年度国家予算)で出すとされている。しかし今回の損害の試算では、5兆〜8兆でも収まらないと言うものだ。原子力発電が、如何に馬鹿げたものであり、反国民、反自然、反環境、反人倫的なものか、呆れるばかりだ。これらは、すべて血税から補てんするのである)
根本的には、代替エネルギー(再生可能エネルギー)の拡大を要求する声が大きい。事故時に放射性物質(放射能)を大量に放出し、大きな被害をもたらす原子力に、これ以上期待しない政策を考え出さねばならないのだ。
大地震後2週間が過ぎた3月24日、福島原発3号基復旧現場に投入された作業員3名が、被ばく事故で病院に運ばれた。放射線量の測定もしない作業に投入され、終了後の測定で基準値の3倍を越えて検出されたのだ。東京電力の安全管理、放射能管理体制の不始末がまた暴露された。
さらに、政府は福島原発の緊急事態を契機に、法的放射能の1日許容限度を100mSv(ミリシーベル)から250 mSvにひき上げた。現場作業員達が甘受しなければならない危険性は、ますます大きくなった。
(訳 柴野貞夫 2011年4月4日)
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