(韓国週刊誌 ハンギョレ21 829号 2010・9・10付)
http://h21.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/28080.html
(訳者解題)
○菅政権の下ではじめて出された「防衛白書」(9月10日)のダイジェスト版巻頭には、沈没したチョナン艦の写真を掲載し、北韓の「軍事的脅威」を煽り立てる文言とともに、日本帝国主義の対外膨張を支える軍事力の強化を正当化する為、チョナン艦事件を北の仕業と決めつけ、捏造とデマゴギーで国民をたぶらかす主張で満ち溢れている。菅政権は、白書の7月出版予定を、チョナン艦事件を通して、朝鮮半島の戦争危機を煽り立てる内容に書き換えるために、9月に引き伸ばしたのだ。
○民主党は、日本帝国主義としての自立的・独自的軍拡政策と、その補完的役割である「日米軍事同盟」を通して、日帝の対外膨張手段である軍事的プレゼンスの強化と言う、日本資本家階級の要求を忠実に押し通す資本の番犬である事を明確にさらけ出している。
○民主党が白書の中で、「日米同盟」と「抑止力」をすべてに優先させて、普天間基地県外移設の公約を蹂躙し、集団的自衛権を行使する為の憲法解釈の検討に触れて、自衛隊の海外派兵を公然と肯定している。インド洋・イラク派兵に対する自民党の路線を追認、いや、それを乗り越える勢いである。
公約を破棄し、「普天間から辺野古へ」の移設に固執する民主党は、白書で「沖縄県民の負担軽減と危険性の除去を優先したもの」と言うが、辺野古の住民も普天間の住民同様、沖縄県民ではないのか!
○民主党幹事長の枝野は、改憲議員連盟の中心メンバーであり、前原国土交通大臣は名うての軍拡論者である。市川房江から批判されていた過去を持つ、似非(えせ)「市民活動家出身」の菅は、彼らとともに「抑止力」と言う、資本家階級の私的利益追求のための暴力的手段を臆面もなく国民の利益かの様に、立会演説の街宣車から叫んでいる。
○菅は、「大企業の更なる減税が、雇用を創出する」と言うが、資本家どもの減税による減収は、消費税の10%増税による国民からの収奪で賄うつもりだ。資本家どもの非正規雇用による労働者の使い捨てに道を作っておいて、なにが「雇用の創出」だ。
○次の<ハンギョレ21>の報道は、菅政権の「防衛白書」の捏造に基づく根拠を突き崩し、さる6月26日カナダに於ける8か国首脳会議で、チョナン艦事件を巡って北韓への「制裁」を議題に取り上げるべく、誰よりも声高に叫び、朝鮮半島の戦争をけしかけた菅の卑劣な行為を、浮き彫りにするものとなるであろう。(訳者)
(記事本文)
“ロシア報告書は、韓国大統領に政治的打撃を与えるもの”
クレッグ前駐韓米国大使、<ニューヨークタイムス>のチョナン艦(に関する)寄稿で、‘座礁に引き続いた機雷爆発’と言う結論を紹介。
△写真上 ドナルド・クレッグ前駐韓米大使が、さる8月31日米国<ニューヨークタイムス>に寄稿した文。
チョナン艦(事件)の真実は依然として霧の中だ。その渦中でドナルド・クレッグ前駐韓米国大使が口を開いた。
去る8月31日米国<ニューヨークタイムス>に載せられた‘北韓の反応を探る’(Testing North Korean Waters)と言う寄稿文で、彼は‘ロシア取材源’の言葉を引用し、ロシアがチョナン艦沈没事件に対する調査結果を(全てにわたっては)公表しない理由を明らかにしたのだ。
“ロシアのチョナン艦報告書の公開は、イ・ミョンパク大統領に大きな政治的打撃を与えるものであり、オバマ大統領を苦しめる事となるものだ。”
“イ・ミョンパク政府の、出口なき対北強硬策”
クレッグ前大使はまた、“チョナン艦と関連して、追加対北制裁など、韓国と米国の強硬策が続いているが、一つの問題は、チョナン艦沈没が北韓の所業だと言うことを、すべての国際社会の構成員達が同意することがないと言う点”であり、“北韓が一貫してこれを否認しており、中国とロシアも、北韓を非難する国連安保理決議案に反対した。”と指摘した。
これだけではない。寄稿文には海軍の専門家である4名のロシア調査団が韓国を訪問し、チョナン艦事件の証拠物を直接調査し、沈没が北韓の魚雷攻撃でない、機雷爆発によるものだと結論を下したと言う内容が盛られている。
更に、爆発以前に座礁の痕跡があり、爆発した機雷は、スクリュウに凝固した魚網に付いて上がってきたものである可能性が高いと指摘した内容は、<ハンギョレ>が7月27日報道したロシア調査団要約報告書(下記参考サイト参照―訳者)一致する。
先に、<ハンギョレ21>は、806号表紙の言葉‘ペンリヨン島に、我が軍の機雷100余個が隠れている。’で、“網とか仕掛けをつなぐ線がチョナン艦のスクリュウに捲かれ、その過程で干潟と砂に埋もれていた魚雷が引張られ揚がって来て、衝突したり電気的作用で爆発した可能性”を提起したことがある。
クレッグ前大使は、“チョナン艦沈没原因を取り巻く、相反する解析が、韓半島非核化の様な重要な問題と関連して、(南北関係を)諸軌道に戻して置こうとするどんな努力に対しても、障害物となっている。”と指摘した。彼は特に、韓国の高位外交官の言葉を引用して、“イ・ミョンパク政府は、北韓に通じるあらゆる橋を燃やしてしまい、出口なき強硬政策をとっている。”とし、“現在の南北関係は古典的なチキンゲームに、似て行っている。”と語った。
クレッグ前大使の寄稿文で、ロシアの報告書が言及されながらチョナン艦の真実は今一度論難を呼び起こしているのに、まさに政府は言葉を出し惜しみしている。進んで直ちに公開されなければならなかったわが政府の‘チョナン艦最終報告書’も、発刊が後回しされている。元来7月に出てくる予定だった報告書は何回も延期されたが、8月さえ越えた。最後の校正作業をしていると知れたことさえ、すでに半月を越えた。去る8月にはチョナン艦沈没地点近隣に、古い沈没船舶があると言う報道が出て来た後、報告書発表が延期されたりした。国防部関係者は、9月6日報告書を発表すると予告した状態だ。
チョナン艦・艦長など、勤務怠慢の嫌疑調査
一方、チョナン艦沈没当時、艦長だったチェ・ウォンイル中領(位階名―訳注)が勤務怠慢などの嫌疑で立件され、軍検察の調査を受けていることが去る9月2日知るところとなった。国防部関係者は“チョナン艦事態と関連して、軍検察が去る7月末、チェ・ウォンイル前艦長(中領)とともに、パク・ジョンファ前海軍作戦司令官(中将)、キム・ドンシク前2艦隊司令官(少将)、ファン・ジュンソン前合同参謀部合同作戦本部長(陸軍中将)を、軍刑法35条(勤務怠慢)を適用し立件した後、補強捜査をしている。”と明らかにした。
軍内部では、軍検察の措置に対し“指揮官の作戦指揮が適切だったのかを、事後に司法の物差しで判断することが出来るのか”という反論が、侮れないものとして知れ渡った。これと関連して国防部関係者は、“監査院が通報してきた監査内容を詳細に検討・調査し、刑事また懲戒処罰が必要なのか探っている。”とし、“監査結果以外にも懲戒対象者らの弁明の事実に対して全面的に調査をしている為、時間がかかる。”と語った。去る6月、監査院がチョナン艦事件発生直後、軍の対応などに対する監察を行った後、懲戒を要請した25名の名簿には、チェ前艦長の名前がなかった。(ハ・オヨン記者)
(訳 柴野貞夫 2010・9・11)
参考サイト
10年8月1日更新 世界を見る-世界の新聞から
ロシア海軍専門家グループの‘チョナン艦’検討結果資料 (韓国・ハンギョレ紙 2010年7月27日付け)
☆ 219 ロシアが“‘1番’魚雷、チョナン(天安)艦と無関係、出所も疑問である”と発表した。 (韓国・チャムセサン紙 2010年7月9日付け)
☆ 212 軍事論評員 ≪北魚雷攻撃説≫の真相を論ずる (朝鮮民主主義人民共和国・朝鮮中央通信 5月25日付け)
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