シリーズ2
日本資本家階級とその代理人・安倍自民党政府によって、働く民衆への「極限の収奪」が始まっている。
① 働く民衆の生活を収奪しておいて、苦しむ民衆の「自己責任」とは何事だ!!
● 日本資本主義社会の1969年代、高賃金と失業率1%台の「完全雇用」、そして「福祉社会」の夢をばら撒いた時代は、1970年代から90年代に入り、国家としての責任放棄とも言うべき「規制緩和」と「民活導入」によって終わりをつげた。民衆を大量の失業者として路頭に放り出して、福祉予算を削り、教育・医療・公共交通機関と言った資本家と国家の責任において行われるべき、働く民衆の権利に属する生活条件をも「競争原理」に投げ出した。国家と政治の責任を放棄し「小さな政府」と称してそれを地方公共団体に押し付け、路頭に迷う民衆を「自己責任」として見捨ててきたのだ。2000年代に入り、小泉政権の下で「改革」の為の「痛みの共有」と称して民衆への収奪は医療・住民税の値上げ・減税対策の削除・生活保護の規制等、枚挙にいとまない。働く民衆への極限の収奪によって、未曾有の利益を上げながら、まだ剥ぎ取る事は出来ないか、他に方法はないか頭を痛めているのが今日の日本資本主義社会なのだ。「弱者を守るのが政治の仕事」ではなく「弱者からいくら絞れるかが政治の仕事」なのだ。北九州市は厚生労働省の指導の下で、生活保護の申請者をいかに追い返すかのノルマを担当者に競わせ、本来受給すべき民衆を餓死へ追いやったのである。これはもはや殺人行為ではないか。貧困は「自己責任」なのか?「ワーキングプア」の存在と貧困の責任は、日経連と大企業の経営者を中心とする日本資本主義体制にあることを明らかにしている。2兆円の経常利益を上げたトヨタ自動車は、その労働力の80%を派遣労働者に依存しているが、彼らが手にする賃金は生活保護水準以下である。更に派遣会社と結託し偽装請負によって、派遣労働者雇用の制限規定を誤魔化し、それを摘発されると、“法律が悪い”・“それを変えろ”と開き直っているのだ。
② ILO(国際労働機関)が、日本の労働者の最も悲劇的な指標を指摘したものは何か?
● ILO(世界労働機関)によって、日本の労働者の長時間労働が批判され、1988年閣議決定で年間労働時間1800時間が国際公約として決定されたにもかかわらず、日本の働く民衆の労働時間は大企業を中心に「成果主義」が導入され、逆にサービス残業(残業しても賃金を支払わない)が増加し、過労死や精神疾患の増大を生み出している。2004年9月1日、ILO(世界労働機関)は「より良い世界に向けた経済安全保障」と題する報告で、日本の労働市場に対して次の様に指摘した.「日本では20世紀の最後の3年間に毎年3万人の自殺者を出している。これは交通事故死亡者の3倍である。過労死は大きな社会問題となっている。これは日本の労働者の最も悲劇的な社会的苦痛の指標である。日本の失業者は、実質的には10%を優に越しているであろう」とある。
③ 「労働者派遣法」による「派遣社員」は、日本資本主義の極限の非人間性を示す象徴である。
● 「派遣社員」の実態は今日の日本資本主義の反民衆性とその極限の非人間性を示す象徴であり、日本資本階級がもはや働く民衆に剥き出しの犠牲転化をする事でしか、その社会を維持し得なくなった証左である。職業安定法第44条は「労働者給付事業」つまり「人貸し業」は戦前の天皇制軍国主義を国家イデオロギーとして、民衆を支配した日本資本主義の下で働く民衆の人権を否定し、監禁労働を強いた「タコ部屋」につながるものとして、これを禁止してきた.(日本の鉱山・土木建設国策工場等で強制連行による中国人・朝鮮人労働者の強制労働も同時期に行われていた。)それは受け入れ企業の雇用責任からの逃亡のみならず、労働者の中間搾取と劣悪な労働条件の温床となり、同時に正規職員の労働条件をも引き下げ、不安定な労働環境を生み出すものとして、これを犯した者には一年以下の懲役と罰金を課して来たのである。しかし、日経連と大企業は正規職員に必要な労基法や労働者法規(労働災害・労働安全法・健康保険・雇用保険)などの適用から除外される派遣社員を使い捨て、自由な安い労働者として全面的な導入を画策、法改悪に向けて動き、1986年まず専門業務に限定して「労働者派遣法」を成立させた。ここに「人貸し業」が合法化された。1970年代から始まる日本資本家階級の「臨調」路線に基づく労働者の一方的な合理化・首切り、そしてこれが一番問題であるが、それへの抵抗と闘いを放棄した「連合」を中心とする労働者組織の体制内化による、働く民衆の主体の解体こそが、労働者の権利を守る法の一角を反故にする事態を招いたのである。資本の側は労働者の間接雇用の制度化によって、直接責任を逃れる違法行為を「合法化」したのである。
④「派遣社員」の“保護規定”をも破り、それを法改正で“合法化しようとする資本家と安倍自民党政府の実態とは!!
● 1999年に入ると、専門業務13業務に一般業務26業務が加わり、ほぼ全面自由化された。この資本による狡猾な雇用形態は、同一職場で正規労働者と全く同じ労働を強いられながら法の保護を受けず、派遣業者のピンハネにより低賃金に押えられ、二重の搾取の下で1600万人の非正規雇用労働者を生む事となる。2003年にはそれまで禁止されていた「製造業」(自動車・電気等)にも導入、解禁となった。製造業では「派遣労働」と言う労働形態が、正規労働者を派遣社員に置き換えられる可能性が一番高く、労働条件の質の低下を生みやすいとして最後まで禁止されて来たのだ。この改正法では同時にこれまでにも、雇用側企業の責任逃れとそれが生み出す劣悪な労働条件の中で労使トラブルが続発した為、派遣労働者の保護の為に企業に対する義務を取り決めた。即ち、労働者業種別の派遣期間の制限(1年~3年)を越えた場合、受け入れ企業に派遣労働者を優先的に直接雇用(正社員化)する義務を課したのだ。(しかし義務規定には罰則はない)所が、製造業への導入解禁により、競って正社員を派遣社員に置き換えて来た大企業は、派遣業者と結託し「派遣契約」を「請負契約」だと偽装し、この派遣労働者の保護規定からも逃れようと、更なる違法行為を重ねた。
⑤ ホワイトカラーエグゼンプション制の導入は“8時間労働制”の否定である。
● 昨年、通常国会で日本共産党の市田書記長が、大企業における(トヨタ自動車・キャノン・松下電気産業等)この偽装請負問題を取り上げ、一般世論に知れわたる所となったが、この批判に対して、自らも偽装請負の張本人である日経連会長でキャノン社長の御手洗氏は「法律が悪い、法改正すべきだ」と開き直った。これは「8時間労働」の否定に他ならない労働時間規制の除外・ホワイトカラーエグゼンプション制と同様、働く民衆の犠牲の上に、自らの利益の為には、力ずくで「違法を合法化する」資本階級らの剥き出し的な独裁的支配の内実を暴露している。トヨタ自動車・松下電器産業等の日本を代表する企業が、競って派遣労働を導入しこの偽装を繰り返して来た。トヨタ自動車は、前日本経団連会長の奥田氏の企業であるが、系列下請け企業を含め、実に80%が派遣労働者によって占められている。トヨタ自動車の2兆円と言う未曾有の経常利益(2006年度)は、実にこの「使い捨て労働者」によって支えられているのである。2005年、厚生労働省賃金構造基本統計調査によれば正社員の平均年収(50歳~54歳)、699万円に対し、派遣社員は328万円と半分以下である。生涯賃金は四分の一だと述べている。生活保護世帯400万に対する生活保護制度自体の解体を画策し、派遣労働者1600万人を生活保護の給付水準以下に押えんとする日本の資本主義とは一体何者であるのか。民衆の悲惨な犠牲によってしか成り立たぬ社会とは、社会の非人間化・腐敗化によってしか維持できない展望なき社会の事である。それは日本資本主義の体制崩壊の予兆でしかない。日本の資本階級と執権政党は、その事を改めて心に刻まなければならない。
|
|