(報道記事- 「福岡事態は、玄海原発をめぐる 国家と電力会社の御用学者達の詭弁を断罪した」2011年4月8日)
福島第一原発事故は、原発をめぐる国家と電力会社の御用学者達の詭弁を断罪した
<佐賀県・九電玄海原発3号基をめぐる「公開討論会」の議事録のなかに、国家と電力会社による、民衆欺瞞の担い手としての「原子力学者の姿を見る!>
○読売新聞は、10日、「国際原子力事故評価尺度(INES)」で、福島第一原発事故は商業炉の事故としては初めての、レベル6(重大事故)となると報道した。これは、米国のスリーマイル島の事故より大きく、ロシアのチェルノブイル事故に限りなく近づくものであると。
○原発を国策として強行して来た国家と東電は、福島4つもの原子炉格納容器の爆発を予感させる同時多発的炉心溶解の進行の中で、「冷却すれば汚染水が増大する」と言う、相反する作業の出口のない袋小路に陥り、「廃炉」の見通しも立てられず、今、日本民衆と原発労働者に対し、甚大な生命の危機と生活環境の半永久的破壊を押し付けようとしている。
○福島事態を通して、原発の危険性は、なにも「津波対策と安全管理」だけにあるのではなく、原発そのものが依って立つ「核爆発の利用」そのものにある事が、日毎明確となっている。
○9日の記者会見で、経済産業省原子力安全・保安院のスポークスマン、西山英彦は、「いままで、原子炉は5重の壁で守られ、原子炉が破壊される様な事はないと考えて来たが、この考えは再考しなければならない。」と口をすべらした。彼がどんなやりとりの中で語ったのかは、分らないが、これはこれまでの、国家と電力会社の「原子炉の破壊はあり得ないこと」を前提とした、原発推進の根拠を全面的に否定し、福島第一原発の深刻な事故が自分達にあった事を認定するものに他ならない。
○2005年12月25日、佐賀県は、九州電力玄海原発3号基のプルサーマル発電を容認する為の世論操作の一環として、反対、推進双方の意見を公平に聞くふりをした、「公開討論会」を開催した。(九電社員である父親を持つ古川知事は、2006年3月26日、プルサーマルの受け入れを決定した。)
○「玄海原子力発電所3号機プルサーマル計画の安全性について」とする、この「公開討論会」は、主として、国家と九電側を代表する「プルサーマル」推進論者である二人の「学者」、九州大学大学院教授・出光一哉、東京大学大学院教授・大橋忠弘。一方、原発推進に反対する立場から、京都大学原子炉実験所助手(当時)小出裕章、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表小山英之、及び「プルサーマル」に慎重な立場の神戸大学海事科学部助教授 山内知也。以上5人のパネリストによる(会場参加者の質疑応答を含めば)4時間以上に亘る討論となった。この議事録を読み進むと、ここでの「推進派」の九大教授・出光と東大教授・大橋の、言葉は多いが、にも拘らず中身の貧弱な論拠が、「原発の絶対的な安全信仰
」だけを前提としただけのものと覗えて、「原子力学者」達の貧弱な知的レヴェルを思い知り、この彼らが日本の原子力行政の軸にいすわっていたのかと顧みる時、慄然とすると同時に、福島事態を前にその「信仰」が音を立てて崩れるさまを見て、彼等に滑稽さと哀れみの情さえ感じるのだ。
○しかし、彼等をはじめとする、この国家と電力会社の待女達の役割は、決して軽いものではない。一つの歴史的事実に重ね合わせることが許されるかも知れない。アウシュビッツ・ヴィルケナウ捕虜収容所のガス室に、ユダヤ人を「快適なシャワールーム」と偽って送り込んだナチスと、「学者の権威」で、繰り返し原発とプルサーマル発電が絶対安全だとの主張を繰り返して、東北の民衆を死の危険にさらしてきた「学者達」との間に、どんな違いがあると言うのか?
○大橋と出光二人は、この「公開討論会議事録」で、次のように語る。(すべて議事録のまま、しかもほんの一部を紹介する)
@ 「格納容器の破損なんてのは、1億年に1回起こるか位の確率だ。」、
A 「原子力発電所は、安全なものです。核納容器が破損する事は物理的に考えられません。放射能被害が顕著に外に出て起こるという事はあり得ませんから、是非心穏やかに暮らしていけるように、我々のPRと言うものもしていかなければいけないと思っています。」
B 「皆さんは、原子炉で事故が起きたら大変だと思っているかもしれませんけど、専門家になればなるほど、そんな格納容器が壊れるなんて思えないんです。水蒸気爆発が起こるわけがないと、専門家は皆んないっていますし僕もそうおもうんです。」
C 「安全性について、本当に専門家として、どうしてこう言う事をこんなふうに議論する必要があるのか?と思うくらい、何の問題もないと思っています。そこに何か社会的インフラストラクチャーの施設があるよりもはるかに安全だと思っています。」
D 東大大学院教授大橋は、挙句の果てに、会場との質疑応答で「これだけ話をしているのに、聞く耳をもたないのか!」と会場に参集している人々を恫喝する始末である。
E 大橋はまた、プルトニュームの毒性について、「プルトニュームは、実際には、なにも怖い事はない。プルトニュームは水にも解けませんし、仮に体内に水として飲んでもすぐ排出されてしまいます。」と答えるのだ。(大橋のこの主張は、すぐさま小出裕章氏によってその毒性の恐ろしさを理解していないと次の様に反論された。“毒性と言うものは、その取り込みかた依って異なる。プルサーマル原発からプルトニュームは気体となって流れてくる。プルトニュームがどれだけ猛毒かは、原発の是非を問わず、どんな世界の学者も共有する認識だ。”と。こんな荒唐無稽な発言をいたるところで展開する推進派学者達の発言が、この「討論会議事録」を読めば溢れかえっている。)
○これら推進派学者らに対し、彼等が民衆をたぶらかす為に意図的にやってきた事なのか,あるいは、絶対的安全信仰の虜となった結果なのかは別として、京都大学原子炉実験所助手(当時)小出裕章、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表小山英之、及び「プルサーマル」に慎重な立場の神戸大学海事科学部助教授 山内知也達三人は、彼等の論拠をことごとく鋭く批判し、追い詰め、彼等の行動が、必ず原発所在地域の破局的な結果を生み出すものとなると言う、今日の福島原発事故を予見した論拠を提示している事も、この議事録から知ることが出来るであろう。
○これら、国家と電力会社お抱かえの「学者」達の主張と根拠は、福島原発事故と言う、蔽い難い歴史的事実の前に音を立てて崩れて行った。彼等の犯罪的な民衆への欺瞞は、この佐賀県の九電玄海原発3号基をめぐる「公開討論会」の議事録のなかに凝縮されているが、これは同時に、今日までの国家と電力会社の民衆欺瞞の共通したシナリオとして、読み通す価値があると考える。
○当研究会は、以下の議事録が膨大な字数にのぼるので、重要な項目はアンダーラインを引き、要点を読み取りやすくしたので利用していただきたい。なお、テーマから重要でないと考えたパネリストと、各パネリストが示した図表は省略してあるので、必要な方は直接佐賀県のHP確認をしてください。
2005年12月25日・佐賀県・九州電力プルサーマル公開討論会・議事録から
http://www.saga-genshiryoku.jp/plu/plu-koukai/gijiroku-1.html
1.テーマ玄海原子力発電所3号機プルサーマル計画の安全性について
2.開催日時平成17年12月25日(日) 13:00 〜 17:30
3.開催場所唐津ロイヤルホテル
4.参加者(パネリスト)九州大学大学院教授出光一哉
・東京大学大学院教授 大橋弘忠
・京都大学原子炉実験所助手 小出裕章
・美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表小山英之
・拓殖大学海外事情研究所長 森本敏
・神戸大学海事科学部助教授 山内知也
・(コーディネータ)科学ジャーナリスト 中村浩美
・(オブザーバー)資源エネルギー庁 大臣官房参事官 野口哲男
・原子力安全・保安院 原子力発電安全審査課長佐藤均
・原子力安全・保安院 原子力安全広報課長伊藤敏
・原子力安全委員会事務局 審査指針課
・安全調査管理官吉田九二三
・原子力安全委員会 原子炉安全専門審査会委員更田豊志
・九州電力(株) 取締役 原子力本部長樋口勝彦
【中村コーディネータ】
それでは早速ですけれども、パネリストの皆さんからプルサーマルの安全性に関するそれぞれのご意見をお伺いしていきたいと思いますが、まずは私のお隣の側からぐるっと回りたいと思います。出光さんどうぞ。
【九州大学大学院 出光教授】
最も厳しい条件の評価で燃焼度が1,200MWd/tと燃焼初期になりますが、そこで見ていきます。ウランペレットでは融点が約2,800℃ですが、実際MOXになりますと、これが70℃程下がりまして2,720℃に融点は下がります。ですが、実際の運転条件は、定格の場合ウランの方では1,830℃。それから、MOXでは1,820℃ということで、900℃程の余裕がございます。もし途中異常時があった場合ということで、燃料の温度が上がった場合ですが、この評価ではウラン炉心の場合2,200℃。MOX炉心の場合で2,250℃ということで、やはりここでも500℃近くの裕度を持っているというかたちで運転されますので、中心部が溶融するということは通常時あるいは想定されている異常時においてもないということを確認されております。
【中村コーディネータ】
そろそろ一旦おまとめ下さい。
【九州大学大学院 出光教授】
後は、圧力の方ですけども、燃料ペレットからの圧力については、解析をした結果、十分に燃料は壊れないということが確認されております〔資料2−6:PDF106KB〕。それから、プルトニウムスポットについても、製造時に400ミクロン以下のものについては問題ないというふうにされております〔資料2−7:PDF85KB〕。定常時についてもスポット内の温度上昇が数℃程度、それから、初期に消滅してしまうということがあります。異常時についても、後ほど時間があればご説明いたしますが、スポットが存在した条件でも壊れないということが分かっております。実績ですが、今までに約5,000体弱の集合体が世界で使われておりまして、これは、玄海3号炉でいきますと数十年分の実績ということになります〔資料2−8:PDF114KB〕。燃焼度、それから装荷率等についてもお配りしました資料に載せておりますが、高い燃焼度、それから、30%以上の装荷率、そういったものもございます〔資料2−9:PDF90KB〕。特に、プルトニウムを使うにあたってウラン燃料等大きく異なることはありません。それと、積極的に使用することによってエネルギー資源を有効に利用することが出来ます〔資料2−10:PDF97KB〕。ということで、終わりにしたいと思います。
【中村コーディネータ】
後ほどまたご発言の機会はございます。では続いて大橋さんどうぞ。
【東京大学大学院 大橋教授】
東京大学の大橋です。私も出光先生と同じように大学で教育と研究にあたっているんですけど、また一方でこういう安全審査に関して意見を述べさせていただいたりすることもやっております。今日はこうやってお話する機会を与えていただいて大変ありがとうございました。何をお話ししようかと今まで佐賀県で行われたその安全性に関する質疑応答をずっと勉強してきたんですけれども、実は正直申し上げて何でこんな事をやっているんだというくらい意味の無い、もう検討しちゃったことを何回も聞かれて、今、出光さんがお話されたような内容の話を何度となく回答しているというようなことですので、今日は我々がこういう問題をどういうふうに考えるかという考え方のところですとか、県から、事故時の影響について話せというのがありましたんで、それについてまとめてまいりました。
原子力安全、ちょっと早口で申し上げます、申し訳ありません〔資料3−1:PDF123KB〕。我々の現代社会にはこういう色んな問題が出てきてます。原子力発電ですとか、遺伝子操作、伝染性の疾患ですとか地球環境問題です。こういう問題は極めて技術の果たす役割が大きくて、どうしても感情に動かされるとかっていうふうに社会の意見が決まっていくところが非常に危ない所で、原子力安全の問題はこういう問題の代表ですけれども、安全がどう確保されているのか、技術的にどういう根拠でどう判断したのかということが問題となるべきです。それに対しまして、流される情報の多くが、これはマスメディアも含めてですけれども、過度に情緒的なアプローチで、怖い・恐ろしいだとか、管理社会になるんじゃないかとか、又は原爆と同じとか、今日のテーマでもありますけどテロが起こるんじゃないかとか、そういうイメージがたくさん流されてます。こういう現代社会を取り巻く科学技術の問題というのは科学技術をベースにした客観的な判断をする、これが一番の基本で、県はそういうことでこういう会を開いていただいてるんですけど、こういうのに基づいて、社会的・経済的・環境的に意思決定をしていくというのが民主主義社会の基本になります。安全確保の考え方です〔資料3−2:PDF103KB〕。安全確保の視点は安定に運転出来るかどうか。何か起きた時に安全に停止出来るか。万一の事故時に放射能影響を防げるか。こういう問題です。安全設計・安全評価はどうやっているかというと、考えられる最も厳しい条件で評価をします。安全余裕を見込む、その中で系統の一部が機能しないようなことを保守的に仮定をします。これを逆手に取ればこういうことが起こるんじゃなかというような議論にどんどん入っていってるわけです。何を検討するかというと、核反応に関する特性、あと、熱水力に関する特性、構造的にもつかどうかという特性を検討します〔資料3−3:PDF82KB〕。これに関連しまして、考える原子炉の状態は停止時であるとか通常運転時、過渡変化時、事故時を扱います。プルサーマルにつきましては、燃料をプルトニウム入り燃料に変えるだけですので、今ご説明したうちの核的特性が変化するだけです。その核的な特性が変化させた時の設計解析評価をやりまして、丁度出光先生がご説明いただいたような一定条件下、MOXの装荷割合とか燃焼の条件下では現行と同等の特性を設計することが可能だという結論になっております。従いまして、原子炉特性に基本的な変更はありませんし、安全性が現行の軽水炉と変わることはありません。隣に安全余裕の図を書いておりますけれども、なんとなく安全余裕が減るんじゃないかというような議論がされているんです。そうではありません。安全上の制限値がありまして、運転上の制限値があって、運転範囲はこういうところでやっています。ここを安全余裕と呼んでいまして、ここの運転範囲というのは原子炉の状態ですとか燃料の設計とか又は運用の仕方によって変わりうる範囲ですので、安全余裕は全く同じです。こういうことの判断の根拠は解析ですとか実績、実験、学術的知見、経験に基づいて総合的な特性を判断します〔資料3−4:PDF103KB〕。
プルサーマルの基本問題に戻ってみますと、核的特性を正しく予想できるかどうか。その核的特性を予測したものから安全評価の入力を作りまして、運転停止特性ですとか、過渡変化だとか、事故の時どうなるかという検討をします。核的特性につきましては、これまで軽水炉、プルサーマル、高速炉、実験炉、新型転換炉などで多様な条件の経験と実績を持っています。それと、核データベースの整備、解析手法の改良、計算機性能の向上とあいまって、基本的に100%の確率で正しく予測できるという技術は確立しています。これに、プルサーマルに関しては臨界実験ですとか、今ご紹介いただいたような装荷割合、原子力出力、燃焼度、プルトニウム含有率についての実績をベースに判断をしています。
事故の影響範囲については技術的に想定しうる最大の放射能漏洩を仮定してMOXを装荷した時に、よう素が1%弱増えますけれども、希ガスは5%強減るという結果になっておりまして、現行と同等の結果です〔資料3−5:PDF104KB〕。これに対して、距離が2倍に、距離が増えて面積が4倍になるというのがあります。これの原因が、原因というか出所がよく分からずにまずインターネットで調べたんですけれど、どうやらどなたのオリジナルか分からないんですけど、原子力資料情報室のホームページに解析が貼ってありまして、その解析の内容というのがちょっと言葉は過激ですけどもむちゃくちゃです。ラスムッセン報告の特別なシナリオを持ってきて、30年前のですね。プルトニウムとか他の元素がチェルノブイリより更に放出されるという想定をしています。これは、捏造ともいえる解析で技術的には発生しないシナリオです。確率的な議論を決定論的に置き換えているとか、軽水炉ではチェルノブイリのようなことは起きるわけがないので、それを意図的に想定して怖いですよ、怖いですよという恐怖の垂れ流しをやっているような評価結果です。プルサーマルの安全性のまとめですけれども、プルサーマルは今ご紹介したように、現行の軽水炉と全く同じ安全性と信頼性を持っています〔資料3−6:PDF78KB〕。安全余裕を食いつぶすとか、事故の影響が2倍4倍になるというようなことは全くありません。ここで是非申し上げておきたいのは、玄海町だとか佐賀県の地元の方々が不安を感じる必要は全くありません。技術的に不誠実なのは誰でしょうか。技術的に全く根拠が無い話です。学会では全然発表なんかされたことがありません。都合の良いデータを使って都合の良い解釈をする。関係の無い話を持ち出されます。チェルノブイリなんか、軽水炉と全然関係が無いという結論が専門家の間で決まっているのに、チェルノブイリがどうだとか、今日も先ほどの資料で拝見したんですけど、地震の話が出されると思います。今日、我々はプルサーマルの安全性、つまり玄海3号炉のウラン燃料の変わりにMOX燃料を入れた時に安全性が確保されるかどうかという議論に来ているのに、地震なんか全然別の話題ですけど、それも怖いですよ怖いですよと恐怖心をあおるような話になってると思います。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
京都大学の小出です。今の大橋さんの話には私は反論が山ほどあるんですけれども、後での議論の時にということで、まずは基本的にですね、プルサーマルというのはどういうものなのかということを聞いていただきたいと思います。
私は68年に原子力の平和利用というものに大変な期待を抱きまして、原子核工学科という学問を選びました。どうして私がそういうふうに原子力に期待を抱いたかというと、化石燃料は使えば無くなってしまう、将来のエネルギーは原子力に頼るしかないというふうに聞いたからです。今、ここにご参集の皆さんも、多くの方がそういうふうに思われているだろうと思います。ただし、それは事実でないのです。大橋さんが、今客観的な事実で議論をしようとおっしゃるので私もそうしたいと思いますけれども、それならば地球上にあるエネルギー資源はいったいどういうものがあるのかということをここに、四角の大きさであらわしています〔資料4−1:PDF67KB〕。私は今聞いていただいたように、化石燃料が無くなるから原子力だという宣伝を信じまして、原子力に進んだわけですけれども、一番たくさん地球上にある資源は石炭です。もちろん化石燃料。天然ガスというのが最近たくさん見つかってきまして今現在このくらいの大きさだと言われていますけれども、多分もっともっと大きな四角になります。現在、私たちがどっぷりと使っている石油がある。それから、現在は使いにくいのでまだ使ってないオイルシェールやタールサンドという資源もあります。ここまでが全部化石燃料なんです。これが無くなったら原子力だと言われたわけなんですけれども、原子力の燃料であるウランはこれしかない。石油に比べても数分の1しかないし、石炭に比べたら数十分の1しかないという大変貧弱な資源だったのです。こんなものに人類の未来を託するなんてこと、そのことがまずバカげていると思わなければいけません。ただし、原子力を推進する人達には夢があります。今私がここにウランとして書いた資源は核分裂性の資源です。いわゆる燃えるウランです。しかし、原子力の資源には違うものがあると。プルトニウムというものがあるというふうにおっしゃるわけです。プルトニウムというのは長崎の原爆の材料です。ですから、原子炉でも燃えるということでプルトニウムを生み出してそれを資源にしたいというふうに考え出した。一体どうするかというと、こういうことをやりました〔資料4−2:PDF89KB〕。まず一番初めはウランを掘ってきます。それを色々な形で加工しまして、普通の原子炉で燃やすということをやる。これが現在やっていることです。後々に廃物の処分をしなければいけないわけですけど、それが今ちょっとどうしていいか分からないので取っておくということになっています。
原子力を推進している人達が描いた夢というのは全然別でして、こちら側です。プルトニウムというのを作り出してそれを高速増殖炉という特別な原子炉を動かすことによってまたそれを再処理という特別なことをしなければいけないのですけれども、グルグルグルグルこのサイクルを回すことでようやく核分裂性のウランに比べて60倍ぐらいまで原子力の資源が増えるだろうという、そういう夢を描いたわけです。ただし、このプルトニウムというのは天然には全くありません。そうすると、どこかから調達してこなければいけないということになりまして、普通の原子力発電所から出てきた燃料の中からプルトニウムを作り出してこちらに引き渡そうとしたんです。しかし、高速増殖炉というのは実は実現できていないのです。世界的にも実現できていないし、日本でも“もんじゅ”という実験炉が潰れてしまったというそういう状態。ところが、このサイクルを動かすということが原子力をやってきた人達の夢だったわけですから、プルトニウムをとにかく生み出して渡したいと思っていた。どのくらいプルトニウムを作ったかというと、こういうふうに作ってきてしまったわけです〔資料4−3:PDF81KB〕。1993 年から2004年までのデータをここに書きましたけれども、日本という国が高速増殖炉で使うんだといいながら使用済みの燃料から分離してきてしまったプルトニウムはどんどん増えまして、今現在43トン、日本という国の懐にあるわけです。細かい議論をするときりが無いのですけれど、もしそれで原爆を作ったらどうなるかというと、右側の軸に書きました。一番上のここに50と書いてあるのは、50メガトンという単位です。長崎の原爆は21キロトンでした。例えばここに20という数字があります。20メガトンですけれども、これは21キロトンの長崎の原爆を1,000発作れるというぐらいの量に相当します。つまり、今現在日本という国が持ってしまったプルトニウムというのは、長崎原爆をもし作ることに使うならば、2,000発も出来てしまうというぐらいの量になっているわけです。こうなると、国際的な関係から見て大変な疑惑を受けるということになります。日本というのは高速増殖炉をやると言っていたけれども、実際には出来ていない。それなのに、プルトニウムだけは懐に入れちゃった。一体どうするのだと言って大変な疑惑を受けていまして、このプルトニウムを何とか始末をつけなければいけないということになります。それで、今現在こういう状態にあるわけですけれども、しょうがないのでプルサーマルで燃やしてしまおうということを考えたわけです〔資料4−4:PDF99BK〕。ですから、これはもともと本当は必要だったんではなくて、原子力をやろうとしていた人達の夢が破れてしまったから、どうしようもなくて今追い込まれてしまっている道なのです。日本がやってきた原子力政策が根本的から間違えてしまったからそこに今私たちが追い込まれてしまっているという、そういうことになっている。結局、原子力政策が破綻してしまいましたので、そのつけで安全性を犠牲にします。大橋さんは犠牲にしないと言ったけど、必ず犠牲にします。それから、経済性も犠牲にします。それから、資源的にはほとんど意味がありません。高速増殖炉をやるということならば別ですけれども、プルサーマルなどは全く意味がないと言った方がいい程度のことです。それで、プルサーマルに踏み込んでしまうという、そういうことになってしまいました〔資料4−5:PDF75KB〕。
安全余裕が食いつぶされないとおっしゃったので一言だけ言っておきます〔資料4−6:PDF84KB〕。今、示していますのが想定している原子炉の危険度だと思って下さい。玄海3号炉でもいいです。こういう原子炉を設計するときにどうするかというと、大橋さんもおっしゃったように、安全余裕というのを考えて設計して作るわけです。しかし、本当の危険はもっと大きいのかもしれないのです。想定していることが間違えていたということはよくあることでして、人間は完璧ではありませんので、残念ながら事故というのは起こるわけです。だから、普通の原子力発電所でも事故は起こります。実際にたくさん起こってきているわけです。では、これからプルサーマルにすると、どうなるかというと、こういうことになります。危険が増加します。それは先ほど出光さんがいくつかの要因をあげて下さった。危険は必ず増加します。安全余裕は低下します。ではどうするかというと、ここの部分を工夫して何とかすればいいんだと言っている。工夫で頑張ると言ってるにすぎないのであって、危険は必ず増加します。こういうことを皆さんが受け入れるのかどうなのかということが問われているというふうにお考えいただければいいと思います。以上です。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
長い名前の会の代表ですが、普段は美浜の会と略称しております、小山です。
この新聞ですが、これは1999年の12月16日の記者会見の模様なんですが、左から2番目に私がおります〔資料5−1:PDF171KB〕。この年の1999年の9月に、関西電力の高浜4号用のMOX燃料データに不正があるという疑惑が起こってきました。関電は、イギリスに人を派遣しまして、僅か1週間調査しただけで、「不正はない」というように結論しました。その結論を当時の規制当局である通産省と原子力安全委員会は、直ちに了承しました。その後、通産省は、イギリスから入った重要な疑惑のデータを隠していたというのも明らかになりました。それに対して私たち市民は、膨大なデータの入力作業を行いました。これは中学生の二人の娘さんまでが一生懸命データ入力に加わりまして、そして不正があるということを突き止めて、差し止め訴訟を起こしました。それで、12月17日に判決が出るという予定になっていたその前日の16日に、関西電力がやっぱり不正がありました、すみませんと謝りまして、全部燃料を破棄してしまったという、そういうことであります。その時私は、原告団の責任者をしておりました。私は専門家ではありませんので、これから皆さんの、多くの方が抱いておられる疑問点をできるだけ代弁する発言をしたいと思っております。
これは、原子力安全・保安院、これは通産省のあとになるわけですが、佐賀県に9月9日に説明した図ですけども、ここでは原因のところに関電が悪い、関電が悪いと書いてありまして、規制当局としての責任には全く触れておりません〔資料5−2:PDF101KB〕。こういう姿勢で今回も安全審査をやられるというのでは、全く信頼ができないと思います。
それで、その後、この事件が契機になりまして、福島原発のプルサーマル、新潟県の柏崎刈羽原発のプルサーマルという所にも大きな反対の声が沸き起こってきました〔資料5−3:PDF93KB〕。刈羽村の住民投票では、プルサーマル反対の意思が多数を占めました。この刈羽村という所は、原発に人々の生活が非常に依存しておりまして、いわば原発城下町と言われている所ですけれども、ですから容易に原発には反対はできない。しかし、プルサーマルには反対したいと。これ以上危険なのはごめんだと。そういう意思が多数になったわけです。そういうことがありまして、現在は、東電も関電もプルサーマルを実施できる目途が全く立っておりません。
プルサーマルというのは、ウラン燃料用に設計された原発で、設計に反して特性の異なる危険なプルトニウムを混ぜた燃料、MOX燃料を燃やす事であります〔資料5−4:PDF72KB〕。普通であれば、設計に反する事をやるというのはとんでもないことだと考えるわけですけど、だんだん慣らされていくと言いますか、それがあると思います。それでどうなるかというのは、九州電力の新聞の2面広告が教えてくれておりますけれども、そのうちの一つは、先ほどからも大橋さんも、出光さんもおっしゃっています、70℃燃料が溶けやすくなるということですね。ここのところが、この線とこの線の間で70℃溶けやすくなる〔資料5−5:PDF84KB〕。
これは、1979年スリーマイル島の原発2号機の事故でありますが、炉心のこの燃料の45%が溶けてしまいまして、そのうちの3分の1が炉の下の所に、この底の部分に落下しました〔資料5−6:PDF119KB〕。ここはもっと融点が低いですので、下手をすると、底が溶けてしまって、下に落ちると、下に水が溜まってますから、水蒸気爆発を起こす恐れがあります。そういうような方向に70℃で溶けやすくなるということは、もっとたくさん溶けて、底が抜ける傾向が高まるということになります。
それで、プルサーマルが本当にウラン炉心と同等であるのであれば、何も安全性に全く問題ないということであれば、危険手当等らしいものを交付する必要は全くないわけですけれど、既に政府が予算措置をしているらしいのは、受入に「はい」とプルサーマルに手を挙げただけで、年に2億円、5年間。運転を開始した5年間は、年5億円を交付しましょうということですね〔資料5−7:PDF92KB〕。ウラン炉心と同等のはずではなかったんでしょうか。そして、もし安全であるのならば、そういうものに手当てを出すというのは、税金の無駄遣いであると思います。
それから、最後の方ですけれども、私たちは、プルトニウム、そこにあるから使えとか、簡単に言いますけれども、プルトニウム利用の陰には放射能汚染があります〔資料5−8:PDF57KB〕。青森とか岩手の人たちの、そこに、再処理工場でプルトニウムを分離するわけですけれども、そこでは、ここに再処理工場がありますが、ここから毎年、毎年、年間、放射能が、スリーマイル島の原発事故で出た放射能の3.6倍の放射能がこの排気筒から空に、大気に放出されます〔資料5−9:PDF108KB〕。この端っこの方でも、自然の放射能の2倍の放射能が含まれておりまして、そういう放射能を産まれたての赤ん坊から何十年も毎日毎日吸わねばならないという、そういう状態に置かれるわけです。それからこっちの六ヶ所再処理工場の地面の下を通って、パイプを海に引きまして、海の底50メーターの海底から上を向けて、放射能の廃液を毎日放出します〔資料5−10:PDF75KB〕。これをもし飲みますと、47000人分の致死量に相当するのが、毎年ここから放出される。放射能摂取限度で言いますと、3億3000万人分に相当します。こういうのがずっと拡散していきまして、岩手の三陸海岸の豊かな漁場の方にまで押しかけるということで、岩手県議会では全会一致で、自民党も全部含めて、これに対して説明を求めるということを決めました。
プルサーマルを容認するということは、今のようなプルトニウム汚染を引き起こして、日本を放射能汚染の泥沼へと導く道であります〔資料5−11:PDF62KB〕。プルサーマルを拒否すれば、また別の道が目の前に開けてくる。そういう第一歩になると思います。以上です。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
こういう議論は山ほどできると思うんですけど、一つだけ、ちょうど融点の話が出ましたので、その話をしたいのですが、出ますでしょうか〔資料4−7:PDF82KB〕。
これは九州電力が新聞に答えた時の質問です。「MOX燃料はウラン燃料より低い温度で溶けて危険が増すと言われていますが、大丈夫ですか」という質問。それに対して、「ウランにプルトニウムを混ぜると、溶融点は、混ぜたプルトニウムの量によって低くなります。従って、玄海3号機で使用するMOX燃料ペレットの場合、溶融点はウラン燃料よりも70℃低い約2,720℃となります」と。なかなか正直だなと。先ほどから出光さんもおっしゃっておられるとおりです。
確かに今まで使っていたウラン燃料に比べて溶け易くなるというのは確実です〔資料4−8:PDF111KB〕。そうなった時にどうなるかというと、これが回答なんですね〔資料4−9:PDF98KB〕。「MOX燃料ペレットの溶融点は約2,720℃ですが、出力が異常に上昇する場合でもペレットの最高温度は約2,250℃までしか上がらないため、MOX燃料のペレットは溶けることはありません」と。これが九州電力の答えだし、今の出光さんの答えでもあるし、大橋さんの答えでもあるわけです。
ただし、こういう考え方というのは、私はダメだと思っているのです。つまり、技術というものは、一歩一歩の蓄積で、もちろん少しずつは進歩するけれども、常に落とし穴もあるわけです。間違えてしまうこともあるわけだし、想定していることに関しては対応できるけれども、想定していなかったことが起こればだから対応できないというのが技術なのです。こそ安全余裕というものが必要なのだし、安全余裕はなるべく大きく取っておくというのが原子力のようなものを相手にする時の鉄則であるわけです。
その安全余裕というのを一つずつこういう形で、融点のこともそうですし、富化度のこともそうですけど、一つずつ、一つずつ、安全余裕を削っていってしまっているという、そのことが私は問題だと、先ほども訴えさせていただいたつもりです。
【中村コーディネータ】
という小出さんのご指摘ですが、大橋さんどうぞ。
【東京大学大学院 大橋教授】
これはもう安全余裕を完全に間違えて理解しておられる方の考え方で、融点が下がるということがどういうプラントに問題を引き起こすかということから解析をして、何かが起こった時に、それが溶けるのか、溶けないのか、そういう議論をしているわけです。ですから、融点がちょっと変わったから危険になりますよ、怖いですよというような話は技術的には何の根拠もありません。
一つ、先ほど小山さんにお伺いしたい。大変申し訳ないんですけども、スリーマイル島の事故の時に炉心が溶けました。炉心が下に落ちまして、原子炉の下に溜まって、冷やされて固まったのがTMIの事故です。もちろん炉心がそのまま発熱を続ければ、原子炉の中から溶けて下に落ちたというのは考えられなくはないです。小山さんの資料の中に落ちたら水蒸気爆発が起こるかもと書いてありました。私は水蒸気爆発の専門家です。更田さんもそうですけど、我々専門家の間ではそんなことは夢にも考えられていないんですけども、もし、TMIで炉心が下に落ちて水と混ざったら水蒸気爆発が起こるかもしれないというのはどういうふうに判断されたんですか。
こうやってお聞きしているのは、こういう話をこういう場所でいい加減な根拠でされると、そうすると反対派の方がいやTMIは水蒸気爆発が起きたんだろうというようなことを引用されるわけですね。水蒸気爆発が起こると、今度は格納容器が壊れたんじゃないかというふうに拡大していくんですけども、もとのところは、どういうお考えで、どなたからお聞きになって、どういう判断で「TMIでもし燃料が溶けて下に落ちると水蒸気爆発が起こるかもしれない」と書かれたんでしょうか。
【中村コーディネータ】
小山さんどうぞ。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
何か資料に基づいて話したのではありません。
【東京大学大学院 大橋教授】
そうすると、こういう公の場で話をされるには不適切ではありませんでしょうか。技術的な議論をしている時にですね、何の根拠もないお話を「かも」という言葉をつければ許されるという類の内容ではないように思うんですけど。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
じゃ、水蒸気爆発は起きないという証明はできるんですか。
【東京大学大学院 大橋教授】
そういうレトリックな話をしているんじゃないですよ。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
できるんですかと聞いているんですよ。条件によると思うんですが・・・。スリーマイル島の場合の話をされているのですか。
【東京大学大学院 大橋教授】
はい。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
それは、ちょっと私はわかりません。
【東京大学大学院 大橋教授】
分からなければ書くべきではないんではないでしょうか。ここで書かれたことがまた二次的、三次的に引用されて、起こるかもしれない、いや起きる、いや格納容器が壊れると、そういうふうに必ずなっていくような構造を持っているように見受けられたから、大変恐縮だったんですが、お伺いした次第です。
【中村コーディネータ】
ご指摘は結構です。小出さんご発言あるそうです。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
スリーマイル島の場合には、原子炉の半分が溶けました。圧力容器の底に沈んでいた段階でようやく事故が収束できたということで、圧力容器は幸いに壊れなかったし、格納容器も壊れませんでした。それは一つの事故のシーケンスです。
ただし、そういうスリーマイルの事故が起きるまでは、ああゆう事故は決して起きないと日本の人も言っていたし、世界の原子力を進める人たちが言っていですたの。ところが事故はやはり起きてしまったのです。その時に、起きた後もですね、日本の原子力委員会、いや原子力安全委員会は、原子炉は溶けていないと言っていました。私はその時ちょうど、伊方の裁判ということで、原告側の住民側の証人ということで出ていまして、「炉心が溶けた」と私は証言しましたけれども、その時に、内田秀雄という大変偉い学者さんが出てきて、「原子炉は溶けていない」と発言されました。しかし、その後5年経って、ようやく原子炉の中をのぞけるようになって、初めて原子炉が溶けていたんだということがわかりました。その時に、会社の経営者の人は何と言ったかといいますと、「もし、あの事故の進行過程で原子炉が溶けていたということが分かっていたならば、運転員は慌てて逃げてしまっていただろう」というふうに言ったんです。それ程事故というのは、どういうふうに進展するかがわからない、そういうものなんです。
ですから、たまたまスリーマイル島の時には水蒸気爆発は起きませんでした。だから、じゃ軽水炉というところで水蒸気爆発が起きないかというと、そうではないのです。軽水炉という今の玄海原子力発電所の場合でも、水蒸気爆発が起きる、あるいは水素爆発が起きるということは想定もできるんです。きちんと技術的に想定もできると。それをどこまで考えて、どういう事故評価をするかというとこで、国はある程度以上のことは考えないという、そういう姿勢を現在取っているという、そういうことです。
【東京大学大学院 大橋教授】
私のパソコンを写していただけませんでしょうか。これが事故範囲の話を少し詳しく調べてまとめてきたものです〔資料3−7:PDF99KB〕。なかなか資料がなかったんですけれども、先ほど申し上げましたように、原子力資料情報室という所のホームページに、志賀、これは石川県の方ですけども、志賀原発2号炉における事故時の影響予測、プルサーマルの場合とウラン燃料の場合という比較がありました。おそらくこれと同じやり方で、同じやり方をして、距離で2倍、面積で4倍という主張がされているんだと思います。
ラスムッセン報告というのがあります〔資料3−8:PDF104KB〕。ラスムッセン報告というのは、1975年に発表されました格納容器破損のシナリオというのが含まれている報告です。この格納容器破損のシナリオを使って、プルトニウムの放出については、チェルノブイリで放出された値プラスアルファという4%という値を想定して、他のアクチニド元素もどんどん放出されるという仮定を置いて、半数死亡の距離を計算すると、ウラン燃料で45キロ、MOX燃料で83キロと約2倍になりますから、これをもってして距離で2倍、面積で4倍の評価になっているかと思います。
ラスムッセン報告というのは、原子力のリスクを定量的に評価したもので、1975年に発表されました。それはシナリオをそれぞれ考えまして、あるシナリオについて確率、それからその影響を評価して、確率を影響評価して、全部足してリスクを求めたものです。一番顕著な結果は、当時原子力のリスクは、隕石に当たって、隕石が地球に落ちてくるリスクと同じだという評価をされまして、反対派の方からはおかしい、おかしいと評価されたものです。
これは、こういうことなんです。大隕石、例えば地球が壊れるような大隕石が落ちる確率というのは、地球が出来て40億年間一つも来ていないわけですから、極めて小さい確率です。ただ、地球の大きさのような隕石が当たれば、地球は全員死亡ということになります。中程度の隕石ですと、確率は中間だけど、影響も中間くらい。小隕石はおそらく、1年に何個か落ちてきている確率は大きいんだけれども、その影響というのは殆ど海へ落ちて、燃え尽きたりして微小であると。こういうのを足してリスクを求めるのがリスク評価です。
確率論的安全評価研究というのが、ラスムッセン報告の後始まりまして、想定するシナリオの詳細化だか、確率の評価、機器の故障データベースを充実させる。放射線影響評価の高度化ということで、膨大な研究とデータの充実と手法の高度化が行われています。
これはお配りした資料につけてありますけども、レベル1PSA、PSAというのは、確率論的安全評価で炉心がどれくらいの頻度で損傷するかと。また次はレベル2というので、格納容器がどれくらいの頻度で破損して、公衆に放出されるか。それの影響はどうかというのはレベル3という評価でされています〔資料3−9:PDF66KB〕。
2倍4倍解析という原子力資料情報室の解析の問題点は、都合のいいシナリオだけとってきているわけです〔資料3−10:PDF96KB〕。例えば大隕石が落ちますよと。怖いですよ、地球は全員死んじゃいますよと。この確率論的安全評価というのは、確率を考慮してリスクを求めるためのもので、シナリオだけとってきてもしょうがないわけです。30年前の古いデータです。今は格納容器破損が起きる確率は極めて小さい。1億年に1回というような評価がされているのだからチェルに、それが起きると考えたらというような評価がされています。ノブイリのケースとは全然違います。チェルノブイリのようなことが起こるとは、原子力の専門家は誰も思っていないわけです。それは起こるかもしれない。危険ですよと言って、大きく異なるデータを意図的に持ってくると。
それが先ほど小山さんにご質問したことと関係するんですけど、二次的に引用されるわけです。ホームページを調べてみると、何か根拠は分からないけれども、プルトニウムだから距離2倍、被害4倍に広がるとかですね、これまでの倍は逃げないといけない。面積は、汚染面積は4倍にもなると言われていると。これは全く根拠のない。これは我々から言えば捏造です。原子力資料情報室というのは、どういうものか知りませんけれど、技術レベルが極めて劣るのか、こういうことを日常的にやっておられるか、どちらかだと思います。そういうデータを出す事によって、どんどんどんどん二次的に言って、それにマスメディアがそれに飛びつけば、距離が2倍、被害が4倍、何十万人が死にます。何兆円損しますというふうに広がっているのが、こういう解析の一番大きい問題点だと思います。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
私、大橋さんの話を聞いているとすごい技術信仰論者なんだなというふうに思います。何でも人間が思っているとおりに動くというふうに、どうも大橋さんは思われているようなんですけど、そうではないんですね。
残念ながら原子力の世界でも、これまでたびたび色んな事故が起きてきたんです。決して起きないと言われているような事故も山ほど起きてきました。例えば皆さんご記憶かもしれませんが、1999年の9月30日に東海村の核燃料加工工場で臨界事故というのが起きました。そんな事故は私たち原子力関係者は決して起きないと思っていました。もう、20年前に根絶された事故だというふうに思っていまして、まさかと思ったわけですけれども、でもやはり事故が起きたんです。二人の労働者が大変悲惨な死を遂げました。それを受けて今見ていただいている原子力安全白書というのが2000年に出まして、こう書いてあります〔資料4−10:PDF151KB〕。「多くの原子力関係者が原子力は絶対に安全などという考えを実際には有していないにも関わらず、こうした誤った安全神話がなぜ作られたのだろうか。その理由としては以下のような要因が考えられる。他の分野に比べて高い安全性を求める設計への過剰な信頼。長期間に渡り人命に関わる事故が発生しなかった安全の実績に対する過信。過去の事故経験の風化。原子力施設立地促進のためのPA(パブリックアクセプタンス)。公衆による需要活動の分かり易さの追求。絶対的安全への願望。」というんです。こんなことでやっていてはダメだということなんです。
実際に国がどうやって安全審査をするかというと、こういうことになっています〔資料4−11:PDF96KB〕。まず「重大事故」というのを考えるといっています。これは技術的に考えて起こる事故です。こんなことなら起こるだろうということを考える。そのうえに「仮想事故」というのを考えて、念には念を入れて起こらないような事故まで考えているからいいだろうというのです。それでも、どちらの事故でも格納容器は壊れないということになっています。今、大橋さんは格納容器が壊れる確率なんてものすごく少ないんだというふうな発言をされたわけですけれども、国は必ずこうなんです。格納容器は壊れない。じゃあ、格納容器が壊れるような事故はどういうふうに呼ぶのかというと、「想定不適当事故」だと言うんです。考えちゃいかん。そんなことはないのです。どんな事故だって考えて、そういう事故がどれだけの可能性で起きるのかということと含めて皆さんに説明する責任が、国に実はあるのです。それを未だに一度もやってないという大変不思議な国が日本なんです。ラスムッセン報告というのは1975年にやられたと先ほど大橋さんがおっしゃった通り、その中でやった仕事は2つです。1つは、小さい事故から大きい事故までとにかく様々な事故を考えて被害を全てに関して明らかにするということを1つやりました。もう1つのことは、それぞれの事故がどういう確率で起きるかということを確率計算をする。ですから、やっていることは2つなんです。事故が起きた時の被害を計算する仕事と、その事故の起こりやすさの確率を計算するという、その2つの仕事をしていました。それをラスムッセン報告という形で公表したのですけれども、その報告は実は1979年の1月に撤回されてしまいました。その研究をした米国の原子力規制委員会自身が撤回しました。なぜかというと、原発の大事故は先ほど大橋さんが言ったみたいに隕石で被害を受けるのと同じぐらいの危険なんだというようなことを米国の電力会社がずっと使っていたわけですけれども、そういう言い方は正しくないと、そんなことを公衆に言ってはいけないんだと、今現在確率の計算というのは開発の途上なんであってよく分からないと。そういう絶対値を使ってはいけないということで、実は撤回したんです。その直後の3月にスリーマイル島の事故が起きるということになりました。それ以降、米国ではしきりにこの確率論的安全評価という研究はなされてきました。たくさんの研究がなされています。報告も出されています。大きな事故が起こった場合には、ほんとに大きな事故が起こった場合にはどういう結果が出るということも、たびたびそれが示されています。米国では示されている。
しかし、日本ではそういうこと絶対やらないと、国としては事故は絶対起きないんだと、想定不適当なんだと言って無視してしまうという、そういう姿勢を貫いてきたという、大変私は不思議な国だと思っています。
【美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 小山代表】
これは、先ほど大橋さんにだいぶ突っ込まれましたけれども、ここでは溶けないと言っているわけですよね。しかし、実際にはスリーマイルでは溶けたというのが事実として非常に重要な点だと思います。
それと、あと、さっきからちょっと問題になっています富化度の話ですが、これは、国の資料ですけれども、集合体の平均のプルトニウム含有率と呼ばれていますが、上段のこういうところが、プルトニウムの中には核分裂するものとしないものとありますけれども、全部合わせたものが上の段、核分裂するものだけが下の段のパーセンテージです。核分裂するものでいいますと4.5とか4.9とかこういう数字ですけれども、玄海の場合は6.1という値をとるということですね〔資料5−12:PDF99KB〕。それから、上の段で見ても限界は9.0で、これは諸外国のこういうところにはどれも無いという、それを高い富化度のものがやられるということです。そうしますと、富化度が高くなりますと、プルトニウムスポットという、こういう塊が、富化度が高いほどたくさんゴロゴロと川原の石のように並んでいるということが分かります〔資料5−13:PDF100KB〕。ですから、富化度が高いということは、こういう状態のMOX燃料を使うということになります。それでさきほど、出光さんでしたが、千百ミクロンのプルトニウムスポットを使った実験をやっても壊れなかったと言われましたが、何が壊れなかったのかはっきりおっしゃいませんでした。
この実験は、千百ミクロン、1.1ミリですけど、非常に大きなスポットですが、これをペレットの表面のところに貼り付けております〔資料5−14:PDF60KB〕。上から輪切りにすると、こういう所に貼り付けております。だけど、今問題になっているのはスポットがありますと、しかも1個だけです。あんなたくさんゴロゴロとあるような実験ではありません。こういう所にいっぱいプルトニウムスポットが中の方にありますと、そこからガス状のものが出てくると。そのガスが、中から燃料を膨張させようとして、壊そうとする力が働くんですが、これは、外に貼り付けていますから、そういう実験をしてるんではないということが分かります。これの目的は、この外の所に被覆管があるんですけども、この、ここから出る熱によって被覆管がどういう影響を受けるかという、それだけに限ってやられた実験であります。ですから、今問題になっているようなガスが出てくることによって燃料が壊れるかどうかということを調べた実験ではないと。だから、壊れなかったというのは当たり前の話であります。
それから、ガスがMOX燃料とウラン燃料でどれぐらい違うかという、これはブランパンという人がやった2001年の論文に書かれているんですが、これ、横軸が燃焼度と言いまして、どれぐらい中で燃料を燃やしたかという、そういうものです〔資料5−15:PDF61KB〕。燃焼度が高くなりますとこのピンクのようにMOX燃料はガスが、ペレットの中からガスが出てくる割合が高いということです。ウランはこういう青い所で全然違う振る舞いをしているということが分かります〔資料5−16:PDF121KB〕。ですから、ガスが出てくるということはどういうことかと言いますと、本当はあそこに更田さんという専門家がいらっしゃるので、私は更田さんからだいぶ書かれたのを読み、だいぶ勉強させていただいたんですが、ペレットの中のこういう大きな空洞、ポアと呼ばれる空洞が出来て、こういう中にガスが溜まるんです〔資料5−17:PDF84KB〕。これは更田さんの所から、パンフレットから取らせていただいた図ですけれども、燃料というのはこういう粒々で出来ておりまして、粒と粒の間の所に気体が、ガスが溜まって、そして、これで燃料をバラバラにしようとする力が働くということです〔資料5−18:PDF125KB〕。もしも、制御棒が飛び出すような事故が起こりますと、模擬実験でありますと、ほんとにバラバラになって燃料が冷却水中に飛び出すという、こういうことが起こると。
それでですね、実は、1つ、安全解析というのは、安全という結論に合わせるように解析するということがこれまで行われているという、これちょっと事実として指摘しておきたいと思います〔資料5−19:PDF64KB〕。それは、蒸気発生器というものがあります。この蒸気発生器という所で1次系の熱を2次系に伝える役割をする細い管がいっぱいあります。こういう細い管が一台の蒸気発生器に3,400本あります〔資料5−20:PDF67KB〕。私は、関西電力の高浜2号機というのが、これが実にこの細い管の62%が何らかの損傷を起こして穴が空いたりヒビがはいったりしました。62%ですよ、それにも関わらず安全性は新品と全く変わらないんだという、こういう解析が、損傷が起こるたびに解析を変えていって、62%も損傷しているのに安全性は全く変わらないという結論を出しておりました。それで、1990年代の初め頃に蒸気発生器を持っている高浜2号機を止めるようにという訴訟を起こしました。そういうことに対して、安全解析というのはそういうようなことが出来るということなんですね。
それで、今これは、政府の方が制御棒が飛び出すと飛び出した所の核分裂が盛んに起こります。中性子がバッと増えまして、中性子が増えた、これは政府の図ですけども、増えて、急に中性子が増えております〔資料5−21:PDF90KB〕。そうすると、そこで核分裂が盛んに起こるから、そこで熱がたくさん出てきます。それも一緒に合わせた図がこれでありますが、これは九州電力が設置変更許可申請書で出してるもので、赤い方が今回のプルサーマルの場合です〔資料5−22:PDF79KB〕。青い方が前回の平成11年に出したものです。さっきの中性子の振る舞いについては、私これをものさしで計って、1つの図に合わせたんですけれども、さっきの政府の図と基本的に同じ振る舞いをしております。こっちがその時に出る燃料の熱です。前はこういう高い熱が起こるよという、こういう解析になっておりました。ところが、今回のプルサーマルに関する解析の値としては、こんな所に、高い所に下がってしまっています。この値はここに下がってしまいました。これは、関西電力も同じことをやっていますので、関西電力に確かめていますけども、これは、対象がウラン燃料からプルサーマルに変わったからではないんだと。解析の方法を変えたから下がりましたという、対象は同じなんですけど、熱が出ないような解析に変えたんです。こんなことが出来るんですよ。なぜ、そういうふうに変えたかと言いますと、実は、前は燃料はなかなか破損しないと思われておりました。ところが、そこにおられる更田さんなんかがやられた原研の実験によりまして、意外ともろく燃料は壊れるということが分かりました。ここの所に線を引いてますが、これが、この線を越えると燃料が壊れるよという、前はこれはもっと高かったのが、新しい実験の知見によって下がりました。そうすると、前のままの青い線のままではほとんど燃料が壊れてしまいます。だから、壊れないようにするために解析を変えて熱が出ないようにしたんですよ、こんなふうに。こんなことをやられてるんです。こういうことが安全解析という名のもとにやられてるんです。
ですから、こういう解析が、いくらでも色んな理屈はつけられると思いますが、この壊れ易さの判断が上です。変わったために、それに合わせるように解析を変えて安全にしてしまうという、こういうことが現にやられているということです。以
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
原子力発電所というものは、それ自体が危険な物だと私は思います。玄海原子力発電所、現在動いている物も危険な物だと思います。
本当に私たちが恐れているような事故が起きるとすれば、起きるかどうか私は分かりません。でももし起きたとすれば、事故の範囲、被害が出る範囲が10キロで収まるなんてことは到底ありません。もっともっと大きな範囲で被害が出ていくということになるだろうと思います。そしてその中で、プルトニウムを燃やすということになれば、その被害の範囲が拡大するということは当たり前のことです。なぜかというと、プルトニウムはウランに比べて数十万倍も毒性が高いからです。ですから、現在の玄海原子力発電所で事故が起きる。同じような事故がこれからこのMOXを使ってる玄海の3号炉で起きるとすれば被害は必ず拡大する。ですから、範囲も必ず拡大すると思わなければいけません。それが10キロでいいのか20キロでいいのかというような議論は私はしたくはありません。もっともっとはるかに広大な地域が汚染されるということがありうるということを覚悟しておいて下さいと、それだけはお伝えしたいと思います。
【神戸大学海事科学部 山内助教授】
事故の想定という場合には、ソースタームをどういうふうにとるのかというので非常に計算結果も変わってくると思うんですよね。ですから、それが私もNRCのレポートなんかを読むんですけど、決定版がなかなか出てこない。先ほど、蒸気爆発が起きないと言われたのか、それとも、蒸気爆発が起きない、起きても格納容器が壊れないというふうに言われたのかよく分からない大橋先生のお話だったんですけれども。
【東京大学大学院 大橋教授】
水蒸気爆発は起きない。
【神戸大学海事科学部 山内助教授】
この所については、私の考えでは説得的なソースタームなり、それは出されていない。ですから、最悪の場合を考えておかなければならないんじゃないかと 水蒸気爆発は起きないですか。どれだけのものが出てきうるかですよね。そいうふうには考えます。【東京大学大学院 大橋教授】
2つの点を指摘したいと思うんですけれども、事故の時どうなるかというのは想定したシナリオに全部依存します。全部壊れて、全部出て、全部が環境に放出されるとなればどんな結果でも出せます。それは、大隕石が落ちてきたらどうなるかという、そういう起きもしない確率についてやっているわけですね。皆さんは原子炉で事故が起きたら大変だと思っているかもしれませんけど、専門家になればなるほど、そんな格納容器が壊れるなんて思えないんですね。どういう現象で、何がなったら、どうなるんだと。それは反対派の方は、いや分からないでしょうと。水蒸気爆発が起こるわけがないと専門家はみんな言っていますし、僕もそう思うんですけれども、じゃあ、何で起きないと言えるんだと、そんな理屈になっていっちゃうわけです。ですから今、安全審査でやっているのは、技術的に考えられる限り、ここがこうなって、こうなって、ここが壊れてプルトニウムがこう出てきて、ここで止められて、それでもなおかつという仮定を設けた上で、更にそれよりも過大な放射能を放出された場合の前提を置いて計算をしているわけです。ここが一番難しい所ですけれども、我々はそういうのはよく分かります。被害範囲を想定するために、こういうことが起きると想定をして解析をするわけです。ところが一般の方はどうしても“いやそういうことが起きるんだ” と。また、反対派の方が“ほら見ろ、そういうことが起きるから、そういう想定をするんだ”というふうに、逆方向にとられるから、おそらく議論はかみ合わないんだと思います。
もう1つはプルトニウムの毒性です。プルトニウムの毒性というのは非常に誇張されてとらえられています。プルトニウムの毒性は、そのプルトニウムの健康被害を扱う専門家の方は社会的毒性というふうに呼んでいます。実際にはなんにも怖いことはありません。仮に大げさな話をして、プルトニウムをテロリストが取っていって貯水池に投げ込んだと。そこから水道が供給されていると。じゃあ何万人が死ぬかというと、そんなことはありません。1人も死なないというふうに言われています。プルトニウムは水にも溶けませんし、仮に体内に水として飲んで入ってもすぐに排出されてしまいますから、その小出さんが言っているような事が起きるのは、全く仮想的にプルトニウムのツブツブを1個1個取り出して、皆さんの肺を切開手術して、肺の奥深くの出てこない所に1つずつ埋め込んでいったらそれぐらい死にますよと、全く起きもしないような仮想について言っているわけです。そんな事をやっていったら皆さん自動車にも乗れないし、電車にも乗れない、何が起こるか分からないですよという話と全く同じです。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
毒物というのは、体への取り込み方でその毒性が変わります。例えば、口から食べる場合。食べたり飲んだりする場合、それから、呼吸で取り込む場合で全く違います。今、大橋さんがおっしゃったのは貯水池を汚す、あるいは飲んだって大丈夫だということをおっしゃって、口から取り込む方のことをおっしゃったわけだけども、プルトニウムの場合に怖いのは、鼻から呼吸で吸入する場合です。その毒性は、ものすごく恐ろしいものです。それを今、1つお見せしたいんですけど〔資料4−12:PDF95KB〕。世界にはプルトニウムの研究者が山ほどいます。原子力を支持している人もいますし、原子力に反対している人もいます。ここに、縦にいくつもそういう人達を並べていて、上の方が批判派、だんだんいって一番下が一番の推進派です。たばこを吸う人とたばこを吸わない人、それぞれに分けていっていまして、プルトニウムの239番という番号のついたプルトニウムについて数字が出ていますし、それから、原子炉の中で出来るプルトニウムについての数字もあります。これは、どういう数字を出しているかというと、何マイクログラムのプルトニウムを吸入したらば、肺がん線量というのは、肺がんになって死ぬかというのです。数字見ていただいたら分かると思いますけれども、たばこを特に吸う人というのはめちゃくちゃ危険で、0.0ナントカという、そういう数字です。マイクログラムというのは百万分の1なんです。ですから、手のひらに乗っけても感じない、こんなものが計れる天秤はほとんどの皆さんの家には無いし、大学にもほとんど無いというぐらいの、それぐらいのほんの少量でも、もし吸い込むようなことになれば肺がんで死んでしまうという、プルトニウム研究者が皆が合意している、そういう毒物なのです。ですから、貯水池に汚染して飲む場合とかいうのではなくて、事故の場合には原子力発電所から気体になったものが流れてくるのです。それを吸い込むことが危険なのです。
【東京大学大学院 大橋教授】
どうして気体になるんですか。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
事故の場合にはもちろん微粒子になるわけですし、ものすごい高温になっていますので、エアロゾルにもなって出てくるわけです。ですから、近傍で落ちるというのは本当です。しかし、でも、粒子になって、粒子あるいはエアロゾルになって飛んでくるという成分も必ずあります。
【東京大学大学院 大橋教授】
もう1つ聞きたいんですけど、そのプルトニウムで肺がんになって亡くなった方っていうのは歴史上いるんですか。そういう疫学的所見はあるんですか?
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
はい。マンハッタン計画の労働者をずっと追跡しているグループがあります。肺がんで死んでいる人達がいます。ただし、統計学的にそれが有意と言えるかどうかということの検証をずっと続けてきているという、そういう段階です。
【東京大学大学院 大橋教授】
今のところ有意だという結果が出てないと聞いていますけど。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
こういうものは大変難しいのです。学問は。
【中村コーディネータ】
分かります。それは。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
毒物の危険を証明する。統計学的に証明するということは大変難しくて、たくさんの人々の症例を長い年月に渡って追跡しながら証明しなければいけないんです。ですから、広島・長崎の原爆の人達の中からガンが出てくるということだって、何万人もの被爆者というのを何十年間も追跡してやっと分かるという、そういうものなんです。ですから、科学はこれからもその作業を続けますけれども、一歩一歩しか行かないということはご理解いただきたいと思います。
【中村コーディネータ】
はい、ありがとうございました。じゃあ、出光さん、短くお願いします。ちょっと、森本さんにお伺いしたいことが最後にあるもんですから。
<第2部>
【会場参加者?】
私、呼子から来ました、○○ですけど。今までですね、話を学者さんたちとか、いろんなことを聞きまして、原発は安全であると、中には心配をされた方もあります。しかし、人間が原発を発明して、それで運転が確実にいく時は、心配も何もいらないですけど、これが一つ間違うと、沖縄県であったように、ヘリコプターは飛ぶように出来ています。しかし、人間が操縦します。ロボットじゃありません。ということで一歩間違った場合は、玄界灘の魚も何も食べられません。野菜も一緒です。ということで、私は不安で、不安でなりません。子孫をなくさないようにして下さいと、私は思います。以上です。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。そのあたりは重ねてあれですけど、特に事業主体である九州電力の責任は大きいと思いますが、大橋さん何かコメントありますか。短くお願いします。
【東京大学大学院 大橋教授】
わかりました。人間が間違う可能性があるというのは、最初から認識して原子力発電所の設計というのは行われてきまして、もちろん一番は間違えないような操作盤とすること、また次は仮に間違ってもそれが決して危険側に行かないように、フェールセーフというんですけど、そういうような設備を付けるということになっています。今、人間の行動の研究がどんどん進んでいまして、今度は人間がグループとして行動する時、間違わないようにするにはどうすればいいかというところまで、今研究が進んでいます。
今、子孫がどうこうという心配をしておられるというのは、私は原子力の関係者として心痛く聞いていますけれど、決して原子力発電所の近くに住んでおられる、プルサーマルするしないにかかわらずですね、原子力発電所というのは、皆さんが思っておられるよりずっと安全なものです。格納容器が破損するというようなことは、物理的には考えられませんし、放射能被害が顕著に外に出て起こるということは有り得ませんから、是非、心穏やかに暮らしていけるように、我々のPRというのもしていかなければいけないと思っております。
【会場参加者?】
私、呼子から来ました、○○ですけど。今までですね、話を学者さんたちとか、いろんなことを聞きまして、原発は安全であると、中には心配をされた方もあります。しかし、人間が原発を発明して、それで運転が確実にいく時は、心配も何もいらないですけど、これが一つ間違うと、沖縄県であったように、ヘリコプターは飛ぶように出来ています。しかし、人間が操縦します。ロボットじゃありません。ということで一歩間違った場合は、玄界灘の魚も何も食べられません。野菜も一緒です。ということで、私は不安で、不安でなりません。子孫をなくさないようにして下さいと、私は思います。以上です。
【中村コーディネータ】
ありがとうございました。そのあたりは重ねてあれですけど、特に事業主体である九州電力の責任は大きいと思いますが、大橋さん何かコメントありますか。短くお願いします。
【東京大学大学院 大橋教授】
わかりました。人間が間違う可能性があるというのは、最初から認識して原子力発電所の設計というのは行われてきまして、もちろん一番は間違えないような操作盤とすること、また次は仮に間違ってもそれが決して危険側に行かないように、フェールセーフというんですけど、そういうような設備を付けるということになっています。今、人間の行動の研究がどんどん進んでいまして、今度は人間がグループとして行動する時、間違わないようにするにはどうすればいいかというところまで、今研究が進んでいます。
今、子孫がどうこうという心配をしておられるというのは、私は原子力の関係者として心痛く聞いていますけれど、決して原子力発電所の近くに住んでおられる、プルサーマルするしないにかかわらずですね、原子力発電所というのは、皆さんが思っておられるよりずっと安全なものです。格納容器が破損するというようなことは、物理的には考えられませんし、放射能被害が顕著に外に出て起こるということは有り得ませんから、是非、心穏やかに暮らしていけるように、我々のPRというのもしていかなければいけないと思っております。
【会場参加者G】
唐津市の○○です。先ほどプルトニウムは安全という話があったんですけど、そんなふうに安全だったら、チェルノブイリの原発事故の時に、19年間で150 万人死亡しております。800キロ圏内に放射能がばらまかれて、150万人死亡しておりますけれど、どうしてそういったことになるのかなと思うわけです。やはり、プルサーマル計画のMOX燃料というのは、ウラン燃料の15万倍の放射能を持つと聞いています。近づいただけで被ばくし、100万分の1グラムでプルトニウムは人を殺すと聞いております。そういったことを踏まえて、考えなければいけないと思います。
ウラン燃料の15万倍以上の使用済MOX燃料についてですが、使用済ウラン燃料の3倍の発熱量を持ち、同じ発熱量になるまで100年以上かかって、放射能が半減するのに2万4千年かかると聞いています。この使用済MOX燃料の処理方法がまだ決まっていなくて、玄海町に蓄積されることになっています。2万4千年も安全に管理できると、一体誰が言えるのでしょうか。
人形峠のウランを掘った後の残りの土、ウラン残土を誰も引き取り手がなくて、人が近づけない土地になっています。地元の訴訟が起きて、動燃が一部6億円でアメリカに輸送しておりますが、残り456立方メートルは、地元に残されたままになっております。そのウラン燃料の15万倍以上の放射能を持つ使用済MOX燃料の処理について、一体どうなるだろろうと。
操業費42兆9,000億円となっていますが、使用済MOX燃料の費用は含まれていないと聞いています。一体どのくらいかかるかわからないというところが本当だと思います。税金が投入されて、教育福祉が圧迫されると思います。その点について答えをお願いします。
【中村コーディネータ】
まず最初の被害想定というか、またチェルノブイリの話が出てきたんですが、大橋さんお願いします。
【東京大学大学院 大橋教授】
はい。チェルノブイリの話だとか、今の15万倍の放射能というのがよくわからないんですけれども、そういうのをどこでお聞きになって、どうしてそういうのを信じるに至ったかというのを教えていただけませんか。
100 万分の1グラムが致死量だというのは、先ほど申し上げたように、原理的にありえないような、肺の中に1個1個埋めていくということをやらないと起きないわけですね。ですから、環境に放出されるというシナリオというのは、我々には考えられませんし、仮に放出されようが、呼吸として入るということも、またこれも極めて考えにくいことなんですけど、そういうことを申し上げても全然ダメなわけですか。
【会場参加者G】
ウクライナで150万人死亡したというのはウクライナの政府の発表です。それからMOX燃料はウラン燃料の15万倍の放射能を持つというのは、元京都大学原子炉実験所の小林圭二先生のレポートからです。それから100万分の1グラムのプルトニウムで人を殺すというのは、小出先生からお聞きしたことです。
【東京大学大学院 大橋教授】
チェルノブイリについては後に私よりもっときちんと説明できる方がいらっしゃると思いますけれども、どうしてそういう事は信じて我々が説明する技術的内容はまったく拒絶して、何も変わらないじゃないですか。
【中村コーディネータ】
パネリストと会場の方と直接討論はしないで下さい。そういうデータをご覧になって不安になっている方が他にもいらっしゃると思うので、そういう市民の方の立場を考えて専門家の方としてはお願いします。まず、チェルノブイリのことをなるべく手短にお願いします。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
チェルノブイリというのはわが国の軽水炉と型が違う炉でございます。このチェルノブイリというのはいろんな要素が事故に至る過程としてあったわけでございますが、ひとつたとえればこの自己制御性というところですね。私、10月2日の説明会で説明しましたけれども、自分で出力を戻そうとする力がわが国の軽水炉ではあるという説明を致しましたけれども、チェルノブイリの炉は低い出力ではそういう性質がないというようなわが国の設計とは違う炉でありました。従って我々は、チェルノブイリのような事故が軽水炉では起こることはないというふうに考えております。
【中村コーディネータ】
ただあの実際の被害については、チェルノブイリは日本のケースとは違うんだけれども、たしかにその大きな被害が出たということは間違いないですね。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
これは、あれだけ大きな事故が起きたわけであります。被害のその150万人という数字については、私、細かい数字承知しておりませんけれども、大変な方が被害を受けたというのはその通りでございます。
【中村コーディネータ】
そのやっぱり被害に対するショックというのはやっぱり大きく受け取られたと思うんで、それがまた自分が関心を持っているプルサーマルに結びついたということで、ご発言あったんだと思いますが、ひとつあの使用済MOX燃料の件、これについては、まず国の方からもお伺いしましょう。
【九州大学大学院 出光教授】
使用済MOX燃料の処理の技術的な話からいきますと、プルトニウムが13%入ったものが処理できないかというとそんなことはありません。私が冒頭に言いましたように、私が最初に実験したのが高速炉の使用済燃料の再処理で、その中にはプルトニウム30%が入っておりました。それで、何ら問題なくここまでの技術で再処理できております。ただスケールは小さいですけども、実験的には原理的なところは確認できております。あとスケールアップはどうするかという話はございますが。それから経済的なところの話は別としまして、今MOX燃料を貯蔵するということですけども、しばらく貯蔵することにはなると思いますが、2万4千年貯蔵するというのは計画ではございません。現在みなさんご承知のように六ヶ所村で再処理工場を作っておりますけども、そちらの方で通常のウラン燃料の処理をしまして、今の予定ですと2010年以降にプルトニウムがたくさん入ったような燃料も再処理の次期のプラント、それについて検討しようということになっております。で、ほったらかしにしているというわけではなくて、まず軽水炉燃料のうちのウラン燃料の再処理事業をまずやって、次にMOX燃料というふうに考えております。
【中村コーディネータ】
では続いて、野口参事官の方から。
【資源エネルギー庁 野口参事官】
今、お話がありましたけれども、使用済のMOX燃料、MOX燃料を発電に使いますとこれはまた使用済になる訳でございます。2010年から仮にプルサーマルを始めるということになりますと、何年か経ちますとこれがまた使用済になって出てくるということでございまして、国の方針としては2010年頃からこの処理について検討を開始する予定でございます。
【会場参加者H】
質問者としてはそのこともあるんですね。それともう一つは安全だというね、佐賀県がどうやって安全性の確認をするのか今の体制で、あるいは唐津市がどうやって安全であるという体制ができあがっておらないわけですね。今、佐賀県も唐津市もだろうと思うんですけども、安全だと言われるのはですね、国が審査をされて安全だから、だから安全ですよというような形にしかなってないわけですね。やっぱり独自に自治体が安全確認ができるような体制、これをひとつやっていただきたいと言うことがひとつ。もう一点は、プルサーマル、今まではですね、ウランを燃料としたいわゆる原子炉だったわけですね。そういう設計になっている。先ほど質問者の方から100キロと60キロの話が出ましたけれども、それよりも私はガソリン車の車に混合燃料入れて走るようなもんじゃないかなと言うふうに思うんですよ。そういうですね、ウランとMOX燃料の事故があった場合の違い、その辺も明確にされておらない。その辺もひとつ明らかにしていただけないでしょうか。
【中村コーディネータ】
その技術的なことは、こちらでお答えできると思いますし、今の例えもときどき聞く例えですので、ガソリン車と他の混合燃料という話もあるんですが、ただ県あるいは唐津市、玄海町も含めてでしょうけど、今のご指摘というのは、県民のみなさんのご意見としてまずはお伝えするという立場でいいですか、今日の所は。まず国の方にはですね。自治体の方には、まずはそれをとにかく私の方からお伝えするということにしますが、それは後ほど国の方に伺います。その技術的なところから、大橋先生。
【東京大学大学院 大橋教授】
大変失礼な言い方ですけど、大変心外です。今まで、我々パネルディスカッションで一生懸命説明してきてですね、みなさんお聞きになったと思うんですけども、今日はプルサーマルの安全性というタイトルでパネルが開かれました。で、出光先生はきちんとした先生ですので、データをもっていかに安全であるかを説明されて、私はこういう問題をどういうふうに考えるべきであるかをどういうふうに考えて、どういうふうに設計して安全を確保しているのかというご説明を差し上げました。で、それがかみ合わないとおっしゃるんですけども、反対派慎重派の方が言っておられるのは、もうその10年も前に検討して溶融温度が少し下がるとか、制御棒の効きがプルトニウムだとちょっと悪くなるとか、もうみんな考慮に入れた上で国は報告書を出して九州電力は安全審査の解析書を作って、国がさらに安全審査をしたという結果の中に入っていることをごちゃごちゃ言っておられます。で、それはもう全部かたがついちゃってますから、今日、慎重派の方が言っておられたのはみなさんご存じのように、エネルギー政策としておかしいじゃないかとか、地震が起きたらどうするんだとか、再処理工場で青森とか岩手のことを考えてみろとか、プルサーマルの安全と全然かけ離れてることばかりです。そんならそういう専門家を呼んできて議論する。どうして関係あるんですか。プルサーマルの安全とは関係がないですよ。
【中村コーディネータ】
不規則発言で、やらないでください。壇上と。それはあのみなさんのお気持ちは、多分、小出先生が先ほどおっしゃったことだと思うんで、あのそういう刺激の仕方はしないで下さい。せっかくみんな冷静に話してきたんだから。
【東京大学大学院 大橋教授】
せっかく説明してもですね、いやかみ合わない、わからないと、いつまで言ってもそうじゃないですか。理解しようと言う気があるんでしょうか。
【中村コーディネータ】
ちょっとそれぐらいにしておいてください。今の大橋先生の発言に対しては、私もイエローカード出しますけれども、ただ会場でまたそうして不規則発言をたくさんされると他に静かに聞きたい方もいらっしゃるんで、それだけは控えて下さい。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
一番初めに申し上げたけれども、安全性の問題とは単にテクニカルな問題だけでは決まりません。原子力の政策的な問題もあるし、もちろん経済的な問題もあるし、日常的な管理の問題もあるし、いろんなことが絡んでいるわけです。技術というのはもちろん事故が起きないようにやるわけですけども、必ずしもそれが貫徹できない時があるわけです。それで今までもずっと事故が起きてきたというそういう歴史をたどっているわけで、プルサーマルをやればその危険が増えますと私は発言しています。そういうものをみなさんが受け入れる必要はないというふうに私は思うということを一番初めに申し上げたわけです。
【中村コーディネータ】
自治体に対するご要望についてはですね、責任を持ってまずお伝えするということと、国の方としてどういう姿勢でいらっしゃるかということだけは、ちょっとお答えを聞いて次に移りたいと思いますので。
【資源エネルギー庁 野口参事官】
国と地方の関係というのはなかなか難しいところがあるんですけども、法律に基づいて国がチェックを行います。それを尊重していただいて、地元の自治体も、これは地元の自治体のお立場、すなわちこの地域の安全を守っていらっしゃるというお立場から、さまざまなチェックをしていただくという事かなと思います。お話で出ました安全協定につきましては、これをどうこうと言うことは国の立場で申し上げるべきことではないと思いますけども、やはり地元のご理解を得ることが一番大切なことでありますので、事業者と、自治体とがきちっとお話をされていくと言うことが重要であると思っております。
【会場参加者N】
鳥栖の○○と申します。色々な先生達の専門的なご意見を聞きまして、本当に困っとるわけですけども、時間の関係でひとつ、森本先生の方から日本のプルサーマルの関係については非常に安全だというお話もありましたが、中国とか韓国の例が出されました。そここそ問題じゃないかというお話がありましたから。私は、日本の中で初めてプルサーマルが試行されるということで、佐賀県に天が下ろされようとしております。私は佐賀県のプルサーマルに問題があるとか、鹿児島とか東京が賛成だというような話をしているわけじゃないんですよ。今本当に大橋先生とか、出光先生の方からお話があったように、安全に安全を重ねたプルサーマルだということでありましょうけども、じゃあ逆に外国のプルサーマルの安全性について、原子力の安全委員会についてはどのように認識されているのでしょうか。また、それについての対応をどうしたらいいのか、日本のプルサーマルはいいけれども、外国のプルサーマルはだめだという話じゃないわけですよ。そういう面でご回答をお願いします。
【九州大学大学院 出光教授】
海外実績のデータ分析、これも私が実際やったわけではなくて、これは調査結果があります。計算結果も多分九電で計算したんではなくて、調査部会が説明した資料で非常に表としては大きくなります。多分それを全部見せたらOHPで字が全部見えなくなってしまうから、その中から掻い摘んで出してきたのが、多分、資料で載せている分だと思います。装荷の開始時期等は、書いてありまして、燃焼度については、燃料を入れてから出てくるまで数年経ちますので、その後のデータだというふうにご理解下さい。
ちなみに燃焼度のもの、今も5万メガワットデーとかそういった燃焼度のものは恒常的に運転されておりまして、6万メガワットデーを今は目標にして、海外では更に上の燃焼度を狙っているというところであります。九電のデータにつきましては、これはこうやりたいということで出しているので並べております。それからプルトニウムの濃度については、冒頭にも言いましたが、例えば13%以上になったら危ないとかそういう話ではないということは一番冒頭に申し上げたと思います。他の海外でのものに比べますと、九電の方が入れるプルトニウムは多いと思います。これは確かです。
別に隠しているわけでも何でもないんですが、運転の仕方が違うので、例えばフランスとかドイツとかは、そこまで入れないで運転するような運転の仕方になっている。逆に入れすぎても使い残しが増えるから少なく入れているという。日本の場合には、例えばフランスの場合ですと、290日間運転とかに対しまして、日本の場合には400日と長いので、その分よりたくさん核分裂するものを最初に入れといてやると、そういう形で運転をされるということで濃度が増えているということです。量が多くなったら危ないのかという話については、先ほど融点の話もしまして熱伝導の話もしましたし、そういった話をしたので差はないということを申し上げて、それ以上ご説明することはないんですけども、燃料の物性等につきましては以上です。
この報告については、ちゃんと報告書の形で調査結果が出ておりますので、その報告書で出ております。その中についてデータに疑問があるんであれば、その報告書そのものに疑問を出していただいて、どこのデータがおかしいと、だからないんではないか、という話ではないですか。
【東京大学大学院 大橋教授】
燃料のハードウェアについては出光先生がおっしゃったとおりです。ソフトウェアについては、プルトニウム含有率が今までに実績がないというのを上回る件については2つ理由があります。1つは、実は説明してるんですけど。
【会場参加者M】
MOX燃料の数を聞いてるんです。
【東京大学大学院 大橋教授】
それは、どうしましょうか。
【会場参加者M】
違うことばっかり言っているじゃないか。
【九州大学大学院 出光教授】
僕がご説明しようと思っていたのは、装荷率が上回ることについて…。
【中村コーディネータ】
ご質問の主旨が全然違うんですけども、これはデータもってないようです。お答えできないようです。
【九州大学大学院 出光教授】
古いデータでよければ、どこのデータについて聞かれたいでしょうか。装荷体数については出ております。フランスのサンローランでは96体とかですね。
【中村コーディネータ】
ちょっと待って下さいね。
【九州大学大学院 出光教授】
例えばネッカーですと32体とかですね。
【会場参加者M】
どこがですか。
【九州大学大学院 出光教授】
ネッカーというのがあるはずです。
【中村コーディネータ】
ドイツの…。
【会場参加者M】
ネッカーは12体になっている。
【九州大学大学院 出光教授】
すみません。これは総数ですね。
【会場参加者M】
総数は193でしょう。燃料体総数が193で2003年に入れたのが12体でしょう。九電と同じ計算をやったら、6.2%にしかならない。
【九州大学大学院 出光教授】
それは何年のデータを見られているのでしょうか。
【会場参加者M】
2003年。
【九州大学大学院 出光教授】
今、手持ちでもってきてないんですが、2004年のデータが出ていると思います。すみません。すぐには見つからないんですが…。
【中村コーディネータ】
ちょっとまってくださいね。時間の関係で、今ちょっと調べてるんで、その前のご質問についての防災関係のご質問がありました。地震とかスマトラ沖並みの津波というようなご指摘もあったんですけど、防災についてはどのようなお考えなんでしょうか。
【原子力安全・保安院原子力発電安全審査課 佐藤課長】
津波についてご意見いただきました。本日プルサーマル関係ということで、津波の方のデータを持ってきていないんですが、安全審査でどういうことをやっているかということをご紹介したいと思います。
津波の場合は、それぞれ発生する津波の大きさというのをシミュレーションによって、津波の高さ、それと引き波の高さを求めます。津波の上がる方の高さについては、基本的に我が国の発電所は、想定される津波の高さより高い所に設置されているということで、津波の高さによる問題はないという評価を行ってございます。また、引き波も安全上の大きな問題となります。これは、原子炉を冷やすための水が取れなくなるということで、引き波に関する評価も行っているわけでございますが、には我が国の発電所は、こう基本的いった引き波が発生しても、水の冷却というのは確保されるといったような評価を行ってございます。
大変申し訳ありませんが、具体的な玄海の数字については、手元に持っておりませんので、ここでのお答えはできませんので、ご了承いただきたいと思います。
【中村コーディネータ】
それで今のご質問のところなんですが、先生達は研究者ですから、今持っている資料と持ってない資料があるらしいんですが、ご説明できる資料はあるらしいですね。ただ、今ここにはどうもないみたいなんですけども、これは。
【会場参加者M】
もうひとつ言わせて。
【中村コーディネータ】
ただね、ちょっと待って下さい。今日、パネリストとしてお招きをしているので、糾弾するような形は止めて下さいね。データが分かれば。
【会場参加者M】
資料について質問してるんだから。
【中村コーディネータ】
わかりました。おっしゃっていることは。
【会場参加者M】
私はどうやって計算したかわからんけれど、このパーセントは一致している。しかし九州電力のパーセントはね、燃料総数分の装荷予定のMOX燃料の数で 25%ができるはずなんです。そしたらね、他のベルギーやドイツやスイスのやつが、その計算ではそのパーセントは出てこない。だから質問している。おかしいじゃないか。九電の計算のやり方と、外国の計算のやり方と違うのを持ってきているのか。
【中村コーディネータ】
そこは今、お答え出来ないみたいですね。データがないので、これはちょっと継続預かりにさせて下さい。
【会場参加者M】
じゃ、いつ開きますか。
【中村コーディネータ】
いつ開くじゃなくて、そのデータについては、報告書を確認すれば出ますか。
【九州大学大学院 出光教授】
そのデータをどこかで提示すればいいですか。
【中村コーディネータ】
そうですね。ホームページでもいいですし、あるいはメールで送るということも可能ですか。
【会場参加者M】
私はそういうものを買う金がありませんから、手紙でお願いします。
【中村コーディネータ】
ただ、いずれにしろ方法はあれとしてですね、○○さんの件については、データ確認をするということを一応お約束して。
【会場参加者P】
唐津市から来ました、○○と言います。本日の討論会を聞いてイメージより安全ではないかというふうに私は感じました。その理由としては、先ほど質問の中からありましたとおり、もしも実施して、事故を起こした時、九州電力や国は責任を取ります。その体制も築いています、というふうなことをおっしゃいました。また、九州電力や国の責任を取るところにも原子力の専門家は多数いらっしゃると思います。その専門家の方々は、自分のプライドにかけて安全と言わないものに賛成はされないと、私は信じております。そこで慎重なご意見の先生方に質問をさせていただきます。先生方がおっしゃっていることに対し、九州電力や国は、先生方の技術的な主張を理解していないとお考えなのか、それとも技術的なものは理解しているものの、それを何か目をつぶってでも、無視してでも進めなければならないという理由があるとお考えなのでしょうか、その点よろしくお願いします。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
今ご質問くださった方と私は実は正反対に思っているわけです。九州電力が補償するよ、それから足りない部分は国が補償するよと言って、先ほど国の方が説明された。その通り、原子力損害賠償法で書いてあるんです。でもなんで、原子力損害賠償法などというのを定めなければならなかったのかというと、原子力の場合にはとてつもない危険を抱えていて、一つの民間会社では補償ができないようなことが起こるかもしれないと。だからしょうがない時には国が出てくるよというのがあったからなんです。それは世界的に皆分かっていまして、一番初めは米国のプライス・アンダーソン法というのができたわけですけれども、民間会社に任していたらば、補償ができないような事故が起こるかもしれないというのが前提になって、原子力が進められてきているわけです。
ですから、それほどのものだということを皆さんが覚悟してくださるならばいいと思います。私はもちろんずっとそういうふうに話して来ましたし、国の方は私の言っていることは十分承知しているわけです。ですから、とてつもない事故だってあるよという事は承知しているからこそ、そういう体制をとっているわけです。
ちなみに言わせてもらうならば、チェルノブイリの原子力発電所の事故というのは、86年の4月に起きたわけですけれども、とてつもない被害が起きまして、そのためにソ連という国は崩壊してしまったという。その崩壊の一つの重要な要因になったくらいの被害なわけです。国家が倒産してしまうという、それくらい巨大な被害が起こりうるというのが、原子力の本質にあるということを皆さんに理解しておいていただきたいと思うわけです。
【京都大学原子炉実験所 小出助手】
今日は一番始めに聞いていただきましたけれども、プルサーマルをやるということは、まずは安全性を犠牲にします。経済性を犠牲にします。これはひどいものです。九電の方がよくご存知だと思います。それから資源的には殆ど意味がないという、そういうものです。でもなんでそれをやらなければならなくなってしまったかというと、国が進めてきた原子力政策が破綻したからなんです。思ったようにはいかなかったからなんです。これからも原子力というのは、思ったようにいかないことは山ほど出てきます。今、小山さんがちょっとおっしゃったけれども、MOXという燃料を玄海で燃やした後の使用済燃料をどうするのかというと、2010年頃から再処理をするかどうか考えると言っているわけですけれども、考えたところでいい名案が出ないなんていう選択だってあるわけです。本当に望んでいる通りにはならなかったというのが、これまでの原子力の姿なわけですから、皆さんはもしMOX燃料を受け入れる、プルサーマルを受け入れるというならば、今国が説明していること、あるいは九州電力が説明していることが、その通りにはならないかもしれないということを必ず含んでおいていただきたいと思います。
【中村コーディネータ】
ありがとうございます。パネリスト小出さんでした。続いて、大橋さんどうぞ。
【東京大学大学院 大橋教授】
まず最初に、原子力技術というのは一般公衆の方に顕著な放射線影響を与えないということを、最大の目標にスタートした技術です。論理の倒錯が起こるんですけども、何かあっても大丈夫なように施設し、仮に何があっても、重大事故、仮想事故がそうですけど、仮に何があってもこうだと、仮にこうなってもという検討をするわけです。そうすると、それは起こるんだろうという議論になるわけです。先ほどの原子力賠償保険もそうで、もしこうなったら、こうなったらという、その最果てにそういう制度があるんですけど、それが逆に見れば、いやそれはやっぱり起こるだろうという捉え方をされるのがとても残念です。
もう一つは、の安全性について、私はプルサーマル今日簡単にご説明をしたんですけど、本当に専門家として、どうしてこういうことをこんなふうに議論する必要があるのかと思うくらい、何の問題もないと思っています。原子力にはたくさんの技術者がメーカーだとか、電力だとか、行政庁だとか、我々も参加していますけど、誰一人そんな危険なものを地方に押し付けて、危険だと分かっているのを地方に押し付けようなんていう人は誰もいないと思います。
ですから、ただ一点私が大変気になりますのは、皆さん今度はイデオロギー論争に巻き込まれたり、また原子力発電所があるから不安に思っておられるというのは、とても残念です。原子力発電所というのは、皆さんが思っている以上に安全です。そこに何か社会的インフラストラクチャーの施設があるよりもはるかに安全だと思っています。以上です。
【中村コーディネータ】
パネリスト大橋さんでした。続いて、出光さんどうぞ。
【九州大学大学院 出光教授】
技術的な話はたくさん言いましたので、答えられなかったものについては、後日お答え致しますということで。
私も冒頭にも言いましたが、東海村という所に住んでいまして、再処理工場もあるし、原子力発電所もあると。そこに7年半住んでおりまして、その後ですが、一時期スイスに1年間行ったことがありますが、その住んでいる場所のすぐ近くに、今日の資料の表には載せておりませんが、ベツナウという炉がありまして、そこにはもうMOXが入っていました。そこで1年間暮らしまして、周りの人の様子をみましたけど、特に変わった様子もないし、偶然ですけど、子供が通っていた学校の家庭科の先生のご主人がちょうどベツナウで働いていたとか、一緒に話をしたりして、特に普通の家庭のようになっておりまして。ただ、スイスの人を見ていてうらやましいなと思ったのは、原子力発電所に勤めている人、あるいは研究所に勤めている人、原子力をやっている人は非常に尊敬されていたんですね。住んでいて、そこの研究所に行っていると言うと、一目置かれるというか、そういうふうに特別なふうに見てもらえると、お前はちゃんとしたことをやっているというふうに見てもらえます。アジアから来て、ヨーロッパ圏にアジア人が住んでいると、意外とうがった目で見られることもあるんですが、そこの研究所に勤めているというだけで尊敬をされると、あるいは発電所に勤めているというだけで尊敬をされるということで、どれだけ地元に根付いているのかというのが実感できました。
あと、研究所、プルトニウムMOXやっているところですけど、近くに農場とかいっぱいありました。研究所から時々、周りに牛が放牧されていまして、カランカランという牛のカウベルが聞こえてくるという、そういうのどかな所で研究をやっておりましたけれども、特に風評被害というのは起きていませんでしたし、他の所と変わらないような生活がちゃんとできておりました。ということで、プルサーマルについて、急ぐ必要はないという話もありますが、できるものはやった方がいいし、全然経済的なメリットも資源的なメリットもないと言いますが、使うと、例えば1トンの燃料を処理しますと、燃料250キログラム分のウラン、プルトニウムが回収できます。25%。プルトニウムだけを見ても13%、MOX燃料130キログラム分回収できます。これはものすごい資源だと思います。ですから、資源の有効利用という観点ではこのまま進めていきたいというのが私の意見です。
【中村コーディネータ】
今日は佐賀県の主催でプルサーマルの安全性を考えるということで、公開討論会を行ったわけですが、勿論この安全性から少し幅が広がって本質論とか、政策論とか様々なところまで、パネリストの皆さんのご意見は広がりましたけれども、会場からも熱心なご質問をいただいて、国や九州電力からもご回答をいただきましたし、パネリストの皆さんもまた会場の皆さんのご質問に対して真摯にお答えいただいて、本当にありがとうございます。
予定の時間を30分も過ぎてしまったんですけども、皆さんに感謝致します。この長い時間、最後まで熱心に参加をしていただいた皆さんに感謝をして、本日の公開討論会を終わらせていただきます。ありがとうございました。
終 了(17:30
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