社会・経済的弱者(後期高齢者)の「いのち」まで食い物にする、「後期高齢者医療制度」4月実施を阻止しよう!
@ 巨額軍事費と大企業減税による国家財政の負担を、民衆の頭上に転嫁(社会保障制度と医療体制の解体)する、福田自公政権と資本家階級
日本は、少なくとも1970年代までは、インフレ的国家財政支出と海外市場進出による高成長に支えられた雇用安定と社会福祉を通して、民衆の目を、資本の私的利害の追求と擁護を目的とするに過ぎない資本主義国家の内実を、“繁栄の共同体幻想”で覆い隠してきたと言えるだろう。
しかし1980年代に入り、日本の対外市場の、欧米のみならず東北、東南アジアでの拡大を通して、日・米・欧貿易摩擦を軸に、本来、帝国主義戦争をも引き起こしかねない国際市場争奪をめぐる深刻な対立がうまれたが、安保コストの負担(在日米軍経費、自衛隊海外派遣等)、米国からの武器購入、全面的な資本と物の市場開放、農業産品の自由化等を対価に、対米協調を軸として自動車など工業製品の輸出の確保によって危機を切り抜けてきたのだ。
資本家階級とその国家は、それを、日本の民衆への犠牲の全面的転嫁によって担保した。今日の、「小泉―安部構造改革」に繋がる「中曽根臨調」がそれである。
国際資本に晒された、競争力の弱体な地場産業や企業の、海外移転やスクラップアンドビルによる倒産と、さらには、公営企業を、民営化による弱肉強食の利益争奪の獲物にし、国家の責務である住民サービスを放棄し、構造的失業と首切り低賃金と労働強化を通して、いまや日本資本主義は、非正規雇用と派遣労働と言う名の、資本による奴隷労働によって成り立っているのである。
日本の多国籍大企業は、労働者階級の奴隷労働と、彼等の下請け企業や日本農業を、倒産と解体の危機に晒さらすことによって工業製品の輸出力強化を図っているのだ。
さらに、対米協調による、武器購入(一隻1400億円もする、イージス艦六隻、一兆円に上るMDミサイルシステムを見よ)や、日米軍事態勢再編に伴う五兆円とも言う巨額の軍事費の出費、毎年組まれる五兆円の軍事費の維持、民衆に対する苛斂誅求なる増税の一方で、巨大な利益をあげる大企業に対する優遇税制の継続は、高成長時代のインフレ的財政支出のツケである巨額の累積赤字と相まって、国家財政に大きな負担を生み出している。資本家階級と国家は、自分達が生み出した巨額の借金を、まるで働く民衆の責任かのように言い触らしているのだ。
A 社会的弱者を食い物にする日本資本主義国家
日本資本家階級とその国家は、その出口を、増税(定率減税を初めとする減税措置の全廃、住民税の値上げ、消費税率の更なるアップ)と、社会保障費の継続的な削減、医療、教育、公共交通、あらゆる公共サービスからの撤退と言う、全面的な民衆の犠牲転嫁の中にもとめ、それを「自己責任、自助努力」「小さな政府」と合理化し国家としての責任を放棄した。自らが建前としてきた「国家の存立の意味」そのものを否定しているのである。国家が、ただ資本の為に存在する、民衆に対する剥き出しの徴税と支配の権力(暴力)組織に過ぎないとすれば、このような人間否定の手段によってしか延命できない資本主義社会とは、一体何者であるかを厳しく問わなければ為らない。
社会保険から締め出され、40lのピンはねによって労働{人間社会}の、社会的再生産さえ否定された派遣労働者によって、莫大な利益を揚げる日本資本主義社会や、「略奪的貸し出し」と言われる「サブプライムローン」のように、社会的・経済的弱者を食い物にして生き延びようとするアメリカ帝国主義社会は、資本主義体制なるものが人間に対する慈しみや、生命の尊厳への敬意を踏みつけ、神をも恐れぬ、拝金主義による人間精神の腐敗と頽廃に行き着く社会に過ぎないことを白日の下にしめしている。
このように、民衆の極限的収奪によって生き延びを図る日本資本家階級とその執権政府によって、今、社会的・経済的弱者の『命』までを略奪の対象とする、新たな非人間的な攻撃が付け加わろうとしている。
医療制度改悪、<後期高齢者医療制度>の4月1日実施がそれである。
(当研究会サイト、憲法シリーズ07年5月6日付「安倍自民公明政権は、憲法25条“生存権”の前倒し廃棄をねらっている。−後期高齢者医療制度は、金を払えぬ高齢者は、死ねと言うことだ。」参照)
B 高齢者の貧困化は一層拡大している
何故この医療制度が、資本と国家によって企てられる、社会的経済的弱者の命さえ収奪の対象とする制度なのか?
2006年6月、小泉自公政権は、「医療構造改革」と称して、75歳以上の高齢者(世界保健機構<WHO>は、65〜74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と規定し、厚生省の呼称もこれに準拠している)を現行の医療制度から切り離し、別立ての診療報酬の設定で、金をかけないように治療と病院から追い立てる仕組みを<後期高齢者医療制度>としてつくりあげた。全ての75歳以上の高齢者と言うことは、現在、子供の扶養家族として保険料負担の無い人も、当然新たに保険料を負担しなければならないこととなる。
そもそも、人間や動物の健康は、加齢によって損なわれてゆくものだ。高血圧、糖尿病、心臓病、身体的な筋力の衰えなど生活習慣の蓄積もある。高齢者が主として医療のサービスを受けなければならない事と、そこに医療費が集中するのは、全体としての高齢化の進行のなかで至極当たり前のことなのだ。しかも、ごく一部の資本家階級や金持ち老齢者を除き、大半の老齢者は、厳しい資本の収奪と搾取に耐え生き延びてきた世代だ。その民衆の老後を保証すべき医療制度を、彼らからの収奪で賄おうという訳だ。
高齢者の貧困は次第に拡大している。2004年度統計でも生活保護受給所帯108万の40lが高齢者所帯だ。全高齢者(前期、後期)787万所帯(2300万人)のうち、188万所帯の収入は生活保護基準以下であり、貯蓄ゼロ所帯は、98万所帯に達している。資本と国家による収奪の結果だ。
この、<後期高齢者医療制度>の目的は、国家が、老齢民衆への医療を制限する新たな仕組みによって、彼らの生きる権利を奪い取り、保険料の懲罰的徴収によって高齢民衆からの新たな収奪を狙っている点にある。厚生労働省の試算によれば、それによって、現行と比べ医療保険は8300億を浮かすことができると言うのだ。
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/taikou05.html)
C後期高齢者1300万人を、現行保険制度から差別化する診療体系
未曾有の収益を上げる多国籍大企業に対する巨額の減税、作り上げられた仮想敵に費やす軍備費や、世界で戦争を繰り広げるアメリカ帝国主義者たちを支える莫大な軍事費とくらべて、この1300万人の命にかかわる経費の8300億円の、なんと微々たる金額であることか。高齢者の命が、資本家の私的利益と侵略戦争のために奪われようとしているのだ。
2008年4月を前にして、各市町村が「県民だより」などで説明する「後期高齢者医療制度」の説明は、住民税増税時に行った「住民負担は変わらない」と言う説明と同様、曖昧な説明による誤魔化しに終始し、いまだ多くの高齢者民衆が、この新たな国家による、あこぎな医療収奪の実態を把握できないでいる。
彼らの住民への説明は、○ 75歳以上高齢者全員の加入、○ 保険料の年金からの天引き、○ 子供の健康保険の扶養に入って保険料を払っていない人は、新たに自己負担が必要、○ 医療費の自己負担はこれまでと変わらない(1割)などと言うものだ。(奈良県の例)
しかし、この制度の収奪的性格を一部説明はするが、極めて不十分である、第一に、この制度が従来の制度<政管健保、組合健保、国民健保(老齢建保を含む)>と、根本的に差別化された「診療体系の別体系化」の実態に触れていないことだ(75歳以上の後期高齢者だけでなく、65〜74歳の寝たきり、障害者も対称とした独立した医療制度である)。厚生省が2008年1月16日に、4月以降実施案として、「中央社会保険医療協議会(中医協)」(厚生省諮問機関)に示した内容に基き2月13日、「中医協」が答申した「後期高齢者医療制度」の診療体系は、医療点数の評価を通して徹底した高齢者医療の切捨てを医療機関に強制するものとなっている。そのことは、日本資本家階級の私的利益(更なる減税の原資の確保)のためであり、その意を受けた国家の民衆への収奪である。(http://www.shahokyo.jp/modules/photo2/photo.php?lid=78)
D 「後期高齢医療制度」における、診療報酬“包括払い”は、医療を必要とする民衆を、医療機関から追い出す制度である
すなわち、● 通院、入院患者に対する医療行為の結果医療報酬を決める、他の現行制度を適用せず、可能な医療行為に上限を設定する“包括払い”にしている点である。「中医協」が行った答申によれば、検査・治療の診療報酬を、医師が必要とする回数を行っても、病院に支払われる報酬が同じである“包括払い”の導入は、後期高齢者には手厚い医療は施すなと、病院と医師に恫喝を加えている事と同じである。
治療した結果によって医療報酬が決まる現行制度から、『後期高齢者』だけを差別化し、彼らが必要とする医療に制限をくわえると言う所業は、人権と人道に悖る許されざる行為ではないのか!
更に、● 慢性的疾病の通院患者は、『高齢者担当医』制度により、複数の医療機関の受診を制限させ、● 終末期医療においては、「医師が一般的に認められている医学的知見に基き、回復を見込む事が難しいと判断した後期高齢者について、患者の同意を得て医師、看護婦、その他関係職種が共同し、患者及びその家族等とともに、終末期における診療方針等について十分に話し合い、その内容を文書に纏めた場合に評価する」(答申)とは、「過剰な」延命治療をしないと言う「誓約文」を提出させ、病院からとっとと追い出せば診療報酬を高く評価すると言うことを意味している。
E 2年毎の、際限なき保険料の値上げと、保険料の強制的徴収と未納者に対する懲罰制度
しかも、● 現行健保(政管、組合、国民)から切り離された、「後期高齢者健保」は、それ自体の枠の中で運営される以上、“医療費の増加と今後増加こそすれ決して減ることの無い高齢者人口増”の下で、決められた2年毎の「見直し」によって、健康保険料の際限なき自動的値上げ(利用者負担)が行われるのだ。
また、● 保険料の徴収においても、この制度が持つ、国家による社会的弱者を狙った収奪的、略奪的性格を露骨的に暴露している。(年金月額、15000円以上)全ての75歳以上の高齢者の年金から、強制的天引きを行うと言うことは、すでに行われている介護保険の天引きを含め、支払い困難な高齢民衆の「分納」の機会さえ与えるものではない。さらに、直接納入者の滞納は、75歳以上に猶予されていた「保険証の取り上げ」を、懲罰的に執行するというのだ。
F ● 「やがて公園に死体が転がる時代が来るだろう」と予言する脳神経外科医・上山博康氏
● 貧困に喘ぐ未納者を「悪質な人々」と罵倒する厚生省課長代理・土佐和男
08年1月18日、石川県後期高齢者医療広域連合主催のフォーラムで、厚生省国民健康保険課課長代理の土佐和男は、「後期高齢者は、きちんと保険料を納める人が多いが、滞納するのは悪質な人だ」と発言、この国家の手先は自分達の責任を棚上げし、資本家どもと国家双方からの二重の収奪の中で苦境に喘ぐ多くの高齢民衆を「悪質者」扱いをしているのだ。この男は、『悪質な』人々が何故滞納するのかなどとは、考えることすらしない。高齢者所帯188万所帯が生活保護所帯以下の所得水準にあるだけでなく、貯蓄0水準所帯の増加を含め、1300万後期高齢者の貧困化の進行が深刻であることなどまるで眼中に無いのだ。
(http://shahokyo.jp/modules/news/article.php?storyid=61)
「社保協」はホームページにおいて、この課長代理の発言に対し、「怒髪天を突く怒りでいっぱいである」と言って民衆の憤怒を代弁している。
脳神経外科医・上山博康氏は、この制度が実施されれば「やがて公園に死体が転がる時代が来るだろう」と語った。(1月7日、テレビ東京系列放映)「主治医が見つかる診療所」
この「後期高齢者医療制度」による後期高齢民衆の命の代価、8300億の収奪は、資本家階級にとって、75歳以上の扶養家族を健保からはずすことによる負担減だけではない、高齢者の命を代価として、莫大な脱税(大企業は法人税を84年43・3lから13・3lに下げたままだが、国民は、あらゆる減税措置を奪われた)と、かれらの軍事プレゼンスとしての軍事費の原資ともなるのである。
我々は社会的弱者さえ、食い物にする福田自公政権のこの『後期高齢者医療制度』の廃案と4月実施に、断固反対するものである。
後期高齢者と障害者の、非人間的略奪的収奪制度『後期高齢者医療制度』4月実施を阻止する国民的抗議の戦いをあらゆる場所から開始しよう!
我々は、かかる国家による高齢者への攻撃が、働く民衆の搾取と収奪の上に君臨する資本家階級を、ますます肥え太らせるための制度であることを暴露するものである!
未曾有の儲けを上げる日本の資本家階級、多国籍大企業に対する減税措置を直ちに中止し、84年時法人税、43・3lに戻し、徹底的な徴税をおこなえ!
大企業からの徴税を、医療体制の充実と社会的弱者の救済、働く民衆の労働条件の改善と減税にまわせ!
参考資料
後期高齢者医療制度の診療内容(社保協)
http://www.shahokyo.jp/modules/photo2/photo.php?lid=78
後期高齢者医療制度に関する厚生省課長代理の講演(社保協)
http://shahokyo.jp/modules/news/article.php?storyid=61
厚生労働省・ホームページ、(医療保険制度体系の見直し)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/taikou05.html
(文責 柴野貞夫)
|