平田 保雄 ♂  大人しくて優しい長身な男の子。余裕を持って人に接する。
台詞数:37





麻田 梢♀   明るい子。優しくて他人を気遣うのが好き。
台詞数:54


品川 皐月♀ 自意識過剰。野望と夢に燃える多感な少女。ハイテンション。
台詞数:27












             跳ね回る風の下で


エピソードその6『お邪魔してもいいですか?』





 読書部の部室前にやってきた梢。恐る恐るドアを開ける



1 「あ、あのー……」
2 皐月 「おや、君は確かこの前の……。 なになに? もしかして、君も入ってくれるのかな?」
3 「え? え、その……今日はもうちょっと詳しい話を」
4 皐月 「おお! そうかー、是非詳しい話を聞いてくれたまえ! と、言いたいところだが……今は時間が無いのだよ。悪いね」
5 「そうですか。それじゃあまた今度――」
6 皐月 「と、言うわけで一緒に行こうか」
7 「へ?」
8 皐月 「これから、みんなで行くんだよ。せっかくだから参加してみないかい?」
9 「これからですか? って、何を?」
10 皐月 「まあ、百聞は一見にしかず、だよ。さ、いこいこー!」
11 「え、ちょ、ちょっと、先輩引っ張らないで下さいよー!」






12 「あの、ここってどこですか」
13 皐月 「公園だよ」
14 「それで、何を、するんですか?」
15 皐月 「部活動だよ」
16 「公園で? 読書部ですよね?」
17 皐月 「会長、また説明しないで連れてきたんですか?ちょっとしたボランティアですよ」
18 「お、やっくん。早いね。みんなも早いねー」
19 保雄 「会長が遅いんですよ。3分の遅刻ですよ」
20 「まあまあ、良いじゃないか。どうせまだ準備中でしょ?」
21 保雄 「ダメですよ。遅刻は遅刻です」
22 「あ、あのー、これって何をしてるんですか?」
23 皐月 「これは、ゴミ拾いですよ」
24 「あ、この前の――」
25 保雄 「副部長の平田です。宜しくお願いしますね」
26 「あー、もしかしてこの前言ってたボランティアっていうのは」
27 皐月 「うん、そーゆーこと。社会貢献は大事だよ」
28 「はあ、でもなんで――」
29 皐月 「って、もうみんな始めてるじゃないかっ。 あーっと、麻田さんはやっくんと一緒に回って。私はあっちの子達と話があるからさ」
30 「え? い、良いですけど。良いんですか?」
31 保雄 「はは、良いんですよ。それじゃあ行きましょう。」






32 保雄 「麻田さん、でしたっけ?」
33 「はいっ。なんですかっ?」
34 保雄 「緊張しなくていいんですよ。別に私は先生じゃないんですから」
35 「そうなんですけど、突然連れて来られちゃったので。まだ入部してるわけじゃないし」
36 保雄 「気にしなくていいですよ。そういうのはただの形式です。それとも、参加したくありませんでしたか?」
37 「いえ! そんなことありません。興味合ったので。でも、良いのかなーって」
38 保雄 「なんというか……」
39 「何か?」
40 保雄 「もし入ってくれるなら、の仮定ですが。麻田さんは、うちでは珍しいくらいの常識人ですねぇ」
41 「別に、あたしは普通なんですけど」
42 保雄 「普通だから、ですよ」
43 「普通って、普通じゃない人多いんですか?」
44 保雄 「会長を見れば分かるでしょう?」
45 「あー……って、い、いやそんな事無いですよ」
46 保雄 「はは、遠慮する必要ありませんよ」
47 「えっと、そ、そうかもしれませんけど」
48 保雄 「それに、私を見ても分かるでしょう?」
49 「え? 先輩は普通ですよ?」
50 保雄 「あははは、そう見えますか?」
51 「ええ、会長とは違って……って、ああ、ごめんなさいっ!」
52 保雄 「いえいえ、会長がアレなのは事実ですからね」
53 「あー、やっちゃったぁ。ほんとすみません」
54 保雄 「麻田さんは、どうして今日来たんですか?」
55 「えーと、強引に連れられて」
56 保雄 「それだけじゃないでしょう。興味があるから来てくれたんですよね?」
57 「はい、その、こういうのってやってみたいなって思ってたんです」
58 保雄 「こういうのっていうとボランティア的なことですか?」
59 「はい。人のためになるのって好きなんです」
60 保雄 「私が言うのもなんですが、だったらボランティア部があったでしょう」
61 「ちょっと、入りづらくって。ここなら入りやすいなって思ったから」
62 保雄 「それは嬉しいですね。うちの一番のウリは、入りやすさですから。それと、その人数をバックにした部費の多さですかね」
63 「そんなに多いんですか?」
64 保雄 「ええ、文化部ではかなり。こういう活動も、言い方は悪いですがお金になります」
65 「そういうもんなんですか?」
66 保雄 「大人は見栄っ張りですからねぇ。おかげで助かります」
67 「あー、先輩もやっぱりこの部活の人って感じですね」
68 保雄 「もちろん。素直に従ってたら面白くありません」
69 「じゃあ、今のゴミ拾いも嫌々やってるんですか?」
70 保雄 「まさか。そんなことありませんよ。これはこれで楽しんでます」
71 「んー? そういうもんですか?」
72 保雄 「公園は綺麗になる、学校は喜ぶ、私達の評価は上がる。良いこと尽くめじゃないですか」
73 「あはは、そうですね」
74 保雄 「欲張りなんですよ、私達は。」
75 「欲張りだなんて、良いことですよ」
76 保雄 「ええ、悪いことじゃないですよ。ちょっとずるいですけどね。雑談もこのくらいにして、頑張って終らせちゃいましょう」






77 皐月 「おーう、お疲れさまー。綺麗にしてきたかい?」
78 保雄 「一通りはやってきましたよ」
79 「あー、結構疲れますねこれ」
80 皐月 「これくらいがやりがいがあっていいのさ。この後ジュースも用意してあるから飲んで行っていいよ」
81 「い、いや、私はいいですよ」
82 保雄 「遠慮せずに。参加したご褒美ですよ」
83 皐月 「さてと、どーだい? さっそく入部届けにサインしてくれるかな?」
84 「え? えっと」
85 保雄 「だから会長は性急すぎますよ。女の子なんだから優しくしてあげないと」
86 皐月 「えー、だって日野君だって入ってくれたんだよー?」
87 「え、日野君も入ったんですか?」
88 皐月 「うん、意外だったねー。もっと手こずると思ったんだけどねー」
89 保雄 「好きな女子でも居たんじゃないですかねぇ」
90 皐月 「え、ええ!?」
91 「案外そうかもしれませんね」
92 皐月 「ちょっと! 君まで何を言うのかな!」
93 「あはは……面白いですね」
94 皐月 「もぉ……ま、面白いんだから是非是非っ」
95 「いや、そんなすぐには入れませんよ。今日だって無理やり……ってあれ?」
96 皐月 「どうしたんだい?」
97 「そういえば、入ったっていう日野君を見かけなかったんですが」
98 皐月 「あー、それはねぇ。断られちゃったんだよ。こういうのはガラじゃないって」
99 保雄 「ガラじゃないのは会長の方がよっぽどなんですけどね」
100 皐月 「やっくんは一言多いんだよー。とはいえ、素直に参加してくれる麻田君とはちょっと、キャラが違うよね、彼は」
101 「まあ、確かにちょっと違うかも」
102 皐月 「ま、そんなことはさておき、うちに入ろうよ」
103 保雄 「だから、会長。しつこいですって」
104 「あの、だから、今すぐ入るってわけには……」
105 皐月 「あ、そうだ。じゃあ仮入部ってのはどうだい」
106 「あ、それならいいですよ」
107 保雄 「おや、いいんですか?」
108 「ええ、他にどんな活動するのか興味ありますから」
109 皐月 「それじゃあ期待に応えないとねー」
110 「ところで、日野君は今日は部室ですか?」
111 皐月 「……知らなーい。帰っちゃったんじゃないのかねぇ?」
112 「どうしたんですか? 何か怒らせるような事言っちゃいました?」
113 保雄 「妬いてるんですよ」
114 「妬いてる?」
115 保雄 「ね? 会長?」
116 皐月 「べっつにー。……ねえ、麻田君、日野君っておとなしい子が好みなのかい?」
117 「さあ、私に訊かれても……どういうことです?」
118 保雄 「ちょっとした女の戦いってとこですよ」