日野 守♂   一見おとなしくて優しそうな雰囲気。だけど、言う事はきつい。自分は頭良いと思っている節がある。 台詞数:47





津久井 祐次♂ 能天気で明るい男の子。良い奴だけど、どこか抜けてる。 台詞数:47












             跳ね回る風の下で


エピソードその4『たぶん、今はきっと悪くないんだと思う』






1 祐次 「わりぃ! 宿題見せてくれ!」
2 「朝から唐突だね。それに、もう時間無いよ」
3 祐次 「すっかり宿題あるの忘れてて、早起きしてこなかったんだよ」
4 「いやさ、最初から朝写す気だったの?」
5 祐次 「ああ、頼りにしてるぜ!」
6 「……はあ、仕方ないね。ほら」
7 祐次 「さんきゅううううう! よっしゃ急いで写してくる!」
8 「後五分しかないけど、出来るのかなぁ」





1時間目が終わった休み時間



9 祐次 「いやー、助かったぜ。今度は俺が見せてやるからな」
10 「いいよ。そもそも、その今度は永遠に来ないような気がするよ」
11 祐次 「遠慮すんなってっ」
12 「別に……。それにしてもよく5分で出来たね。感心するよ」
13 祐次 「これくらい、自分でやるのに比べれば楽勝楽勝」
14 「その集中力で自分でやればいいじゃん」
15 祐次 「ん、まあそれはテストの時に使ってるから、それで良いじゃん」
16 「まあ、津久井君がそれで良いならいいけどさ……」
17 祐次 「まあ、それもお前がいるから出来る事だけどな」
18 「……僕が、宿題見せなくなったりノート貸さなくなったらどうするの?」
19 祐次 「困る」
20 「それで?」
21 祐次 「いや、困るな。滅茶苦茶困る」
22 「そう」
23 祐次 「つーか、もしかしてお前もう貸してくんないわけっ?」
24 「……うん」
25 祐次 「ぐああああ! まじか! それはきっついなぁ」
26 「……他に借りればいいんじゃない?」
27 祐次 「んー、まあそりゃそうだけど。俺が頼ってるのはお前にだしなぁ」
28 「だから、僕だけじゃなくて他の人も頼ってよね」
29 祐次 「おおう……しかし、お前今日冷たいな」
30 「冷たいのはいつものことだよ」
31 祐次 「そうか? なんていうか今日はいつもとは違くねーか?」
32 「……別に、普通だよ」
33 祐次 「……そっか。ま、なんか困ってたら言ってくれよ」
34 「……考えておく」
35 祐次 「おいおい、お前、本当に平気か? いやてっきり、永遠に有り得ないと思うよ、とかなんとか言われると思ってたのに」
36 「ごめん、僕もよく分からないんだ」
37 祐次 「ああ、まあ何か気に障る事したなら謝るけどよ……」
38 「いや、そういうわけじゃない。と思う」





昼休み、守は食事にも行かずぼーっとしていた。



39 「……頼ってる、か……なんなんだろうねぇ(ぼそ)」
40 祐次 「メシ行こーぜ!」
41 「え?」
42 祐次 「もう昼休み十分も過ぎてるぞ。早く行かないとメニュー無くなるぞ」
43 「あ、うん」
44 祐次 「お前、もしかして風邪か? 食べられないっていうんなら無理しなくていいけどな」
45 「いや、うん。行くよ」
46 祐次 「ぼーっとしてたから、行かないのかなーって心配しちゃっただろー」
47 「いや、平気だよ。気にせず食べに行って良かったのに」
48 祐次 「おま……そんな事言うなよ。それに、俺も居眠りしちゃって一人だからいいんだよ」
49 「居眠り? 四時間目はいつも起きてる津久井君が?」
50 祐次 「ああ、めっさ眠くてよ。船漕ぎまくってたぜ!」
51 「よくそんな言葉知ってるね」
52 祐次 「この前お前が教えてくれただろ。面白いから最近使うようにしてるんだぜ」
53 「ふうん……」
54 祐次 「んじゃ早く行こうぜ。カツカレー無くなっちまうから、急ぐぞ」
55 「ん、じゃあ行こうか」
56 祐次 「よし、競争だな!」
57 「五分ハンデくれるならいいけど?」
58 祐次 「絶対勝てないだろ!」
59 「というわけで、普通に行こうか」
60 祐次 「そだな。そのハンデだと窓から飛び降りるしか無くなるからな……。三階からってのは未知の領域だぜ……」
61 「何もそこまでしなくても」
62 祐次 「……でも、普通に行っても五分もあれば着くよな」
63 「うん」
64 祐次 「え、俺のダイブの意味無いじゃん?」
65 「無いねえ」
66 祐次 「三分にしねえか? それならなんとか」
67 「いや、だからいまさら競争しても仕方ないでしょ」
68 祐次 「そういやそうだな」
69 「ああ、そうだ。さっきの、もう貸さないって話だけど」
70 祐次 「ん?」
71 「待っててくれたお礼に、取り消しにするよ」
72 祐次 「おぉぉ……まじか! やっぱりダメってのはナシだぞ!」
73 「あ、やっぱ――」
74 祐次 「ぐああああ! 鬼だーー!」
75 「冗談だって」
76 祐次 「ほ、ホントか!?」
77 「んー、どうかなー」
78 祐次 「……」
79 「じゃあカツカレー奢ってくれたらいいかなー」
80 祐次 「なんだ、突然絶好調だな……まあ分かったぜ、カツカレー一つで宿題やらないで済むなら安いもんだ」
81 「あ、別にずっととは言ってないよ?」
82 祐次 「ん、じゃあ……一回につき一カツカレーかっ? ……まあ、それでもまあ悪くない取引ではあるが」
83 「さすがにそれは僕が飽きるよ。ってか、悪くない取引なんだ」
84 祐次 「かなり、俺にとってはな」
85 「いや、絶対損してるって」
86 祐次 「そうか?」
87 「まあ、いいよ。今まで通りで」
88 祐次 「?? いいのか?」
89 「うん。なんか満足したから」
90 祐次 「あー?」
91 「いいんだよ。少し考えてたことがあっただけだから」
92 祐次 「へー、なんだよ考えてた事って」
93 「津久井君ってバカだなーって改めて思っただけだよ。あははは」
94 祐次 「はあ??」