日野 守♂   一見おとなしくて優しそうな雰囲気。だけど、言う事はきつい。自分は頭良いと思っている節がある。 台詞数:45


平田 保雄 ♂  大人しくて優しい長身な男の子。余裕を持って人に接する。 台詞数:21





品川 皐月♀ 自意識過剰。野望と夢に燃える多感な少女。ハイテンション。 台詞数:53


麻田 梢♀   明るい子。優しくて他人を気遣うのが好き。 台詞数:40












            跳ね回る風の下で


エピソードその1『たぶん楽しいのかもね』





教室の前までやってきて唖然とする守



1 「はあ? 何ここ?」
2 「あれ? 日野君じゃない」
3 「あ、麻田さん久しぶり」
4 「久しぶりって、さっきまで教室に居たけど?」
5 「なんとなく……ものすごく久しぶりな気がしてね」
6 「変なの……。あ、でさでさ、日野君もここ見に来たの?」
7 「うん、そのつもりだったけど」
8 「けど?」
9 「やめとおこうかなぁ」
10 「うん……なんか怪しいよねこの張り紙」
11 「世界の平和と平等と学校の幸せのために……って」
12 「怪しい宗教みたい」





その時、突然ドアが開いて人が飛び出してきた。



13 皐月 「よーーーこそ!」
14 「わ!? なになに!?」
15 皐月 「我が独立書籍研究会へようこそ。我々は君達を歓迎しようっ」
16 「なにその長ったらしい名前」
17 皐月 「何ってうちの部の名前だけど?」
18 「部じゃなくなってるし」
19 皐月 「部だと子供っぽいんだもん。ま、入りたまえ」
20 「え、あの?」
21 皐月 「入部希望なんでしょ、ほら、早く早く」
22 「いや、まだ入部じゃなくて」
23 皐月 「遠慮しないでいーから」





なんだかんだと中で座らせられる二人



24 皐月 「では、まず活動内容から説明しようか」
25 「あ、あの」
26 皐月 「ん、ああ、自己紹介もしてなかったっけ。ごめんごめん。 私はここの会長の品川皐月 読み方分かる? しながわさつき、ね」
27 「いや、そもそも口で言ってるから漢字が分からないですよ」
28 皐月 「もぉ、人がせっかくサービスしてるっていうのになー」
29 「えーと、品川さん」
30 皐月 「大丈夫。そんなに慌てなくても我が研究会は誰であろうと歓迎するよ」
31 「あー、いや、別に、その」
32 「入部希望じゃないんですよ」
33 皐月 「え……違うの?」
34 「うん」
35 皐月 「そっか。あ、なるほど。見学希望者だね。ゆっくり見ていくといいよ」
36 「そのつもりだったけど」
37 皐月 「うんうん」
38 「やっぱやめときます」
39 皐月 「君ひどいねっ!」
40 「危なそうだし」
41 皐月 「そんなことないって。とっても楽しいぞ」
42 「それじゃ、失礼します」
43 皐月 「あ、あ、ほら、ちょっとだけでも話聞いていったりしてみたくない?」
44 「みたくないです」
45 皐月 「うぅー……」
46 「あのぉ」
47 皐月 「ああ、うん。君も行っていいよ。引き止めて悪かったね」
48 「いえ、せっかく来たし説明聞かせてもらってもいいですか?」
49 皐月 「ほんと!?」
50 「はい(……ちょっとかわいそうだったしねぇ)」
51 皐月 「何か言ったかい?」
52 「いえー、なにもー」
53 「麻田さんってやっぱり人が良いよね」
54 皐月 「それで、君はやっぱり帰っちゃうの? そこのちっちゃい男の子」
55 「……言い方が気になるけど、僕も残ります。せっかく、だし」
56 皐月 「そうかそうか、うんうん、嬉しいな。実に嬉しい」
57 「それで、活動内容って、本を読むだけ……じゃないんですよね?」
58 皐月 「その通り、察しが良いね。基本的には適当に本を読んで感想文コンクールに提出したりもするが」
59 「意外と、まともね……」
60 皐月 「ああ、そりゃそういう活動のために学校から場所と資金を貰ってるんだからね。まあ、それ以外には、屋外での活動も多いよ」
61 「屋外? 外にでかけて読書でもするんですか?」
62 皐月 「いやぁ、違うよ。本は家で寝転がって読むものだと私は思う」
63 「思いっきりこの部活の存在否定してますね。で、外で何やってるんですか?」
64 皐月 「UFO撮影会」
65 「は?」
66 「帰ろう」
67 皐月 「っとと! ちょっと待って! オカルトには興味が無いみたいだね」
68 「テレビで十分です」
69 皐月 「じゃあ、オーソドックスなもので言うと……肝試しかな」
70 「あの、それって部活と全然関係無いように思えるんですが」
71 皐月 「全然無いけど、面白いよ」
72 「……他には」
73 皐月 「ゲートボール大会」
74 「ほ、他には?」
75 皐月 「激流川下りチキンレース」
76 「……と、ところでもう一つ訊いて良いですか?」
77 皐月 「ああ、なんでもどうぞ」
78 「ここって部員の人ってどれくらいいるんですか?」
79 皐月 「んー、何人だったかな」
80 「僕にはこの人しか居ないように見えるんだけど」
81 皐月 「いやいや、ここは文化系で最大の人数なんだよ」
82 「でも、いまだに誰も入って来ないし」





その時、ドアを開けて一人の男子生徒が入ってくる



83 保雄 「お疲れ様です」
84 皐月 「おー、やっくん! おはよう!」
85 保雄 「ん、お客さんですか?」
86 皐月 「そそ。でもさ、私の言う事を信じてくれんのだよ」
87 保雄 「あははは、まあそりゃあそうでしょうねぇ」
88 「あ、どうも、お邪魔してます」
89 「どうも」
90 保雄 「どうも。見学の方、ですね? ここは良いですよ。本読みながら居眠りしててもいいし、野球とかサッカーやりたかったら呼びかければできるし。何せ部員は100人くらいいますから」
91 「100人!?」
92 「うそでしょ……」
93 皐月 「あれ、そんなに居たっけ? 50人くらいだと思ってたよ」
94 保雄 「ダメですよ。ちゃんと把握してないと」
95 皐月 「やー、どうも幽霊部員が多いとねー」
96 「そんな大人数この教室入らないんじゃないですか?」
97 保雄 「大半が幽霊部員だから大丈夫ですよ。それに予備の教室も割り当てて貰ってるから」
98 「へえ、凄いんですね」
99 保雄 「大した事はありませんよ。普段はほとんど何もしてませんし」
100 「あの、さっき会長から色んな活動をしてるって聞いたんですけど、それは?」
101 保雄 「どれを聞いたのかは判らないけど、色々やってますよ。やりたいことがあったらなんでもできますよ」
102 「な、なんでも?」
103 保雄 「まあ、あまり変なことはできませんけど。去年は日の出を見に富士山行って、寒くて死ぬかと思いましたよ。ははは」
104 皐月 「それは、やっくんがバカ正直に制服で来るからでしょ。コートも無しに」
105 保雄 「はははは、まあ学校に提出する写真には制服で写ってる方が見栄えが良いじゃないですか」
106 「もしかして、それも100人参加したんですか?」
107 皐月 「ううん、そういう全体主義は嫌いだから、自由参加。一度参加表明したら逃がさないけどね」
108 保雄 「どうです? 楽しいですよ」
109 「うーん、楽しそうだけど」
110 「楽しそうというか、ハードそうだなぁ」
111 保雄 「さっきみたいなのは特別で、基本は感想文の提出と老人ホームや子供会での朗読会、気まぐれでゴミ拾いくらいですか。各自のノルマはどれか一つ一年に一回参加すること」
112 「あ、ちゃんとした事もやってるんですね」
113 「ちゃんとした事以外もやってるの自体おかしいけどね」
114 皐月 「全部ちゃんとしてるさ。他の部活じゃ味わえないようなことも沢山あるよ」
115 保雄 「まあ、非合法なのもありますけどね。女子だけでいつも即売会行ってるとか」
116 皐月 「ふふふ、それは乙女の楽しみというものだよ」
117 「??」
118 皐月 「ええと、君もどうだい。漫画とか好きだろう?」
119 「え? まあ、結構好きですけど……うーん、どうしようかなぁ。今日は見に来ただけだし」
120 「明らかに違う事を誘ってないですか?」
121 保雄 「あはは、確かにそうですね。でもちゃんと入部して欲しいって意味でもありますよ。あなたもどうですか?」
122 「僕は」
123 皐月 <考えてみる>
124 皐月 <是が非でも入りたい>
125 「って、なんだよそれ」
126 皐月 「いやー、ゲームっぽく選択肢を用意してみたんだが、気に入らんかね?」
127 「気に入りません。そもそも、断る選択肢がないじゃないですか」
128 「むしろ」
129 <穏便に後で断る>
130 <今すぐ断る>
131 「にしたいくらいです」
132 皐月 「気に入らん。そもそも、承諾する選択肢がないではないか」
133 保雄 「いやー、仲が良いですねぇ」
134 「え? 誰が?」
135 保雄 「まあ、今すぐ決めるようなことじゃないですし。良かったらまた来て下さい」
136 「そうね。別に、見学しにきただけですし。今日はこれで帰ろっか」
137 「もう、見に来ないような気がするけど」
138 「あはは……」
139 皐月 「まったく強がっちゃって」
140 「何も強がってませんから」
141 皐月 「ふふふ、期待してるよ」
142 保雄 「また来てくださいね」






143 「面白いとこだったねぇ」
144 「面白い、ね。そういう見方もあるかな」
145 「それじゃ私は他のとこ行ってくるね」
146 「じゃあね」
147 「日野君はもう帰るの」
148 「特に見たいとこももうないしね」
149 「一緒にソフト部見に行く?」
150 「そこ、女子のでしょ」
151 「ははは、そうね。じゃ、また明日ねー」






152 保雄 「で、会長。また変な張り紙しましたね?」
153 皐月 「うん、インパクトある方が人集まるかと思ってね。今回は趣向変えてみたよ」
154 保雄 「普通で結構です。さっき、あの張り紙見て帰っていく生徒見かけましたから」
155 皐月 「むー、ちょっとやりすぎたかな」
156 保雄 「ええ、普通に見学歓迎しますとかでいいんです」
157 皐月 「普通じゃつまらんのだよー」
158 保雄 「はいはい。それでは普通の張り紙に戻しておきますよ」
159 皐月 「ぶーぶー」