声劇用台本/流れる季節の中で

 



西沢 和真♂  無気力系の男の子。根暗じゃない。
          やる気がないだけとも積極性が無いだけとも







笹山 唯♀ おとなしい子。感情がすぐ表に出る。慌てやすい。















        第七話 『お礼なんかいらないのに』












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「うわぁ……混んでますね」
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和真 「コピー機は昨日より増えてるな」
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「どこか席開いてるかなぁ」
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和真 「あ、あの席にしようか。二人席だし」
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「あ、待ってください」
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和真 「だから、走ったら怒られるって」
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「はい……昨日怒られました」
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和真 「見てたよ」
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「えっ? 見てたんですか?」
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和真 「まあ、偶然見ちゃった」
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「うー、恥かしいです」
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和真 「とりあえず図書館では走るのやめようね」
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「気をつけます」
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和真 「さて、と……ちょっと机小さいけどやろうか」
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「はい、よろしくお願いします」
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和真 「よろしくお願いします。笹山先生」
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「先生だなんて。教員免許持ってませんから」
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和真 「知ってるって」
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「で、何から教えましょうか」
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和真 「何から……全然考えてなかったな」
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「……私もです」
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和真 「問題集とか持ってないの?」
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「あ、持ってますよ」
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和真 「じゃあ、それやろうよ」
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「あの、ええと……家に」
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和真 「じゃあ、今は持ってないのな……」
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「はい。ごめんなさいぃ」
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和真 「いいっていいって」
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「では、単語の暗記でもしましょうか」
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和真 「ま、まあいいけど……一人で勉強してたらやらないし」
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「あ……暗記じゃ一人でするのと変わらないですね」
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和真 「ん、まあ、じゃあ10分後に質問してよ。それまで暗記してるから」
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「はい。分かりました」








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「はいっ、10分経ちましたよ」
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和真 「うわ、早いな……」
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「では、問題出しますよー」








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和真 「四つしか分からなかった……」
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「大丈夫ですよ。10分で四つなら一時間勉強すれば大丈夫です」
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和真 「んー……自信ないなぁ」
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「私は毎日ノートに20回書かないと覚えませんけど、



 西沢くんは見ただけで覚えられるじゃないですか」
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和真 「笹山って真面目だよね。まあ、いまさらか」
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「え? 私がですか? 普通ですよ」
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和真 「んー、まあ、そういうことにしとくよ」
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「? なんか引っ掛かります」
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和真 「まあ、気にしないで。じゃあ、次は文法教えてよ」
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「ぶ、文法ですか? そこはちょっと苦手なんですけどぉ」
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和真 「大丈夫、俺は苦手どころかさっぱりだから」
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「は、はい……頑張りますねっ」








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和真 「ふう……じゃあ、帰ろうか」
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「そうですね。もう真っ暗になりそうです」
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和真 「ありがとうな、こんな時間まで」
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「お礼ですからいいんですよ」
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和真 「あはは、そうだな。まあ、かなり勉強になったよ」
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「だとしたら私も嬉しいです。あっ、私借りてた本返さなきゃ」
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和真 「じゃあ、片付けながら待ってるよ」
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「はい、ちょっと行ってきますね」








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「……」
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和真 「笹山? どうした? 遅かったけど」
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「おしゃべりしないようにって注意されました」
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和真 「わ、悪い」
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「西沢くんは悪くないです……」
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和真 「いや、でも、ごめん」
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「……はい」
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和真 「か、帰ろうか」
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「そうですね……次は違う場所がいいです」
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和真 「そうだな……ごめん」
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「……はい」

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