設計から施工への解説

  建築の設計技術者として、これまでの約
40年間に、常に家造りの基本として来た事を少しでも数多くの皆様の夢の有る家造りにお役に立てて頂きたいと思い、筆を執りました。一度形にしてしまうと消しゴムのようには消えません。それだけに失敗作は許され無いのです。そんな失敗作を作り出さないために是非参考にしてすばらしい家造りをしていただきたいと願っております。
建築には、大きくジャンル別に分けると@設計A施工と分かれますまた@の設計にはA、企画 B、基本設計、C、実施設計と分かれます。順番に概要を説明していきますと

@    設計 ・・・・・A・企画

         B・基本設計

         C・実施設計
A    施工 

 企画 企画の段階でまず考えるのは予算・家族構成・地域・規模 などですね、まず具体化していくためには予算を立てていく事ですがまず、自己の年収や手持ち金からどの位用意できるか、また借り入れはできるかでしょう、この辺は、住宅ローンとしての案内のある金融機関などにて確認したらよいでしょう。次に大まかな予算枠がつかめましたら、土地をすでに所有している人は別として、まず土地を探さなくてはならないでしょう。土地の選択も非常に大変なものです、仕事場との関係や学校や公共施設などと行政や地益サービスと条件次第では大変なものです。次に地域が絞れてきたら、どのような法的な網が有るかどうかです、一般に次のような法律に絡むことが多いです、農地法・都市計画法・建築基準法・消防法・その他 と以上述べたような法律の網があります。と同時に敷地には物理的特性があります、昔から建築敷地だったのか土地の歴史を調べなければなりません、地盤がどんな地層で構成されているのか、また、自然災害についての予測を考えると、造成するのに盛度や切り土にて造成しますが切り土は比較的敷地条件としては良いのですが、問題は盛度です、盛る前の土地は湿地帯や腐植土やシルト層や沼や川などが有ったかによってはかなりの悪条件を抱えることになります。以上のような条件が重なってくると最悪です、表面は良質土であっても、造成の工法によっては、大変なことになります、よくある欠陥建築として代表的な問題を発生することとなります。不同沈下により家が傾いたり、基礎に大きくひびが入ったり、建具などのたてつけが悪くなったり、外壁にひびなどが入り雨漏りがしたり、とにかく大変な欠陥現象が現れます。それから地下水の位置や洪水のときに水処理がどうか、敷地の排水などと、土地が安価でも大変なリスクを背負います。地盤改良や杭により補強しなければならない、コストが非常にかかります。こんなリスクを負わないように十分に調査する必要があります、調査方法としてはまず現地の歴史のある人たち(老人)達から聞き取り調査や関係行政に聞いてみる、また古い大木が有るか、歴史ある構築物が有るか、また国土地理院に行き明治時代位からの等高線の入った地図などを参照するのも一つの方法でしょう。こんなことで地盤に関する調査は何とかなるでしょう、詳しく正確に調べるには地盤調査事務所に調査してもらうのが間違いない方法と言えるでしょう。以上で地盤については此の位で次に敷地と道路の関係と方位についてですが、非常に密接なつながりが有ります、特殊な場合を除き道路には絶対物が立たないし影を作らない、住宅にとってとっても大事な条件は光・風・音の関係です、太陽の位置によりさまざまな影が出来ます。致命的な条件にもなりかねます。別図で確認してください 。

造成前の地形断面図
上図の如く湿地帯には葦やあし類や水草などの植物が覆い茂っている右側の小高い地形を削り湿地帯に埋めた造成方法である、このとき湿地帯の地下水面は高く、水生植物などを取り除かず埋めてしまった場合、植物が腐食して腐植土となる、この腐食度が問題の地盤構成になると欠陥地盤になる。腐植土はスポンジみたいなもので質量がほとんどないためその上に家などの荷重がかかる(圧密)と地盤が沈んでしまう。いつになっても不安定な地盤となる。
地盤造成の切り盛り造成
造成後の宅地開発
冬至の時一日の日陰図  現在はパソコンによりどこの場所でもいつでも正確に陰を確認できる。
日照時間のシュミレーション図

以上のことで建築敷地は取り合図確保できたということで次は基本設計に入っていきます。まず間取りの計画だと思います、現状の家族構成と将来の家族構成の予測を踏まえ計画を立てましょう。家族構成と同時に大事なのは生活習慣です、全員食卓を囲んで食事が出来るのか、それともばらばらなのか、同じように洗面・洗濯・入浴・居間・寝室などなどは生活習慣によっては機能が、全然変わってしまいます。間取りをつめていくと大体の規模(床面積)がまとまってきますと平行して出来れば構造なども最初から盛りこんでおいた方が良いでしょう、構造には代表的には木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造まれにコンクリートブロック造や複合構造などがあります。夫々に長所・短所があるので、

 

まず木造を考えると非常に軽いので施工性が良いし材料にピンキリの価格差があるので選択の仕方によってはコストをコントロールし易い、安価な外材や集成材また科学樹脂などを利用した材料、また高価な物では銘木と言われるような非常に手に入りにくい材料などは代表的な物で芸術的な材料もある一方、材料がシンプルなだけに難しい技術は要求されないので安心できる。短所は火には非常に弱い、また条件によっては、腐ったりシロアリなどにより構造に大きなダメイジを受けやすい、大きな空間を取りにくい、間取りの自由性に制限ある、また強度が無いのと不均一である、この辺改善を加えた集成材が出てきているが歴史的検証が無い、

 

それでは次に鉄骨構造の長短所ですがまず長所としては安定した強度を確保できまた高強度にあるので大空間が取りやすい、よって将来においての自由間取りなど取りやすい、強度が安定しているので地震などの外力に対して構造計算がし易い安全で安心できる構造体を構築できる。火に対しては弱点はあるが耐火被服などを処置すれば対処できるが自重があるうえ施工性の精度や難度が要求される、したがって比較的高値安定木造のようにばらばらでは無い、よって設計監理や施工監理が重要になってくる、

次に鉄筋コンクリート造ですが質量が非常に有るので重い、機密性が高い、火に対しても強いので財産価値が安定している。また鉄筋とコンクリートの複合構造なので構造計画が精度良く成り立つ、また耐火構造なので火災に対しての安全担保し易い。施工性は現場にて作り出すので

造形的に非常に優れた芸術性のある構造物を作り出すことが可能であると同時に専門性の職役が多く必要とされる。施工難度があるためある程度の建築コストが躯体に必要とする。以上のような長短所を踏まえ構造計画を立てると良いでしょう。

 以上を詰めていくと規模外形概念がイメージ出来て来るかと思います、ここで最近はパソコンによるシュミレーションを容易に作り出すことが出来ます、詳細にバーチャルリアリティーに再現することが出来ます、照明器具による影、太陽による一年間のその日のその時間の影などを再現することが出来、コンピュウターの技術により施主も完成予想があらゆる角度にて再現でき大きな勘違いや、思い違いをする心配は防ぐことが出来ます。昔ですと設計者の言葉による表現と二次元による図面にて説明することにより見えない夢を膨らませ、現場の完成工程を見ながら仕上がっていくので完成期待感と完成したときの喜びを現場と設計者と一緒に喜ぶことが出来、また有る程度設計変更も現場で可能でした。設計者も詳細に渡り腕を振るい完成したときにはわが子が生まれてきたときのような感動がありました。しかし現代は法律も厳しくなり簡単には設計変更できなくなり、またリアルに再現できるので嬉しさが半減します。その分施主は早めに感動や喜びを立てる前から味わったり、また立てる前からいろんなデザインにして完成予想が出来るので建てる前から体験できます、たとえば住宅木造建築で表現しますと屋根の形を切り妻、寄棟、入母屋などといろんなパターンを表現できるので満足した形を選択することが可能ですが、設計者の三次元に隠れた質量間や空間の見えない趣や本当の意味での建築の持てる表現や多々積みや、設計思想による施主を包み込むような表現することは、不可能です。

こうした工程を踏んでいくと基本設計が固まりつつある中で今度は全体の予算配分も正確性を増した予算取りが可能となってきます。間接経費と直接工事費や経費などがいっそう明確に分析できるようになります、別表1にて詳細項目を確認ください。

建築意匠と同様以上に大事になってくるのは設備計画です。設備には大きく分けると電気設備には電灯・コンセント設備・弱電設備・通信設備と給排水衛生・給湯・ガス・空調換気・冷暖房などですが最近エコによる太陽光利用した発電設備やエコ給湯設備・オール電化設備などをあげられます。エコ設備についてはまだまだつめて考えないとイニシャルコストがかかりすぎ全体の工事費を突き上げます。コスト面と効果を十分吟味した上で検討採用して言ったほうが良いでしょう。この設備には建築と違って本当に機能主義です、機能が満足しないと致命傷に繋がります、また装置や機器には寿命があります、また技術のめまぐるしい発展の中でどの位の投資をしておくかということも大事になってきます、このような設備等の採用要因になっていくのは正確環境と生活習慣にて大きく作用されます、食卓を全員が囲む生活なのか通勤通学の時間帯のずれやばらばらの行動生活パターンですと生活パターに合わせた設備システムをくみ上げないと不経済で不便な機能となります。非常に大事なことなので十分な検討が必要です。

 次に実施設計に移ってゆきます。実施設計になりますと施主に解る様にというよりも夫々の職種に対して寸法・工法・材料などを正確に取り付けられるように表現された図面です。設計図が無くては本来見積もりが出ません、よって設計図が無いものは非常に見積もりがあいまいででたらめと言っても過言ではありません。図面が無いのですから何を使っても良いことになってしまいます。場当たりのおっつけ仕事なら出来ますが、大工さんが確認申請の図面で家を作るということは、そういうことです。

 建築行為をするにあたっての必要な設計図書は次のようになります、

戸建木造住宅に係る成果図書

 設計の種類        成果図書

 (1)総合       @建築物概要書

            A仕様書

            B仕上表

            C面積表

            D敷地案内図

            E配置図

            F平面図(各階)

G断面図 

            H立面図(各面)

            I矩計図

            J展開図

            K天井伏図

            L建具表

            M工事費概算書

Nその他確認申請に必要な図書

(2)構造       @仕様書

            A基礎伏図

            B床伏図

            C梁伏図

            D小屋伏図

            E軸組図

            F構造計算書

            G工事費概算書

            Hその他確認申請に必要な図書

 (3)設備       @仕様書

            A設備位置図(電気・給排水衛生及び空調換気)

            B工事費概算書

            Cその他確認申請に必要な図書

設計図書がそろってくると下表のような概算内訳書が出来上がります。こうして建築全体の予算案文ができ、直接工事に係る項目と眼には見えない雑費などの費用が見えてきます。

別表1

一般建設工事予算案分表

 

 

 

総額

u当たり

 

 

新築工事総予算額

0

0

 

 

 

 

 

 

 

 

木造在来工法概要

 

 

 

 

 

(m2)

()

 

 

 

1階床面積

195.432

59.11818

 

 

 

2階床面積

144.842

43.814705

 

 

 

延べ床面積

340.274

102.932885

 

 

 

建築本体工事

 

0

 

 

坪当たり単価

 

0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

種目

金額

構成比率

 

 

A 

建築本体工事

0

74.9

 

 

B 

付帯設備工事

#VALUE!

 

 

 

C 

別途工事

0

15.5

 

 

D 

諸費用

0

9.6

 

 

A 

建築本体工事

金額

構成比率

 

 

 

 

1

仮設工事

0

2.7

足場,養生,電力,用水,清掃片付,運搬費など

 

2

基礎工事

0

4.4

公庫基準程度

 

 

3

木工事

0

36.5

檜土台,杉柱,檜柱 等

 

4

屋根工事

0

4.5

陶器瓦1等品程度

 

 

5

金属,樋工事

0

0.8

雨押、塩ビ樋,飾工事含む

 

6

金属製建具工事

0

4.4

カラーアルミサッシ,網戸、雨戸、戸袋、硝子共

 

7

木製建具工事

0

4.6

化粧既製品ドア等

 

 

8

石工事

0

0.7

玄関廻り鉄平石程度

 

9

タイル工事

0

1.7

浴室、台所、壁デザインタイル

 

10

左官,吹付工事

0

3.9

外装吹付タイル、和室じゅらく壁等

 

11

塗装工事

0

1.1

外部 OP仕上、内部OS仕上等

 

12

内装工事 

0

6.2

壁ビニールクロス、床フローリング、天井布クロス、合板等

 

13

雑工事

0

7.8

床下収納庫、システムバス、キッチンセット、洗面化粧台等

 

 

合計

0

 

 

 

 

 

14

電気工

0

3.7

電灯、コンセント、インターホン、TVアンテナ配線、電話配線等

 

15

給排水衛生工事

0

5.9

吸水混合線、シングルレバー栓、便器、ウオシュレット、換気扇

 

16

給湯工事

0

3.1

給湯器

 

 

合計

0

 

 

 

17

諸経費

0

8

 

 

 

合計

0

 

 

 

   

 

 

 

 

 

別途工事

 

 

 

 

 

 

ガス工事

0

4.1

 

 

 

 

冷暖房工事

0

12.8

 

 

 

 

照明器具工事

0

6.9

 

 

 

 

外構工事

0

20.7

 

 

 

 

造園工事

0

23

 

 

 

 

カーテン他

0

5.8

 

 

 

 

家具

0

21.2

 

 

 

 

カーポート

0

5.5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合計

0

100

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諸経費

 

 

 

 

 

 

設計,監理料

 

70.3

建築設計事務所費用

 

 

地鎮祭費

 

5.6

神社への支払い、職人接待

 

 

上棟式費

 

6.7

酒代、祝儀、職人慰労

 

 

引越諸経費

 

5.6

引越し業者外注

 

 

 

登記,保険費

 

6.3

各種登記、火災保険

 

 

 

雑費

 

5.5

その他の雑費

 

 

 

合計

0

100

 

 

 



下表は内訳明細書の一部をピックアップしたものです
明細内訳書
NO 名称 形状寸法 数量 単位 単価 金額 備考
仮設工事
1 水盛り、やり方
2 墨出し u
3 外部足場 丸太抱き足場 u
4 内部足場 キャタツ足場 u
5 仮囲い損料
6 防護シート
7 仮設電気
8 仮設水道
9 養生費 u
10 清掃,方付け u
11 便所(簡易トイレ)
小計 0
  土工事及び基礎工事    
1 根切り 機械 m3
2 埋め戻し 機械 m3
地均し 建物周囲  m以内 u
3 盛り土 支給 m3
4 残土処分 場内敷均し処分 m3
5 割栗地業 目潰共 40~0 m3
6 束石 コンクリート製 80 箇所
7 捨てコンクリート Fc=150kg m3
8 打ち手間 m3
9 鉄筋コンクリート Fc=180kg
10 ポンプ損料
11 基礎型枠 鋼製,組立解体共 u
12 アンカーボルト Φ13mm ヶ所
13 床下換気口 120*300 ヶ所
14 基礎天端均しモルタル m
15 鉄筋 D10,D13 t
16 加工組立費
17 コンクリートブロック積み u
18 運搬費
小計

以上のような積算根拠において一つ一つ現場にて必要量を図面から拾い出し、仕様書に基づき
メーカを選定し、積み重ね見積もり内訳書として予算が確定していきます。
こうした工程を経てから、建設業法にのっとり予算に有った工事を建築業者に託し、決定した建設業者と実際工事に移っていきます。順調に現場が動き出したら、建築士法による現場監理、適切な監理指導の基に完成を目指します。