ワルツで3の足を閉じよう
前進の正しい踊り方

社交ダンス上達の道しるべ(1)


元セレクションダンサーズ所属・元港区立青年館ダンス講師   福頼静致・政子 (フクヨリ セイチ・マサコ)


どうすれば閉じることができるのか?

ガクンとつんのめるダンスを スウーッと振れて浮かぶダンスに変える




社交ダンスをしない人でもワルツと聞いて思い浮かべるのは、音楽が三拍子で、
その踊りは1,2,3,1,2,3とくるくる回りながら3できれいに両足を閉じている姿
というのが、世界的に定着したイメージでしょうから、

社交ダンスができると言いながら、
ワルツのナチュラル・ターン や リバース・ターンで カウント3 の足を閉じることができないというのは
好ましくないでしょう。

どうして閉じることができないのか?

「一歩左へ寄って下さい」 と言われたら
誰でも左足を横にステップして右足を揃えます。何の無理もありません。

ワルツのナチュラル・ターンは技術書で
<2,左足 横へ> <3,右足 左足にクローズ> と説明してありますから、
これができなくなるというのは、第一歩
<1,右足 壁斜めに面して前進> から第二歩までの間に原因があることは間違いありません。

結論を言います。

第一歩が持っているはずの要素を欠いたままで大きく踊るから、
第二歩の横の動きにつなぐことができなくなってしまうのです。

足型に備わるべき要素のうちのいくつかを省略してあるブルースからダンスを習い始め、
必要な要素を欠いたままでワルツに進んだのでは、
日本式のワルツを踊ることとなります。

同じ名前の同じパターンの足型をたくさん覚えて、
上手になったつもりで踊っていても、英国式とは別の道を進んでいるのです。

英国式のワルツに進むためには、
足型に備わるすべての要素を身に付けなければなりません。

「足型」はたった二文字ですが、

足型 [FIGUR] は様々な不可欠の要素を備えた複数歩で構成されているのです。


「足型」を構成する全ての要素を分かりやすく解説して、前進の正しい踊り方を説明します。



ポイズ(立ち方・姿勢)

自分は立つ事ができるか、歩くことができるか、 などと考えることはまず無いでしょう。
これが、ボールルームダンスを学ぶ上で最も大きな障害になっていると思います。

技術書は立ち方 (ポイズ) と 歩き方 (ウォーク) の説明から始まるのです。
これこそが ボールルームダンス の基本中の基本です。

座る生活様式で育った日本人は、立ち上がっても股関節に曲がりが残り、
体重がかかるのは つま先の方ではなくて
もっと後ろの、土踏まずから踵の方にかかります。

腰が後ろに引けて頭が前に出る傾向があります。
これが、技術書に示されたポイズとは大きく異なっているのです。

技術書では、ポイズを次のように示してあります。
<男子:
 頭は直立させ真っすぐな姿勢で立つ。

・ボディーはウエストで引き締め、
体重は足のボールの方向へ前方に保ち
・肩はリラックスさせ、
・膝はほんのわずか曲げて保つこと。>

<
女子:
 真っすぐな姿勢で立ち、

・ボディーはウエストで引き締め、
・体の上部と頭はわずか後方で少し左側に、
・膝はほんのわずか曲げ、
体重を足のボールに置く。>



日本では股間節を曲げるという主張を聞くことがありますが、
股間節を曲げたら
膝はほんのわずかではなく、もっとたくさん曲がります。

股間節を英語では ヒップジョイントと言いますが、
私が30年読み続けたレターサービスの中で、
この言葉に出会ったことは一度もありませんでした。

男子の立ち姿を横から見たら、踵から上に伸びる脚は前に傾いていて、
腰が足の真上にあり、
腰から上の胴体は真っすぐで床に垂直に立っていて、

もし、「踵を上げなさい」 と言われたら、
上体を前に動かさなくてもそのままスッと踵を高く上げることができる形が、
自分の基準の形として必要です。

女子の場合は、
男子の基準の形から体の上部と頭を少し後ろに反らせ、更に少し左側に保ちます。

曲げるのではありません。

女子の練習
鏡に面して両腕を横に水平に上げて立ち、
右手を右の遠くにあるものを取ろうと伸ばしてみたり、
左手も同じように左に伸ばしてみたり、

両腕の水平を壊さずに左右に移動させると、
上体を曲げないで左側に保つコツがつかめます。



ボールの意味

ここでボールの意味を確認しておく必要があります。
一般用語のボールは拇指球で、親指の付け根のところにある丸い部分のことですが、
ダンス用語のボールはその丸い部分だけではなくて、
拇指球も含めて爪先まで全部のことです。

このボールをトーと思っている誤解が多いようですが、トーは拇指球の前の縁から爪先までのことです。
足の甲とむこう脛が一直線になるくらいに、
踵を高く上げた時、体重を支えている部分がトーです。

股関節に曲がりがあると、
体重は踵から丸い部分までにかかって、親指には体重がかかっていませんから
確かめてください。

 普通に立って足の親指を上げてみてください。
もし上がるようでしたら、体重を支える点が後ろ過ぎます。

もっと股間節を伸ばして、
親指が上がらなくなるまで体重をうんと前にかけてください。


こんなに前なのかと、立ち方の違いが分かると思います。
つんのめりそうで不安なら、壁に両手を当ててもたれかかるようにすると良いでしょう。

そこで思いっきり踵を高く上げて、
足の甲を壁に近づけるとトーになります。

英国式のボールルームダンスを身に付けるためには、
股関節の部分が曲がらないように壁に近づけて足踏みやバウンスを繰り返し、
親指が床に触ったらその親指で体重を支えて立つ事を意識して

股間節を伸ばし、ボールやトーで体重を支えることのできる体作り
をすることが一番に必要です。


バランスとは

その昔、スクリブナーの講習を受けていた日本の選手が質問しました。
「バランスとは何ですか。」
スクリブナーの答えは
『頭を両方の肩の真上に、両方の肩を両方の腰の真上に、
両方の腰を両足の真上に、そして両足の中間に保つこと。』
でした。

両足の中間と言うのは、足を前後左右に開いた時のことを言っています。
ここから、 日本には中間バランスと言う言葉が生まれました。

日本では 「体重のかけ方だけをバランス」 と言いますが、
技術書では バランス と言う言葉は全く使っていません。

英国では、バランス の意味が日本とは異なっているのです。
バランスは 「全体的な均整」 の意味に使います。

体重のかけ方ばかりではなく、
そこに真っすぐな形の体があるという意味も含めて 「ポイズ」 と言います。

真っすぐな体がボールルームダンスの前提条件ですから、ねじったり曲げたりしてはいけません。

この真っすぐな体を運ぶことが目的で、運ぶ手段として使う道具が足なのです。
『要は骨盤をどこへどのように運ぶかの問題だ。』
スクリブナー

骨盤の上には常に真っすぐな体が乗っていなくてはなりません。

トラックにたとえると骨盤が荷台で、その上にある体が積荷で、
足や脚がエンジンや車輪です。
真っすぐな体が勝手に動くのは荷崩れですから
荷崩れを起こしたトラックは転覆事故にも繋がりかねません。
 真っすぐな体を壊さずに運ぶのが目的です。


前進のウォーク(歩き方)

日本人の一般的な歩き方は、
股間節と膝を曲げて片方の足を前に運んで置き、
その足にのし掛かるように体重を乗せますから、
体重が乗り切った時に頭と上体は足の真上にあっても
もう一方の足と脚と腰が後ろに残っています。

ボールルームダンスの前提条件となるポイズが
壊れています。

私の先輩 (陸軍士官学校の) で旧満州 (現在の中国東北部) に住んだことのある人の記事に、
「同じような服装で町を歩いていても、
中国人か日本人かは直ぐに見分けがつく。

中国人はパッパッと歩き、日本人はドッタドッタと歩く。」とありました。

また、私の生徒でSKDの男役だった女性がフランス旅行の土産話で、
「バリジェンヌはけんか腰で蹴っ飛ばすみたいにパッパッと歩いていました。
よく見たら年寄りも同じように歩いていました。」
と知らせてくれました。

ダンスのウォークには
椅子で生活する欧米人や中国人の歩き方のほうが近くて、
日本人の歩き方は大きくかけ離れています。

しかし、
股関節に曲がりがあっても歩き方に違いがあっても、
日本人にしてみればそれがその儘で健全な身体であり普通の歩き方ですから
ボールルームダンスの基本とは
根本的なところで相違があることにはなかなか気がつきません。

このことが
ボールルームダンスとは異なった日本式の踊り方が普及したり、
日本独自の、
英国式の原則とは異なった主張が生まれてきたりする原因だと考えられます。

日本でも椅子の生活が増えてきて、最近の若者の歩き方が変わってきてはいますが・・・。

『前方や後方に正しくウォークすることは、ボールルームダンスの基礎である。
その中には体重の正しい配分と脚部の進め方が含まれ、更に足先、足首、の用法が必要となる。

従って、ウォークをマスターした生徒は、少し練習すれば
ボールルームの全フィガーを手中にできると言っても過言ではない。』 レン・スクリブナー


足を前に運んで置き、
その足にのしかかるように体重を乗せる日本式の歩き方のままでダンスを覚えた男子が、
踊り慣れてワルツのナチュラル・ターン第一歩を大きく踊ったら、

第一歩で大きく前に広げた右足の真上に上体と頭は乗っても
左足と太腿と腰が後ろに残りますから、
急ブレーキがかかったようにガクンとショックを受けて減速します。

よく言われる 「振り子が振れるように」 とは程遠い踊り方になってしまいます。

それに続けて、
第二歩で、後ろに残った左足を振り込んで急回転をしたら強い遠心力が生まれますから、
その力を受けて倒れそうになるのは当たり前で、

第三歩の右足をそろえたら倒れてしまいますから、
その右足を後ろに開いて、倒れるのを防がなくてはなりません。

先ず、
第一歩の動きを、スウーッと振れて浮かぶ動きに変えなければなりません。

スクリブナーの講習を受けていた日本の選手が質問しました。
「ウォークの要領を教えてください。」


スクリブナーが答えました。
『人から人へ西瓜を手渡しする要領だ。』


    *ウォークは技術書で次のように説明してあります。

<*両足を揃え、真っすぐな姿勢で、体重はボールの方へわずかに前方に保って立つ。>
  体重を足のボールの真上ではなくわずかに前方に保つのは、
  これから前進の操作をするために必要な余裕を残すためです。

  両足のインサイド・エッジはレールでもあり車輪でもあるのですから、
  スタンダード種目では平行に揃えることが必要です。
  先が開いたレールは無いのと同様で、決してつま先を開いたままではいけません。
  つま先を開いていると、
  前進した足の踵で受け取った体重が爪先から抜けていかずに、
  その足に引っかかって止まってしまいます。

  日常生活の中で両足を平行に揃えるトレーニングをしなければ、
  そう簡単にできるものではありません。
  足だけに注意するのではなく、
  太腿の付け根の後ろ側を開くようにすることが必要です。

  テレビで放送されるマラソンや駅伝の選手が走る時の足の形に学ぶ必要があります。

  一歩前進した時に体に生まれる前進の惰力を生かすためには、
  両足のインサイド・エッジを平行に揃えることが不可欠の条件です。


  『特殊な例外を除いて、
   体重は常に足のインサイドエッジに沿って感じなければならない。
   主たるコントロールは常に足の親指の部分によって維持される。』
          レン・スクリブナー


  **最初にすることは、体重の無い足を前方へ動かすことではありません。**

    **ウォークは、体重を支えている足の膝と足首を曲げてロァーし、
                 ボールで床を後方に押すことによって始まります。**
    **前進を始めた体が体重の無い足に前進を促します。
                       この順序を間違えてはいけません。**
         (ステップ・アンド・スイング の プッシュ & プルを参照)

<*片方の足のボールをフロアーにコンタクトさせながら>
  足がフロアーから離れてはいけません。
  ボールで床をさすって動き始めます。

<*脚をヒップからスイングする
 その時トーをわずかに上げ、ヒールはフロアーを軽く滑らせる。>

  日本人の歩き方と一番大きく違うのはこれです。
  股間節を曲げて足を前に出すのではありません。
  「ウエストから下が足だ」と言う人もいるくらいいです。

練習
  壁に片方の手を当てて横向きに立ち、片方の足で体重を支え、
  両足のインサイド・エッジを平行に保ったまま
  体重の無いほうの足を引き締めて前後に振り、
  脚をヒップからスイングする力を覚える。

  左右の腰の横方向に対して、
  両足のインサイドエッジの前後の方向が確実に直角に交わるように
  訓練された体であって初めて、CBM や CBMP といった
  微妙な変化を作り出す事が可能になるのです。

<*前方にスイングする足のヒールが支え足のトーを通過すると同時に
 後ろ足のヒールはフロアーから離され、>

  支え足が体を前に運ぶから、体を前に運び始めると支え足の踵が上がります。
  体重の無い足を前に出したのでは、
  その足がかなり前に進むまで、支え足の踵は上がりません。

  ボールで床をさすって動き出した足は直ぐにヒールで床をさするように変わり、
  必要な歩幅のところで止まります。

<*両足が多きく開かれた時、体重は前足のヒールと後ろ足のボールの間に等しく置き>
  後ろ足の床に触っている部分がボールです。トーはもっと前の部分のことです。
  両足で体重を半分ずつ支え、胴体は両足の真ん中に真っすぐに立っています。

<*前の膝は真っすぐに、後ろの膝はわずかに曲げられる>
  中間バランスと言うのはこの状態のことです。

  横から見たら、「Y」の字を逆さに立てたような形にならなくてはいけないのですが、
  股関節は前に曲がりやすく、後ろには曲がりにくくできています。

  脚を後ろに開く練習をしなければ「Y」の字ができにくくて、
  正しいウォークは身につきません。
  ファイル(8)踊りの点検、部位の強化に、
  「ダンス体操二番」として、その練習方法を記述しました。

<*体重が前方に移動すると同時に前のトーは降ろされる。
 後ろ足は先ずトーで、次にボールでフロアーを滑らせながら両足が揃うまで寄せられ、
 更に次のステップへと前進を続ける。>


* ウォークで使う足の力は、
競技用カヌーを漕ぐ力と似たところがあります。 ファイル(12)で記述。




日本式の一歩と英国式の一歩の相違がお分かりでしょう。

体重の無い足を前に出して置き、その足にのしかかるように体重を乗せたら片方の足が後ろに残ります。
支え足で体を前に運び、前に広げた足がその体を受け取ったら、後ろの足は自然に揃ってきます。

* 正しいウォークを身に付けるには、ファイル(8)
踊りの点検、部位の強化に記述した
ダンス体操一、二、三番を練習するのが早道です。

フットワーク

英国式のウォークが身に付いたら、
片足が後ろに残ってガクンとつんのめることはなくなります。

これで、スウーッと振れて浮かぶダンスに変わる道が見えてきました。
山登りにたとえると、
正しい登山道に一歩踏み入ったことになります。

とは言っても、
足が揃ってもまだ浮かびませんし、どうすれば足が揃うのかもまだ良く分かりません。

それを可能にする足の使い方をフットワークと言います。

技術書にはワルツのナチュラル・ターン の第一歩を次のように記述してあります。
<1.右足 壁斜めに面して前進、CBM、右回転を始める、1の終わりでライズを始める、
フットワーク HT(ヒールトー)、スウェー 直>


用語の説明で次のように示してあります。
特注
< 「ナチュラル」 及び 「リバース」 ターンについて
全ての "ナチュラル" ターンは右に、全ての "リバース" ターンは左に回転することである。>



「フットワークはヒールトーだ」と聞いたことのある人は多いようですが、それを、
初めにヒールが床に触って、次にトーが触るのだという誤解がとても多いのです。

ヒールは床に触るだけではありません。

後ろの足から送り出された体重を受け取る時に、
初めにヒールで体重を受け取り、その支えが途切れないようにトーまで体重を運んで、
更に前方へ送り出す。
この働きのことをフットワークはヒールトーだと言います。

*体重の受け渡しを、スクリブナーが
『人から人へ西瓜を手渡しする要領』 と言うのはこのことです。

次の人に渡すためには、西瓜を持ち上げながら差し出さなければなりませんから
ダンスの場合はトーで床を下向きに押さえてその反発力で体重を持ち上げ、
床を後ろに押す事によって体重を前に運びます。

西瓜を差し出す腕は肘が曲がっているのと同様に、体重を送り出す足の膝は曲げる事が必要です。

渡された人は西瓜を持ち上げながら手元に引き寄せるのと同様に、
体重を受け取る足はヒールで床を下向きに押さえて
その反発力で体重を持ち上げると同時に、床を引き寄せる力をかけて
体重を受け取ります。

「スクリブナー」はこの仕事を プッシュ・アンド・プルと言います。

このような仕事をする為に全身の筋肉には常にある種の緊張力が必要で、
その力を トーンと呼んでいます。

西瓜を落とさないためには持ち上げておく力が必要なように、
ダンスでも体重を床に落とさないために
足で床を下向きに押さえて、その反発力で体重を持ち上げておきます。

体を伸ばして空間に浮かばせ、頭が高い位置にあるような気分になることが必要です。

固形物の足があるから体が床に落ちずにいられると言うのではだめです。

足にかけるこの力を フットプレッシャーと呼びます。

『踊り手の身長とは、足から頭のてっぺんまでではなく、頭のてっぺんから足までである。』
アンソニー・ハーレイ
(1969年-1972年 全英チャンピオン)

スイング 「ステップ・アンド・スイング」

スタンダード五種目を
タンゴ と スイング・ダンス (又はムービング・ダンス) と呼ぶことがあります。

タンゴ 以外の四種目は スイング と呼ばれる独特の動きで踊られ、
この動きが
他のどの種類の踊りとも異なる ボールルームダンス の本質的な特徴となっています。

スクリブナーは
『スイングとは、ウォークの後をボディーのスイングが引継ぎ、
ボディーがスイングすることによって脚がスイングすること』

と述べています。

一歩前進した体には、慣性の法則によって前進し続けようとする惰力が生まれていますから、
この惰力を生かし更に加速して、
ちょうど振り子が振れるような動きを作って踊るのです。

正しいウォーク、正しいフットワークでなければ、 惰力を生かすことが不可能です。

両足で交互に体を推進して走り回るのとは、根本的に異なっています。
スイングの動きは、男女を問わず前進する人が作ります。

練習
・普段の歩行の中で思い出したら、一歩でも二歩でも、トーで体を前方に運んで下さい。

ライズ・アンド・フォール

ウォークの項で、ステップした足に後ろの足が揃うところまでを説明しましたが、
そこで別の仕事をしなければなりません

一歩前進したことによって体に生まれた惰力をより強めて加速するために、
膝を前にほうりこむようにして踵を高く上げ、
体重をトーに乗せて体を持ち上げます。

この仕事をライズといって、スイングするためには不可欠の要素です。
<1の終わりでライズを始める>

脚に水泳のクロールストロークのような床を後ろに掻き抜く力をかけて、
体を前方の空間に放り上げます。

体重の無い足が股間節を曲げて勝手に前に出て行こうとしますから、
ヒップと一体になって振れるように、
体の下に吊り下げておかなくてはなりません。

振れる足のトーは軽く床をさすっておかないと、墜落しそうで不安になります。

床から1センチしか離れていなくても、墜落しそうな不安感に変わりはありません。
軽く床をさすって、常にここに床があるという感覚を保ち、
いつでも体重を受け取れるように準備しておくことが必要です。

ワルツでは
<1の終わりでライズを始め> <2でライズを継続し> <3でなおライズを継続し、終わりでロァー>
となります。

飛行機にたとえれば、1が滑走を始めて離陸したところまで。
2と3は空中を飛行している状態。
3の終わりでロァーするのが着陸と言えます。

このような
<足、脚、及びボディーを通して行われる上下運動> を 「ライズ・アンド・フォール」 と言います。
ダンスを解析して、一要素として捉えた運動の名前です。

その運動については、
体を高い位置に持ち上げる動作、又は高い位置にある状態を 「ライズ」 と言います。

体の高さを低くする動作のことを 「ロァー(lower)」 と言い、
低い位置にある状態を 「ダウン」 と言います。



回転の原動力CBM
(CBM と CBMP)

ウォークの後をボディーのスイングが引き継ぎ、ライズを始めて加速された状態にある時に
左足を振り込んで急回転をしたら、強い遠心力で間違いなく外に飛ばされるでしょう。

そのような急回転をしないで、もっとゆっくり回転する技術をCBMと言います。

詳しく言えばコントラリー(反対の)・ボディー(胴体)・ムーブメント(運動)ですが、
技術書では次のように説明しています。

<ボディー・アクションである。
前方又は後方に動いている足の方向に体の反対側が回転すること。
通常、回転を起こす時。>


第一歩の右足を前にステップする時、
支えている体を前に送り出すため左足は床を後ろに押しますが、
押す力だけではなくて、同時に、
左の腰が前に出るように腰の向きを右に向ける力をかけるのです。

壁斜めに面して前進し始めた体は同時に右回転を始めていて、
体の前に広げた右足は、
壁斜めの方向を少し右にそれて、壁の方向に近寄って床に置かれます。

体が右に回転しながら進みますので、
カウント1の終わりで両足が揃う頃には体はほとんど壁に面しています。

続いて左足が壁斜めの方向に振れていきながら体は回転を続け、
初めは前方に向かって振れていた左足が

カウント2で床に置かれる時には横の動きに変わっていて、
体は逆LODの壁斜めに面しています。

日本に「犬が西向きゃ尾は東」と言う言葉があります。
「体が逆LODの壁斜めに面すれば中央斜めに背面しているのが当然」のことです。

技術書では次に体の進んでいく方向を優先して記述するように統一してありますから、
ここでは<2.中央斜めに背面>
記述されています。

1の終わりに右足で始めたライズを2の左足で継続すると、右足は自然に左足に寄ってきます。

ライズを継続する間にも惰力で回転は続きますから、
3で右足を閉じてなおライズを継続すると、
体はほぼ逆LODに面します。

次のステップは後退の動きですから、技術書には<3.LODに背面>と記述してあります。

3の終わりで足首を曲げて踵を下ろし、 膝を前に突き出すように曲げ、後退に備えてトーの中にロァーします。

回転しながら進む - ウインナワルツ

ワルツの踊りは、カウント1で前進を始めるのと同時に回転を始めて、3でライズが終わるまで
滑らかに回転し続けるのです。


日本式では、1で壁斜めに直進して、2で回転すると言う意見が多く聞かれますが、
英国式とは大きく異なっています。

この踊り方では、いつになってもウインナワルツを踊ることはできません。

ウインナワルツはテンポが速くて強い勢いで回転しますから強いCBMが必要で、
男子がナチュラル・ターン第一歩で前進する右足は、
踊り始めに面している方向を大きく右にそれてステップされ、
回転量も前半の三歩で1/2に増えます。

前半の三歩を壁斜めに面して踊り始めたら壁斜めに背面して終わることとなりますので、
後半の三歩はLODに進むことができなくて、壁の方向へ進むこととなってしまいます。

そのために、
ナチュラル・ターンは中央斜めに面して踊り始め、 第一歩はほぼLODの方向へステップされ、
第三歩は中央斜めに背面して終わります。

後半は中央斜めに背面して踊り始め、第一歩の左足はほぼLODに後退し、
第三歩を中央斜めに面して終わります。

これを反復してLODに進んでいきます。

リバース・ターン前半は壁斜めに面して踊り始め壁斜めに背面して終わりますが、
相手が自分の右にはみ出ている関係で、
第三歩の左足を右足の前に交叉して回転量を確保します。

後半は壁斜めに背面して踊り始め、
右足はほぼLODに後退し、壁斜めに面して終わります。

チェンジ・ステップは第一歩も第二歩も前進又は後退して、
第三歩を閉じるまでに1/4回転します。

スチーブン・ヒリアに指摘された

1で直進して2で回転する日本式の踊り方については、
スチーブン・ヒリア
(1986-1987 全英チャンピオン。現在は世界的に有名な審査員・コーチャー)
を講師に迎えて行われた
日本ボールルームダンス連盟主催の講習会でも指摘されました。
(月刊誌ダンスファン04年7月号のレポート記事)

『ワルツのナチュラル・ターンを2で速く回ってしまうのが目立った。
もっと遅く回るべきだ。』
『ワルツのナチュラル・ターンやクイックのロック・ステップは横に踊りなさい。』


更に、この記事の終わりにとても気になることが書かれてありました。
課題として、
「フットワーク」、「 CBM 」、「スウェー」、 「ライズ・アンド・フォール」、
などをマスターすることが与えられた。

というのです。

これらはすべて、技術書に記述された最も基本的な内容に過ぎません。

競技関係者を対象とした講習会で、
プロ・アマ多数の競技選手を指導しての発言ですから、
この言葉の意味するところは重大です。

もしも彼に
「外交辞令抜きでズバリ言ってください」
と頼んだら、

『英国式とはずいぶん違っている。
ザ・ボールルーム・テクニックに示された基準に従って、もっと基本を勉強しなさい。』

と答えたに違いないと思っています。

日本式の踊り方は、英国式を基準としてみた時には、
「基本を勉強しなさい」 と言われるくらい、
異なった踊り方なのです。

回転を安定させるスウェー

普通に歩くくらいの歩幅で踊っているうちは、回転してもふらつくことはありません。

子供の頃かけっこでカーブする時、
無意識にカーブの内側に体を傾けて走りました。

ダンスで回転しても、自然に身に備わった感覚だけで安定した回転ができます。

しかし、
スイングして大きく踊るためには、意識して傾きを作る技術が必要となります。
この技術をスウェーと呼びます。

1で前進した右足に左足が揃ったところから、
振り子のように振れて一番遠くに振れて行くのは左足です。

初めはほとんど前方に振れているので心配はありませんが、
体が回転しているので、やがて
左足の前方への振れが左横方向の振れに変わります。

この変わり目に、
それまで垂直に見えていたものが急に傾き始めて不安感を生みます。

この不安感に負けると、
垂直を保とうとして頭を左足の真上に持っていき、
回転を安定させるため自然に現れようとしていた傾きを消してしまいます。

仰向きになるつもりで足先を遠くに振っていると
すぐに、左足の振れは左横方向への振れに変わり
体は大きく右に傾いて、2でトーが床に着きます。

この時に左足から頭までが一直線となり、傾きは最大となります。
この体の傾きを、この後3でライズが終わるまで保ちます。
増やしても減らしてもいけません。

うっかりすると肋骨の部分が曲がりますので注意が必要です。

左の腰から左肩までの長さと右の腰から右の肩までの長さは、
常に長いままで同じ長さに保たなければなりません。

左足から頭までが、傾いた一直線の状態ではライズができませんから、
腰の部分が左にせり出していくように股間節を横に曲げながらライズします。

股間節を前に曲げるのは禁物ですが、
スウェーのためには
ボディー(胴体)の形を変えないで股間節を左右に曲げる練習が必要です。


本物のトーで体重を支えておかないと
股間節を横に曲げる感覚が分かりにくくて、きれいに曲げることができません。

普通に爪先と言う感覚の部位ではなく、
足の甲と向こう脛が真っすぐになるように伸ばして、
親指と拇指球の前の縁で コツン コツン と床を突くことができるのが本物のトーです。


ロァーの動作を始めるのと同時にスウェーを無くし始めて、
次の1の終わりで体重が移り終わった時に
垂直にもどります。

スウェーの技術が身についたら、大きな歩幅で回転をする時にはスウェーも大きくなって、
安定した回転が可能となります。


*これまでに説明した技術が身についたら、
ワルツで3の足が揃うのはもちろんのこと、
そればかりではなくて、
前進して行う右回転の主要な技術が身に付いたと言ってよいでしょう。

*左回転でも、
第一歩で前進する右足が左足と変わるだけで技術的には全く同様ですから、
前進して行う回転技術の主要なものが身についたと言うことができます。

足型を構成する要素

『基本的な足型を覚えることは必要だが、より重要なことは 単なるステップではなく その踊り方である。』
レン・スクリブナー


「足型を覚える」 時には誰でも先ず
両足を交互に (歩順)、部屋のどこへ (足の位置) どの方向に向けて (アラインメント)、

どのようなカウント (タイミング) でステップし、どれだけ回転するか (回転量)、
という
「足型に備わる要素のうちの五つ」 を覚えます。

それだけしか、単なるステップだけしか覚えない」 人があまりにも多いのです。
『より重要なもの』が脱落 しているのです。

競技関係者を対象として行われた日本ボールルームダンス連盟主催の講習会で、これを
講師のスチーブン・ヒリアに、
『基本を勉強しなさい』 と言われたにも等しく 厳しく指摘されたのです。


このような指摘を受けてもなお、
それを重大な指摘と受け止めて広がっていかないのが日本ダンス界の悲しむべき現実です。

「単なるステップ、形ばかりの足型」
に命を吹き込んで、

『スイングする踊りの足型』
にするために無くてはならない極めて重要な要素が、

『フットワーク』 『 CBM 』  『ライズ・アンド・フォール』 『スウェー』 です。


『ただ一言 「足」。
「足」 と言うのは、フットワーク に関する充分な知識と フットプレッシャー

 あなたの少し上達した生徒たちに繰り返し言い続けなさい。
「足が無ければフライトは無い」 と。』

ビル・アービン


*前進の踊り方に続いて、後退の踊り方を、更に 回転の軸となるピボットを説明します。



「社交ダンス上達の道しるべ」

(2)後退の踊り方は




 PAGE TOP
Home page Top