社交ダンス入門初期の練習計画

社交ダンス上達の道しるべ(10)


元セレクションダンサーズ所属 元港区立青年館ダンス講師   福頼静致・政子 (フクヨリセイチ・マサコ)


日本人に初めて 「本格的な英国式の社交ダンス」 の手ほどきをしてくれた大恩人
その人の名を レン・スクリブナー (1950-52年 全英チャンピオン) と言います。


スクリブナーは競技ダンスの最高峰を極めたばかりでなく、
デモンストレーター、教師、審査員、講演者、著述者として偉大な足跡を残した
文字通りの巨人でした。

英国では記念にスクリブナー杯を設け、彼の業績を称えています。
英国式タンゴはスクリブナーによって完成されたと認められています。

『基本的な足型を覚えることは必要だが、より重要なことは単なるステップではなく、その踊り方である。』

『ムーブメントは徐々に大きくしていくべきである。
正しいバランスとスタンスを身に付けて、フィガーの足型を完全に習得するまでは、
決して大幅なステップで 大きなムーブメントに挑戦してはならない。』


(* 注意・・バランスは、日本では体重のかけ方ですが、英国では全体的な均整の意味です。)

『忘れてはならない鉄則は、数多くの複雑なステップを下手に踊るよりも、
二三のフィガーを充分に踊りこなす方が優れているということである。』

『ボールルームダンスは本来社交的な娯楽だが、高度な技能を伴う
芸術の域にまで到達することができる。』

(*注意・・「社交ダンス」 は日本式の呼び名で、英国では 「ボールルームダンス」 です。)

レン・スクリブナー

単なるステップを教えてくれる人はたくさんいます。
その踊り方を教える力のある人はごくわずかしかいません。

長年踊っている人や日本の競技で上級になった人が、
英国式の社交ダンスを教えることができるとは限らないのです。

スクリブナーの教えに反する主張をする人が数多く存在します。
競技ダンスが盛んになるにつれてその傾向が強まりました。

初めてスクリブナーに教えを受けた 1955年から約 30年間くらいは、
日本のプロ選手が全英の決勝に残ることが何度もありました。

現在では、準決勝に進むのも困難になっています。



スクリブナーに初めて教えを受けたのは 1955年でしたが、
日本人がその時に初めて 「社交ダンス」 を知ったわけではありません。

もっと昔から 「社交ダンス」 の名でダンスを踊っていましたし、競技会も行われていました。

乏しい文献や映像を頼りにして日本人の普通の立ち方や普通の歩き方に基づいて解釈した、
『日本式社交ダンス』 と呼ぶべき踊り方
でした。

スクリブナーの単独審査による全日本舞踏選手権大会の順位では
プロの上位に地すべり的な大変動があって、

それまでのダンスに関する知識は根底から覆され、
プロに対しても勉強のやり直しを迫る結果となりました。

社交ダンスにかかわる人、とりわけ競技にかかわる人の多くが
学習意欲に燃えて 「ボールームダンス」 の吸収に努めました。
全英選手権の決勝に残れるまでに、日本のボールルームダンスは急速な進歩を遂げたのです。

しかしながら、現在振り返ってみると、
それはダンス人口全体からすればごく少数派だったのでしょう。

半世紀を経てスクリブナーの教えは薄れ、旧来の日本式が盛んに踊られるようになっています。

競技でも諸外国に水をあけられる結果となりました。

社交ダンスに入門して、

娯楽本位に 「日本式」 で手っ取り早く楽しみたいのか、

将来は競技にも通じる 『本物の英国式』 を習いたいのか、


最初に心を決めなければなりません。

「三つ子の魂百まで」 のことわざどおり、

最初に日本式で覚え始めた人が、後になって英国式に修正するのは

極めて困難なのです。




先ず立ち方と歩き方
(立ち、歩き、スイングする)

「日本人の普通の立ち方」 や 「普通の歩き方」 そのままで

「日本式の社交ダンス」 を覚えると

頭で覚えたステップは英国式と同じと思っても、体を動かすと踊り方が大きく異なってしまうのです。


根本的な原因は、英国式とは立ち方と歩き方が違っているのです。
その上に、足型について覚えなくてはならない要素が欠けているのです。


社交ダンスは二本の足で立って歩く運動ですから、
『英国式社交ダンス』 に入門したら、

先ずこれまでの立ち方を変更して、
『英国式の正しい立ち方』 を覚えなければなりません。

そして、長年歩いてきた歩き方を変更して、
『ボールルームダンスの正しい歩き方 (ウォーク)
を身に付けなくてはなりません。


長い年月をかけて出来上がった平衡感覚と力の均衡は、早急に変換を果たせるものではありません。
辛抱強く練習することが必要です。

しかし、登山をする時には、これが正しい登山道だと分かって歩を進めないと、
まかり間違えば遭難の憂き目を見ることにもなりかねません。

登山道を踏み外して獣道に迷い込まない限り、苦しくても一歩一歩踏みしめて登っていれば
間違いなく確実に頂上へ近づいていきます。

高度を増すにつれて展望が開けます。
ダンスでは視野が広がり、足型の習得が易しくなります。

『正しい立ち方』 と 『正しい歩き方』 を練習しながら足型を習っていかないと、
人一倍努力して人一倍悪い癖をつけてしまうという、まことに不本意な結果になってしまうのです。


『前方や後方に正しくウォークすることは、ボールルームダンスの基礎である。
その中には体重の正しい配分と脚部の進め方が含まれ、
更に足先、足首の用法が必要となる。

従って、ウォークをマスターした生徒は、

少し練習すればボールルームの全フィガーを手中にできる

と言っても過言ではない。』

レン・スクリブナー



ウォークの練習や踊る練習には広い場所が必要ですが、
『ウォークに必要な力』 や 『踊るために必要な力』 を育てる練習に広い場所は必要でありません。

練習方法を 『ダンス体操』 と名づけて記述しました。

お楽しみ本位のダンスではなく

本物の英国式社交ダンスを覚えたい、競技で勝てるようになりたいと望むのなら、

文字通り 『先ず足元を踏み固めて』 かからなければなりません。



「社交ダンス上達の道しるべ」
上手になりたい
(11)何を練習すればいいの




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