ワルツ の ナチュラル・ターン

リバース・ターン と 対比する
社交ダンス上達の道しるべ(13)

元セレクションダンサーズ所属・元港区立青年館ダンス講師 福頼静致 (フクヨリ セイチ)


 * 第一歩は回りながら前進 ・ 第二歩は回りながら横へ

 * 日本式の踊り方では   * 英国式では

 * 後退する女子の回転



社交ダンスをしない人が 「ワルツ」 と聞いて思い浮かべるのは ウインナワルツ ではないでしょうか。
ウインナワルツ こそ ワルツ の元祖であり、社交ダンスの源流なのです。

しかし日本では、現在社交ダンスで ワルツ を踊っている人の多くが
ウインナワルツ を踊ることができません。

レターサービスのモダン (現在はスタンダード) 種目の説明に、
クイック と スロー のワルツ
と記述してあったのを読んだ記憶があります。

ワルツ は ワルツ ですからどちらも踊ることができるはずなのに、
どうして ウインナワルツ を踊ることのできない人が多いのでしょうか。

その原因は、椅子に腰掛けることが中心の生活様式のヨーロッバ人が生み出したダンスは、
座ること中心で生活する日本人とは歩き方が根本的に異なっているのに
日本人の歩き方のままで、足型だけ同じものを覚えて踊っているところにあります。

日本人の普通の歩き方のままでは
スイングすることができませんから、
テンポの速いウインナワルツでは、そのテンポに乗せて体を運ぶことができないのです。


ウインナワルツ は三拍子の音楽の流れに乗って 1.2.3.1.2.3 と、
浮き沈みを繰り返し、3で きれいに足を揃えてくるくる回りながら進んでいきます

ワルツのステップは
1 で 片方の足を前又は後ろに開き、2 で もう片方の足を横に開いて、3 で きれいに両足を閉じるのが原則です。


右足前進で始まる三歩の右回転に、左足後退で始まる三歩の右回転を続けた、
六歩で構成された右回転の足型を ナチュラル・ターンと呼びます。

ほかにも 「ナチュラル」の付いた足型がありますが、その「ナチュラル」は右回転の意味です

  日本では現在、社交ダンスで ワルツ を踊っている人の多くが、
ナチュラル・ターンの 3 の足を閉じることができなくて後ろに開いています

「回りながら進む」 これが ワルツ の本質的な特徴です。
回らずに進むのは シャッセ だけです。


* 3 の足を閉じることのできない日本式の踊り方をする人は、「回転無しで右足前進」 をしています。
* 右足前進の終わりになっても 「体が浮き上がりません」。
この現象を生み出す 「力の使い方の違い」 が、「ワルツ への道をふさいでいる」 のです。


第一歩は回りながら前進・第二歩は回りながら横へ

英国式のナチュラル・ターンと異なる日本式ナチュラル・ターンの、最も顕著な相違点が
世界的に有名な英国のコーチャーによって明確に指摘されました。

『ナチュラル・ターンを 2 で速く回ってしまうのが目立った。もっと遅く回るべきだ。』
『ワルツの ナチュラル・ターン と クイックの ロック・ステップ は横に踊りなさい。』 スチーブン・ヒリア


日本ボールルームダンス連盟主催の競技関係者を対象とした講習会で、
プロ・アマ多数の選手を指導した後で語られた言葉です。

    ザ・ボールルーム・テクニックには、ナチュラル・ターン 男子前半の三歩を次のように示してあります。
<1.右足 壁斜めに面して前進、CBM右回転を始める1 の終わりでライズを始める、フットワークHT、スウェー直>
<2.左足 
中央斜めに背面して横へ1-2 の間で 1/4 右回転ライズ継続、フットワークT、スウェー右>
<3.右足 LOD に背面して左足にクローズ、
2-3 の間で 1/8 右回転ライズ継続、3 の終わりでロァー、
 フットワークTH、スウェー右>


    リバース・ターン は  ナチュラル・ターンの正反対が 次のように示してあります。
<1.左足 中央斜めに面して前進、CBM左回転を始める1 の終わりでライズを始める、フットワークHT、スウェー直>
<2.右足 
壁斜めに背面して横へ1-2 の間で 1/4 左回転ライズ継続、フットワークT、スウェー左>
<3.左足 LOD に背面して右足にクローズ、
2-3 の間で 1/8 左回転ライズ継続、3 の終わりでロァー、
 フットワークTH、スウェー左>

 日本で、初対面の人とでも会話が成立するように標準語が制定されているのと同様に、
 英国ではボールルームダンスが誰とでも踊れるように標準の技術を示してあります。

 * 競技を目指すなら、それをマスターした上で審査員や観衆にアビールできるレベルを目指すことが必要です。
 ** 最上級選手は、男女がずれて組んでいることから生じる アラインメントの微妙な問題 に対処して踊ります。

ナチュラル・ターンは、壁斜めに面し左足に体重を置いて始めます。

日本式の踊り方では

第一歩始動の段階で
先ず、左足に伸ばす力をかけて右足を壁斜めの前方に動かし始め、ステップして体重を乗せます。

CBM が無いので体は回転しないで前進し、
右足は、踊り始めた時の方向と変わらず、壁斜めの方向の床に置かれます。

右足に体が乗り切った時には始動の段階と同じく壁斜めに面したままであり、
ライズは始まらなくて沈んだ状態にあります。

第二歩では逆壁斜めに面するのだと分かっているから、
カウント 2 の一拍の短い時間だけですばやく立ち上がって右に 1/4 急回転します

第一歩の終わりで壁斜めに面している状態から、
前進しながら回転するので、横の動きはほとんど見られません

スウェーが無いから遠心力に対抗する力が無くて、
第三歩の右足を後ろに開いて倒れるのを防がなければなりません。

英国式の踊り方では

第一歩始動の段階で
この第一歩はボディー・スイングへの準備となる前進のウォークですから
先ず、前進ウォークの準備として、支え足である左足の膝と足首を曲げて少しロァーします

左足のボールで体が沈まないように持ち上げながら、床に反時計回りにねじる力を加えて CBM を作り
床を後方に押して体を前方へ進め始めます。
体が前進を始めると同時に右回転が始まり、体の向きを右に変えながら前進します

同時に右脚をヒップから振り出し、右足のヒールを前方の床に置いて床を押さえる力をかけ、
左足のトーが支えていた体重を受け取ります。

第一歩は男子前進、女子後退。第二歩は男子も女子も横へ。

壁斜めに面して踊り始めた体が、前進しながら右に向きを変え、
右脚は、その体から前方へ振り出されますから、
床に置かれる時には壁斜めの方向を少し右にそれ、壁の方向に近づいて置かれます。

向き合って組んでいる女子の左足は、体に厚みがあるのでもっと遠くにありますから、
男子の右足よりももっと大きく進行方向をそれて床に置かれ、
体重が移り終わった時には、ほとんど壁の方向へ移動したような結果となります。

このことによって、
進行方向に対して前後に組み合っていた男子と女子が、
第一歩に体重が移り終わった時点を境として、

第二歩は、
ペアの進行方向は壁斜めでありながら、
お互いに、自分の体に関しては横の移動 に変換することが可能となるのです。

右足のヒールに体重を渡すまでは支え足であった左足が、
体重を渡した瞬間に動き足と変わり、右足に揃うように動き始めます。
この体重の受け渡しが極めて重要です。

日本人の日常の歩行では全く使うことが無い力ですから、
ダンス体操二番を準備運動の中に取り入れたりして、常に練習することが必要です。

ヒールに床を押さえる力をかけて体重を受け取ったら、直ちにトーを降ろし
膝を曲げながら足裏全体で床を押さえ、引く力を使って後ろにある体を引き寄せます。

体が右足に乗り切り、左足が右足に揃った時には、スタートした方向から右に 1/8 回転してほぼ壁に面しています

* 左足を畳の縁かフローリングの板目に沿うように置いて立ち、
CBM を伴う前進で右足が着床した時、
右足の置かれた位置は少し右にそれ、トーは少し右に向いていることを確認してください。


体重が右足のボールまで進んだら、膝を前にほうりこむようにして踵を浮かし、
体重をトーに乗せてライズを始めます
膝はまだ曲がっていますが股関節は伸ばし、曲がらないように注意が必要です。

後ろから追いついてきた左足はボディーよりも大きなスピードを持っているので、
右足の横をかなりのスピードで通過して前方へ振れていきます。

  **左足が、ライズを始めた右足の横を通過するところから、第二歩の 横の動きが始まります**

   左足が右足の横を通過する時にも体は右に回転を続けていますから、
   壁斜めの前方へ向かって振れていた 左足の振れる方向は ほとんど変わらないけれども
   右足の横を通過して直ぐに、体に対しては 左横方向への振れと変わります

  ** この時点で意識を 「横へ」 と切り替え、右足の使う力も切り替えることが極めて重要です。
   ワルツは 縦方向のスイングに横方向のスイングを連結する ことによって作られます**
    (フォワード・スイング と ラテラル・スイング)

  ** この切り替えの時期が、第一歩の終わりでライズを始めた時期と一致します。**
    トーを使ってライズを始めることのできない人は、この切り替えをすることができません。

  **クローズド・チェンジが、長年ワルツの足型一番であり続ける意味がここにあります**

左足の振れが体に対して横方向に変わり始めると同時に、体は右に傾き始めます。
それまで自分の視界で垂直に見えていたものが急に傾きます。

無意識のうちに垂直を保とうとして、振れる左足の真上に頭を置こうとうとするので、
仰向きになるつもりで左足を振り出し、意識して右に傾きを作らなければなりません

自分の形をアルファベットの「I」から カタカナの「イ」の形に変えていくと思えば分かりやすいでしょう。

  **回転を続け、上昇を続け、傾きを増やしながら、
    右足のトーで床を右に押して体を左横へ運びます。**

  *両脚を大きく横に開き、逆壁斜めに面して左足トーを着床します。
   右への傾きは最大となり、左足から頭までが一直線となります。

  *ボディーの形と傾きを変えないように注意して、左腰を左に
   せり出すように股間節を横に曲げながらライズを継続します。

  *回転を継続して LOD に背面し、
   カウント 3 で第三歩の右足を閉じて体重を移し、
   なおライズを継続してから 3 の終わりでロァーします。

  **ワルツの性格が最もよく現れる重要な部分です。
    個人差が大きく現れる部分でもあります。**

*棒高跳びの選手が、地面を蹴って助走で勢いのついた全体重をポールにかけた時、
一旦ポールが大きくしなって選手がぶら下がった形になってから、

反発力で選手が持ち上げられ、選手自身は逆立ちの形を作り
更に両腕をいっぱいに伸ばしてバーを越えます。
右足をポールに見立てて、この姿をイメージすると分かりやすいでしょう。

*ダンス体操三番。応用・スウェー が練習しやすくて効果的だと思います。

壁の前に横向きに立ち、右手を壁に当てて、CBM を作って第一歩右足の前進をします。
第一歩の終わりでライズを始めたとこるから、壁に面し左手も壁に当てて
ヤモリが壁に張り付いているような格好になると、細部の点検や練習に好都合です。


第一歩の前進を始めると同時に右回転を始めて、
第三歩の前半まで緩やかに継続的に回転する動きが
見る人に回転を印象付けます。

第一歩の終わりで始めたライズを第三歩までなめらかに継続することで
見る人に浮揚感を植え付けます。

*第三歩でライズが頂点に達すると、上昇する動きがゼロになるだけでなく、
横方向の移動もゼロ、回転する動きもゼロ、全ての動きがゼロとなる一瞬の 「静」 があります。

この瞬間を 「きめのポーズ」 と強く意識して一瞬の停止をすることで、
見る人に、なお上昇が続きなお回転が続くような余韻を感じさせ、
「ワルツ」 を強く印象付けます。 (ゼロのポイント)

後退する女子の回転

後退して回転する女子の三歩と同じ形を、
男子は後半に、LOD に後退して踊ります

* 後退した左足のトーで体重を支えたら、右足を揃えるのに同調させてヒールを下ろし ノーフット・ライズ をしますけれども、
 左足のトーの支えは、右足のトーに体重を渡すまで保たなければいけません。

* 左足のヒールは、
 右足のトーに体重を渡すまで床に着けておかなければいけません。

* 前進で始める回転の場合には、三歩とも足の向きと体の向きが同じです。この場合に 「面して」 と言います。

* 後退で始める回転の場合には、
 第二歩の足の向きを体の回転量よりも大きくして 回転を終わった時の方向に 「向けて」 ステップしなければなりません。

このことを理解して身に付けておかないと
滑らかな回転を妨げます。

   ザ・ボールルーム・テクニックに示されたナチュラル・ターン 女子前半の三歩
<1.左足 壁斜めに背面して後退、CBM
右回転を始める1 の終わりでライズを始める、NFR、フットワークTH、スウェー直>
<2.右足 LOD に
向けて横へ、1-2 の間で 3/8 右回転、体の回転を少なくライズ継続、フットワークT、スウェー左>
<3.左足 LOD に
面して右足にクローズ、体の回転を完了ライズ継続、3 の終わりでロァー、フットワークTH、スウェー左>

   リバース・ターンは ナチュラル・ターンの正反対が、次のように示してあります。
<1.右足 中央斜めに背面して後退、CBM左回転を始める1 の終わりでライズを始める、NFR、フットワークTH、スウェー直>
<2.左足 LOD に
向けて横へ、1-2 の間で 3/8 左回転、体の回転を少なく、ライズ継続、フットワークT、スウェー右>
<3.右足 LOD に
面して左足にクローズ、体の回転を完了ライズ継続、3 の終わりでロァー、フットワークTH、スウェー右>

* 競技を目指すなら、この基本をマスターした上で 審査員や観衆にアピールできるレベルを目指すことが必要です。
** 最上級の選手は、男女がずれて組んでいることから生じる アラインメントの微妙な問題 に対処して踊ります。  

後退する踊り方については、ファイル(2)で詳しく説明しましたが、
表現を考えて踊るレベルでは注意しなければならないことがあります。

最も犯しがちな間違いは、
しっかり足型を覚えた女子が張り切って、第二歩で積極的に右に動こうとすることです。

それをすることで、せっかくの動きを小さく見せる結果となります。

男子の右手で引っ張られるから動く、 くらいの気持ちで動かなければいけません。
トッププロの女性たちは、上体と頭を使って、「なびくような動き」 を印象付けます。

『女子は、音楽的に肉体的に、男子の延長でなければならない。』 アンソニー・ハーレイ



「社交ダンス上達の道しるべ」
(1)前進の正しい踊り方

(2)後退する踊り方は?

(14)ナチュラル・スピン・ターン
英国式




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