上手になりたい
何を練習すればいいの
社交ダンス上達の道しるべ(11)


元セレクションダンサーズ所属・元港区立青年館ダンス講師  福頼静致 (フクヨリ セイチ)


日本人の普通の立ち方や普通の歩き方は、英国式の社交ダンスを習得する妨げとなります。
高級和牛のステーキがあっても、歯の生え揃っていない乳幼児はこれを食べることができません。

英国式社交ダンス (ボールルームダンス) を
習得するために必要な、基礎の力を育てましょう。



体重を支える基準点を作る

足を揃えて立っている時に 「踵を上げなさい」 と言われたら、
ほとんどの人は先ず体を前に動かしてから踵を上げます。当然、踵を下ろしたら体は後ろへ下がります。

ダンスでは 「ライズ・アンド・フォール」 と言って、トーで立って体を高い位置に持ち上げる動作や、
踵を下ろし膝を緩めて体の位置を低くする動作が頻繁に必要ですから、
そのつど体を前後に動かさなくてはならないのでは、正しい上下運動を機敏に行うことができません。

しかも、男子と女子が向き合って体を接触させて組んでいるのですから、
ライズすればお互いの体が前に動くので「押した」、
ロァーすればお互いの体が後ろへ動くので 「引っ張った」
のトラブルが絶えません。

日本人の生活様式は座ることが中心ですから、立ち上がった時に股関節が伸びきらなくて、
体重を拇指球から踵までの間で支えて立っているのが原因です。

体重を支える基準点を、拇指球から爪先までに作り変えなければなりません。

ダンス用語では、拇指球を含めて爪先まで全部のことをボールと言い、
ボールは、前の方にトーと呼ぶ部分を含んでいます。

足の甲と向こう脛が真っすぐになるほど踵を高く上げた時に体重を支えている部分、
拇指球の前の縁から爪先までを、トーと言います。

普通に踵を上げた状態をトーだと思っている誤解がとても多いので注意が必要です。

上達すると、膝を前に放り込むように操作して
踵を少し上げただけでもトーを使うことができるようになります。

中心になって働くのは親指ですから、
親指で楽に体重を支えることができるようにならなければなりません。


英国式の社交ダンスの基準は、
ISTDが 「ザ・ボールルーム・テクニック」(以後は技術書と記述) で示してあります。

この本の冒頭に、社交ダンスが成立する前提条件として、
<真っすぐに立って体重をボールに置く> ことが明示してあります。

これが基準の形ですから、英国式には
日本で聞くことの有る 「前バランス」 とか 「後バランス」 という言い方はありません。

ボールで体重を支えて立つ 「基準の形」 が男女共にはっきりとできていたら、
足型の踊り方を説明するのに前後・左右・上下の移動と回転で明快に説明ができるものを、

ボールよりも後ろで体重を支える立ち方のままで足型を踊るためには、
つじつま合わせのために、複雑な説明をしなければなりません。

真っすぐに立つ

<真っすぐ> は、
形の真っすぐと、錘を糸で吊り下げた鉛直線の方向の両方を含んでいます。

原書では <アップライト> です。

形の真っすぐを作るためには、
股間節を伸ばし、背骨にある三つの湾曲をできるだけ小さく保ち、
頭を背骨の真上に乗せなければなりません。


通常の立ち方では頭は背骨の真上よりも前に位置していますから、
頭の重さが前にかかって背中が前に曲がりやすい傾向にあります。

頭が前に出たら、釣り合いをとるためにお尻が後ろに出ます。

頭のてっぺんはつむじの辺りではなく、おでこの髪の生え際辺りと思って、
顔を少し上向きにすると頭が背骨の真上に乗ります。


背骨はおなかの後ろ辺りで大きく曲がっています。
はらわたを胸に吸い上げる気持ちになって横隔膜を上げ、 肩を下げると背骨が真っすぐに伸びます。

壁に背中を当てて立ち、
おなかの後ろ側にある隙間が小さくなるようにすると、力の使い方がわかります。

技術書では、外見上の姿勢と体重の支え方を合わせて <ポイズ>という呼び方で示してあります。

男子
<頭は直立させ真っすぐな姿勢で立つ。
・ボディーはウエストで引き締め、
・体重は足のボールの方向へ前方に保ち、
・肩はリラックスさせ、
・膝はほんのわずかに曲げて保つこと。>

女子
<真っすぐな姿勢で立ち、
・ボディーはウエストで引き締め、
・体の上部と頭はわずか後方で少し左側に、
・膝をほんのわずか曲げ、
・体重を足のボールに置く。>

形の真っすぐができたら、
踵を高く上げてトーで立ち、ふらつかない立ち方を度々練習して鉛直線状の立ち方を身に付けます。


足の向きを正し、バネを作る

自転車に乗るとき先ず気になるのはタイヤの空気圧ではありませんか。
空気圧が低いと軽快に走らないのは誰でも知っています。

足の裏がべったりと床に張り付かないよう、弾力を持たせなければなりません。

車を運転する人には仕業点検が義務付けられていますが、
車検や故障修理で車屋さんに任せっぱなしの人がほとんどでしょう。

ホイールアラインメントに相当する足の向きは自分で正しく整えなくてはなりませんし、
サスペンションに相当する足のばねは自分で作らなければなりません。


人が一歩前進すると、慣性の法則によって前方へ動き続けようとする惰力が生まれます。
この惰力を生かし加速して、振り子が振れるような 「スイング」 と呼ぶ動きを作って踊るのが、
英国式社交ダンスの本質的な特徴です。

足のインサイド・エッジを正しく前に向けておかないと、惰力はその足に引っかかって消えてしまいますから、
両足のインサイド・エッジを正しく前に向けて揃えなければなりません。

現在一般の人が踊りを楽しんでいる場所では爪先を開いて踊る人がほとんどで、
両足をきれいに揃えて踊る人を見つけるのは困難なのが実情です。

動きが大きく滑らかそうに見えても、一歩ごとに体を推進して走り回って踊っているのです。

「振り子が振れるように」 は、インサイド・エッジを平行に揃えなければ不可能なのです。

トレーニングの  方法は簡単。根気辛抱の問題。

   バウンス練習  * 足に意識が集中すると体が縮むので、体を伸ばすことを意識して行う。
 * 壁に向かって立ち両手を壁に当てておく。
 * 両足のインサイド・エッジを平行に揃える。
 * 体重が外側にかかりやすい人は少し足を左右に離してよいから、決して外側にかけない。
 * 少しもたれかかるようにして腰を壁に近づけ、股間節を伸ばして両足の親指で体重を支える。
 * 軽く踵の上げ下ろしをしてバウンスを繰り返す。
 * サンバの音楽に合わせると調子よくできる上に、サンバを踊る時のバウンスそのものでもある。
 * 一曲は足が持たないだろうから、左足で1,2、足を取替えて右足で3,4 と、交互にやると良い。

あわせてダンス体操を行い、 ダンスの土台となる正しい力を身に付けます。

 *ダンス体操一番
  ・ボールやトーで体重を支えて真っすぐな姿勢を作る。
  ・ライズ・アンド・フォールに必要な力を強化する。

 *ダンス体操二番
  ・前進と後退での中間バランスの感覚を確立する。
  ・前進と後退の時、トー と ヒールで体重を受け渡しする脚力を強化する。

 *ダンス体操三番
  ・横に移動する時の中間バランスの感覚を確立する。
  ・横に移動する脚力を強化する。


特注・脚を後ろに開く

ボールルームダンスの習得を目指す時に最大の障害となる、
日本人一般の抱える重大な問題ですから、ダンス体操二番に記述してはありますが、
ここで特注として強調します。

股関節は前には曲がりやすく、後ろには曲がりにくいものです。

母親の胎内にいた時の姿勢に始まって、学校では体育座り、正座、あぐら。
歩く時には体重の無い足を股間節を曲げて前に運んで置き、
上体は乗せても片方の足と脚と腰を後ろに残して歩きます。

股関節は前に曲がるばかりで、
伸ばしてもせいぜい腹ばいになるところまでの人がほとんどでしょう。

技術書には 「ウォークの説明」 で、次のように記述してあります。
<両足が大きく開かれた時体重は前足のヒールと後ろ足のボールの間に等しく置き、
前の膝は真っすぐに、後ろの膝はわずかに曲げられる。>


日本ではこの状態を中間バランスと呼んでいますが、横から見ると、
ちょうど の字を逆さに立てたような形になっているはずです。

脚を大きく後ろに広げることができない人は、この姿勢になることができないのです。
お行儀よく正座する機会の多い女性には、特にこの傾向の強い人が多く見られます。

形を作るのではなく、重たいものを他人に手渡しする時の手の形と同じように、
脚が胴体を持ち上げて前方に差し出した結果としてそのような形になるのです。

先ず股間節を楽に後ろに曲げる事ができるようになり、
次に、力を使って脚を大きく後ろに広げ、

胴体を前方に運ぶことができるようになるまで、根気よく トレーニングを重ねなければなりません。


ダンスでは、股間節を後ろに曲げて脚を大きく後ろに広げることができるのは不可欠の条件なのです。

 準備運動で 「アキレス腱伸ばし」 という運動をする時と同じ姿勢を作る。
 この運動では、脚は後ろに伸ばしているが胴体は前傾させてやっている。

 * 「胴体を垂直に立て」 運動の目的を 「股間節を後ろに曲げる」 に置き換える。
 * 胴体を垂直に上下に動かし、下に動く胴体の重さによって股間節を後ろに曲げる。


 以上の運動で筋肉の柔軟を図ったら、次は力を使って働くことを目指す。

 * 両足のインサイド・エッジを平行に揃えて立ち、片方の足に体重を置く。
 * 体重の無い足のインサイド・エッジで床をカットするように力をかけて脚を後ろに広げる。
 * 胴体の垂直を壊さないように注意して何度も繰り返す。
 * 足の位置は変えないで、同じよな力をかけて胴体を前に運んでみる。
 * 力の使い方が分かったら壁を離れて、両足で交互に同じ動作を繰り返す。



以上のトレーニングを行いながらウォークの仕方を覚えて練習を重ねれば、
ダンスが目覚しく上達すること間違いなしです。

前進ウォークの説明をファイル(1)に、後退ウォークの説明をファイル(2)に記述しました。

足型は他人に教えてもらうものですが、覚える自分が頭で覚えただけでは踊りにはなりません。
自分の筋肉で覚え、筋肉を働かせて自分の動作として実現しなければ踊りにはなりません。

足型の理解を確実にするため、ファイル(9)基礎の足型を活用してください。


ダンスが上手になるためには、自分の体を自分で整備しなければならないのです。
よく整備された体は、教えてもらう足型をやさしく吸収することができるのです。


「社交ダンス上達の道しるべ」

(12)立ち、歩き、スイングする




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