リード と フォロー

社交ダンス上達の道しるべ(15)

元セレクションダンサーズ所属・元港区立青年館ダンス講師  福頼静致 (フクヨリ セイチ)

  *** リードはどこで受けるの
  * バーティカル・バランス・ライン
  * バランス・ラインを組み合わせる

  *** 複数の点で結合している
  * 正しい動きは正しいフットワークから
  * 正しいライズとロァーが足型に導く
  * ロァーからライズまでのボディーフライト
  * ボディーと頭が動きを作る

  *** 日本人に起き易いトラブル



リードはどこで受けるの

一人の女性から 「リードはどこで受けたらよいのですか」 と質問されました。

リードを受ける側の女性に 「リードはどこで受けたらよいのか」 と言う疑問があるのなら、
リードする側の男性には 「リードはどこですればよいのか」 と言う問題があるはずです。

社交ダンスをする男子はごく普通に 「リードする」 と使っていますが、
改めて 「リードとは 」と聞かれたら、はっきりと答えることができるでしょうか。

男子は踊る自分全体でリードし女子は踊る自分全体でリードを受ける」 これが答えです。

社交ダンスは男子と女子が向き合って組んで踊るのですから、
「リードとフォロー」 は、社交ダンスの根本にかかわる重要な問題です。



英国のレターサービス発行者 の求めに応じて寄せられた、
「リードとフォローに関する論説」 の中で、
ピーター・イーグルトン (1967-'68年 全英チャンピオン) が次のように述べています。

『男子はムーブメントを示唆しなければならない。
 女子はそれを実行しなければならない。
 そして、男子は女子にフォローしなければならない。』

『男子は極上のシャンパンを満たした高価なクリスタルグラスを載せた盆を持っていて、
一滴もこぼさずに運ばなければならない。』


「ムーブメントを示唆する」 これを糸口にして、「リード と フォロー」 を説明します。

              
バーティカル・バランス・ライン

聴きなれない言葉だと思います。

しかし、三十年間講読を続けたレターサービスの中で、
繰り返し繰り返し反復して強調されたのがこの言葉です

「バランス」と言えば、日本ではほとんどの人が体重の支え方と思うでしょうが、
英国では体重の支え方だけではありません。

体重の支え方も含めて、全体的に均整が整っていると言う意味ですから
誤解しないように注意してください。

首が曲がって頭が前に出たり、
股関節が曲がって、腹が前にお尻は後ろに出ていたりすることなく
腰は左右どちらにもはみ出すことなく、両肩は水平に、

全身の形を極力真っすぐにして、
体重を両足のボール(拇指球からつま先まで)で均等に支え、

重心が両足のボールの中間にあるように 体を鉛直線の (バーティカル) 状態に保つ、

つまり、重力の働く方向に真っすぐに、均整を整えて立った形
「バーティカル・バランス・ライン」です。

1955年に来日し、日本人に初めて正式に英国のボールルームダンスを伝授してくれた
レン・スクリブナー (1950-'52年 全英チャンピオン) が、
受講生の 『バランスとは何ですか』 の質問に答えて、

『頭を両方の肩の真上に、両方の肩を両方の腰の真上に、
 両方の腰を両足の真上に、そして、  両足の中間に保つこと。』
 
と述べました。

このバランス・ラインを確立することが、
ボールルームダンスを成立させるための、
男女それぞれ個人としての責任であり根本的な要件です。

靴底の広い部分で体重を支えて片足で立っていると
少しくらい傾いても倒れそうだとは感じませんから、バランス感覚は鈍くなり
リードが受けにくくなります。

親指に体重を集中して立っていると、
少し傾いたら倒れそうだと感じ、支えようとしてもう片方の足を動かしますから、
バランスの感覚が鋭敏に働いて、リードが受けやすくなります。

バランス・ラインを組み合わせる

男子と女子がホールドすることは、
男子は右足で、女子は左足で体重を支えたバランス・ラインを作って、
二人のバラスン・ラインの組み合わせ (カップル・オブ・バランス) を作ることです。

競技ダンスの場面では、
より厳密なカップルのバランスを追求するために、
男子が体重の無い左足を横に遊ばせて右足で立って女子を迎え受けたりしています。

ここからのバランス・ラインは自分一人だけのものではありません。
二人が重なり合って、体の幅も厚みも重量も大きくなったカップルとなります。

男子の左サイド (体側) はカップルの片方の外側であり、
女子の左サイドが、もう片方の外側となります。

握り合った手、二人の両肩の四つの点、腕を折り曲げてある二人の肱、
これらを結んでできる一定の形を美しく保って、壊さずに運ばなければなりません。

踊り始める前に、
左足に体重を移してもバランスは狂わないか、右足に戻しても狂わないか確認したうえで、
左足前進の補助のウォークをして踊り始めています。

大げさに横に動くので二人の組んだ形が変わったり、
補助のウォークで力んで体をねじったりする男性を見ることがありますが、
それでは目的に反します。

複数の点で結合している

ホールドすると、男子と女子は複数の接触点で結合して一体となります。

男子は左手で女子の右手を握り
男子の右手を女子の左肩甲骨の下に置き
女子の左手は男子の右腕の上に置いてあります。

更に、「コンタクト」 と呼ばれるボディーの接触があります。
体格によって多少の違いがありますけれども、およそみぞおちの辺りです。

コンタクトの強さが問題となることがありますが、
レターサービスでは次のように示されました。

『初歩のうちは、はっきりしっかり。
 競技段階では、明白でなければならないが 常に軽くなければならない。
 ちょうど着ている衣服が一体の感じであって、ボディーが ではない。』


これだけの接触点があるのですから、
お互いのバランス・ラインがしっかりしていて、カップルのバランスが確かでありさえすれば
男子の動きがいかに微細なものであっても、確実に女子に伝わります。

問題は、その動きが踊るための正しい動きか否かです。

正しい動きは正しいフットワークから

ホールドして、これが 自分たちの最高に美しい形 と思うものを作ったら、
その形を壊さずに運ぶ動作だけをしなければなりません。

男子が補助のウォークで左足を前に出しながら体をひねって、
右肩を前に出すような無駄な動きをしたら 女子が混乱するだけです。

しかも、左足前進と結びついた悪い癖がついて、
リバース・ターンの第一歩左足前進の時に顔を出しますから厄介です。

前後左右どの方向に動くにしても、
支え足の正しいフットワークで体を正しく運ばなければなりません

動いて見えるものは全て結果であって、その動きを作り出しているのは動いていない足です。

『パワーはフロアーの上にある体重を乗せた足から始まる。
スイングは静的エネルギーの解放である。
静的エネルギーは、フロアーの上にある体重を乗せた足の圧縮である。』
ビル・アービン (1962-'64年、66年 全英チャンピオン)


回転に必要な、
CBM も、CBMP で女子の外側に前進するのも、
それを作るのは支え足のフットワークです。

男子が正しいバランス・ラインを保って正しくステップしたら、
女子もまた、正しいバランス・ラインを保つことのできる位置にステップしますから、
リードを正しく伝えることができ、リードを正しく受けることができます。

日本式で、股間節を曲げて足を動かしたのでは、
女子は、男子が意図する動きを感じ取ることが困難です。

正しいライズとロァーが足型に導く

足型にはライズとロァーが備わっています。

(念のために、「ロァー」とは、体の位置を現在の高さよりも低くする動作のことです。)

男子が正しくライズし正しくロァーすれば、
女子は足、脚、ボディーを通してその上下動を感じ取り、足型に導かれます。

ハイヒールの女子に可能なロァーの深さは男子ほど深くはありませんから、
男子は女子に可能な範囲でコントロールしなければなりません。

次に後退のステップをする時のロァーは、後退を意識して後ろ寄りになりがちですから、
はっきりと意識してトーの中にロァーしなければなりません。

トーの中にロァーが終わったら、
その足で床を前方へ押して
体を後方へ動かし始めることによって女子の前進を促し、
女子が前進を始めたら、それに同調して後退のウォークをします。

後退にとらわれてロァーが後ろ寄りになったら、
男子は後退の歩幅が広がりませんし、女子は前進のウォークが難しくなります。


ロァーからライズまでのボディーフライト

ウォークする体の動きを振り子が振れるような動きに発展させて
ボディー・スイングと呼んでいましたが、更に発展させて

現在は、空間を浮遊するような体の動きをボディー・フライトと呼ぶようになっています。

正しいウォークの練習を根気よく繰り返すことで、この世界が見えてきます。

『ただ一言"足" 足が無ければフライトは無い。
足とはフットワークに関する充分な知識とフットプレッシャー

あなたの少し上達した生徒達に繰り返し言い続けなさい。
「足が無ければフライトは無い」 と。』
ビル・アービン


足型の第一歩は、前方又は後方へのウォークですが、
ウォークは始動の段階で、支え足でロァーします。

女子は男子がロァーするのを感じ取ったら、
それに続く男子の前進又は後退の動きに応じて迷わずウォークすればよいのです。

振り子が振れ始まった時には、振れていく方向が決定しています。
一旦ウォークを始めたら、後はその方向へボディーをフライトさせることしかありません。

ボディーのフライトする方向が決定していますから、足の振れていく方向もまた決定しています。

男子は踊りたい足型を決めているのですから、
フライトの先に作り出したいカップルの形までを考えて動き始めなければなりません。

ボディーと頭が動きを作る

足の働きによって体が運ばれるのであることは言うまでもありません。
しかし、
足だけに意識が集中すると、
現在のダイナミックな踊りではボディーがタイミングに遅れます。

音楽があってダンスがあるのですから、
女子は男子のリードが無くても音楽に感応しています。

男子が音楽に敏感に反応して、
「ボディーを音楽に乗せる」 ように動いたら、

女子は音楽的に満足感があって
リードとフォローが滑らかに進行していきます。

頭は体の中ではかなり重たい部分ですから、
この頭をどのように動かすかは重大な問題なのです。

これまでは議論の対象としてほとんど取り上げられてきませんでしたが
全英で三連覇を果たし、日本インターでも三度優勝したミルコ・ゴッゾリは、
「種目ごとの頭の動かし方を研究した」 と仄聞しています。

リードとフォローを考察する上では、
顔をどちらに向けるかと言った単純な問題ではなくて、
「頭の動かし方」 が極めて重要な課題であることを提起するにとどめておきます。

日本人に起き易いトラブル

一般の日本人は拇指球から踵までの間で体重を支えて立っていますから、
普通に立っている人に 「踵を上げなさい」 と言うと、
先ず体を前方へ動かしてから爪先立ちになります。

次に 「踵を降ろしなさい」 と言うと、踵を降ろしてから体を後ろに下げます。

そのままの体でダンスを踊ってライズをしたら、
向き合って組んで体を接触させている二人が お互いに体を前方へ動かすのですから、
当然、二人は押し合いをすることとなります。

ロァーをすると二人とも後ろに下がりますから、
引っ張り合いをすることとなります。

お互いに自分は正しくて相手の方が悪いのだと思いがちですから、
「押すなよ !」「引っ張るなよ !」 と トラブルが頻発します。

ダンス体操一番」をしっかり練習して、
[自分の体重を支える基準点はボールである] ように体作りをしておいたら、
このようなトラブルが起きることはありません。


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