競技会・・・より美しく

社交ダンス上達の道しるべ(6)


元セレクションダンサーズ所属・元港区立青年館ダンス講師   福頼静致 (フクヨリ セイチ)

『ボールルームダンスは本来社交的な娯楽だが、高度な技能を伴う
芸術の域にまで到達することができる。』 
レン・スクリブナー

**  審査委員長談話 **
*  「大きく踊れ!」は要注意
*  音楽に合わせる
*  真っすぐに立つ
*  クローズドチェンジが重要
*  横揺れを防ぐ
*  ゼロのポイント
*  歩幅は後ろ足で稼げ
*  足はコツンと当てる
*  ウイーブ・フロム・PP
*  大輪の花は丈夫な茎に咲く
*  スローアウェー・オーバースウェー
*  ドロップ・オーバースウェー
*  支えてあげないと倒れる
*  腰で投げる
*  出方に注意
*  ターニング・ロック・ツー・ライト
*  WとFでリバース・ターンの後半を踊り分ける
*  シャッセ・フロム・PP
* ヒール・ターンに続くサイド・リーディング

     * 女子についての観点


社交ダンスにも競技があります。
現在は昔とは比べ物にならないほど競技会の回数が多くなっていますし、
参加者の数も飛躍的に増えています。

ダンス競技の愛好者が増えたことはとてもうれしく思うのですが、
現状を見ていて感じるのは、
果たして「何を競おうとしているのだろうか」という疑問です。

審査委員長 談話

2006年 プロフェショナル統一全日本ダンス選手権大会で、スタンダード種目の審査委員長を務めた
浅野 務氏 の談話
が、月刊誌ダンスファンに掲載されていましたので、
その要旨を紹介します。

『全体のレベルが下がり、諸外国に比べると水をあけられています。
同じアジアでも足腰の強い中国に見習うべき点があります。』

・ 基礎的な面で荒さが目立ちました。

・ 重厚感が無く、軽い。

・ もう少しフロアに真っすぐ立てば、ウエイトの移動も見えてくるでしょう。

・ ベーシックを重視せず、動きばかりに気持ちをとられています。

・ 競技ダンスに対する誤った認識があるようです。ストロングの意味を見直すことです。

全英選手権競技会で三連覇を果たし、日本インターナショナル競技会でも四回優勝している
イタリアの選手ミルコ・ゴッゾリ

2008年の日本インターナショナル選手権大会で優勝した際に、
NHKのインタビューに応じて次のように答えました。

  『勝利のコツというのは教えることができませんから、その代わりにアドバイスをします。
  ベーシックな足型の質の良さを、そして自分の踊りの質の良さを確信できるように
  練習することです。』

およそ50年の昔に初めて英国風の社交ダンスを手ほどきしてくれた、
日本人にとっては大恩人、
英国のダンス界ではスクリブナー杯を設けて生前の偉業を称えられている
レン・スクリブナー
は、彼の著書 THE COMPELETE BALLROOM DANCER の中で
次のように教えています。

『忘れてはならない鉄則は、数多くの複雑なステップを下手に踊るよりも、
二三のフィガーを充分に踊りこなすほうが優れているということである。』

イタリアでは、初めて英国からコーチを招き教えを受けてからおよそ30年経過した現在、
全英選手権を制覇するほどの選手が生まれています。

日本でも、スクリブナーの教えを受けてから30年くらい経過するまでは、
日本の選手が全英選手権の決勝に残ることが何度もありました。

その後、諸外国の選手と互角に戦うことができなくなった現在までの二三十年くらいの間に、
競技ダンスへの取り組みにどのような変化があったのか、
真剣に考察する必要があると考えています。

「大きく踊れ!」は要注意

陸上競技の走り幅跳びなら1センチ、いや、1ミリでも大きく跳んだほうが勝ちですが、
ダンス競技は大きさを競うものではありません。
「大きく踊れ!」と教えられて、
ただがむしゃらに歩幅を大きくしようとしている何人もの人に出会いましたが、
この人たちは何を大きく踊るのかが分からないままで踊っています。

大きく動き回った人が勝つのでもなければ、
派手なバリエーションを踊った人が勝つのでもありません。
ベーシックを踊りこなして美しく踊った人が勝つのです。

確かに大きさも美しさの要素の一つであることには違いありませんが、
ダンスには大きく見えるという見掛けの大きさがあります。

欠点を抱えたままの踊りを大きな歩幅で踊って見せるのは、
虫眼鏡で拡大して見たら細かい所まで良く見えるのと同じで、
自分の欠点を見えやすくして見せていることにもなります。

自分の踊りを美しく磨いて、美しい踊りを大きく踊るように心がけることが重要です。

音楽に合わせる

体重の無い足を前に置いて、
その足にのしかかるように体重を乗せて踊る日本式の踊りを覚えた人の多くは、
足を置くタイミングを音楽のビートの頭に合わせようとします。

支え足で体を送り出して、
その体を前に広げた足が支える英国式の踊りでは、
体を送り出し始めるタイミングをビートの頭に合わせます
から、
日本式で踊り慣れた人の目には、
英国式で踊る人の足の動きは音楽に合っていないように見えます。

ダンスでは体を運ぶのが目的で、足を動かすのはそのための手段ですから、
体の動きを音楽に合わせて踊らなければなりません。

ワルツのナチュラル・ターン男子の第一歩を例にとって、もう少し詳しく説明します。

ワルツの音楽は三拍子ですから、1,2,3と数えて拍子をとりますが、一拍目の"1"には
音楽が流れる時間的な長さがあります。

その一拍の時間の長さにあわせて、
左足に体重を置いて立ち右足を横に置いた状態から、右足を前にステップして体重を移し、
左足を引き寄せて揃えた状態になるわけです。

この一拍を「イチィー」と唱えて、時間の経過を分かりやすくしておきます。
「イ」で音楽の一拍目が始まるのと同時に、
体重を支えている左足は床を後ろに押して体を前方へ動かし始め、
同時に右足を前方へ振り出します。

従って、一拍目のビートの頭「イ」では、右足は前方へ動いている最中です。

「チ」のあたりで右足のヒールが床に置かれ、いわゆる中間バランスの形となります。

「ィー」は一拍目の後半で、右足に床を引き寄せる力をかけて体を引き寄せ、同時に
左足も引き寄せて、体が右足の上まで移動し終わって左足が揃う頃には、
右ヒールを上げてライズを始めます。


真っすぐに立つ

「言われなくてもまっすぐに立っている」とおっしゃるかもしれませんので、例え話をします。

マグロのさくを買ってきて、それを出刃包丁でぶつ切りにしたものを皿に盛り付け、
刺身だと言って出しても一応はそれで通るでしょう。

しかし、腕の良い板前が研ぎ澄ました刺身包丁で切り分けたものと並べられたら、全く
比べ物にはなりません。

言葉は同じ真っすぐでも、真っすぐの厳密さが違うのです。

厳密に真っすぐなものが移動するから、
空気を切り裂いて進むようなシャープさを描き出すことができるのです。

テーブルの上にビール瓶を置くのなら少々乱暴に置いても倒れませんが、
鉛筆を立てるとなると、よほど慎重におかなければ立てることはできません。

フットワークを厳密にして、常に体重を支える支点を小さく保つように注意していないと
真っすぐに立つ感覚が甘くなります。

実習
片方の足で体重を支えて立ち、体重を足の裏に分散させてから体をわずかに曲げたり
傾けたりした場合と、トーだけで体重を支えて同じ動作をした場合とを比較して、
違いを体感してください。


クローズド・チェンジが重要

「習ったことが無い」と言う人のほうが多いくらいに軽視されるクローズド・チェンジには
とても重要な意味があります。

<1.左足 壁斜めに面して前進、終わりでライズを始める、フットワークHT、CBM少し、
スウェーなし>


真っすぐに立って踊り始めたら、1の終わりでライズを始めて、フットワークが HT ですし、
スウェーはありませんから、トーで体重を支えて真っすぐに立っていなければなりません。

この位置と姿勢が極めて重要な意味を持っているのです。

<2.右足 壁斜めに面して横少し前へ、ライズ継続、フットワークT、スウェー左>
右足を右横に広げるだけでは、体は右に動きません。
左足のトーで床を左横へ押して、体を右横へ運ぶのです。

ダンス体操三番の練習が効果的です。

<3.左足 壁斜めに面して右足にクローズ、ライズ継続、終わりでロァー、フットワークTH、
スウェー左 >


踊り始めた位置から1の終わりまでは直進です。
そこで右に折れ曲がって3の位置に進むのが正しい踊り方なのですが、
トーで立つ感覚のあいまいな人は
1の終わりにトーの真上で真っすぐに立つべき場所を通らずに、
ショートカットして3の位置へカーブして進んでいきます。

技術書に記載されたワルツの足型は三十二個ありますが、
そのおよそ三分の一が左足前進で始まりますから、
それら左足の前進で始まる足型のすべてを第一歩をあいまいな動きで踊ることとなります。
ワルツの踊りは、前方へのスイングに横方向へのスイングを
滑らかに、しかし、確実に繋ぐ事で成り立っているのですから、
このクローズド・チェンジと右足で始まるクローズド・チェンジがワルツの土台なのです。

前進する第一歩の終わりにトーで体重を支えた時には、
この位置でこの形しかないという、厳密な形を磨き上げることが極めて重要です。

「クローズド・チェンジを習ったことが無い」と言う人が多数を占めるようになったのは、
ボールルーム・ダンスの進歩を阻害する、極めて憂うべき風潮と言わなくてはなりません。

横揺れを防ぐ

人間が歩く時には骨盤が左右に揺れているのですが、
この事実に気が付いている人は少ないと思います。

二本の脚は骨盤の左右の端に近いところに分かれて付いていますから、
ちょうど橋桁を二本の橋脚で支えているような構造になっています。

橋脚の一本が折れたら間違いなく橋は崩れ落ちますが、
人間が歩く時には、片方の足だけに体重を乗せても倒れません。

二足歩行になってから長い年月をかけて進化してきた人間は、
頭や上半身が揺れないように
骨盤が左右に揺れてバランスを保っているのです。
スイング・ダンスは振り子が振れるような動きで踊るのだと言いますけれども、
振り子は振れ始めたら真っすぐに振れるだけで横揺れはしないのに
踊る人がウォークをスイングに繋げようとしても
骨盤の横揺れが妨げをしてスッキリした振り子を作ることができません。

横揺れを防いで、振り子のようなシャープなスイングを作りたいものです。
*  第一に必要なのは、足のインサイドをしっかり踏みつけ、決してアウトサイドに
    体重を懸けけないことです。

*  第二は体重を支えている足と反対側のボディーを吊り上げる力をつけることです。

*  練習を重ねて体を左半身と右半身に分け使うことができる様になるのが理想です。

* 左足で体重を支えた時には左半身に軸があって右半身を支えているし、
右足で体重を支えた時には右半身に軸があって左半身を支えているというように、
体を左右に二分して使い分けられるようになりたいものです。

ダンス体操を根気よく続けることによって、
体を左右に分ける感覚が養われます。

さらに進めて、このような仕事は主に下半身で行い上半身は常に美しく保っていられる様になれば
間違いなく芸術の世界に近づいていくような美しいダンスを踊ることができます。

ゼロのポイント

これは私が勝手にそう呼んでいるのであってダンス用語ではありません。

ワルツの踊りでは、ライズが頂点に達した時に上昇の動きがゼロになるだけではなくて、
回転する動きもゼロになり、横方向の動きもゼロになる瞬間があります。

名手と呼ばれる程の人のワルツからは、
この瞬間の彫像のような美しさを見て取ることができます。

一瞬の静止が、逆にそこに到るまでの動きを強烈に印象付けると共に、
なお動き続けるかのような余韻すら感じさせるのです。

私が初めて全日本選手権に出場した時の単独審査員が ビル・アービンでした。
武道館が完成する前年で会場は千駄ヶ谷体育館でしたが、
二階ギャラリーの手摺りから身を乗り出して彼のワルツのデモを見ていました。

ナチュラル・ターンが二階のギャラリーに打ち上げてくるように見えました。

ビル・アービンは小柄な人でしたが、それでもこのように美しく大きな踊りが作れるのだと
強烈な印象を受けた事が、ほぼ半世紀を隔てた現在もなお、鮮明に記憶に焼きついています。

がむしゃらに動き回るのではなくて、このような美しさを描き出す努力が必要です。

歩幅は後ろ足で稼げ

股間節を前に曲げて脚を大きく前に広げることは自然にできますが、
股間節を後ろに曲げて脚を大きく後ろに広げることは自然にはできません。

このことをはっきり意識しておかないと、
大きな歩幅で踊ろうとした時に支え足はあまり後ろに広がらず
体重の無い足が勝手に前に広がりすぎて腰折れのダンスになってしまいます。

前進では体重を支えた脚を大きく後ろに広げるように、
後退では体重の無い脚を大きく後ろに広げるように、
どの場合にも「歩幅は後ろ足で稼ぐ」とはっきり意識しておくことが必要です。

トーで体重を支えた場合にはなおのことこの傾向が強まりますから、
ウォークからスイングに続けようとする時には、
支え足でないほうの脚をボディーの下に吊り下げておくことが必要です。

後退する時には、
支え足のトーで体重を支えておかないと脚を大きく後ろに広げることができませんから、
ロァーをするときにトーの中にロァーするように、動作に注意することが重要です。

ビル・アービンの講義から

『後退の際のロァーはトーの中にロァー。
足がロァーする時、むこうずねの骨が前方に動くことを感じているなら、それがトーの中に
ロァーする感じである。』

『後退ステップの過程で常に三角形の土台を作りなさい。』

足はコツンと当てる

滑らかな動きを作るために足を柔らかく床に置くと誤解している人がいます。

全く反対で、タイヤの空気圧が高くないと車が軽快な走りをしないのと同様で、足を床に
置く時コツンと抵抗を感じるようでなかったら、体は軽快な動きをしません。

誰でも歩いている時何かにぶつかった経験があるでしょうから、その時のショックを
思い出してください。

これから前進を始めようとする時には、体重を支えている足のボールにはどれほどの力も
感じないでしょうが、前に広げて動いた足が床に置かれる瞬間には、前進のエネルギーを
持った何十sという体重が負荷としてかかるのです。
足を柔らかく置いた時には、体を柔らかくしてその時のショックを吸収しているのです。

この状態を「全身のトーンが失われている」「フットプレッシャーが無い」と言います。
これではトーンを保ったボディーを運んで空間に美しいシルエットを描くという競技ダンスの目的を果たすことはできません。

「ステップする足はコツンと床に当てて、フットプレッシャーを作らなければならない。
もちろん床から離してはならないが。」

『ただ一言 "足"。足が無ければフライトは無い。足とはフットワークに関する、
充分な智識とフットプレッシャー。』

ビル・アービン


ウイーブ・フロム・PP

 * ウイスクを中央斜めに面して終わったところから

<1.右足 中央に向けてPPでCBMPにアクロスして前進、体は中央斜めに面して、
  先行歩と1の間 で1/8左回転、1の終わりでライズを始める、フットワークHT、
  スウェーなし>

<2.左足 中央に面して前進、左回転を継続、CBM、ライズ継続、フットワークT>

<3.右足 LODに背面して横少し後ろへ、2-3の間で1/4左回転、アップ、3の終わりで
  ロァー、フットワークTH >

 *
オープン・インピタスに続けて踊る場合の第一歩は中央斜めに向けて、体は
   LODに向けて。


  多数の男子が犯す過ちは、第二歩の左足をステップする時に第一歩の右足の線を
  横切っていることです。

男子が左回転を続けながら右足をステップした方向へ進んでくれないと、PPに開いていた
女子はうまく閉じることができません。


  女子の大きな回転ができませんからスカートのなびきが小さくなって、足型の持つ
  表現効果が消滅します。

第一歩右足のフットクHTを確実にし、インサイドをしっかり踏み、確実にライズを始めて
女子が頼りにできる柱を作ってあげなくてはなりません。

大輪の花は丈夫な茎に咲く

競技選手が愛用するスローアウェー・オーバースウェーのようなライン・フィガー
(日本ではピクチャーとかピクチャー・ステップですが、英国ではラインです) は花です。

停止した状態からこの形を作っただけなら、下級の人も上級の人も大差ありません。
それは造花だからです。

命ある大輪の花が咲くためにはしっかりと根を張った丈夫な茎が必要なようにダンスでは
ライン(花)に到るまでの動き(根や茎)をフアンダメンタル・ムーブメントと言って、 その
よしあしがラインの見栄えを決定します。

タンゴのヘッド・アクションやトリプル・ヘッド・アクションは料理のスパイスです。
できの良くない料理は、いくらスパイスをきかせてもおいしくはなりません。

ファンダメンタル・ムーブメントを磨くためには、
常にボイズやウォークや、若い番号の足型を丁寧に練習して、
ダンスの種目によって異なる性格を描き出すことに努めなければなりません。

スローアウェー・オーバースウェー

オーバースウェーで先ず回転を始めるという男子の間違いがとても多く見られます。
先ず後退です。 先ずオーバースウェーをマスターしてからスローアウェー・オーバー
スウェーに進むべきです。 (オーバースウェーはもともとタンゴの足型です。)

男子<1.左足 中央斜めにCBMPに前進、CBM、フットワークH >

  <2.右足 LODに背面して横少し後ろへ、フットワークBH >

  <3.左足 LODへ後退次いでLODに沿って側方へ左トーは壁と壁斜めの間に
  向けて、フットワークBのIE(インサイド・エッジ)>

  註)「BのIE」となっているのは、ヒールが遅れてロァーすることを示している。

  <4.ポジション(姿勢)を保ち、左膝を曲げる、右トーを逆壁斜めに向けて、フットワーク
   H(左足) 右足のBのIE >

   回転量:1-3の間で左へほぼ3/4、4で体をもう少し回転。


第三歩左足のトーを壁と壁斜めの間に向けてという微妙なフットワークの意味が分かる
までには相当な時間と練習量が必要でしょう。

回転して動きを続けるためには壁斜めが適しています。
停止するためには壁に向けるのが適しています。
この場合にはその両方の要求を同時に満たさなくてはなりませんので、そのために必要な重要なフットワークです。

曲げるのは左膝であって、股関節は伸ばしたままであることに注意してください。
日本式では、股関節を曲げてしゃがんだような踊りが多く見られます。

左膝は弾力を保って曲げなればいけません。
ガクンと折り曲げたり股関節を曲げたりしたら体がすくんでしまいます。

体は張りの有る美しい形を保つように注意することが必要です。

『ダンスには低いライン・フィガーは無い。膝の曲がり程度が異なったハイラインが
 あるだけである。』
ボビー・アービン

女子 <1.右足 中央斜めにCBMPに後退、CBM、フットワークBH >

  <2.左足 TをLODに向けてHを右Hにクローズ、フットワークWF(ホール・フット) >


タンゴではクローズですが、ワルツやフォックストロットではノーフット・ライズしてヒール・ターンを踊ります。

 <3.右足 LODへ前進、次いでLODに沿って側方へ、壁に背面して終わる、
   フットワークBH >

  <4.ポジションを保ち右膝を曲げる、左Tを逆中央斜めに向けて(BのIE) >

回転量:1-3の間で左へ5/8、4で体をさらに回転。


ドロップ・オーバースウェー

このオーバースウェーを高度に踊る方法は、
第1-3歩を踊り、そのポジションを保って静止し、
体を少し左へ傾け、女子は頭を右へ向けて右へ傾ける。 「カウントQQS」。

両足はその場に保ち膝を曲げ、同時に右肩を下げ、頭を少し右へ動かす。
女子は右膝を曲げ、頭を少し左へ動かす。「カウントS」。


支えてあげないと倒れる

女子に上体の動きを強調してもらいたくて、
男子が左に回転しながら上体を前に動かす間違いが多く見られます。

ひどい人は右手を前に広げています。

それでは女子は怖くて上体を後ろへ伸ばすことができません。

技術書で体の回転量を、
男子は「もう少し」、女子は「更に」と示してあることに重要な意味があります。

男子の右手には、女子のボディーを引き戻すような圧力が切れ目なく保たれていなくてはなりません。

しっかりと支えてあげれば、女子は安心して上体を後ろに広げることができます。

広げる大きさをコントロールするのは男子の右手では無く男子が左膝を曲げる深さです。

腰で投げる

スローアウェーの意味は投げ捨てるですが、もちろん本当に投げ捨ててはいけません。
右手でしっかり支えてあげながら、腰を鋭く左へ回転させることで投げ捨てるような動きを作ります。

そのために、オーバースウェーの場合とは異なって、男子の左足トーは壁斜めに向き、
右のヒールは高く上がります。


女子が上体を大きく後ろに反らせ、左の脚を後ろに投げ出しますから、
男子は右手を強く引っ張られることを覚悟してかからなければなりません。

右手の力だけでは足りませんので、体を少し後ろにそらせて女子の力と均衡を図ります。
このような力をカウンター・バランスと言います。
コントラ・チェックその他のライン・フィガーにも共通する極めて重要な注意点です。

出方に注意

回転して入ったラインだから回転して出ようとする間違いが少なくありません。
それでは男女の足が絡み合うようになってうまくいきません。

ラインを保ったままで、体重を置き換えるのが最初にしなければならない仕事です。

『ラインから出るには、先ず体重を置き換え、次に回転する。』

アンソニー・ハーレイ


シャッセ・フロム・PP

第三歩で動きが途切れ、第四歩でストンと落ちる間違いがとても多く見られます。

ワルツのほとんどの足型は、音楽の一小節を三歩で構成していますが、この足型では
歩数を一歩増やして四歩とし、1,2,&,3とカウントして踊ります。

滑らかにすべるように移動するのが持ち味の足型ですが、カウント"&"の第三歩で
動きが途切れ、第四歩は足を開くだけという間違いが多く見られます。

ワルツの足型の多くは第三歩で足を閉じたら移動が無くなり、
体重を受け取ってライズするだけとなりますから、
それと同じ動作をしたのではシャッセ・フロム・PPの特性を失ってしまいます。

体重を受け取りライズを継続し床を後方に押して移動を継続する
仕事は三つあります。

  * 第一歩をトーで踏む間違い。

第一歩は支え足を横切って(CBMPに)前進しなければなりませんから、
足を出すことばかりに気をとられてポイズが崩れ、いわゆるへっぴり腰になって
トーでステップする間違いがとても多く見られます。

車の発進に相当するところですから、
  ・ 第一に支え足で体を持ち上げながら床を後方に押して体を前方へ運び、
  ・ 第二に、前に広げた足の踵で確実に体を受け取って床を引き寄せる力をかけ、
    更に後方へ掻き抜く力をかけて体を前方へ推進しなければなりません。

前進で始まる足型の第一歩では常にこの力が必要で、
技術書には <フットワークHT> と示してあります。


特に女子が男子の右足を気にして、
その足をよけてまで自分の左足を前に出そうとする傾向が目立ちます。
女子の左足は男子の右足の後ろでなくてはならないのですから、
男子の右足が気になるようでしたら、
「この邪魔な足を早く向こうへやって」と蹴飛ばすつもりで左足をステップして御覧なさい。
蹴飛ばすことはできなくてとても上手に踊れます。 タンゴのプロムナード第二歩でも、
全く同じ注意が必要です。

  * 第四歩で支えを失う間違い

トーに体重を支える力がかかっていなくて、
足を開いて床に置くだけという間違いがとても多く見られます。

ワルツのライズ&フォールは原則的に1の終わりでライズを始め、
2と3でライズを継続し、3の終わりでロァーしますが、 この足型では第四歩が加わりますので、
2と3でライズ継続の後に <4アップ、4の終わりでロァー>となります。

第一歩の終わりでライズを始めて第二歩と第三歩でライズを継続し、
徐々に高く持ち上げられて高い位置にある体を墜落させないように受け取ってから、
軟着陸のようにロァーさせるのが第四歩の役割です。

第四歩左足のトーが着床すると同時に体重は支えますけれども、重心は
少し後ろに保つようにしておかないと、
次に来る前進のためのロァー、CBM、CBMP などの操作をする余地がなくなります。

** 男子は第一歩から第二歩までの動きの中で 女子を閉じさせるための微妙な力加減
    をしなければなりません。

PPでスタートした時には男子と女子が同じスピードですから、
そのまま進み続けたら女子は閉じることができません。

一瞬のわずかな減速を行って女子を閉じさせます。

右手が女子の回転についていくように配慮し、
女子が閉じた後は、 全体的な動きをリードしているのは女子であることを忘れてはいけません。

上級の競技選手は、カウント"&"で閉じた第三歩で動きを継続しながら3をカウントし、
3の後半でロァーしている途中で第四歩をステップしたりしますが
早くからこれを真似ようとすると、正しいフットワークの力を育てる妨げとなります。

『シャッセのカウント1,2,&,3を 「1,クライ,ミング,アップ 」 とカウントするのが
良いアイデアである。』
ビル・アービン


WとFでリバース・ターン後半を踊り分ける

ダンスを習う順番は普通、ワルツが先でフォックストロット(日本ではスローと言ったり、
スロー・フォックストロットと言ったりしていますが技術書ではフォックストロットです。)
が後でしょう。

従ってリバース・ターンもワルツ(Wと略記)を先に習いますので、
フォックストロット (Fと略記) のリバース・ターン後半をワルツと同じ様に踊る間違いが極めて多く見られます。

見たところの動きはWもFも同じに見えますし、技術書の記述でも、第四歩は途中までは全く同じです。

W.F.<4.右足 LODに背面して後退、左回転を始める、CBM、--- >

この後の動きに決定的な違いがあります。
Wでは回転しながらLODに動き続けて両足を閉じて終わりますが、
Fでは壁斜めに進みフェザー・ステップに続けます。

  <5.左足 壁斜めに向けて横へ、4-5の間で左へ3/8回転、体の回転を少なく、
    ライズ継続>
    <6.右足 壁斜めに面して左足にクローズ、体の回転完了、ライズ継続、
    6の終わりでロァー >

 <5.左足 壁斜めに向けて横少し前へ、4-5の間で左へ3/8回転、体の回転を少なく、
   アップ>
   <6.右足 壁斜めに面してOPでCBMPに前進、アップ、6の終わりでロァー >


多くの男子がWと同じように動いてフェザー・ステップに進むので、女子は引きずられて
よじれるような動きを強いられて、滑らかに動くことができません。

第四歩の終わりを、はっきりと踊り分けなければなりません。
技術書には次のように明示してあります。

<---、4の終わりでライズを始める、NFR、フットワークTH >

<---、4の終わりでライズ、フットワークTHT>

Fの場合は後退する体重を右足のトーで受け取り
トーから体重を無くさないに注意してヒールを降ろし
そのヒールで右半身の後退の動きを止めて左半身だけを回転しながら後退させ、
前進に変わるようにトーでライズして床を後ろに押します

これが「THT」という極めて微妙な、そして極めて重要なフットワークです。

ターニング・ロック・ツー・ライト

男子が左足の線を横切って右足で後退するので、女子の足がもつれます。

男子  <1.右足 右サイド・リーディングでLODに後退、1の終わりでライズを始める>

  <2.左足 中央に面して右足の前にゆるく交叉、1-2の間で右へ1/4回転、ライズ継続 >

  <3.右足 中央斜めに面して横少し前へ、パートナーの両足の間へ小さく、2-3の間で
   右へ 1/8回転、ライズ継続>

  <4.左足 中央斜めに向けてPPて゜左サイド・リーディングで斜め前へ、体を少し右回転して、
  LODに面して、アップ、4の終わりでロァー >


女子 <1.左足 左サイド・リーデイングでLODに前進、1の終わりでライズを始める>

  <2.右足 中央に背面し左足の後ろに緩く交叉、1-2の間で右へ1/4回転、ライズ継続>

  <3.左足 中央斜めに背面して横少し後ろへ、2-3の間で右へ1/8回転、ライズ継続>

  <4.右足 左足の方向へブラッシュしてPPで中央に向けて横へ、中央斜めに動く、
   3-4の間で右へ3/8回転、体の回転を少なく、アップ、4の終わりでロァー>

男子の第一歩LODに右足後退が、
支え足の左足の線を横切って壁斜めの方に動く間違いがとても多く見られます。

女子は壁斜めにフォワード・ロックを踊るように受け取りますから、
うまく回転することができません。

失敗の原因は右足の後退だけを意識するところにあります。

重要なのは体を後ろに運ぶ左足の動作です。
股関節が曲がらないように注意し、親指の体重を後ろへ逃がさないように・・・

  1.左膝を前に突き出すように曲げてもう少しロァーし、
  2.左足で床を反時計回りにねじる力をかけて右サイド・リーディングの形を作り、
  3.同時にインサイド・エッジの体重をしっかり意識して床を前方へ押し、

正しくLODの方向へ体を運びながら右足を後ろに開きます。

  第一歩は右サイド・リーディングですから、右足のトーはほぼ逆中央斜めに向きます。
  第二歩の左足は中央に向き、 
  第三歩は中央斜めに向きます。

  閉じてあった扇子を開く時に要に近いところの骨が開いていくように、
一歩ごとに 少しずつ右に回転することが必要です。

ヒール・ターンに続くサイド・リーディング

オープン・インピタスでは男子が、オープン・テレマークでは女子が
第一歩で後退してヒール・ターンを踊りますが、
PPに開いて前進する第三歩で、男子と女子の動きが調和しない場面がとても多く見られます。

後退した人が両脚を閉じてヒール・ターンをする時には、回転の軸が体の中心にありますから、
第三歩を開く時には歩幅が小さくなりがちです。

それに対して外回りで回転する相手は、第二歩をトーで回転して第三歩を開きますので、
歩幅には骨盤の幅が加わって大きな歩幅でステップします。

技術書では、ヒール・ターンに続く第三歩が小さくならないように、
<サイド・リーディングで斜め前へ>と示してあります。

ヒール・ターンの回転が終わって、閉じている足のヒールに体重が移ったら、
体重をトーに進め、そのトーで床を後ろに押して、
ステップする足と同じ側のサイド(体側)をしっかり前に進めることが重要です。



女子についての観点

三十年間講読を続けたレターサービスでただ一度だけ、女子についての
論説が掲載されていましたから、直訳して記述します。

A LADYS POINT OF VIEW

THE ALEX MOORE LETTER SERVICE OCTOBER 1987

ボールルームダンスの競技選手カップルを養成するには、型、リード、フロアクラフト、リズミカルな
ムーブメントを作り出す能力の発展のために多くの時間を男子に費やさなければならない。

女子は上記の全てのことにフォローする仕事について、時には充分な時間を与えてもらえない。

女子が上記のことを受け入れられるように、また、彼女のパートナーが踊り手としての
彼女の要求を理解するように訓練することは最も必要なことである。


女子に第一に望まれることはバランスであり、第二は安定感である。

彼女はそれを実行する自由があるならば、彼女のパートナーシップとしての
半分を首尾よく描き出すことができるだけである。

彼女のバランスは、そのボディーの垂直なバランスによって生じる。
膝は、腿とヒップが男子によってわずかに掲げられたように、前方にたわめる。

肘から肘に到る腕のラインは水平で、そして柔らかい両肩と共に水平である。
頭はボディーの左側に垂直に保ち、ごくわずかに左へ回す。

女子がこの釣り合いを保つために、男子は自分と女子と両方のホールドに注意しなければならない。

男子は右腕で彼女の体側に閉じて腕の下を支え、手は柔らかく肩甲骨の上に置く。

男子は決して右手で女子を自分の方に引っ張ることがないように、
そして、常に女子の背中と一緒に動けるようにしておく。

「男子の手は女子の背中と一緒に動く。手は女子の背中を動かさない。」

この言葉を度々繰り返さなければいけない。われわれは男子に対して、よく、
『あなたは極上のシャンパンを満たした高価なクリスタルグラスを乗せた盆を持っていて、
一滴もこぼしてはいけないと思いなさい。』


と言う。

女子にとって次に必要なことは、正しいテクニックでスイング或いはムーブメントを
助けることができるように足を充分に使うことができると言うことである。

われわれは男子と女子の両方に、 「強い足と足首のための鍛錬をしなさい。」と言う。
なぜなら、足の力が無ければフライトはありえないからだ。
いかに多くの女子が、思うように充分に足を使えないでいることか。

ライズの位置から後ろに落ちたり、女子のラインを横切ってステップしたり、
女子のムーブメントのラインから外れたりするのは男子の責任である。

女子が足を置かなければならない位置に気を配り、
ムーブメントのトラックが女子と協調的であるように注意しなければならない。

女子は各ダンスのラインフィガーで、足からボディーを通って
頭までに描き出されるラインに大変注意深くなければならない。

これを達成するためにボディーのトーンを研究し、頭の使い方を、
回転だけでなく型も理解しなければならない。

また、男子は
自分と自分のパートナーと両方のラインの理解に最も協調的でなければならない。

これらの型の際には、柔らかい肩と腕の線を持ち続けるために、
女子のバランスが極めて重要である。

もし、男子が女子をラインフィガーにリードする時にいつでも女子を見ていたら、
男子は女子のヘッドラインを研究し、女子の足の上のバランスラインに確実に女子の頭を
置かせることができる。


われわれは、女子が皆、自分のフィガーのルーティンを一人で踊れなければいけないと考える。

それは、ラインやバランスやリズムについて、本当に理解する上で大変助けになる。
多数のトッププロの女性が、男子のフィガーのルーティンも上手に踊ることができる。

これは男女両方の理解を確実にして、パートナーシップとしてのダンスの感覚を高める。

われわれは訓練中に度々、女子にリズムのカウントを聞いてみる。
驚いたことに、なんと大勢の女性がフィガーのタイミングを知っていないことか。

彼女が充分な知識を身に付けたときには、当然、よい踊り手としての能力を身に付けるだろう。

このソロダンスはまた、スイングの方向を理解することを助け、そしてまた、
スウェーが感じられる時、バランスのコントロールを助ける。

その上、男子がリードしていて共感を覚えるなら、
女子をとても軽く感じて、彼のリードをより積極的にするだろう。


最後に、

男子のボディーと腕のラインを通して明確な方向の感じを受ける女子は、
自分から回転しようとはしないだろう。

男子は時に、女子が音楽を良く聞くことができることを忘れている。

そして、もし男子が音楽的に100%の動作でなかったら、
女子はそれを伝えようとして、多分、自分から回転するだろう。

女子が男子から受ける音楽的な感じに満足している時には、彼女のバワーは
前方及び後方へのムーブメントの中にあって、男子を助けて回そうとはしないだろう。


この論説は、一女性会員の要望によるもの。助けになることを希望する。


 [ レターサービスで示されたコンタクト ]

『 コンタクトは明白でなければならないが、常に軽くなければならない。
ちょうど衣服が一体であるような感じであって、ボディーがではない。


[ リードとフォロー ]

『 男子はムーブメントを示唆しなければならない。 女子はそれを実行
しなければならない。そして男子は女子にフォローしなければならない。』

ピーター・イーグルトン
(1967-'68年 全英チャンピオン)




「社交ダンス上達の道しるべ」

(6-1)競技用足型、どうしてできないの?




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