社交ダンス上達の道しるべ(序章)


元セレクションダンサーズ所属・元港区立青年館ダンス講師  福頼静致・政子 (フクヨリ セイチ・マサコ)

*社交ダンスは日本式? 
* 社交ダンスの基準
*特筆すべき人の名  レン・スクリブナー
* 日本式と英国式の判別 
* ダンスを楽しむ、

   * 社交ダンスは日本式?

社交ダンスと言い、また、ソシアルダンスと言ったりもしますが、これは日本式です。

呼び名のことを言っているのですが、オックスフォード現代英英辞典にソシアルダンスという言葉は
ありません。英国ではボールルーム・ダンシングと言います。

呼び名ばかりではなくて、その踊り方にも日本独自のスタイルが多く見られます。
 日本ではその昔に、英国のクイックステップの足型から基礎的な数個を選び出し、その足型に備わる
  要素のいくつかを省略
して、超スローテンポでゆっくりと歩く形にアレンジして踊り、 このダンスを
   ブルースと名づけました。


日本式という言い方が正式に認められているわけではありませんが、一般の人が踊る場所では、
 習い始めの初心者と見える人ではなく、かなり長く踊っている人と見える大きく踊る人に見られる
  踊り方ですし、ダンス用語も日本独自の用語が使われていますし、踊り方に関して主張する
   意見にも、英国式の原則とは全く異なった日本独自のもの
が聞かれたりしますから、
    もはや日本式と呼んで 区別した方が良いと考えています。

社交ダンスの基準

英国の教師協会 ISTD が制定したザ・ボールルーム・テクニックが基準です。
(日本語版は日本ボールルームダンス連盟発行)。
この本は初め 1948 年に、教師試験の基準を示すためにリバイズド・テクニック
という名で発行されました。

その後およそ50年たってから大きく改訂され、その名も改められて現在に到っています。


 何度も改訂が繰り返されましたが、カリキュラムとしての配列順序の変更や、時代の
 推移と共に足型の取捨選択が行われてきたのであって、ダンスの基本原理に関しては
 全く変更はありません。


 60年かけて培われてきた基本原理は、スタンダード種目に関してはクラシックバレエと
 同様に、すでに完成の域に達していますから、踊り方が変わったのだと誤解しないように注意が必要です。


 この本の巻頭には、かつてダンス界の法王とまで呼ばれたアレックス・ムーアの写真が掲げられ、
  その当時ISTD会長であったビル・アービンが、彼の生前の功績に対し、賛辞を贈っています。

 この本は教師試験の基準を示すのが目的ですから、初心者のガイドブックとしては
 不向きですが指導者の教えを受けながら使うと貴重な教科書となります。

 英国ではISTDコングレスというプロの勉強会が毎年開催され、かつて全英のチャンピオンで
 あったような著名な指導者が講義を行い、いろいろな分科会に分かれて発表や討議を行うなど、
 ちょうど日本で言う学会のような研究が行われています。
 コングレスの重要な内容は、レターサービスによっていち早く全世界の登録メンバーに配信
 される仕組みが整っています。

  私は30年購読を続けて勉強させてもらいました。

特筆すべき人の名 レン・スクリブナー

 日本人に初めて英国のボールルームダンスを手ほどきしてくれた大恩人なのですが、日本では
 もうこの名前を知る人は少なくなったでしょうか。
 しかし、英国のダンス人でこの名前を知らない人はいないのだろうと推測されます。
 優勝者にスクリブナー杯が授与されるという全英選手権に次ぐ上級の競技会があるのですから。

 レン・スクリブナー(1950-1952 年 全英チャンピオン)は日本ダンス界の要請により英国から 派遣され、
1955年に指導と講演のために来日しました。
 それまでは乏しい文献や映像を頼りにしてダンスを踊っていた日本人の目前で、本格的な英国風の
  チャンピオンダンスを踊って見せました。

 人々はただ圧倒され、驚嘆するばかりでした。現在と違ってテレビが無いのはもちろんのこと、
 16ミリのフイルムでさえもが珍しかった時代の出来事だったのです。

 彼の単独審査による全日本舞踏選手権大会の順位では、プロの上位に地すべり的な大変動が
 あって、それまでのダンス技術に関する知識は根底から覆され、プロに対しても勉強のやり直しを
 迫る結果となりました。

 まさに日本ダンス界の夜明けでした。
 ダンスにかかわりを持つ多数の人が、学習意欲に燃えて吸収に努めました。

私もその一人です。1945年に社交ダンスを始めて以来娯楽本位で踊っていましたが、スクリブナーに
導かれ、彼の数度にわたる懇切丁寧な講習の講義録を教科書として競技を目指すこととなりました。
1964年に初めてノービス級に挑戦して、いきなり10位に入賞を果たしてからオール関東戦で入賞する
まで、一度も予選で落ちたことはありませんでした。

スクリブナーにはその後66年と75年にも招いて教えを受けており、彼が日本のボールルームダンス
の急速な発展に及ぼした影響は計り知れないものがあります。

彼の没後、生前の著書や、書斎に残された講義録や未発表の原稿などが盟友ブライアン・アレンの
手によって一冊の本にまとめられ、ジャスト・ワン・アイデアと名づけられました。
日本語にも翻訳されて発売されました。その内容は学術書と言った趣で読みやすくはありませんが、
ボールルームダンスの根底を支える基本原理を説いた貴重なダンス理論の書籍であることは間違い
ありません。

英国風タンゴはスクリブナーによって完成されたと認められています。

●日本式と英国式の判別

ワルツのナチュラル・ターン前半男子の三歩を踊ってください。

・第一歩右足で壁斜めに直進し、第二歩で直立のまま右に急回転し、第三歩の右足が揃えられなくて
 左足よりも後ろにあるのが日本式。

*第一歩右足で前進を始めるのと同時に右回転を始め、第二歩と第三歩では右に体を傾けて回転を
 継続し、右足は吸い付くように寄ってきて左足に揃うのが英国式。

ナチュラル・スピン・ターン後半を踊ってください。

・男子が左足で左斜め後ろに後退したら、右足で前進した女子が第二歩の左足で男子が前に
 残してある右足をまたいで越えるようにステップし、男子が右足で女子の両足の間に踏み込む
 ようにステップして回転するのが日本式。

*後退した男子は右足を前に保ち、前進した女子は左足を後ろに保ったままで、片開きのドア
 のように回転するのが英国式。

タンゴのプログレッシブ・リンクを踊ってください。

・左足右足と二歩ウォークしてから、第三歩の左足で左斜め前に進んで右足を横に置き、女子を
 右に置き去りにして開くのが日本式。

*タンゴウォークで二歩前進し、第三歩の左足を右足の線上にステップしてから、女子をシャープに
 開かせるのが英国式。

クイツクステップのフォワード・ロックを踊ってください。

・右足で女子の外側に前進したら次の左足も前進し、右足を左足の後ろに交叉したらまた、
 左足で前進するのが日本式。

*右足で女子の外側に前進したら次の左足は左斜め前に進み、右足を左足の後ろに交叉したら、
 また、左足で左斜め前に進む、前だけではなくて横にも動くのが英国式。

●右足で一歩前進してください。

・前進した右足に体重を乗せた時に、左足が後ろに残るのが日本式。
*右足に体重が移っていくのに合わせて、左足も寄って来て揃うのが英国式。

●この一歩の違いが、出発点で日本式と英国式が分かれる分かれ目なのです。
     
 ダンスを楽しむ

 自分の現在の技術が日本式であっても、それで楽しく踊れるのであれば結構ですが、思わしく
 上達できないと嘆く人
もいるでしょう。

  他人がかっこよく踊っているのを見て自分もその足型を踊りたくなったとしても、日本式では
 うまく踊ることができない足型がある
のです。

 たとえばダブル・リバース・スピンやホバークロスのように。

 競技会に参加して見たものの一向に成績が上がらなくて悔しい思いをしている人もいることでしょう。
 日本式が英国式よりも不利であることは言うまでもありませんから。

 教えてもらいはしたものの、どうも納得できないと悩みを抱えている人がいるのではないでしょうか。

 60年以上踊り続けてきた私には、今、はっきり見えるようになったものがあります。
 長年教え続けて気づいたこともたくさんあります。

 およそ30年読み続けたレター・サービスでは、先人達の貴重な教えに数多く接することができました。

 上達を求める人たちに幾らかでも参考になれば幸いと、少しずつ記録していくことを思い立ちました。

 社交ダンスの本家英国のISTD (インペリアル・ソサエティー・オブ・ティーチャーズ・オブ・ダンシング)
 がボールルームダンスの基準として示した、ザ・ボールルーム・テクニック
 (以後は技術書と記述する)  からは <>を用いて記述を引用
します。

 従って技術書の解説の意味合いを持つことにもなるでしょう。 温故知新と言いますから、
 貴重な先人の教えは『』を用いて記述 します。




「社交ダンス上達の道しるべ」

(1)ワルツで3の足を閉じよう
前進の正しい踊り方




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