後退する踊り方は?

社交ダンス上達の道しるべ(2)



元セレクションダンサーズ所属・元港区立青年館ダンス講師   福頼静致・政子 (フクヨリ セイチ・マサコ)



社交ダンスのスタンダード種目は、男子と女子が向き合って組んで、しかも体を接触 させて
踊りますから、お互いに前進の踊り方も後退の踊り方も両方とも正しく身に付けておかないと
相手が迷惑します。


   ** 後退のウォーク**
   *
 女子のナチュラル・ターン
   * ヒール・ターン
   * ヒール・プル
< >は ザ・ボールルーム・テクニックの記述



"社交ダンス上達の道しるべ(1)" でポイズと前進のウォークを説明しましたが後退する踊りでも
最も重要な基本はポイズと後退のウォークです。

         * 後退のウォーク技術書の説明

<* 両足を揃え真っすぐな姿勢で>
  外見上の姿勢は前進の時と全く同じに見えますが、体重を支えている場所が違います。

<* 体重は足のボールの前方に保って立つ。>
  前進の場合には、これから前進の操作をする余裕を残すために、ボールの方へ僅かに
  前方に、保つでした。

  足の構造を見れば分かることですが、足首は踵の近くにあって、踵よりも後ろには
  体重を支える働きをするものが何もありません。

    重心が踵よりも後ろに出たら体重は床に落ちるしかありませんから、体重をトーで支え
  親指から踵までの長さを使って体重をコントロールすることが必要です。

**外からよく見えるのは後ろへ動き始める足ですが、
  最初にすることは、体重の無い足を後ろへ動かすことではありません。

  最初にしなければならないのは、股関節が曲がってお尻が後ろに出ないように注意しながら、
  体重を支えている足の膝を突き出すように曲げ、足首を曲げて少しロァーし、
  その足で床を前方へ押して、体を後方へ運び始めることです。
**

<* 先ず一方の足のボール、次いでトーでフロアーを滑らせながら足を後方に移動させ>
  足は常にそのいずれかの部分で床に触っていなくてはなりません。

<* そして再びボールをロァーする(ボールを降ろす)>
  足が後ろに動いている間はヒールが高く上がって、床に触っているのはトーですから、
  体重を受け取るために、踵を少し下げて、ボールの力が使える様に準備をしなければなりません。

<* 後退する足が前足(支え足)のヒールを通過すると同時に支え足のトーはフロアーから離され、>
  トーがフロアーから離れるのは、その足が体を後ろへ運ぶからです。体重の無い
  足だけを後ろに出すのではなく、体を後ろへ運ぶことを忘れてはなりません。

<* 両足が大きく開かれた時、体重は後ろ足のボールと前足のヒールの間に等しく置き、
後ろ足の膝は、わずかに曲げ、前の膝はまっすぐに保たれる>

  いわゆる中間バランスで後ろ足のボールと前足のヒールで体重を半分ずつ支え
  胴体は真ん中に直立しています。

<* 前足は最初ヒール、次いで足のボールでフロアーを滑らせながら両足が揃うまで
寄せられ、同時に後ろ足のヒールはロァーをする。(降ろされる)>

  「ヒールを降ろすのは、足が揃うのと同時」であることをしっかり身に付けて下さい。


<* 特に強調しておきたい重要なポイントは後ろ足のヒールを非常に
ゆっくりとコントロールしながら、ロァーさせることである
。>

[原書では、それまで小文字であった記述を太字の大文字に変えて強調してあります。]



ヒールを降ろすのが早すぎると、
相手を引っ張ったり、ボディーが相手から離れたり、
体重が移り終わっているのに片足を前に残したりして、
相手の踊りを妨げます。

ヒールを降ろすのは、前足を引き寄せて揃えるのと同時でければなりません。

これを知らないばかりにトラブルを解決することができなくてもめている場面を数多く見てきました。

女子のヒール・ターンができないとか、
男子のインピタス・ターンがうまく伝わらないとか
その原因のほとんどはここにあります。

* 正しいウォークを身に付けるには、ファイル(8)踊りの点検、部位の強化に記述した
ダンス体操一、二、三番を練習するのが早道です。

女子のナチュラル・ターン

ワルツのナチュラル・ターン前半を女子について説明します。

技術書には、用語の説明で次のように示してあります。
特注
< 「ナチュラル」 及び 「リバース」 ターンについて
全ての "ナチュラル" ターンは右に、全ての "リバース" ターンは左に回転することである。>



女子についてと言いましたが、
ナチュラル・ターンの後半では踊る方向が異なるだけで、
男子が全く同じに踊ります。

女子の後半は方向が異なるだけで男子の前半と同じです。

実際に踊る場合には補助のウォークが一歩必要ですし、
近頃は、競技の際に選手が行う、カップルの厳密なバランス確認の三歩を真似たりしていますが、
今は補助のウォークはしません。

右足のボールの前の方に、
もっと分かり易く言うなら親指に体重を置いて立ちます。

先ず、左足で後退する準備として、
股関節が大きく曲がらないように注意しながら右足の膝を前に突き出して
足首と膝を曲げます。
股関節はこれと連動して少し曲がるだけです。

<1.左足 壁斜めに背面して後退、CBM、右回転を始める、1の終わりでライズを始める(NFR)、
フットワークTH、スウェー直 >

NFR はノーフットライズ。 ヒールは床に着けたままで脚とボディーを伸ばします。

男子の前進を受けて後退を始めますから、
男子にCBMがありますので、それを受けて
左足の後退と同時に右の腰が後ろに動き、右回転が始まります。

男子の体は壁斜めの方向へ動いていますが、
その体は右に向きを変えていますから、
体から前に広げられた右足は壁斜めの方向からわずかに右にそれ、
壁の方向に近寄って床に置かれます。

その男子の足よりももっと後ろに広げられた女子の左足は、
かなり壁の方向に近寄って床に置かれることとなります。

いわゆる中間バランスを過ぎて左足に体重が移動した時点では、
女子は壁の方向へ後退したような結果となっています。

2009年の日本インターナショナル選手権大会プロの決勝では、ソロ種目がワルツでした。
決勝に残った七組の選手が、ベーシックの足型だけで組み立てられた16小節のルーティンを踊り、
最初にナチュラル・ターン前半の三歩を踊りましたから、
録画したものがあったら改めて観点を絞って見直してください。


フットワークTH

初めに左足のトーで体重を受け取り、
その体重を後ろに逃がさないように注意してヒールを降ろします。
これをフットワークはトーヒール(TH)と言います。

男子がライズを始めますから女子もライズを始めなければならないのですが、
ライズどころか
後退の準備をした時に右の膝を曲げたのと同じように左の膝を曲げ、
そればかりでなく
股関節も曲げて、しゃがみこんだ形のままの人がとても多いのです。

先ず、その股関節と膝を伸ばさなくてはなりません。

ヒールを床に着けているので爪先立ちになるライズはできませんから、
ヒールは床に着けたままで、脚とボディーを伸ばしてライズします。

後退した第一歩で行うこのようなライズを<ノーフット・ライズ>と言います。

< 2.右足 LOD に向けて横へ、1-2 の間で 3/8 右回転、体の回転を少なく、ライズ継続、
フットワークT、スウェー左 >

右足の向きが要注意です。

ナチュラルターン前半の回転量は3/8で、
回転の外側を動く男子は 1 で右足前進して左足が揃うまでにおよそ 1/8 回転しますから
組み合っている女子も当然同じ量の 1/8 回転をします。

2 で男子は更に 1/8 回転し、左足を逆LODの壁斜めに向けてステップしますが、
この時もボディーが男子と同じ量の回転をする女子は、
自然にステップすれば右足を中央斜めに向けてステップすることとなります。

しかし、それではこの後に問題が起こります。

男子は惰力で更に1/8 回転して、
3 の終わりにはボディーも足も逆LODに向いています。

向き合って組んでいる女子は、
2 で中央斜めに向けてステップした足の上で、ボディーだけが LOD を向くまで
足の向きよりも多く右回転をすることとなり、
右足に無理なねじれの力がかかって回転を妨げます。


従って、2 で右足をステップする時に、
ボディーは中央斜めに向いているけれども、
足だけは LOD に向けて ステップ しなければならないのです。

ところが、これが難しい人が多いでしょう。
ただしバレエのレッスン経験者はこの限りではありませんが。
原因はお尻が後ろに行き過ぎているのです。
この動作は、後退した時のポイズを点検する指標となります。

左足の上で腰の位置が後ろ過ぎると、右足先を斜め後ろに向けることができませんから
それができるまで腰を前に出して、親指に体重をかけてください。

後退して両足を揃えヒールを降ろした時には、後ろへの惰力が働き、
お尻が後ろに出て股関節が曲がり易いので、
ヒールを降ろしても親指から体重を後ろに逃がさない様に注意しなければなりません。

日本で聞くことがあるように股間節を曲げていたのでは、この動作はできません。

内側回転

後退して回転する女子は回転の内側です。
扇子の縁が大きく開いても要の近くは大きく動かないのと同様に、
女子の第二歩は歩幅が小さくなければならないのです。

このことを意識しておかないと、
向き合って後退した第一歩と同じく大きな歩幅で動きますから、
外側回転の男子には不可能な歩幅を要求することとなってトラブルが起きます。

後退した左足の上から動かないつもりで、
男子の右スウェーに合わせて左にスウェーし、
右足のトーをLODに向けてしっかりと床に当てておけばよいのです。

回転の軸を作るつもりでしっかりと立っていたら、
外回りで不安定な動きをしなくてはならない男子を支える
助けをすることにもなります。

<3.左足 LOD に面して右足にクローズ、体の回転を完了、ライズ継続、3 の終わりでロァー、
 フットワークTH、スウェー左>

右足に閉じた左足で、左スウェーを保ったままライズを継続し、3の終わりでロァーします。
ロァーを始めると同時にスウェーも無くなり始めますが、
完全に無くなるのは、次の1の終わりで両足がそろった時です。

以上がワルツのナチュラル・ターン女子の前半ですが、
アラインメント(方向)が異なるだけで
そのままが男子の後半の踊り方でもあります。

また、
女子が中央斜めに背面して右足後退から始めれば
リバース・ターンの前半になります。

単にワルツのナチュラル・ターンだけではなく、後退して踊る主要な回転の技術ですから
男子も女子もこの足型は
社交ダンス上達の道しるべ(1)"で述べた男子の前半と合わせて、
両方の踊り方を完全にマスターしなければなりません。

ヒール・ターン

この回転に悩まされる女子はとても多いようですが、
ヒール・ターンがうまく踊れない原因には
主なものが二つあります。

その第一は後退するウォークの原則が身に付いていないことです。

  後ろに伸ばした足のボール(親指の力を忘れずに)で体重を受け取ったら、
その足のヒールは
前の足が揃うのにあわせて、ゆっくりと降ろさなければなりません。

第二は、自分で回転しようとすることです。
回転の力は男子から受けるもので、自分から回転しようとしてはいけません。
女子は後退のウォークを正しく踊ればよいのです。

外側回転の男子が回転の動きを作りますから、
女子はボールで体重を受け取ってからヒールが降りるまでに、
すでにボールで回転が始まっています。

そのために、
男子は前進を始めるのと同時にライズを始めて、
前進の終わりにはライズをほとんど完了しているように踊ることが必要です。

男子のボディーがトーを越えて前に進み過ぎるために、
女子が両足を閉じて立っていられない場面がよく見られます。

男子はトーを越えてボディーを前に進めないよう、
円柱の周りを回る気持ちで動かなくてはなりません。

男子にもヒール・ターンがあります。
インピタス・ターンの第一歩
がそれですが、
その名前の通り、
女子が自分の前を通過するインピタス(勢い・はずみ)によって回転するのです。

男子が女子を振り回すのではありません。

男子に必要なのは、
後退した左足のヒールを、右足が揃うのと同調させてゆっくりコントロールして降ろすという 正しい後退で、

女子に求められるのは、
前進の惰力を生かして右足のトーを乗り越え、ボディーを前方へ送り出す 正しいスイングです。

* ヒール・ターンは技術書で次のように説明してあります。

< 回転はステップした足のボールで始まり、次いでヒールで継続される。
クローズする足は平行に保ち、
回転が終了した時、体重はクローズした足に移る。>

両足が揃った時には、背筋を伸ばしてヒールをしっかり床に押し付けるように力をかけ
ノーフット・ライズをします。

揃えた足は副木を当てたつもりでしっかりと、支え足に着けておけば、
ハイヒールの細い踵でも安定した回転ができます。

閉じた足に体重が移ったら、
その足のトーに体重を乗せて前方に送り出すのが大切な仕事です。

フォックストロットのナチュラル・ターンやリバース・ターンでは男子が後退しますから
意識しなくても前進するでしょうが、
テレマークやダブル・リバース・スピンでは回転が続きますから、
自分も回転しようとしてうまく踊れないことが多いのです。


ヒール・プル

この技術は男子だけのもので、
ワルツのヘジテーション・チェンジやクイックステップの
ナチュラル・ターンからナチュラル系へなど左足で後退して回転し、
流を途切れさせないで前進に続ける場合に必要となります。

ヒール・ターンと似ていますが、
右足を閉じるのではなくて後ろへ引き抜くようにしながら、
左にスウェーして左足のヒールで回転し、右足を少し横へステップするところが違います。

技術書には、

<ヒール・ターンの一種である。

支え足のヒールで右回転を行い、ムービング・フットは支え足の横に(わずかに離して)引き寄せられる。
その時先ず始めにヒール、足のインサイド・エッジ、そしてフラット >

と記述してあり、
後ろへ引き抜いた足を床に着ける順番が示してあります。

左足のヒールまで後退してきた体重を先ず右足のヒールが受け取り、
右に回転する体の動きをインサイド・エッジで抑え、
その足の裏を平らにして左足の前進につなぐという
流れるような動きを作り出すための微妙なフットワークです。

世界のトッププロの踊りは一見とてもダイナミックに見えますが、
それはこのような
微妙なフットワークの集積に支えられて成り立っているものなのです。

ちょうどジャンボ機が精密部品の塊であるのと似ていると言えるでしょう。

『初心者はほとんど例外なく足意識過剰である。
ところが、中級アマチュアの大多数は
いったん基礎を習得すると、一転してフットワーク不感症に陥る傾向がある。
上級の踊り手は常に足を知覚していなければならない。』

レン・スクリブナー

ISTDコングレスの講義から、

『ただ一言「足」。
足と言うのはフットワークに関する充分な知識とフットプレッシャー。

あなたの上達した生徒達に繰り返し言い続けなさい。
「足がなければフライトはない。」と。』

ビル・アービン

上手な ウォーク を身につけ発展させることで ボディー・スイング が可能となります。
現在では更に一歩進めてボディー・フライトと言います。



「社交ダンス上達の道しるべ」

(3)ピボット、回転軸となる回転




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