Sogo Budo Academy International

【体を鍛える】

武道を訓練することにより、確実に身体能力は高まります。武道は全身運動ですので、普段日常生活ではあまり使わない深部筋を鍛えます。また、無理無駄のない動きを徹底して訓練しますので、小さな力で大きな効果を出せるように訓練をします。
武術的な面はどうでしょう?私自身、躰道に関しては『ケンカが強くなりたい』というのが当初の目的でした。武道ですから、他者と戦うための技術は身につきました。しかし、私自身は躰道を始めて、間もなく、『ケンカ』のことは頭から消えました。ケンカをしない人の方が強い人がたくさんいることが分かったからです。同時に自分自身の中の衝動的な感情を躰道を始める前よりコントロールできるようになりました。完全にコントロールするのは、まだまだ未熟なので未だに出来ませんが、体を鍛えると同時に感情のコントロールができるようになったのは良かったと思っています。
また、武道を訓練する人の中には、『あの技はこういう場面で使える』『あの武道は実践的でない』等々言う人がいますが、全く無意味な議論だと思っています。よく護身術と称して、武道の技の一部が紹介されることがありますが、それも実際には使えないことがほとんどではないかと思っています。何故なら、戦いの場面、暴漢に教われる場面は何百通り、何千通りどころか無限のパターンがあり得る訳ですから、それを数種類の技で対応できるわけがありません。それよりも基本の技を繰り返し訓練することで、相手と自分との適切な間合い、自分の力を有効に使う方法、相手を効果的に制する方法の原理原則を身に付けることの方が大事です。体に染み付いた技は無限に変化が出来るのです。私の合気道の師匠は『合気道の技、一つ一つは使えない。』と言われておりました。それは合気道が実践的でないと言っているのではなく、一つ一つの技をどのように使おうか考えても無駄であり、その技の原理が分かっていれば、変化した形で必要に応じて技が出るということです。私自身の経験をお話します。友人の車のドアミラーを蹴り上げ逃走した酔っ払いがいました。その酔っ払いを追いかけ捕まえたときに自分では普通にその男の腕を両手で掴んだだけのつもりでしたが、男が『もう逃げないので腕を離してください。痛いです。』と懇願してきました。無意識のうちに男の肘関節を極めていたようです。
さて、こうして身についた技がいざというときに護身術として使えるのでしょうか?私より4学年上の合気道部の先輩が学生時代にアメリカを貧乏旅行していたときにナイフをもった暴漢に襲われ、金を要求されたそうです。その先輩は合気道の技で数人いた相手全員を投げ飛ばし、逃げてきたそうです。一方、私の合気道の師匠は海外に指導に行き、夜に酒場で飲んでいたときにナイフを持って暴れる男に遭遇したそうです。その先生の実力ではそのような男をねじ伏せることなど簡単だったとは思いますが、店の中の人と仲間を逃がし、自分もその店から逃げてきたとの事です。先輩と師匠どちらが凄いと思いますか?確かにナイフを持った暴漢と戦った先輩は凄いと思います。しかし、先輩は偶然にも相手が銃を持っていなかったから助かりましたが、誰かが銃を持っていれば、殺されていたかもしれません。一方、先生は冷静に相手を刺激せず、全員で逃げましたが、そう簡単には出来ないことと思います。
子供の安全が取り沙汰される昨今ですが、私は武道で訓練した技術をどう使うかよりも、武道を訓練することにより、体力・技術を身に付けるだけでなく、危険を感知する能力、危険を回避する能力を子供達には覚えてもらいたいと思っています。生兵法は怪我の元、この言葉通りです。